幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第7話(6〜7の途中まで)

「夢を、夢を見るんだ。」

「どんな夢ですか?」

 

天使触手は、変わらぬ穏やかな笑みで優しく問いかける。

「悪夢だ。何度も何度も繰り返す、同じ悪夢。恐ろしい怪物が、何度もボクを殺しに来るんだ…」

 

ラリスキャニアは、マイルームの壁の隠しスイッチを押した。

すると、壁の一部が回転して裏返り、そこに隠されたモノが現れたのだ。

それは、一枚の絵だった。

ラリスキャニアが、密かに『地下』のコンクールにデータを送って応募したその絵は、大賞こそ逃したものの、審査員からは激励された。

 

その絵の題名を『恐怖の女狩人』という。

 

そこには、恐るべき怪物が描かれていた。

 

その身長は、周囲の木々より更に高く、その髪は洪水の泥流のように禍々しき色をしていた。

その口は耳まで裂け、その目は血のように赤く、一筋だけ垂らされた髪が変じた蛇と共に、決して獲物を逃すまいと睨みつけていた。

 

そして、その身体を包む漆黒の鎧からは菱形の部品が吊り下がり、その背には…なんと奇妙なことか!煙突が生えてもくもくと汚らしい黒煙を撒き散らしていたのだ。

 

それは、確かに狩人の絵であった。

だがそれは、異形の狩人であった。

狩人とは森と同化すべきもの。

 

ヒトでありながら、森という異界の住人となり、森に潜み自然に生きるのが、正しき狩人の在り方のはずだ。

だが、そうした見方で言えば、その狩人は明らかに歪んでいた。

狩人であるにも関わらず、その姿はまるで文明の象徴、自然を破壊し侵食する【杖】の暗黒面を形にしたかのようであったのだ

 

「『地下』の評論家は語った。〈これは狩人の絵としてはあまりに歪んでいるが、”象徴”としてはとても正しい。これは、天の獄の恐るべき殺人鬼たち、自ら『探索者』と称する怪物どもの姿を描いたものに違いない。

『銃』という武具、『杖』の使い魔、何人もの『夜の民』を食らって攻撃のため使い捨てるその貪欲さとおぞましさ!これこそ、天の獄の恐怖を描ききった史上最高の傑作である!〉と。だが、違う、違うんだ。これは…これは他の誰でもない、ボクだけの恐怖。ボクの悪夢なんだ…」

 

ラリスキャニアは、天使触手に語った。

その身体は語りながら震え、その眼には、いつしか十字形の光がまたたいていた。

その光は、まるで天に輝く十字の星座の如く。あるいは、忌まわしき【杖】の兵器である【銃】の一部、照準器の十字線(レティクル)のようであった。

 

ラリスキャニアは、目に明滅する十字を宿しながら、訥々と語り続ける。

その言葉は途切れがちであり、文脈もたびたび飛躍した。

加えて、その内容はかなり異様なものであった。

 

「描かずには、何かにぶつけずにはいられなかった。だが、あの恐怖は…アレは、こんな絵ではとても表現しきれない!」

 

「夢の中で、もっと前、恐怖が訪れる前のことを見ようとしても…アイツは必ずやってくるんだ!」

「倒すことは出来た、最初のうちは…。でも、その時必ずアイツは言うんだ『この攻撃はもう覚えた』『次は躱す』って!」

 

「そして気づけば夢の場面が巻きもどっていて、今度は一度倒した方法が通じなくなっているんだ!」

 

ラリスキャニアは、天使触手相手にひたすら話し続けた。

まるで、話し続けることで、少しでも恐怖から逃れることが出来るかのように。

 

「何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も…」

「恐怖は途切れず、終わることもないんだ。」

 

悪夢を語るラリスキャニアの言葉は、いつまでも終わることがないかのように思えた。

だが、その話は唐突に話題を転換することになる。

 

 

 

 

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