幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第46話(37~38の途中まで)

「なんだアレは…外で一体何が起きているんだ!?」

「どうにもならないよ」

 

思わず発した疑問。

だが、それに解答は与えられなかった。

 

「どういうことだ?何か…何か知ってるんじゃないのか?」

 

この異様な事態にも、説明ができるはずだ。

貴方が『本物』の『ラリスキャニア』だと言うのなら。

 

「そう、ボクらは知っていたはずだ」

「何を!?」

 

期待と困惑を込めた地下アイドルの視線が飛ぶ。

しかしそれを、『本体』を自称する少女はさらりとかわす。

 

「こういうとき『ラリスキャニア』は、何もできない」

「そ、それは……いや、今はそういう話じゃないだろ!」

 

「そういう話なんだよ。ボクらは…ボクは、無力だ。戦闘能力でも、もちろんアイドルとしても」

「そ、それは…それは…でも…」

 

「たとえ何か外の真実が分かったとしよう。それが何になる?無力な『ラリスキャニア』に何ができる?」

「それは…」

 

何も出来ない。

 

そこで、『本体』は、こちらの目をのぞき込んで来た。

 

「そうなんだよ、それは認めるしか無い。だって、それが事実なんだから」

「……」

 

そんな、独白よのうな問答を経て、一度は冴えたはずのラリスキャニアの頭も、また朦朧としだしてきた。

 

このままでは、また鬱々とした空気に戻る。

ちょうど、そんなタイミングだった。

 

パチン

 

快音が響く。

音によって、空気が切り裂かれる。

 

そして、

 

「これは、また…」

 

静寂を断ち切る快音は、そのまま周囲の情景をも破壊した。

また一瞬のうちに、景色が一変したのだ。

 

呪術による場面の転換。

 

自分も同じようなことをやって来た。

そのはずだ。

 

だが、他人が同じことをやるのを見ていると、そちらの方が上手く見えてしまう。

どうして自分はこれに及ばないのかと、劣等感ばかりが先に立ってしまうのだ。

 

そんな"興行主"の思いを知ってか知らずか――いや、間違いなく知っているのだろう。

『本体』ラリスキャニアは、憂鬱な空気を吹き飛ばすかのように、陽気に語りかけて来た。

 

「さあ、もっと良い話をしようよ」

「良い話?」

 

「そうさ、希望のある、これからの話だ!」

「そんな話…」

「あるさ!キミの舞台だ!」

 

「ボクの舞台…そんなもの」

「あるだろう?ついさっきまで、あんなに乗り気だったじゃないか?」

 

「……ああ、アレか」

 

その言葉でようやく思い当たった。

 

「さあ、キミの力を見せてくれよ!語ってくれ!なぜ『ラリスキャニア』が閉じこもらなければならないか、その理由と時代の変革を告げる物語を!」

 

見渡せば、既に準備は整っていた。

先程までの玄関より遥かに狭い空間。

 

分厚いカーテンに遮られた窓。

積み上げられた机とよく分からないがらくたの山。

教卓。

壁に飾られた蝶の標本。

そして黒板(ホワイトボード)

 

ここは、なにかの準備室だろうか。

少なくとも、設備には困らないようだ。

 

それを確認した地下アイドルは、ふらふらと立ち上がり、黒板の前へと足を進めた。

サイドテーブルに据えられた置物だけを横目で確認し、黒板の機能をチェックする。

どうやら問題はなさそうだ。

 

そして、指示を受けた"興行主"、『夜の民』の半吸血鬼は……

 

最後に、窓のカーテンをまた一瞬だけ確認して。

まるですがるように、なにかに吊り下げられるように。

教卓の前で『講演』を始めるのだった。

 

ただ一人の舞台。

たった一人だけのための物語。

そして、ホンモノの『自分』を主張する観客(たにん)のためだけの演技を。

 

陽気さとパワフルさを装って、演じ始めたのだ。

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