幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第35話(29の途中まで)

「けれど、それだけが全てではないはずです。その外側に、なにかがあるはずです。」

「ありませんよ。外側なんて意味がありません」

「それに、悪魔(アキラ)さんは、そのお考えに同意されているのですか?」

「その質問も無意味です。なぜなら…」

 

ここで悪魔(アキラ)の左手(まじょ)は、床に散らばるがらくたを一つ取り上げた。

それは、先程ラリスキャニアに投げつけられた、なんてことのない品物のうちの一つ。

彼女は、そのがらくたを……

 

「ぐ、ぐむっ!」

床に這いつくばる自分の本体、悪魔(アキラ)触手の口に突っ込んだのであった!

その正体は、

 

「おしゃぶり!?」

 

そう、天使(レオ)触手の言う通りであった。

 

プレゼントの一種だったのか、その場になぜか存在したおしゃぶりを口に突っ込まれた悪魔(アキラ)触手。

"彼"は、文字通り"口を封じられて"しまっている。

 

そこで左手(ディスペータ)は、奇妙な振る舞いをした。

そんな状態の悪魔(アキラ)触手に話しかけたのだ。

 

「さあアキラ様、一緒に『苦痛』(しあわせ)な『牢獄』(あいのす)生活を送りましょうねー」

 

相手がそんな状態なのに、答えが返ってくるはずもない。

そのはずなのだが……

 

「『当然さ!苦痛(しあわせ)溢れる牢獄(あいのす)で、世界の終わりまで二人で過ごそう!』」

 

なんと、返答はあった。

もちろん、今の悪魔(アキラ)触手が答えられるはずもない。

では、その返答の正体はと言うと……

 

「『腹話術』ですか。左手(ディスペータ)さん、そんな状態が、貴方の望んだ『人生』なのですか?」

 

と、そういったカラクリであった。

 

「これで良いのです。それに、私は悪魔(アキラ)様のただの左手。私には、もう『人生』なんてありませんから」

 

そして、悪魔(アキラ)の左手(まじょ)は、疲れたように語った。

 

「言葉遊びは、もうたくさん。

全てのヒトが記憶を持ったまま転生や再生出来るわけでもありませんし、転生したからといって、恨みや痛みが消えてなくなるわけでもありません。

どれだけ『杖』のおもちゃでいじっても、感覚を呪術で操作しても……私たちが心ある存在である以上、そうしたものを消し去ることは出来ません。

最後に頼れるのは……暴力、それだけです」

 

そして、左手(ディスペータ)は、身体を曲げたまま、本体(アキラ)をなでた。

その手付きは優しかったが、おしゃぶりは押し込まれたままであり、本体(アキラ)を床に押し付ける力にも緩みはないままだ。

 

「でも、まだ終わりません」

「あなたの出る幕などありません」

 

左手(ディスペータ)の反応は、取り付く島がない。

だが、それでも天使(レオ)触手は、諦めなかった。

 

「問題ありません。先程言ったように、僕はこの舞台の主演ではありません。それに…」

 

そして、猫耳(レオ)触手は、ついに興味無さそうに、うつろな目でこちらを見やるだけになった左手(まじょ)に向かって、言い放った。

 

蝶はまだ、飛ぶことを諦めてはいませんから!」

 

そして、天使(レオ)触手は、宙を指す。

 

その指の先に舞っていたものは……左手(もとめがみ)、かつての『銀の森の少女』にとって、ひどく馴染みがあるものに思えた。

 

 

その存在があまりに意外だったので、"彼女"も思わず、それを言葉に出して確認してしまう。

 

「これは…雪?」

 

実際には、そうではなかった。

白く、ふわりとして、宙を飛んだ小さな物体。

だがよく見れば、それは何かの形をかたどっており…捕まえてみれば、その形にはどこか既視感のある欠落があった。

 

「これは…この形は…?」

 

勢いよく指摘した美少年触手でさえ、思わず首を傾げるような奇妙な物体。

だが、左手(ディスペータ)は、ひと目でその正体を見抜いた。

悪魔(アキラ)の左手(まじょ)であるのだから、それを分からないではいられなかったのだ。

 

そう、その形、"頭と左腕が欠落したヒト"の形をかたどったその物体、その正体は……

 

「ボク特製の、『シナモリアキラ』マシュマロさ!」

 

「な…!」

 

そう、なんとそれは、左手(まじょ)の本体(あるじ)をかたどったお菓子、既存のマシュマロを加工して作られた、手作りの呪物(フェティッシュ)であった。

 

「なぜそんなものを?」

 

驚愕のあまり開いた口が塞がらない左手(ディスペータ)、当然の問いを投げかける天使(レオ)触手。

そんな"彼女"たちに対して、お菓子を放り投げた下手人は、爽やかに言い放った。

 

「だいぶおまたせしたけど、そろそろ舞台を再開するからね!舞台にお菓子や軽食はつきものだろう?」

 

あの一人称は…そして何より、そんなことをする人物は、そんなことが出来る人物は…この"舞台袖"にたった一人しかいない。

 

助っ人を全て打ち破られ、先程まで床に伏せてなにやらもぞもぞしていたこの舞台の"興行主"

それは…

 

「素晴らしい舞台と共に、甘くて美味しいお菓子はいかが?」

 

ラリスキャニアだった。

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