幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第52話(42~43の途中まで)

「話は大体分かった。

だが、その話には重大な瑕疵(キズ)がある」

「瑕疵(キズ)?それはなんだい?」

 

『本体』は、そこで椅子から立ち上がり、“興行主”に向けて手を差し伸べた。

そして彼女は、提案する。

 

「今度は、こちらから問わせてもらおうか。

いま貴女が述べた、『アイドル世界化計画』の仮説には、大きく分けて三つの瑕疵がある。

さぁて、貴方はその全てを、答えられるかい?」

 

これで、立場が逆転した。

追及者と回答者が入れ替わり、次の手番(ターン)が始まるのだ。

 

ラリスキャニアは、事態の急変を受けて小さくうなった。

だが、彼女は諦めない。

いや、自説にしがみついて離そうとしない。

なぜなら、彼女にはもはや、ソレしか残っていないのだから。

誰よりも彼女自身が、そう信じているのだから…。

 

ただし、これから始まるのは、一方的な厳しい追及ではない。

なにしろ、相手は『ラリスキャニア』本人なのだ。

ファンに愛されるアイドルになるためには、まず、自分で自分を愛せなければならない。

 

己に誇りを持つのは当たり前。

一流の地下アイドルたるもの、常に自らをいたわり、必要なケアを施し、頼るべきときには迷わず人にも頼らねばならないのだ。

 

いつかどこかで、確かにそう教わったのだから。

 

だから、ラリスキャニアは、まず頼ることにした。

かけがえのない自分自身を。

 

「あいにくだけど、見当がつかないな」

 

まず、正直に現状を話す。

なにしろ、相手は自分自身なのだ。

 

隠し事は…まあ、出来なくはないが、計画を立てたりなにか大きな決断をしなければならないときには、そんなことはしない方が良い。

 

「良かったら…ヒントをくれないか?」

 

そして、頼み事をするときは、率直に話す。

そうすれば誤解や曲解されることは…まぁあるのだが、それでもきちんと伝えようと努力しないよりはマシである。

 

ちょっとした痛みやひきつり、『嫌な予感』や不吉なジンクスなど、自分自身からのメッセージを無視して脱落していった地下アイドルは数知れない。

 

ただ、こうした要請は、その後の交渉をより困難にしてしまうことも多い。

相手の性格によっては、何かを依頼されること自体を負担に感じ、怒りを覚えることもあり得るからだ。

 

けれども今回の場合に限っては、それはないだろう。

相手に情報を与えることで、逆にこちらの優位性を示すのは、『ラリスキャニア』の基本戦術だ。

 

それになにより、これは自分の考えを相手に伝える、つまりは『表現』のチャンスである。

 

それこそが、地下アイドル・『ラリスキャニア』が常に求めて止まないもの。

だからこそ、それが出来る機会を見逃すはずがないのである。

 

「良いだろう」

 

結果として予想は当たり、『本体』は快く了承の意を示してくれた。

まずは、計画通り。

密かに胸をなでおろすラリスキャニア。

 

それを知ってか知らずか、鏡合わせの分身は、己の意図をなめらかに語り始めるのであった。

 

「まず第一は、この第五階層にとって、いや、アイドル迷宮にとって記憶に新しく、まだ忘れられない事柄だ。

いや、『事件』もしくは『人災』と言っても良い。

そしてそれはそしてまたボクらにとっても、重要なターニングポイントだった」

 

「…『リールエルバの乱』か」

「そうだ。ボクらが身の程を、そして圧倒的な力の差を思い知らされたあの『事件』だよ」

 

ここで『本体』は、さっと立ち上がり窓に近づいた。

そして、その勢いのまま、素早くそして薄くカーテンを開く。

 

そうして見える外からは、光が漏れてくる。

惨劇の存在を示す、赤い光が。

 

思わず、身震いするラリスキャニア。

それに対し、『本体』は、語った。

 

「あの『乱』は、明らかに第五階層を、将来、歌姫のライブ会場になるはずの場所を破壊していた。

仮に、あれがただの宣伝か何かであったとしよう。

けれど、それでもあの『乱』が、トリシューラ陣営とれっきとした『黒百合』の一員との間で発生した『戦争』であったことまでは否定できないだろう?ほら、見なよ」

 

そして『本体』は、ラリスキャニアの前の教卓を叩いた。

その指は、鍵盤奏者(ピアニスト)のように華麗に動き、彼女が求める画像を望みのままに映し出させる。

それは、戦乱の第五階層だった。

 

ラリスキャニアの背後に、殺戮と荒廃の情景が映し出される。

 

「こ、これは…」

「貴女には、これが仲良しな学閥が触れ合っている光景に見えるのかい?

リールエルバによる唐突な闘争と破壊、そしてその後のコルセスカとの舞台(レビュー)、そのどちらもが『本物』だった。

そのことは、ボクらが一番良く分かっているはずだ」

 

そう、誰よりも地下アイドルを研究してきた…真剣に見続けてきた『ラリスキャニア』なら、それが分からぬはずがない。

だから、『本体』は威圧的に問いかけた。

 

ほんのわずかな誤魔化しも許さぬという、そんな強い想いを込めて。

 

「『黒百合』は、アイドルを世界に広めようとなんかしていないのじゃないか?」

「いいや、その批判は間違ってるな」

 

だが、“興行主”は、そんな威圧などものともせず、軽やかに返答した。

 

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