幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

82 / 272
第82話・夢見る夢の中で/真昼の校舎(67~68の途中まで)

しかしもちろん、それに対する準備もとっくに出来ていた。

 

零落した死の女神は、魔弾を見送ると同時に、相手の反撃に対処出来る兵器を構築していたのだ。

 

今や、校庭から校舎まで、彼女の足元はまっしろな防衛線(ヴァージンロード)で覆われていた。

 

新雪のような白は、全て人骨から出来ている。

肋骨の鉄条網、死体袋の土嚢、古墳のトーチカ。

それは死者の野戦築城。

 

そしてもちろん、それだけではない。

 

「夢の中ということは、すなわち失われた力や理論上製作可能な武装すら、呼び出せるということ。

私の『杖』、モデリングも、今や貴女を超えていることをお見せしましょう。

終幕を告げよーー鎧骨・反転総式(ガイコツ・ターンオーム)」

 

かつての女王が号令を上げると、彼女の背後が大きく揺れた。

 

それは巨大な波紋、空間そのものが海のようにゆらぎ、人面樹に大きな人影がかぶさる。

 

悪魔の左手(ディスペータ)の背後から、滝を割るかのように全身を骨で鎧(よろ)った巨人が出現。

 

それが鋭く眼光を光らせるや否や、巨人は人面樹をその体内に格納しーーその額に輝く文字がひとつ、浮かび上がった。

 

装着完了、すぐさま正拳一撃!

 

巨人は長大な骨の腕を振るい、魔弾を殴りつけた!

 

拮抗する力。

魔弾は更に揺れ、その標的を変え続ける!

今やそれは、迷える牙。

対立する超常存在がありったけの殺意と呪いを込めた狂える凶器。

 

そんなモノが飛び交う戦場に身を置くなど、正気の沙汰ではあり得ない。

 

だが、向かい合う二人の魔女は、共に笑みをもってそれを迎え撃つ。

 

二人は、共に全身に呪力をみなぎらせ、持てる限りの業(ワザ)を、いや、たった今この時に編み出したばかりの新技術の粋(すい)をもって互いに魔弾を迎撃。

より強い呪いを乗せて、撃ち返さんと身構え続ける。

 

それは、すさまじい応酬であった。

右から左、左から右へと白球が飛び交う。

 

「フゥーハハハ!喰らえ!」

「そんなゆるい球、当たるものですか!」

 

球が返されるたびに、言葉も返る。

壮絶なるその打ち合いは、殺伐としていながらも、どこか遊びのようでもあった。

 

繰り返される死の往復は、なぜだかやけに穏やかにも思えた。

それはやがて球技ペースを超え、人間の認識出来る速度域を超越していく。

 

さて、ところで魔弾の射手たる『生徒たち』は、その間一体なにをしていたのかというと……なんと彼女たちは、まどろみ始めていた。

 

恐るべき破壊力をもって行き交う魔弾さえも、『生徒たち』の目には、それがまるで柱時計の振り子のように見えていたのだ。

 

そんなもの、動画とSNA333のマジカルアピールでしか見たことはないのに……

 

『生徒たち』は、個我も不確か、その意識もぼんやりしている。

そんな彼女たちの耳には、魔弾が継続的に放つ衝撃音すら、メトロノームとなり、やがて子守唄として響き始めていた。

 

人面樹からこぼれた花びらが舞い散り、肉体の内部を二つの呪力が綱引きする。

 

そうして『生徒たち』は、悪夢の中にて更なる眠りへと誘(いざな)われていった……

 

 

 

 

穏やかすぎる日差し。

暖かな風がカーテンをはためかせる。

 

そこは、あまりにも平和でキレイな教室の中。

 

少女はそこで目覚め、何かを読み上げる声を聞く。

美しいひとは、本を持ち、窓際に立つ。

 

そして、彼の頭の上にはかわいらしい黄金の猫耳が生えていたのだった……

 

暖かな風が、カーテンをはためかせる。

 

小さな花弁が舞うそこは、真昼の教室だった。

ここは美しく清らかで、光に満ち溢れている。

物陰には恐怖の片鱗すらなく、悪夢などは欠片すら存在しない。

 

その場所は、この世に夜があったことを完全に忘却しているかのような、そんな光の部屋。

 

その一面を成す窓からは、花を満開に咲かせた大きな樹木が二本見えた。

それは、奇妙な花樹だった。

 

その花は、パッと見た感じでは薄いピンク色に見えるのに、ふとしたはずみでその色合いはいかようにも変わるのだ。

 

ある時は、日の光に負けない純白の白。

かと思えば、無数に存在する花弁の陰が急に目立って、真っ黒に染まって見える。

 

またときには、日を透かし、あっという間に燃えるような朱に変わっていたり。

 

あるいは、白も黒も無いあいまいな薄墨の色となり、その舞い散る花びらを通して、世界をぼんやりとした空間に染め上げていたりもするのだ。

 

それは秩序立った混沌であり、永遠にまとまることのない整頓だった。

 

白であり黒、無彩にして多色、繁栄を約束された始源にして在りし日の栄華を匂わせる終端、万物を含む『究極』でありながら、同時にその全てを否定する『虚無』であった。

 

つまるところ、わけが分からなかった。

 

そんな奇妙な花が咲き誇るここは、それでもやはり、ひとつの教室であった。

なぜなら、ここではひとりの美しい少年が、今まさに朗読をしているのだから。

 

咲いた、咲いた…

 

何を読んでいるのかと手元を見ると、それは、白い本だった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。