幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「むしろ、それこそが『黒百合』がアイドル集団であるれっきとした証拠だよ!」
「な、なんだって!?」
「どんな集団であっても、内部に対立やトラブルが生じてしまうのは避けられない。
もちろん、アイドルグループであってもだ。
けれど、問題なのは、“争いが生じるか”などではないのさ!」
「では、なんだというんだい?」
「決まっているーー“生じた争いをどう解決するか”だ」
そう言うが早いか、ラリスキャニアは、教卓を叩く。
それによって、また映像に変化が現れた。
二本の線が横切り、画面を上下三段に分割したのだ。
そこで更に、地下アイドルは分割された画面を強くにらみつける。
するとどうだろう。
画面の上に触手のような線がいくつも現れたではないか。
「これは…第五階層のヒトビトか?」
「その通りだ。
上から、『リールエルバの乱』以前、『乱』の最中、そしてその終結の順だ」
そう、触手線が描き出したのは、様々なヒトビトの姿であった。
そして、“興行主”は、手から細い触手を伸ばすと、それを指示棒にして解説を始めたのだ。
「これを見れば、『リールエルバの乱』が、結果的にアイドル呪力(ミーム)の影響を大きく拡散したことが良く分かるはずだ。
そう、いわば、『乱』は、第五階層全体をアイドル化したんだよ!」
「確かに、結果だけ見ればそう言えないこともないが…」
口ごもる『本体』は、画面の上段と下段、つまり『乱』の前後の状況を見比べた。
そうしてじっくり観察したところ…確かに、見えてくるものがあった。
一見大差ないように見えても、そこには大きな違いがあったのだ。
もちろん、そのまなざしを見逃す地下アイドルではない。
彼女は、当然その点について語り出した。
「第五階層は、元々戦乱の世界だ。『聖地』だなんだという話を無視すれば、そこにはいつも争いがあった」
その言葉と同時に、画面が急に暗くなった。
明るさを保っているのは、その一番上の段だけであり、すなわち、その光景だけが強調されたのだ。
そこに映っていたのは、戦乱の状況だった。
上と下、怪物とサイボーグ格闘家、さまざまな勢力が入り乱れながら戦っている。
そして、上段の説明が終われば、次は下段である。
指示棒が上から下へと移るにつれ、画面の明るさも変化する。
次に強調されるのは下段の光景だった。
そこでも争いは続き、様々な勢力が存在している。
だが、その一部には大きな変化があった。
それまでとは全く印象が異なる集団が、戦乱に参入していたのだ。
それは……
「だが、『乱』の後には、大きな変化があった。アイドルの登場だ」
そう、そこにはアイドルがいたのだ。
彼女たちは、画面の中で歌い踊る。
線状の触手で描かれたその身体は、生き生きと躍動しており、まさに生きているようであった。
アイドルたちのもたらす美しき異質性、その生命力あふれる呪力(ミーム)は、争いの絶えない第五階層に確かな存在感を示していた。
血塗られた“古い闘争”の世界に、独自の領土を確保していく“新しい闘争”
それこそがーー
「アイドル迷宮、というわけか」
「そうだ。『百聞は一見にしかず』というヤツだよ。
『リールエルバの乱』、そしてそのために用意されたらしいアイドル迷宮は、第五階層に大きな影響を与えた。
これこそが、アイドルに世界を変える力があることについての、何よりの証拠と言えるだろう!」
「…まだ、真ん中の段の説明が終わってないぞ。ボクが指摘したのは、まさにその部分だ」
「その説明は、これからするのさ!」
“興行主”はそう軽やかに答えると、話題の部位ーー画面の中段で指示棒をくるくると回した。
すると、どうだろうか。
そこには、新たな変化が現れたのだ。
もちろん、中段の部位は、ひときわ強く光り輝き強調されている。
だが、それだけではない。
画面には、大きな動きが生じていた。
それを一言で言えば、『対流』であろう。
まるで、激しく燃える暖炉によってかき混ぜられた空気のように、二つの全く異なる呪力がぶつかり合っているのだ。
あるいはそれは、気象図における台風のようにも見えた。
ただし、この台風は孤独な暴君というわけではない。
それは、対の存在だ。
競い合い、互いに相手を追いかけながら高め合うそれは双子の渦、激しくぶつかり合うそのさまは、まるで画面全体を支配するかのようであった。
『本体』が、その名を呼ぶ。
「リールエルバとコルセスカか…」
畏怖するようなその声に対して、地下アイドルは、あくまで気楽に答える。
まるで、彼女には何の畏怖も気負いも無いかのように。
「そう、『乱』の本質は、ここにある。
リールエルバが事前に『戦争』と呼べるほどの暴力を振るった、それは確かだ。
『乱』の前半における彼女の振る舞いは、人々の憧れである現代のアイドルとは、かけ離れたモノだった。」
あるいは、いや確実に、古代においてはアレこそが霊媒(アイドル)としてふさわしい振る舞いではあったのであろうけれど。
その点については、あえて言い落としたまま、“興行主”の説明は続く。
「けれど、後半は違う。明確にアイドルとして登場(デビュー)した『四英雄』のコルセスカはーー」
だが、その熱意が込められた説明は、
「その登場と演技(振る舞い)によって、それまでの暴力の世界を塗り替え、現代アイドルのルール、いや呪力(ミーム)による戦いへと闘争の形式を大きく変化させた。
いわば、アレは地下アイドル迷宮で“醸成”された『空気』を世界へと広めたイベントだと定義出来る、と貴女はそう言いたいんだろう?」
と、『本体』によって引き継がれたのだ。