幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第63話(51の途中まで)

ラリスキャニアは、怖かった。

それは、負けてしまうことや心境を暴かれることだけではない。

何より、己が破壊されてしまうことが怖かったのだ。

 

強い自分、格好良くて蠱惑(こわく)的な自分、情報と社会戦に長け、あらゆるライバルに優位に立ち振る舞える自分。

 

今、攻撃を受けていたのは、そういったラリスキャニアの自己イメージだった。

 

彼女は、何も持たず、過去の記憶すら無く、地下アイドルとして、いつの間にか存在していた。

 

この地下アイドル迷宮こそが、彼女の故郷。

観客へのアピールこそが、彼女の人生。

それ以外は何も知らないし、そこ以外には何の興味も無い。

 

ただ、スポットライトを追い求める、それがラリスキャニアの生きる道だったのだ。

 

そしてそれは、同時に光の外、見通すことが出来ない闇への恐れでもあった。

 

暗黒(スキリシア)は、本来『夜の民』の故郷であるはずだ。

 

だが、地下アイドルとしての役割(ポジション)しかないラリスキャニアにとって、そこは見知らぬ異界でしかない。

 

なにしろ、そちらでは彼女の扱いは、王族誘拐および殺害(未遂)を行ったテロリスト、指名手配犯である。

 

それは私じゃない。

そんなヒト、知らない!

 

と、いくら叫んでも聞いてもらえるわけが無い。

 

なにしろ、そこは『似たものは同じ』でくくられる呪術世界でも、特にその傾向が高い『カーティスリーグ』(カーティスの国)である。

そんな、何の呪術基盤(せっとくりょく)も無い『呪文』(もうげん)が通用するところではないのだ。

 

それが分かっていたからこそ、ラリスキャニアは、ステージへ逃げ込み続けた。

 

そここそが唯一の居場所、そこでの序列争いこそが、唯一の生きる意味と、まるで自分を説き伏せるように強固に信じ込もうとしていたのだ。

 

これまた何の弁解にもならないが、彼女の普段の悪行も、あるいはそのせいだったのかもしれない。

 

彼女が、仮にも第五階層の支配者である機械女王を相手に敵意を燃やし、策略の粋を尽くしたのは、表の権力者相手に『アイドル迷宮は手強い』という印象を与えるためだった……そういう理由も、存在していたのかもしれないということだ。

 

『地下アイドル迷宮』は、なんだかんだで無許可の娯楽施設である。

内部ではそれなりに体力の呪力(ミーム)や貨幣(マネー)も動くし、権力者としては見過ごせない場所だ。

 

冷徹な利益の計算で、または単なる気まぐれや八つ当たりで、あっさりと潰されてしまってもおかしくない。

 

そこで支配者相手にケンカを売ることは、一見、単なる自殺行為に見える。

だが、少なくともあのコンビ相手の場合、それは全くの真逆である。

 

『機械女王』トリシューラは、負けず嫌いとして知られる権力者であり、その配下である『機械女王の狂犬』『なぜか公職についてるチンピラ』『ハラキリミサイル男装和美少女アイドル』『最近やたらと増えたボウフラ紀人』ことシナモリアキラにしても、ライバルへの執着で知られる紀人である。

 

あの二人に限っては、何の興味も持たれていないよりは、むしろケンカを売っておいたほうが、かえって生存率が高まると言えよう。

そのことは、明らかな他流派であるにも関わらず、サイバーカラテの道場に気軽に出入りしているカ、カ、カー……なんとかいうシナモリアキラの護衛の男や少し前の侵略者(グレンデルヒ)の存在が実証している。

 

また、機械女王は、自分のペットにひどく執着している。

たとえ敗れるにせよ、彼女ならペットの勝利の記憶を、そしてその対戦相手を無下にはしないだろう。

 

例えば、シナモリアキラが勝利をつかむ時、あるいは敗退し、アイドル迷宮を去る時、彼女たちを見守りあるいは祝福した者がいたとしよう。

支配者(じょおう)たちは、彼または彼女のことを、決して忘れはしまい。

 

それがカーイ…なんとかいうシナモリアキラの護衛の男とのようなライバル関係としてであれ、あるいは空組のような友好関係であれ、その『縁』は、その対象に確かな地位(ポジション)と居場所を用意してくれるはずだ。

 

それが、地下アイドル・ラリスキャニアの画策した策略であり、言わば彼女の人生設計であったのだ。

 

だが、その目論見(もくろみ)は、その直後に起きた大事件の連発によって、はかなくも崩れ去った。

 

『リールエルバの乱』そして、他でもない『ラクルラールの襲撃』である。

 

後のことはやっぱり、もう思い出したくもない。

 

圧倒的な力、新たな、そしてより強大な『物語』(ストーリー)

それらが高波のように次々となだれこみ、何もかもを呑み込んでいったのだ。

 

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