幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「今度は何?貴方はボクに何を言いたいの?」
ラリスキャニアは、新しく登場した触手に問いかけつつ、相手の”再現度”を検分し始めた。
彼女が公社のトップである猫耳少年を再演出来るのは、折りに触れその情報を集め続けていたからだ。
アイドルについて研究するならば、アイドルの周囲にいる人物はもちろん、その社会、その時代における人気者の情報を集める必要がある。
何より、そうした人気者もそのうちアイドルになるかもしれない。
リーナ・ゾラ・クロウサーの存在を知っていれば、その懸念は決して無視できるものではない。
そうしてラリスキャニアが情報を集めた中でも彼、つまりレオはかなり再演しにくい人物の一人であった。
なにしろ、記憶喪失のうえに前歴が一切不明である。
この第五階層では、前歴を隠していたり調べきれない者も少なくはないとはいえ、それでも、さすがに彼ほど過去についての情報が無い者はそう多くはない。
そうした事情を踏まえれば、この天使(レオ)触手は、かなり上手く再演出来ていると言えそうだ。
ラリスキャニアは、天使触手を観察してそう判断した。
一見したところでは、この触手にはラリスキャニアらしいところは全く見られない。
どう見ても、念写画像で見た”レオ”そのものである。
穏やかな物腰、優しい表情、そして純粋な心をうかがわせるその眼差し。
外見の再現は、どうやら及第点のようだ。
では、内面の再演についてはどうだろうか?
ラリスキャニアは、現在の自分の腕前を確かめるために、天使触手の話に耳を傾けることにした。
優れた俳優(アイドル)を目指さんとするならば、まず自分自身が自分を見定めるプロデューサーになろうとしなければならない。
それこそが、数多くのアイドルの技術を模倣してきたラリスキャニアの信条であった。
自分を厳しく磨き、優しく愛し、人気者の持つ魅力や技術の本質を掴んで身につけるには、まず自分で自分をしっかりと見極めねばならないのだ。
確かに、どんな力を身に着けても、どんな勢力に所属しても、貴方は貴方のままです、ラリスキャニアさん。でも、今の貴方は、ちょっと急ぎすぎているのではないでしょうか?」
「急ぎすぎている?」
そう問い返すラリスキャニアは、”二つ”の自分を同時に検分していた。
天使(レオ)を演じる自分とそれを観る相手役の自分。
果たして、自分は上手く演じることが出来ているのだろうか?
そして、これは一体どういう舞台なのだろうか?
他の種族であれば、自分が分裂したり別人の振る舞いを見せればまず自身の発狂を疑うだろう。
だが、ラリスキャニアは夜の民(ペリュトン)である。
夜の民にとっては、自分が”二人”以上に分裂したり、突然別人の振る舞いをしたりするのは全く異常なことではない。
むしろそれは、種族的な本能であり生態であると言っても良いだろう。
ラリスキャニアにとっては、ある意味いつも”自分”は”一人”ではないのだ。