幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第81話(66~67の途中まで)

だが、残念ながらその罠を用いても、なお魔弾を防ぎきるには至らない。

 

確かに、無限牢獄の悪夢は、普遍的かつ強力な夢界現象ではある。

 

たとえ高速の移動力を誇る銀霊(クイックシルバー)であろうとも、あるいはいかなる飛び道具であろうとも、夢から目覚めずにそれを脱出することは不可能だ。

 

けれども、(間接的に)予言王の瞳を模した義眼の弾丸には、当然、神性存在『ブレイスヴァ』の力が宿っている。

 

『ブレイスヴァ』は、終端を喰らうもの。

いわば無限の最上位、完全上位互換の超常である。

 

その恐るべき存在に比べれば、こんなありふれた無限ループの悪夢路などは、大海の前のおちょこに過ぎない。

 

一言で言えば、相性最悪であった。

そして追い詰められた女将軍は、もはや敗北寸前であった。

 

彼女に、最後に残されたのはただ一つ。

頭が無くなった小さな人形、それだけだった。

 

あるいは、それこそが彼女にとっての真の切り札、最終兵器なのだろうか?

 

だが…女将軍には、それを使う気は毛頭無いようだった。

彼女は、軽く口づけをするとそっとそれを懐に仕舞う。

 

もとよりラクルラールには、ここで絶対に勝たねばならない、というような縛りは特にない。

彼女たち超越者には、決着をつける機会などいくらでもある。

 

ここでこの身体を壊されたところで、それは後からいくらでも取り返しがつくささいな失点に過ぎないのだ。

 

だから、女将軍は、ここで勝負をあきらめることにした。

これは、決定的な敗北ではなく、単なる威力偵察(ようすみ)の完了、一時的な転身に過ぎないのだから。

 

だから、アイツも、今はせいぜい勝ち誇っているが良い。

真の敗北者はあちらの方だ。

やがて、本当に決着をつける時がやってくる。

 

それまでせいぜい、寄生虫生活を堪能(たんのう)しながら、手首を洗って待っているがいい。

 

そうして、彼女は、最後に宿敵の間抜け面を拝もうと、投げやりながらに軽くそちらに視線をやり…そこで奇妙なモノを目撃した。

 

そう、女教師の反対側、魔弾の先に見える彼方では…いまや完全優勢となった悪魔の左手(ディスペータ)が、その指に何かを挟んでいたのだ。

 

それは、簡素な木の看板、プラカードに見えた。

死人の森の元女王は、にこやかにそのプラカードを掲げ、こちらへ向かって手、もとい小指を振っている。

 

そこには、こうある。

 

《史上最悪の失敗作・ぽんこつ、ここに眠る》

 

訂正しよう。

これはプラカードでは無い。

墓標である。

 

それも、ひどく悪趣味な。

 

その時、ぷつり、と何かが切れる音が響いた。

果たして、それは幻聴だったのだろうか。

 

確かなことは、ただ一つだ。

そこでラクルラールの怒りが、限界を、超えたのだ。

 

「この×××××がぁぁ!」

 

その放送禁止用語の発声と共に、彼女の身体に大きな動きが生じた。

 

両肩、もも、ひじ、ひざ、手首、足首、そして指。

球体関節人形である女教師の各部が、輝き出したのだ!

 

この時、ラクルラールの全関節、すなわちそこに仕込まれていた全球体が駆動!

 

その全てが黄金に光り輝き、神に導かれたかのようにひとりでに高速回転を始めたのだ!

 

そこで女将軍は、胸の前で手を互い違いに構え、斜めの平行線を作った。

首と腰、それに二つの手首が、四つの月を模倣して強く輝く!

 

「常に夜なるもの、うつろいゆくもの、確かなるもの、そして、真の名を追い求め続けるもの、この地に寄り添う四の内界よ!」

 

黄金の平行四辺形に囲まれた身体は、もはやただスーツに包まれた飾り物の人形体(トルソー)ではない。

 

女将軍は、勝利の凱歌のように、その名を高らかに叫ぶ。

 

「我が意に従いて、その主たる大いなる大地を示せ!セレスティアルオーブ・ゼオーティア!」

 

そして、女将軍は、飛来した魔弾をーーよりにもよって、黄金に輝くその『胴』で受け止めたのだ!

 

当然、一歩間違えば、どころかどう考えても自滅を免れない暴挙である!

 

その瞬間、世界が圧縮された。

百を超える雷が同時に鳴り響くような轟音は、逆に全ての音を消し去り、辺りにはただ静謐が広がる。

 

これまで誰も聞いたことが無さそうな、奇怪な衝突音。

 

噴火のように、埃(ほこり)が舞った。

衝撃の余波が、波紋となって上下に広がり、廃墟をさらに崩れさせてゆく!

 

果たして女将軍は、あえなく直撃を受けて轟沈してしまったのだろうか?

それは否、もちろん否である。

 

その時、悪魔の左手(ディスペータ)は確かに目撃したーー確かに命中したはずの魔弾が、まるで嘘のように勢いよく弾き返されてくる!

 

それは、これまでを遥かに超えた加速を与えられ、燃える流星となって彼女を撃ち抜かんと迫り来るのだ!

 

古の女王は、思わず声を上げた。

 

「己を世界に擬することで、その強度を最大限にまで引き上げての【硬気功】ですか。

見事、と言っておきましょう。

しかし…」

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