幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第42話(34~35の途中まで)

念写加工アプリの発動音があたりに響き渡り、第五階層が貸与する『創造』能力と合わせて、続々と『念写写真』のプリントアウトを実行する。

 

そしてそれは独りでにまとまり、一冊の本へと姿を変えていった。

『念写写真』を収める本、言うまでもなくアルバムである。

 

しかも、それは先ほど破壊された"興行主"のモノとは大きく違っていた。

それは、白色だけではない、美しい輝きを放っていたのだ。

 

赤・青・白・黒・黄。

それが纏うは、五色の燐光であった。

 

変化は、更に続いた。

それに加えて、その五つの光はアルバムを中心に円を描いたのだ。

 

それだけではない。

円の中心、空白の地点には"何か"が在った。

 

それは、周囲を巡る五つの色のいずれにも属していなかった。

 

だが、確かにそこには"何か"が、在り得ぬはずのなんらかの輝きが、確かに存在していたのだ。

まるで、太陽を見つめてしまった後、暗闇に浮かんで見える残光のように、その光は何もない不在の中にこそ、はっきりと知覚されるものであった。

 

そしてその光が飾るアルバムは、残らず、同じ人物の写真で埋め尽くされていた。

『左手』(ディスペータ)ではない。

 

そのページは、すべて、『悪魔』(シナモリアキラ)の像から成り立っていたのだ。

それらは、うめき、叫び、痛めつけられ、なげき、悲鳴を上げ続けている。

 

そう、そこに写る『悪魔』は、さまざまな苦悶の姿の念写(イメージ)のみであった。

苦悶の像は、それぞれに多様であり、それでいて同一の苦痛を音なき世界にて表現し、そのポージングは刻一刻と変化を続けていた。

もちろん、それが単なる地獄のポートレートなわけもない。

 

ラリスキャニアがその強烈な情景を注視していたあいだも、『左手』は常に動き続け、今もなお、その『本体』(シナモリアキラ)触手の撮影を継続している。

それをも観察した地下アイドルは、異様な現象に気づいたのだ。

 

『左手』(まじょ)が撮影をするたびに・・・

 

「念写写真がリアリティを増している!?まさか・・・これは【実写】いや、限りなくそれに近い呪術なのか!?」

 

念写ではない写真撮影は、この世界(ゼオーティア)における最大の禁忌のひとつである。

 

今や舞台の『主演』を務める『左手』(もとめがみ)は、言うまでもないとばかりに、そんな"興行主"の台詞を無視した。

 

だが、もしそうであるならば、これは、恐るべきことである。

魂を削る【実写】の呪術は、相手の本質、最も尊い部分を蹂躙し、自らの支配下に置くという最悪の行いなのだから。

その衝撃に打ちのめされるラリスキャニア。

そこへ『左手』の独白が降り注ぐ。

 

「空っぽであるということは、言い換えれば全てを満たす無限の領域、無限の可能性が詰まった空間であるとも言い換えることが出来ます。

無(アイン)にして無限(アイン・ソフ)

虚無(ヴォイド)にして無限光(アイン・ソフ・オウル)

人には理解できず、把握することも表現することも出来ない『神の領域』

いいえ、『女神の領域』と呼ぶべきでしょうね。

それは肉体を蔑視し、理性の名のもとに抑圧する男性神の扱えるようなものではなく、生命を生み出し育む女の神が君臨する『聖地』なのですから。

死産は救世主のための生贄となり、その産道は冥道となります。

そして、そこから『空白の引喩(アリュージョン)』が始まるのです!」

 

不可解な長台詞。

これまでは、まがりなりにも直前の行為を説明していた『左手』(しゅやく)の説明が、現状の『舞台』の状態と噛み合っていない。

 

「ズレている・・?」

 

"興行主"の困惑をよそに、その『演技』は容赦なく続けられた。

 

"彼女"がまなざすその眼は、義眼のような『杖』の器具ではなく一寸の光すら拒むドクロの瞳。

その暗黒のまなざしには、確かに強大な力が宿っていた。

 

それは、あらゆる光をその内に閉じ込める。

それは、すべてを静止させ、死の世界へと導く。

それは、原初の虚(うろ)

 

そして、"座長"は気づいた。

アレこそが、平凡な携帯端末による撮影に、禁断の【実写】に極めて近い効果をもたらしていることに。

シャッター音が鳴り響くたびに、アルバムに収められた『悪魔(アキラ)触手』の苦悶が、より迫真さが増し続けているのだ。

 

これが『本物』の演技だというのか!?

 

しかし、舞台に立つモノとしての彼女は、それと同時にささいな違和感をも覚えていた。

 

これまで『左手』(もとめがみ)が語った言葉は、常にその場の解説に終始していた。

ときに自分の願望や欲望について語ることがあっても、その言葉は、基本的に舞台の説明でしかなかったのだ。

 

だが、今は違う。

 

写真撮影と舞台の説明、言い換えれば『映像』と『空間』の説明。

そこには確かなズレがある。

 

ズレ、それは言うならば矛盾、あるいは……

 

(隙や弱点!ならば、そこにつけいることが出来る!)

 

そうした社会的な攻撃こそが、地下アイドル・ラリスキャニアの得意技なのだから。

見出したほころびを突破口となすべく、彼女は立ち上がろうとした。

 

だが…

 

 

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