幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第61話(50~51の途中まで)

そして最後に、ラクルラールは、まるでつぶやくように静かに語ったのだ。

 

「そうだ。瓦楽天(がらくてん)コズエには、『輝き』

なんて、微塵も無かった。

アレには、最初から勝ち目なんて微塵(みじん)も無かった。

ならば、初めから戦いなど挑まず、敗北と恭順(きょうじゅん)を選んでおくべきだったのだ。

そうしておけば、なんの痛みも残すことは無かった。

そう、アレは最初から敗北していたんだ……」

 

それが、とどめの一撃となった。

 

その時、ラリスキャニアは、完全に打ちひしがれていた。

 

崩れ落ち、心が折れる寸前だった。

けれど、それだけは、その言葉だけは、聞き逃せなかったのだ。

 

プツリ、と。

そのとき確かに、地下アイドルには、何かが切れる音が、聞こえた気がしたのだ。

 

それがなんであったのか、そんなことはどうでも良かった。

 

ただ、彼女は……もう、我慢が出来なかった。

その言葉だけは、どうしても聞き逃せなかったのだ。

 

「でも、彼女は勝った!

貴女にだって勝ったんだ!」

 

そして気づけば……ラリスキャニアは、反射的に言い返していた。

言い返してしまったのだ。

 

あの鉄血の女教師、その人を相手にしているというのに。

 

ああ、そうだ。

 

確かにラクルラールは美しい。

そして、ボクより賢く正しいのかもしれない。

 

だが、それでも……

 

ラリスキャニアは、アイドルにして地下アイドルの研究家である。

ライバルの弱みを突くため、あらゆる相手を上回るために、日夜アイドル探求を欠かさない。

 

いわば、ラリスキャニアは勝負で勝つことに特化したアイドルなのだ。

そんな彼女は、あるいは、アイドルとして邪道の存在なのかもしれない。

 

けれど、ラリスキャニアは、決して他のアイドルのことが嫌いなわけではない。

他のアイドルの存在を否定したことなど、一度も無いのだ。

 

それでも、見過ごすことが出来ない事柄というものも、また確かにあるのだ。

 

その思いが今、激流となって迸(ほとばし)ったのだ。

 

「ボクは、見た!

瓦楽天(がらくてん)コズエは 勝った!

先生、貴女を打ち負かしたんだ!」

 

そう、そうだ。

ラリスキャニアは、確かに目撃している。

 

上手く説明出来ないし、はっきり思い出すことすら出来ないし、それが、いつどこのことだったのか、それさえあいまいな記憶ではあるのだが……

けれど、地下アイドルは、そのことだけは断言出来たのだ。

 

その思いを口にしたこと自体は、間欠泉のような暴走であったが、それはさわやかな心地をもたらし、それまでの閉塞感を一掃してくれていた。

その時、ラリスキャニアは、それまでにない感覚を得ていた。

 

それはまるで、言葉の斧によって身体を縛る鎖か何かを断ち切ったかのような、そんな清々しい気分だった。

 

けれど、その『斧』に返ってきたのはーー鉄をも凍てつかせんばかりの、絶対零度のまなざしであった。

高名な教師ラクルラールは、厳しい視線でこちらを睨(にら)みつけてくる。

 

「そんなもの、一時的な幻に過ぎん。

学生時代の、それも野試合での成果など、社会に出てからは何の役にも立たない。

貴様ら幼子は、我々ちゃんとした大人に導かれなけばならないのだ。

『無限の可能性がある未来』などという幻想ではなく、私のように、将来を生き抜いてきた実績を持つ大人の指導が必要なのだよ!

そうでなければ、皆、『がらくた』だ!

社会の荒波に傷つき砕け、路傍の石のように透明な存在になって、見捨てられるだけのゴミクズとして終わるだけだ!」

 

居丈高な断言。

その教師としての権威、絶大な実績に支えられた発言には、凄まじい圧力があった。

 

だが、それに負けじと、元生徒は、畳み掛ける。

 

「それが、貴女の限界ですか?」

 

「何?」

 

「彼女も、貴女の生徒だ。

教師として真に優秀ならば、教えた生徒を自分以上に成長させることが出来るはず。

けれど、実際には、そうじゃなかった。」

 

そこで一拍だけ沈黙。

『溜め』を作ってから、反撃に出る。

 

「瓦楽天コズエが使ったのは、貴女の教えじゃない。

彼女に勝利をもたらしたのは、学園に禁じられたアプリだった!」

 

「……」

 

「『ラクルラール先生』、やはり貴女は、負けたのです!

いつまでも指導を必要とする操り人形しか育てられなかった貴女は、自身の限界を露呈しています!

ご自慢の技法は代替品にとって代わられ、貴女の下では伸びなかった生徒も、それによって飛躍的な成長を遂げたのです!

ならば、その生徒の素養を伸ばすことが出来なかった貴女の敗北は、火を見るより明らか!

ラクルラール先生、そんな貴女のアイドル論なんて、全く信用に値しません!」

 

無謀にも思える挑発。

だが、そんな中でも、つい敬語を使ってしまう。

元生徒であるという力関係、拭いきれぬ過去の残滓(ざんし)が劣等感となり、それが彼女に萎縮(いしゅく)をもたらしていたのだ。

 

それでもラリスキャニアは、なけなしの勇気を振り絞り、圧倒的な上位者であるラクルラールに、立ち向かっていた。

 

だが、

 

「……そんなに怖いか?」

「な、何?」

 

今度は、地下アイドルが戸惑わされることになる。

 

「お前の言葉の裏には、恐怖がある。

そう言っているのだよ」

「そ、そんなことは…」

 

唐突な発言。

言外の心情を指摘するその言葉は、地下アイドルをさらに萎縮させる。

 

「いいや、そうだ。

お前が、瓦楽天コズエだけでなく、会ったことも無いトカゲ娘にまで共感している理由、そして、そこまで陰謀論にこだわる由縁(ゆえん)が、ソレだ」

 

その話題こそが、『講義』の再開を告げる合図であった。

女教師の反撃が、始まる。

 

 

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