幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第66話(54~55の途中まで)

 

 

 

 

 

気がつくと、身体に妙なこわばりがあった。

ラリスキャニアがふと手を見ると、いつの間にか手に青い糸が巻きついている。

 

それだけではない。

ほほが、肩が、脚が、まるで電流を流されたように、唐突に身体の各部がひきつり始めたのだ。

 

なんらかの呪術?

アルト王に代表される【束縛の邪視】か?

 

いや違う。

それならば、一度に全身が硬直するはずだ。

 

毒物?

 

ならば、硬直が始まっているのに、寒気を感じないのは不自然だ。

神経の痺れ、熱、身体の変色など他の症状も見られない。

 

あるいは、舞踏病やトゥレット症候群などの、原因や詳細が不明な、未知の病である可能性も考えられるが…?

まさか、感染したのか?

ラクルラールは『吸血鬼』なのか!?

 

 

 

 

いや、それも違う。

 

目まぐるしく回転する思考の渦の中、それでも元“興行主”は、状況を冷静に分析していた。

そうした考察、未知の演者の観察は彼女の習性であり、もはや本能とさえ言えるものだったのだ。

 

もっとも、今、彼女は他に何も出来ないし、することも無いから、とりあえずそうしているだけではある。

 

ただ、その速度は迅速であった。

『シナモリアキラ』の呪術アプリに匹敵する速度で駆動するソレは、一つの特技(スキル)として極まったレベルにあったのだ。

 

とはいえ、この地の底、悪夢の中でそれを認めて評価する者など、彼女自身を含め、誰一人としていなかったのではあるが…。

 

そう、その価値は本人さえも気づいてはいなかったのだ。

今は、まだ……

 

 

 

『吸血鬼』ハーフであるラリスキャニアには、断言出来る。

この未知の『技』は、絶対に『吸血鬼』などではない。

 

その効果こそは、酷似してはいる。

だが実際には、能力だけをぎこちなく真似た、まがいものに過ぎないのだ。

 

この『技』からは、『女神触手』のように自己を拡張せんとする意志など、微塵も感じられない。

ここにあるのは、ただ全てを利用し、支配下におかんとする孤独な傲慢さだけだ。

 

すなわちこれはーー

 

「『人形師』のスキル、か…」

「ようやく気づいたか」

 

こちらをあざけるような反応。

だが、地下アイドルは、そんな女教師の揶揄(やゆ)を静かに切り返す。

 

「ああ、見慣れたアマランサス…いや『ラプンシエル』のものとはあまりに違いすぎて、すぐには分からなかった」

あくまで冷静に。

 

「だろうな。なぜなら私はアレの師だ。だからーー」

「あまりに不様で、似ても似つかなかったからな」

そして一転して、煽(あお)る。

 

「…なんだと!」

 

そのため、当然の反応として、反撃を受ける。

因縁と教育の青い糸は、もはや確固とした実体となって、ラリスキャニアを締め上げた。

 

それは、確かに強引な手法ではあった。

 

呪術的に誇張した『因縁』を糸に見立てる典型的な『邪視』の世界観、古傷や幻肢痛のように記憶に反応する人体の性質を利用した、『青』の色号の技法(メソッド)

そして、使い古され、逆に言えばなじみ深いものとなったそれらの心象(イメージ)を用いた操作術(コントロール)

 

「こんな化石のような術がボクによく効くのは、使い手が他でもないお前だからだ。

そうでなければ、こうも易々(やすやす)とは…」

 

「『お前』、だと?」

「ぐ、ぐっ……せ、『先生』!」

 

そういうことであった。

 

満足げに笑みを浮かべる女教師、その術のタネは、なんのことはない。

『習慣』である。

対・洗脳教育は確かに効果がある…だからこそ、その教育自体、そして、それを施(ほどこ)す教師への従順さの強制にも、また確かな強度があるのだ。

 

なにしろ、そうした『生徒』の振る舞い、『従順に学ぶ習慣』が無ければ、肝心の対・洗脳教育の効果さえ、身につけることが出来ない。

『強制的な洗脳』を防ぐためには、『自主的に受ける洗脳』がどうしても必要となる。

 

矛盾しているようだが、それは確かな真実、または教育というシステムの『仕様』と呼ぶべきものであった。

 

この不可避の前提を回避出来るのは、自身も教師である者や特殊な学習経験を持つ者、あるいはヒトの話に耳を貸さずにいきなり鹿鍋にしようとする『小鬼殺し』(ヤンデレ)、そしてあまりに洗脳に弱すぎるあまり、かえって誰にも独占することが出来ない『狂犬』『魔女ラフディのボール転生者』、転生紀人・シナモリアキラぐらいのものであろう。

 

女教師(ラクルラール)がこの裏技を活用したのは、彼女が、学園都市での敗北によって、一時的に弱体化しているがゆえのことであった。

しかし、その効果は絶大である。

 

なにしろ、今回の対象であるラリスキャニアは、第五階層の転生(うまれ)のため、その生涯で、ただ一人の教師にしか師事していない。

ゆえに、その呪縛の影響力は絶大であり、拘束は、時間と共に厳しさを増していったのであった。

 

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