幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「それは、どういう意味だい?その証拠だったら、もうあるじゃないか」
今度こそ、本当に意味が分からない、というように、地下アイドルは首をかしげる。
なにしろ、たった今、有名アイドルたちの過去の姿という、この上ない証が示されたばかりなのだ。
わざわざ自分で自分の反論機会を台無しにしてしまうなんて、どう考えても無意味かつ無価値な行為でしかない。
まるで意味が分からない。
「まず、本当に凡庸なだけの一般人が、簡単にアイドルになれるほど、アイドル業界は甘くない」
「それは…確かにそうだ」
容赦の無い断言。
それは、否応のない納得を、そして静謐をもたらした。
空間が静けさで満たされる。
だが、それによって“興行主”が沈黙していたのは、ほんのわずかな時間に過ぎなかった。
地下アイドルは、即座に反論する。
「けれど、まだ本領を発揮出来ていない場合もある。
そうじゃないか?」
「そうだ。彼女にも、取り柄はある。
メイファーラは、昇進する前でさえ、二十九位という、それなりに高い地位にいた。
その後のさまざまな騒動での記録を見ても、彼女が『天眼の民』として高い能力を秘めていることは間違いない」
「なら…」
「ところが、話はここで終わらない。どれだけ高い能力があったとしても、その使い手が彼女では、おそらく活躍は難しいだろうね」
「どういうことだい?」
「情報がいくらあっても、それを使いこなさなければ意味がない、ということだよ。」
そして、『本体』の少女は、一拍だけ間を置くと、また一息に言い放った。
「ーー断言しよう。メイファーラの取り柄は、『防御』
つまりは、“どの勢力からも無害であること”なんだよ」
「ずいぶんと自身ありげだね。
絶対の自信でもあるのかい?」
「そうだね、これが間違っているというのなら――」
そして、彼女は断言した。
「それは、あの"シナモリアキラ研究史上最大の愚説"『転生直後に薄着だったのは、機械女王と全裸で密会していたから』が、正しいと認めるのと同じことだよ!」
つまり、
「このメイファーラの分析は、絶対に正しいのさ!」
「な、なんだって!!!」
『本体』の放つ強烈な自信によって、思わず大げさなリアクションをとってしまうラリスキャニアであった。
「根拠はあるんだよね?」
「当然さ」
そしてまたスクリーンを指差すと、アイドル画像の川は、次々と新たなものへと切り替わっていった。
今度映しだされるのも、様々なポーズ、色々な場面でたたずむ人物。
ただし、今度はただ一人。
話題の少女だけだった。
それを見たラリスキャニアは、眉をひそめた。
ひそめずには、いられなかったのだ。
なぜなら、その切り替わりには、明らかな変化が伴っていたからだ。
少女であることも、それなりに美しい衣装に身を包んでいるのも、また同じ。
むしろ、姿勢や動きの良さ、顔立ちに関して言えば、新しい少女の方が明白に勝っていることすら多かった。
では、その違いは,『アイドルではない』ということだろうか?
いや違う。
一目見れば、そうではないことはすぐに分かった。
なぜなら、その新しい画像の川に映し出されていた姿は……
「あの天眼の民の少女は、確かに大衆の共感を誘うような凡人かもしれない。
あるいは、秘められた才能や貴種の血統、力ある神々の祝福を受けているなどと、これから『発見』されることがあるのかもしれないね。
凡人の『成長』と『覚醒』、報われないと思われていた努力が、見放され追放されかけたときになって、ようやく実りをもたらし、華々しい『出世』を実現させる。
なるほど、それは美しい『物語』だ。
けれど…」
そして、『本体』の少女は言い放った。
「貴女には、これがそんなアイドルにふさわしいように見えるのかい?」
具体的にそれがどんな姿だったかというと…
晴れた昼下がりに、あくびをしている
レストランでは、仲間に釣られて同じモノを注文してばかり
曖昧に笑う
笑う
また皆と同じ注文
あくび
小隊における成長報告会
特になし
その後のガールズトーク
どうとでも取れるような受け答え
食事の取り寄せ
皆と同じ注文
お菓子を食べる
あくび
寝る
朝、新しい一日が始まる
あくび
どうとでも取れるような受け答え
特になし
曖昧に笑う
同じ注文
お菓子を食べる
寝る
また一日が始まる
あくび
同じ注文
お菓子
特になし
曖昧に笑う
あくび
お菓子
曖昧に笑う
あくび
お菓子
そして、また新しい一日が……
そこに映し出されていたのは、なんというか…そう、ちょっとぼんやりな感じの普通の女の子だった。
確かにこれでは、努力や『輝き』(キラメキ)とはあまり縁があるようには見えないかもしれない。
「捏造だ!いくら念画が製作者のイメージ依存だとしても、これは明らかにやり過ぎでは?
『地上』上位の実力者がこんな自堕落で優柔不断な生活を送っているとは、誰も思わないよ!」
憤るラリスキャニア。
だが、『本体』の少女は、それもさらりとかわす。
「それはどうかな?確かに、これはさまざまな資料やそこから伺える推測を継ぎ合わせただけのイメージ動画だ。
だが、逆にこのイメージを積極的に否定するだけの根拠も無いんだよねぇ。
地上の英雄『メイファーラ』が、実は単に『自堕落で優柔不断』であることを否定するような材料は、一切無い」
そういうと、彼女は、流れる映像の一つを指差した。
そこには、大きなテロップで〈第四階層に向けての意気込み!『黒百合』の獲得した成果と現在の成長とは?〉と書かれている。