幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「なんだアレは…外で一体何が起きているんだ!?」
「どうにもならないよ」
思わず発した疑問。
だが、それに解答は与えられなかった。
「どういうことだ?何か…何か知ってるんじゃないのか?」
この異様な事態にも、説明ができるはずだ。
貴方が『本物』の『ラリスキャニア』だと言うのなら。
「そう、ボクらは知っていたはずだ」
「何を!?」
期待と困惑を込めた地下アイドルの視線が飛ぶ。
しかしそれを、『本体』を自称する少女はさらりとかわす。
「こういうとき『ラリスキャニア』は、何もできない」
「そ、それは……いや、今はそういう話じゃないだろ!」
「そういう話なんだよ。ボクらは…ボクは、無力だ。戦闘能力でも、もちろんアイドルとしても」
「そ、それは…それは…でも…」
「たとえ何か外の真実が分かったとしよう。それが何になる?無力な『ラリスキャニア』に何ができる?」
「それは…」
何も出来ない。
そこで、『本体』は、こちらの目をのぞき込んで来た。
「そうなんだよ、それは認めるしか無い。だって、それが事実なんだから」
「……」
そんな、独白よのうな問答を経て、一度は冴えたはずのラリスキャニアの頭も、また朦朧としだしてきた。
このままでは、また鬱々とした空気に戻る。
ちょうど、そんなタイミングだった。
パチン
快音が響く。
音によって、空気が切り裂かれる。
そして、
「これは、また…」
静寂を断ち切る快音は、そのまま周囲の情景をも破壊した。
また一瞬のうちに、景色が一変したのだ。
呪術による場面の転換。
自分も同じようなことをやって来た。
そのはずだ。
だが、他人が同じことをやるのを見ていると、そちらの方が上手く見えてしまう。
どうして自分はこれに及ばないのかと、劣等感ばかりが先に立ってしまうのだ。
そんな"興行主"の思いを知ってか知らずか――いや、間違いなく知っているのだろう。
『本体』ラリスキャニアは、憂鬱な空気を吹き飛ばすかのように、陽気に語りかけて来た。
「さあ、もっと良い話をしようよ」
「良い話?」
「そうさ、希望のある、これからの話だ!」
「そんな話…」
「あるさ!キミの舞台だ!」
「ボクの舞台…そんなもの」
「あるだろう?ついさっきまで、あんなに乗り気だったじゃないか?」
「……ああ、アレか」
その言葉でようやく思い当たった。
「さあ、キミの力を見せてくれよ!語ってくれ!なぜ『ラリスキャニア』が閉じこもらなければならないか、その理由と時代の変革を告げる物語を!」
見渡せば、既に準備は整っていた。
先程までの玄関より遥かに狭い空間。
分厚いカーテンに遮られた窓。
積み上げられた机とよく分からないがらくたの山。
教卓。
壁に飾られた蝶の標本。
そして黒板(ホワイトボード)
ここは、なにかの準備室だろうか。
少なくとも、設備には困らないようだ。
それを確認した地下アイドルは、ふらふらと立ち上がり、黒板の前へと足を進めた。
サイドテーブルに据えられた置物だけを横目で確認し、黒板の機能をチェックする。
どうやら問題はなさそうだ。
そして、指示を受けた"興行主"、『夜の民』の半吸血鬼は……
最後に、窓のカーテンをまた一瞬だけ確認して。
まるですがるように、なにかに吊り下げられるように。
教卓の前で『講演』を始めるのだった。
ただ一人の舞台。
たった一人だけのための物語。
そして、ホンモノの『自分』を主張する観客(たにん)のためだけの演技を。
陽気さとパワフルさを装って、演じ始めたのだ。