幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第45話(37の途中まで)

思い出話に昔語り。

二人の声は、校舎に響いた。

白く巨大な伽藍堂の中を、乱反射する音がこだましながら去っていく。

高く遠く、遠く高く。

 

暖かな空気に包まれ、どこまでも遠くへ響いていくその声は、まるで地の底から聞こえる死者の嘆きのようだ。

 

あるいはそれは、地上を羨む天の城塞(エクリーオベレッカ)からの羨望のため息なのか。

いずれにせよ、それは上下左右前後不覚。

あらゆるものを巻き込みながら、全ての正気を失わせていくかのような、そんな春の歌声だった。

 

輪唱は、続く。

 

「校庭を埋め尽くす厳重なゲート!」

「ほとんど『杖』だけの個人認証とか、偽装余裕でした!」

 

「妙に情報通な購買の店員!」

「生徒の個人情報入手で助かった!」

 

「褐色の保険医!」

「異様に気配に敏感!特に少年に視線が熱い!」

 

そうして声は、谺(エコー)となって球遊びのように幾度も投げられ、投げ返され……

 

「ボクは置いていかれた!」

「ついていけなかったんだ!ボクは…」

 

その言葉をもって、唐突に途切れた。

一度途絶えれば、跡に残るのは、ただ虚しい静謐ばかり……

 

だが、それもなんとか、また破られた。

 

「浄罪の月の授業参観…」

「なんとか生き残れた…」

 

破られはしたが…けれど、その勢いは戻らない。

懐かしみたい思い出(メモリー)も、もはや品切れなのか。

 

「途中までは…」

「だけど…」

 

そこで、二人の声は、また揃った。

揃ってしまった。

否、揃わずには、いられなかったのだ。

それは、忘れられない傷(いたみ)だったから…

 

「「ボクは追いつけなかった」」

 

あのとき上演されたのは、神話が創られる超人たちの舞台だった。

地下アイドル・ラリスキャニアは、そこに立つことだけは出来た。

ただし、それが彼女の限界でもあった。

 

本筋には関われず、解決には役に立てなかった。

ラリスキャニアは、アイドル迷宮ではかなり実力がある方だと自負している。

シナモリアキラや『黒百合(チョコレートリリー)の宙組』とも、互角以上に戦えた自信はある。

 

だが、それでも……神々の舞台の上では、ほんの端役を演じることしか出来なかったのだ。

 

認めざるを得ない。

それを語る目の前の相手は、自分なのだ。

 

気づけば、そんな暗澹たる思いに沈むラリスキャニアに対応するかのように、いつの間にか世界も暗転していた。

 

外ばかりが明るく、建物の内側は、それに反比例するように暗い。

 

木々に咲く花は、光に透かした手のひらのよう。

どこか異様に輝く太陽の光を受け、内側に流れる赤い液体を透かしてグロテスクに脈動している。

 

地下アイドルは、そんな光景を観て奇妙な感覚を覚えていた。

 

地下アイドルは、そんな光景を観て奇妙な感覚を覚えていた。

それはまるで、輝く外部が上昇していくのとは逆に、暗い内側は無限に下降していくような…

それが向かう先はどこだろうか。

『地獄』かあるいは地の奥底の牢獄か『火葬場』か。

 

そして敗北者は、また、ぽつりぽつりと語り始めた。

 

「学園は破壊され……神々の舞台が始まったんだ…」

「ボクは、それを見ていた。見ているだけだったね」

 

「そうだ。ボクらは…ボクは、神々の舞台に参加することができなかった」

「そう、そうだったね」

 

「破滅があった」

 

「何度も、何度も」

 

「幾度もいくたびも」

 

「だが、その一度も…」

「ボクは…」

 

「そう、ラリスキャニアは…」

「勝てなかった…」

 

うなだれる地下アイドル。

 

沈黙の中、なにげなく床を見る。

すると、校舎のなかに、なぜか川が流れていた。

川の色は、青い。

 

とうとうと流れる雄大な大河は、左手の奥から忽然と現れ、右手の先へと消えていく……

 

そして、その左手側、校舎の外はと言えば、こちらも異様な光景が広がっていた。

いつのまにか、無数の人影が歩いていたのだ。

 

だが、その顔は見えず、どんな服装なのか、いかなる種族なのかすらはっきりしない。

 

しかも、それらは皆、燃えていた。

彼らは、日光を苦手とする『夜の民』だろうか?

だが、たとえ吸血鬼だとしても、あれほどまで派手に燃えるものだろうか?

 

紛争なのか?

テロリスト?それとも、ついにここで本格的に戦争が『再開』されたのか!?

 

だが、そこで迷宮で生まれた転生者は違和感に気づく。

『敵』が誰もいない。

空に箒や絨毯も無ければ、武装した兵士や使い魔の気配も無い。

超遠距離からの爆撃なのか?

いや、だとしたら、とてつもない音なり呪力の余波なりがあるはずだ。

 

そんなものは、全く感じられなかった。

 

そして何より、どうして誰も彼らを助けに向かわないのか?

 

こんなにも明るく日光が降り注いでいるというのに。

昼にはあまり外出しない『夜の民』以外なら、誰もがこの異常に気づく、そのはずなのに。

 

だがそれでも、それなのに。

誰も気づきはしないのだ。

 

陰ひとつ無い日差しの中、燃えながら『死』が歩いていた。

それは、霊長類が闇の中に描くような恐怖とは、真逆の光景。

全てが白く、光に満ち。

花は咲き乱れ、その生命を謳歌している。

 

だがそれは、間違いなく……悪夢だった。

 

半吸血鬼の夜の民は、そんな血も凍るような異様さに身震いする。

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