幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
声を上げたのは、またしてもラリスキャニアだ。
彼女は、予想外の格上への勝利(ジャイアント・キリング)を成し遂げ、ぼうぜんと立ちつくしていた。
…そのはずだった。
が、気づけば見える景色がおかしい。
正面にいるラクルラールは変わらないが、その姿がやけに大きく見えるのだ。
しかも、なんだか身体が冷たく、あたりもなんだかほこりっぽい。
まさか、巨大化か?
確かに、ラクルラールは間違いなく『巨人』の位階にいる人物ではある。
それは、その巨体の残骸、すなわちこの学園都市が、廃墟となってもまだ第五階層の夢領域に残留している事実からも、容易に証明出来る。
だから、あの陰険女教師が、今更になって巨大化したり『浄界』を再形成したところで、おかしいことは何もない。
だが違う。
これは、ラクルラールが大きくなったのではない。
その逆だ!
地下アイドルは、身体を押し上げる圧力を感じ、自身が置かれた現状を把握した。
恐るべきことに、彼女はいつの間にか…
「攻撃したボクの方が、床にはいつくばっているだと!」
ぱち、ぱち、ぱち、とその驚愕を歓迎したのは、響き渡る拍手だった。
「そう、『逆転』だ。私には、是非ともそれを演出する必要があったのだよ」
おかげで、とんだ手間をとらされた。
そう、ひとりごちる女教師に対し、地下アイドルは、またも食い下がろうとした。
だが…
「……?……!……!……!?」
「何もしゃべれない。なあ、そうだろう?」
声が、出なかった。
その原因も、また明らかであった。
ラクルラールの拘束が、さらにその強度を増していたのだ。
ぱち、ぱち、ぱち、とその驚愕を歓迎したのは、響き渡る拍手だった。
「そう、『逆転』だ。私には、是非ともそれを演出する必要があったのだよ」
おかげで、とんだ手間をとらされた。
そう、ひとりごちる女教師に対し、地下アイドルは、またも食い下がろうとした。
だが……
「……?……!……!……!?」
「何もしゃべれない。なあ、そうだろう?」
声が、出なかった。
その原因も、また明らかであった。
ラクルラールの拘束が、さらにその強度を増していたのだ。
いまや、地下アイドルは完全に身動きを封じられていた。
『本体』の変形した巨大な鳥籠。
青い糸による心身への呪縛。
それに重ねて、なんだ、この…何かを奪われたような脱力感は?
「この地下アイドル迷宮には、先の戦いで厄介な性質が付属してしまっていた」
そんなラリスキャニアを放置して、女教師は、またとうとうと語り出した。
「それは、『落下した者はそれだけ上昇する』という法則。
いわば、『逆転』の概念だ。
それ自体は、この後に絶対に必要なモノではあるのだが……どうにも、今の私には邪魔だった」
だから、それを『逆』に利用させてもらったというわけだ。
そう言って、ラクルラールは、にんまりと笑う。
その笑みは、まさか今どき幼児でも喜ばないような氷結冗句(オヤジギャク)を、一人で楽しんでいる、というわけでもあるまい。
呪術、特に『呪文』の業界(セカイ)では、言葉遊びなど基本中の基本だ。
この程度の手腕を、自慢する者などまず居まい。
確かに、ラクルラールが、『呪文』の達人や上級言語魔術師だという話などは、全く聞いたことはない。
もしそうであるなら、例の広告で大々的に宣伝していたはずだ。
いくら『広告』を駆使したとはいえ、そもそもあのシナモリアキラと組み合って戦ったという時点で、その呪文戦能力はたかが知れている。
その弁舌は、高く見積もっても機械女王を上回ることはないだろう。
だが、だからといって、わざわざそんな低レベルな遊びをするとも思えない。
ならば、彼女はなぜ笑っているのだ?
そして女教師はどうして、明後日の方角を向いて語っているのだ?
敗北したラリスキャニアを『無視』して、上下関係を確定させようとしている……だが、本当にそれだけか?
この言動、どこかで見たことがあるような……?
地下アイドルは、頭がもうろうとしたまま、不可解な謎について考え込んだ。
「目はどうだ?痛くはないか?」
そして、ラクルラールは相変わらず奇妙なことばかりを聞いてくる。
目、だと?
そういえば、確かに…
「…!」
「どうやら、上手くいったようだな」
そう笑みを浮かべる女の手の上には、これまたいつの間にか、一つの不思議な球体があった。
それは、不思議な光を放ち、その瞳には、
十字の、輝きが……
「そうだ。お前は大した器ではないが、ブレイスヴァとマロゾロンド、その両者の霊媒足り得る資質はある。
本人がいかに無力であろうと、相似性が呪力を発生させることに変わりはない。
もしそこへ、この迷宮の『逆転』が加われば、面倒なことになるのは避けられないからな。
だからこうして、あえて敗北を演出する必要があったわけだ」
その言葉と共に、ラクルラールは、手の中の義眼を月のように浮かび上がらせ、自身を照らし出した。
するとなんと、その全身も、青い糸でくまなく覆われているではないか!
(操作の呪糸の応用……自己精密操作か…!
まるでシナモリアキラみたいな…)