幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第70話(60~61の途中まで)

…ふっ!ふっ!

 

はっ…!はぁ!

 

命令に気を取られ、女教師は聞き逃していた。

奇妙な声、そして荒い息づかいを。

 

見れば、校舎の外、校庭で奇怪な変化が起こっていた。

なんと、それまでじっと校庭の庭木をやっていた女神触手が、いつの間にかエアロビクスのように、軽快に揺れ動いているではないか!

 

これは一体どうしたことだろうか!?

 

「この後に及んで、まだ舞いなど…いや、これは!」

 

軽口を叩こうとした途中で、ようやく事態に気づいた女教師を、女神触手はあざ笑った。

 

「そう、『心臓』の再演です。

念のための予備案として練習していましたが、まさかここで役に立つとは」

 

ふっ!ふっ!

 

はっ…!はぁ!

 

そう、女神触手のその激しい動きは、人体が持つ心臓の動きを模倣したものであった。

 

心臓は言うまでもなく、全身に血液を送り出すために存在する。

 

当然、その動作は、女神触手の体内から、『生徒たち』に逆に呪力を逆流させることにだって出来るのだ!

これは、人体構造やその生死にくわしい女神触手が、さらにシナモリアキラの外付け身体部位を演じているからこその、荒技であった!

 

「こ、この!アキラくんからその汚らわしい手を離せ!上からどけ!

いや、まずは制御を、支配力を強化せねば!

止まれ!撃ち方やめ!」

 

だが、もう遅かった。

 

相反する力による綱引きは、かつての地下アイドルに、あまりにも過大な負荷をかけてしまっていた。

そしてそれは限界(ピーク)を迎えたのだ!

 

射手の振動と共に左右に激しく揺れる銃口は、二人の魔女を交互にとらえ、その動きはどんどんと激しさを増していき、そして……

 

そして、ついに暴発が起きた。

 

撃ち放たれた神の力を秘めた義眼(だんがん)は、新たなる寝取りの成功を寿(ことほ)ぐかのようにらんらんと輝き、獲物へめがけて撃ち放たれたのだ!

 

 

 

 

そして弾丸は、迷いなく標的たる魔女の心臓を撃ち抜く…それは、疑いようのない将来(けつまつ)であるかのように思われた。

 

飛びゆくのは、一等星のようにまばゆく輝く魔弾。

その流星が飛び込んだ先はーーラクルラールであった。

 

むろん、二人の魔女の駆け引きは、いまだに続いている。

それは、もはや『軍隊』のカタチすら失いつつある不定形の存在をめぐって行われている力くらべ、呪術的な綱引きだ。

 

感染魔術の理論によれば、たとえ分割された断片であっても本体の影響はまぬがれない。

 

つまり、この場合の本体である『生徒たち』=元・ラリスキャニアを完全に支配することが出来れば、その時点で勝利が決まるのだ。

 

なぜなら、勝利者はその勢いで魔弾をも支配し、その弾道をねじ曲げることも可能なのだから。

 

ただの鉛玉ならいざ知らず、今回の凶器は、予言王オルヴァの力を秘めた義眼の魔弾である。

 

弓の達人が放つ矢が、ときに射手の拡張身体として自在に曲がるように、絶大な呪力を込められた弾丸も、また撃ち手の一部として間接的に操作が可能なのだ。

 

ならば、弾丸が向かっている以上、これはラクルラールの敗北なのか?

 

いいや、実はそうではない。

確かに、この状況は“綱引き”においてのラクルラールの劣勢を意味する。

 

だが、女将軍は自らへ突撃する弾丸を見ても、更に笑みを深めるだけであった。

 

何故(なぜ)か?

その答えは、彼女の次の動作によって世界に示されたのであった。

 

それはある意味、この第五階層では当たり前な動作であった。

 

まず描くのは、円。

 

白き繊手(せんしゅ)が動く。

いかなる美術品も敵(かな)わないと思わせるようなその部位(パーツ)は、その動きまで美しかった。

 

女将軍は、右半身を前に出した構えから、なめらかに手を滑(すべ)らし、大きく旋回させていた。

 

あまりになめらかであるがゆえに、かえって遅く感じるようなその動きは、熟達した円舞のように柔らかな軌道を走り、そしてーーこちらへ飛び来る弾丸をその手で受け止めたのである!

 

そして舞踏は、ゆるやかにその形状(モーメント)を変化させる。

円から螺旋へと。

 

それは、あくまで気軽な動作であった。

だが、ラクルラールは、そんな気軽さで以(も)って、恐るべき魔弾の進行方向(ベクトル)を変換してみせたのである!

 

繰り返すが、彼女が扱っているのは小さな弾丸、それも特製の魔弾である。

場合によっては、紀人の存在すら揺るがしかねない、それほどの凶器。

 

それを彼女は、まるで熟練の職人がピザ生地を扱うかのように、軽やかに扱ったのだ!

 

それは確かに、女神触手との力比べに乗らず、あえて力を温存していたということもあろう。

 

また、ラクルラールの紀源は、球体を司(つかさど)る神、ドルネスタンルフにゆかりある秘宝である。

当然、その加護は多大に影響しているだろう。

 

だが、それらの要素を加味したところで、これは紛(まぎ)れもなく絶技であった。

 

強大な力を、か細い手足しか持たない女性が軽く制御し、押し返す。

これこそまさに、幾多の神話、数多(あまた)の伝承にて語られる、キュトスの姉妹、そのものである。

 

 

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