幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第8話(7の途中)

「ボクには…ボクの人格には、歴史が無い」

「ボクは、このアイドル迷宮で産まれた。ある日気付いたら、転生していたんだ。……あのシナモリアキラと同じように」

「何も分からず、過去には実感も記憶も無く、ただボクはアイドルだった」

 

「ファンはいても、家族はいない。親も兄弟も親戚も…面倒を看てくれる教師や仮初めの保護者すらいなかった…」

ここで、ラリスキャニアの語調が激しくなる。

「だが、シナモリアキラは違う。アイツは、何人もの強力な支援者に恵まれている!」

 

語りながら指差したラリスキャニアの視線の先には、いつのまにか壁に投影されている文章があった。

それは、慰霊祭の添え物として世に放流されたネット小説。

義手の転生者と堕ちた英雄の物語の画像だった。

 

「アイツは、ある時この第五階層に突然現れた。事故による転生、人狼による片腕の欠損、戦闘での返り血で衣服すら失って。だが、それでもアイツは【上】の【松明の騎士団】の一行と、後の英雄たちと出会い、彼らに受け入れられることが出来たんだ!」

 

ラリスキャニアは、ネット小説の筋書きやアストラルネットからの情報をもとに【シナモリアキラ】の経歴を語りだした。

それは、彼女が信じる、この世界(ゼオーティア)における【シナモリアキラ】の歴史。

この世界の住人が信じる、栄光と後援者に恵まれた異邦人の物語だ。

 

「その後しばらくは、何かトラブルがあったのかここでチンピラをやっていたようだが、すぐにアイツには強力なスポンサーが現れた。例のロボ魔女、あの機械女王だ。」

 

ラリスキャニアは、ネット小説画像の隣に、いくつもの念写画像を追加で投影した。

 

その画像の中で【シナモリアキラ】は、【サイバーカラテ】を宣伝し、五階層に存在していた犯罪組織を叩き潰し、道場を破って自らの技術を宣伝していた。

まるで暴力の化身であるかのように振る舞う彼は、傍目から見ても、その暴力をすごく楽しんでいるようであった。

 

「そして、アイツは英雄となって数々の既存の英雄を打ち負かし、六王にすら認められてその存在をこの世界に確立させた。ついには…アイドルの添え物であることに飽き足らず、自らアイドルにすらなったんだ!」

 

ラリスキャニアがさらに追加で投影したのは、アイドルとしての【シナモリアキラ】の念写映像であった。

映像の中で、【シナモリアキラ】は異界のミームを纏う美少女であり、悲しみを背負った美青年であり、アイドルグループとその周辺機材ですらあった。

 

次々とその姿を変容させるその有様は、幻想の世界であるゼオーティアの基準に照らし合わせても、随分と奇妙であった。

だが、そこには未来に対する希望があった。

変化を恐れない勇気が、次々と己を再創造する創意工夫が、己に対する自信と自負があったのだ。

 

アイドルとしての【シナモリアキラ】は、誰がどう見ても完全なこの世界(ゼオーティア)の住人であり、迷い込んだ異邦人と言うより、期待され愛される新星(ニューカマー)であった。

”彼”は、アイドルとしてこの世界(ゼオーティア)に認められたのだ。

 

「貴方は、それが羨ましいのですか?羨ましいから、アキラさんを憎んでいるのですか?」

天使(レオ)触手は、とうとうと【シナモリアキラ】を語るラリスキャニアに問いかけた。

そこにあるのは、果たして嫉妬だけなのか、と。

 

「ああ、そうだ。そうだった、最初のうちは……」

ラリスキャニアは、アイドルアキラ映像の隣に、更に映像を投影した。

もう、壁は【シナモリアキラ】の映像で一杯であり、蟻の這い出る隙間もないほどだ。

 

そんな、【シナモリアキラ】壁を見ながら、ラリスキャニアは語り続けた。

己と【シナモリアキラ】の関係性を。

 

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