幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第67話(55の途中まで)

「瓦楽天(がらくてん)コズエとは、機械女王とは大違いだな…」

 

苦しまぎれに、なおも煽らんとするも、

 

「それで良いのだ。私はもうアレとは違う。必要なのは、確実な成功のみだ」

 

ついに、完全に無効化(スルー)された。

 

そして、人形師の宣言と共に、それまで黙り込んでいた『本体』が動く。

大きく円を描くように移動すると共に、その輪郭がぶれ、ぶれたかと思えば、それはあっという間にその姿を増やしていた。

 

分身である。

 

そしてそれらの分身は、輪となり、縛りあげられた地下アイドルの周囲を取り囲んだ。

と、見る間に、触手と影は上方へ向かって高く伸び、完全にラリスキャニアを包み込んでしまったのだ。

 

それはまるで、豪華な贈り物(プレゼント)のように。

あるいは、鳥籠のように。

 

 

 

 

 

 

 

力が抜けていく。

これまでは、なんとなくだが常に背中を押す、触手女神のまなざしを感じていた。

 

けれど、いつの間にかそれも無くなっていた。

どうやら、完全に失望されてしまったようだ。

 

舞台母(ステージママ)が期待するのは、思い通りになる愛児のみ。

期待通りの成果を出せない迷い子は、壊れたがらくたのように捨てられるだけなのだろう。

 

今や、地下アイドルの精神には、陰謀論に甘えた自分への悔悟の念が駆け巡っていた。

 

それを打ち消すには、他アイドルへの好意や『敬意』を示すしかないが…それも、どうしても上手くいかない。

所詮、自分はこの程度だったのか?

 

このままでは、ただの人形にされてしまう。

それだけは、嫌だった。

自己の喪失だけは……

 

けれど、束縛から脱出する手段は、ただ一つしかない。

 

呪術戦で勝つ、それしかないだろう。

それも、ラクルラール、世界最高レベルの呪術教師を相手にして、である。

 

束縛系の術に対する一般解(セオリー)とは、その術自体を打ち消すこと、すなわち【静謐】である。

 

だが、これは難易度が高く、大変に困難な技術なのだ。

 

某『英雄』は、妖精の力によって難なく成功させていた。

 

だが、あれは間違いなく、(同じ『夜の民』であった)敵の技巧に対する深い知識に加え、熟達した『呪文使い』としての高い技量があったればこそ。

それゆえの大物食い(ジャイアント・キリング)である。

 

到底、『歌』が苦手なラリスキャニアなどに再演出来るような手腕ではない。

 

もし彼女に可能な【静謐】があるすれば…それは、相手の支配(パフォーマンス)を上回る肉体言語魔術(えんぎ)を用いた手法しかないであろう。

 

言うならば、肉体を通して己の世界観を押し付けることによる、場の空気、世界観の打ち消しである。

 

だが、それにしても、非常に困難である。

それは、あの女神ルウテトでさえ、入念な準備でそれに特化した術者(アイドル)を産み出さねばならなかったほどの、大技である。

 

だが、それでも…

 

「それでも、やるしかない!」

 

拘束され、落ちるところまで落ち切った地下アイドルには、もう後、いや『下』が無い。

そんな彼女に残された選択肢は、たった一つしかなかったのだ。

 

残された呪力量からしても、時と共に強度を増していく拘束にしても、そして先程の挑発の余波がまだ残っているという条件にしても…

 

今の地下アイドルにとって、機会(チャンス)は、ただ一度しかない。

それだけは、確かなことだった。

 

そこで、ラリスキャニアは、ありったけの気力と呪力を振り絞り、女教師へ向けて最後の一撃を放った!

 

それは、ただあがくために放たれた、工夫も何もない…けれど、全身全霊を懸(か)けた一撃であった。

 

それは一条の流星となり、闇の中を飛翔していったのだ。

 

力が入らないまでも、一撃に賭けた!

それは、ただ一瞬の機会を狙う最後の賭けだった。

だからこそ、その決着も、ほんの一瞬で決まるのは理の当然である。

 

しかしそれは同時に、その場にいた者たちにとっては、無限に思えるほどの間でもあった。

 

もたらされたのは、極めて意外な結果。

 

ラクルラールは、倒れていた。

拘束された地下アイドルが放った、破れかぶれの一撃によって。

 

「そ、そんな馬鹿な…」

 

だが、驚愕のうめきをあげたのは、ラリスキャニアの方だった。

 

あり得ない結果。

それに誰よりも強い衝撃を受けたのは、他ならぬ攻撃をした当人であったのだ。

 

あまりにも楽に行きすぎる。

こんなはずがない。

 

驚愕は疑惑と不審へと転じ、それはやがて不安と恐怖へと移りゆかんとする。

『現実』が信じられない。

 

「どうして、こんなことが…」

 

もはや、殺人現場の第一発見者のような口ぶりである。

もっとも、この場合、犯人を推理する必要などは皆無なのだが。

 

場に疑惑が満ちる。

それを目撃した全ての存在に共通の認識が、つまり、『あるべき状態』についてのイメージが行き渡る。

 

『合意』が、成立する。

 

その途端…

 

空間が、揺らいだ。

 

地震?

いや、空間全てが波打つような、めまいのような、この感覚は一体何だ?

まるでほんの一瞬、時空そのものが揺らいだかのような、不可思議なこの揺れは…?

 

「こ、これは…?」

 

 

 

 

 

 

 

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