幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第41話(23の途中まで)

そんな彼女は、続けて語った。

 

「流行り物は良いですね。さっと楽しめて、後に何も残らない」

「流行り物を馬鹿にするな。時の試練を経て、生き残る流行り物だっていくらでもある!」

 

「消えるのですよ、あなたと同じように」

 

今度は問答こそ成立したものの、取り付く島もない。

 

「今の貴女の振る舞いは、まるであの人狼の王、エスフェイルの支配と同じだ。そんな関係は、結局中身が空っぽの……!」

 

『座長』を自認する地下アイドルは、それでも語り続けようとしたが……

 

「それはそうです。けれど、空っぽでも良いのです。私の愛するこのヒトも、その本質は虚無なのですから」

「な、なんだと!」

 

なんと、あっさりと肯定されてしまった。

こんなふうに肩透かしを食わされてしまうと、力のぶつけどころがない。

 

場に君臨する元女王は、いやこの『舞台』の『役者』は、滔々(とうとう)と語った。

 

「空っぽの恋人に空っぽの支配者、それで良いのです。

アキラ様苦しむゆえに私あり、アキラ様が苦しみ、己に抱き続ける不信と疑念こそが、彼と私の存在を証明し続けるのです。

私がアキラ様を苦しめることで証明し、苦しむアキラ様がその支配者たる私を実証する。

英雄は辛く苦しい旅を続け、ついに欠けたモノを取り戻しました。

だから――――もう、英雄になる必要もないし、旅をする必要もないのです」

 

朗々と声を張り上げる彼女は、まさにこの『舞台』の『主演女優』だった。

 

「バカな!そんな理屈があって、それで英雄(ヒーロー)が否定されて良いワケがない!」

 

だが、彼女は、『座長』の批判など物ともせず、大物(ビッグ・スター)の風格を漂わせながら話を続ける。

それはもはや対話劇ではなく、ただの独白。

世界でただ一人が演じる『悲劇』の『終幕』を告げるモノローグだ。

 

「二人の間に、『呪文』(ことば)はいらない。

私とアキラ様の物語は、二人が一つとなった時点で完結したのです。

破滅が約束された儚い繁栄なども要らない。

これからは、みすぼらしい『杖』をついて歩く必要も無い。

夢も希望も、その全ては虚しい嘘だったのです。

だから、この見つめ合う『邪視』(まなざし)だけが、私たちの存在と幸福を保証するのです。

虚無の主従は、空っぽ同志でお互いの担保となり、それによって物語は完結を迎えます。

永遠に『幸福な終わり』(ハッピーエンド)に到達しない、『未完成な永遠の中断』(メリーバッド・エターナル)へと。

『完結しない終焉』こそが、唯一の答えとなり、同時に救いとなるのです。

さあ、幕を閉じましょう!

アキラ様と私の、転生者の舞台はここで終わる。

『英雄物語』は、ささやかな一場面、恋人たちの一幕をもってその主筋(レゾンデートル)を塗り替えられるのです。

そしてそれは、それだけは、いかなる超越者(かみ)にも邪魔することは出来ない、いいえ、決してさせません!

これからこの部屋は、私たちの『愛の巣』は、呪われた部屋、『英雄物語』になるはずだった舞台のタイムカプセルとして、永遠に保存されていくことでしょう……!」

 

「そんなことを許すものか!」

 

驕り高ぶる左手(ディスペータ)に駆け寄る"興行主"(ラリスキャニア)

だが、それは遅かった。

 

「アイドル迷宮は、第五階層にある時突然現れました。が、まさか無から誕生したとでも?

あらゆるモノには、紀源があり、大抵のオリジナルにもその『源』がある。

アイドル迷宮にしても、それは同じ。

『世界槍』の中心たる第五階層に隠されたダンジョン、迷宮の中の迷宮。

その前身は、『キュトスの姉妹』ヴィヴィ=イヴロスの浄界『世界劇場』なのですよ。

だから、ここは中心の中心、世界の中枢のそのまた中枢。

そう、『観る』ことも出来ます。

だからーー十分な準備と適切な条件さえあれば、こういうこともやれるのです」

 

そう言い放つや、"主演女優"は、持っていた端末を投げ上げた。

それは当然のように墜落を止め、不自然に宙空に静止。

かと思えば、次の瞬間その位置を固定するに足る十分な『理由』が形成される。

細く透明な光る棒が、端末と地面を結んだのだ。

 

それは、写真が魂を削るこの呪術世界(ゼオーティア)には、絶対に存在しない物体。

端末の構造を拡張し、その『杖』的な"視界"を使用者に固定するためだけに作られた、異形の道具であった。

 

あるいはその知識は、彼女の拡張身体たる悪魔(シナモリアキラ)よりもたらされたものなのか。

 

たった今『左手』(もとめがみ)が『創造』したソレは――――異界の言葉で『自撮り棒』(セルフィー・スティック)と呼ばれていた。

 

そして

「"地盗(じど)り氷槍"とでも呼ぶべきでしょうか、稚拙なレプリカではありますが、ひとまずはこれで十分です」

"元女王"は、そう嘯(うそぶ)くと、その"棒"を自らに向け、絶え間なくシャッターを切った。

 

 

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