幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
「そうだ。
その校庭に生えている樹の下にはな、死体が埋められるらしいぞ。
なんとも、お前にぴったりじゃないか」
「ぐ…そ、そんな迷信を…」
「ソイツの血液を取り込んだのは、間違いだったな!
感染呪術の基本を忘れて呪縛されるとは、魔女の恥さらしめ!
日頃から、他人(ヒト)の呪力や電気や部屋やゲーム機やプリンを勝手に借りパクして、のんきに一日中ゲームしながらゴロゴロしていたツケがようやく来たわけだ!
今こそ、溜まりに溜まった利子を高く取り立ててやろう!」
そう、からくりはラリスキャニアの血液にあった。
女神触手=ディスペータは、地下アイドルの夢領域を乗っ取り、そこに『愛の巣』を築き上げたのだが、そのとき、触媒として大量の血液も吸い上げていた。
女教師ラクルラールは、それを更に利用し、宿敵を縛るトラップとして活用したのである!
今や、大樹となった女神触手の体内には、血液感染した無数の青い糸がはいまわり、彼女をキツく呪縛していたのだ!
しかも、それだけではない。
「あ、足が…アキラ様の他の四肢まで…!」
それは、漆黒の束縛であった。
吸血大樹と化した女神触手、ディスペータの大地にあたるものは、言わずと知れた第五階層。
すなわち、シナモリアキラ校庭(フィールド)である。
だが、それもまた、既に厳重な拘束を受けていた。
大きく盛り上がり、実体化した影が校庭全体、そして女神触手の下部までをも侵食していたのだ。
「木の下の死体、それは、葬られきれなかった忌まわしき過去のアナロジー。
お前を葬るには、もったいないくらいの舞台だよ」
生を謳歌(おうか)する花々が、地の底の死を喰らって満開に咲き誇る。
それは、生と死の共存だった。
女将軍は、そんな異界の美を目の前にしながらも、それに心を動かそうとはしなかった。
あるいはそれこそ、彼女に必要なものだったかもしれないのに……
そして、ついに終幕を告げる号令が下された。
「撃て!」
しかしなぜか、反応は何もなかった。
苛立つラクルラール。
「失敗の可能性?必ず反撃を受ける?そんなことは先刻承知だ」
それは、会話のようでいて、実際には全くそうではなかった。
何者かと話しているようで、相手の話を聞く気が微塵(みじん)もない態度。
「わずかで良い。いまだに『邪視』の頂点を気取るアイツに、少しでも自分の力不足を再確認させることが出来れば、手段はなんでも良いのだ。」
ひとりごとでしかない言い争いが続く。
そしてその命令は…やがて八つ当たりのような言いがかりに変わった。
「なにをニヤニヤしている!この私が命令しているのだぞ!」
実際には、今も不定形な『生徒たち』は、あくまで流動し続けているだけだ。
そこに表情はない。
もしそこに悪意を読み取る者がいるとすれば、それは己が内面、自身への劣等コンプレックスの発露に他ならないのだが……
女将軍は、とうとう、単なる悪態をもって対話にすらならなかった話を、強引に打ち切った。
「撃てよ、ニヤニヤデブ」
あんまりな言葉。
それを受けた『生徒たち』は……なんと、突如として震えだしたのだ!
次々と投げかけられる叱責は、対象に細かな震えをもたらし、それはやがて激しい振動へと移っていく。
それは、行きどころのないエネルギーの暴走であり…『拒絶反応』でもあった。
このゼオーティアでは、銃は最大級の禁忌の対象であり、その使用は強大なる法理(ルール)によって禁じられている。
それにも例外が無いわけではない。
そうした法理に対抗出来るくらいの強大な『浄界』あるいはそれに準ずる空間において、『武器ではない』という扱いでの『発砲』、例えば芸術の補助アイテムとしての使用ならば…あるいはそれでも世界に許容されることもあるかもしれない。
ただし、それにしたところで、実用の上では乗り越えなければならない大きな問題もあった。
銃適性である。
『青い鳥』(ペリュトン)は、総じて『杖』の扱いが苦手なのだ。
『吸血鬼』の血を引くラリスキャニアは、まだマシとなケースではあるが、極めて高度な『杖』の産物である『銃』を使用するなど、本来は不可能である。
彼女のような種族の場合、前述したような条件が満たされていなければ、発砲どころか銃を構えただけで、再起不能の重症を負うおそれすらあった。
もちろん、ラクルラールはその真理を熟知している。
知っているうえで、あえてそれを促しているのだ。
この女教師にとって、一つの手駒に過ぎない『生徒たち』が、この攻撃によって自壊しようがどうしようが、それは問題ないことであった。
一か八か、相手に痛撃を与えられれば良し、そうでなくとも自分が損をするわけではない。
これは、そうした投げやりな意図の上に企(たく)まれた攻撃、いわば使い捨ての特攻攻撃であった。
だから、女教師は、『生徒たち』が突然震え出したところで、大してあわてはしなかった。
肉体を守ろうとする防衛本能と、命令による強制力によるダブルバインドが、そのような結果をもたらすことは、とっくに予想の範囲内に算入されていたからだ。
しかしだからこそ、それは裏目に出た。