幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第85話(69~70の途中まで)

いつの間にか、黒板に落書きが現れていた

そこでは、少女を模しているとおぼしき棒人間が、階段の最下段で力こぶを作ってみせたり、楽しそうに駆け上がっていたりしていたのだ。

 

それは、とても楽しそうな、競争原理の肯定であった。

 

「でも、『祝祭』になれば、『地上』から『歌姫spear』さんがいらっしゃいます。

それは、地下アイドル迷宮のランキングの『一番』が、『地上』の『一番』と競い合う関係をもつようになること。

それはつまり、『地上』と迷宮のアイドルランキングが、『統一』されるとも言えます。

そうなれば、貴女のおっしゃった地下アイドル迷宮におけるランキングの美点は、すっかりなくなってしまうのではありませんか?」

 

その言葉は、さらりと放たれた。

発言者である少年の顔は、うつむいていてよく見えない。

 

「…そうです」

 

少女が肩を落とす。

それに合わせ、しょげる棒人間。

 

続けて少年から放たれた言葉の声音も、それと同様のしょげ具合だった。

 

「確かに、地上有数…実質的に不動の『一番』と言われる歌姫の参戦は、それだけで歴史的事件(エピック)です。

彼女にそのつもりがなくとも、地下アイドル迷宮にその影すら踏み入れなくとも……

彼女は、存在するだけで『地上』の代表格であるアイドルの興行は、この第五階層の空気(ムード)を、『上』一辺倒に変えてしまいかねません。

ですが、」

 

ここで、少年は口調を変えた。

より大きな声で、滑舌をはっきりと。

けれども、決して激しくない、むしろ穏やかな、そんな言葉で。

 

それと共に、ほんの少し彼の頬(ほほ)が紅潮し、猫耳がピンと立つ。

その、真新しい画用紙のような白さは、未知なる未来への希望を指し示しているかのようだった。

 

 

「もちろん、トリシューラ先生は、対策を既に用意しておいででしょう。

まず、第五階層を代表するアイドルだけでも、コルセスカさんやクレイさん、ミヒトネッセさん、全世界にも偏在するアキラさん、そしてもちろん、地下アイドル迷宮の代表者であるラプンシエルさんが、いらっしゃいます」

 

ここで少年は、ちらりと少女の方に目をやった。

それは、貴女も地下アイドル迷宮を代表して良いのですよ、と語っているかのようだった。

少なくとも、それを受けて息を呑んでいる少女は、そう受け取ったに違いない。

 

少年は、それを確かめたように小さくうなずき、話をまとめ始めた。

 

「それだけではありません。

祝祭、お祭りなら、きっと意外なゲストも呼ばれるでしょう。

『地下』に縁があるアイドルだって呼ばれるかもしれません。

いえ、きっと呼ばれるでしょう。

 

それに、おそらくまだまだ“ゲスト”は現れます。

先生は、ヒトをびっくりさせるのが大好きな方ですから、きっと誰も予想もしないような、すごい方をこっそり招き入れているに違いありません!」

 

少年はまるで、今まさにその意外な人物を目の当たりにしているかのように、瞳を輝かせた。

 

彼の話は、その輝きに彩られ、続いていく。

 

「そうなれば、もう第五階層が『上』だけの空気(ムード)で染め上げられるようなことはなくなります。

いえ、それどころか、アイドルのランキング、序列自体が、無意味になってしまうかもしれません」

 

「そ、それはどういうことですか!?」

 

流石に、ここで困惑した少女が口を挟んだ。

ランキングに関わる話題によほど関心があるのか、その口調は焦りぎみだ。

 

それに対し、少年の返答は、むしろそれまでに輪をかけてゆったりとしていた。

 

「僕は、あのヒトに期待しているのです。

トリシューラ先生のモットーをご存じですか?」

 

もちろん、少女はそれを良く知っていた。

なにしろ、ごく間近でそれを“体感”したのだから。

 

「ええ。

彼女ブランドのテーマ…それは『破壊』ですよね」

 

その答えに満足したのか、少年はうなずいて話を再開する。

 

「『破壊』ーーそれを他のヒトが語ったのであれば、それは単に辺りのモノや家、更には建物や国、他の生き物などを機能不全にしただけで、終わることでしょう」

 

 

「でも、機械女王なら違う、と?」

 

「はい。

先生は、誰よりも『ヒト』の定義ーーひいては『視座の基準』に厳しい方です。

あの方が『破壊』とおっしゃるからには、それはきっと文字通りの『全ての破壊』に至る道になるでしょう」

 

「そ、それは、機械女王が全世界を、ゼオーティアを全て破壊するということですか!?」

 

あわてる少女。

 

だが、それに対し、返されたのはゆったりとした否定であった。

 

 

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