幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第9話(7の途中~8の途中)

 

 

*

迷探偵ラリスキャニアはかく語りき

*

 

「初めて【シナモリアキラ】のことを調べたときは、コイツを絶対に倒してやろう、とそう思っていた。ボクと似た経歴、ボクには無い強大なスポンサー、仲間、アイドル舞台の外における地位。どれもこれもが気に障ったからだ」

 

そう語りながらラリスキャニアが壁を見つめると、そこに映る映像から、小さな【アキラ姫】とラリスキャニアが飛び出ててきた。

立体映像の小人二人は、空中に仮定された舞台(ステージ)の上で格好良くポーズを決めたかと思えば、飛んだり跳ねたりミサイルをばら撒いたりと縦横無尽に動き回っている。

 

「だから、ボクは【シナモリアキラ】を倒すべく、アイツを徹底的に調査し、様々な妨害を仕掛けた。同情、哀れみ、方向性のズレた欲望、【サイバーカラテ】の【E・E】が防げない。いいや、本質的に、絶対に防ぐわけにはいかないような要素を利用することで。それは、ある程度は上手くいった」

 

「本質的にですか?」

「そうだ。【サイバーカラテ】は、あくまでユーザーの選択をサポートするための道具(ツール)少なくとも、そういう建前になっている。だから、道具としてのアレが遮断出来るのは”苦痛”や”激情"だけであって、ユーザー本人が"快"に感じる思いや本人の"思想"などは一切制限しない。

いや、出来ないんだ。それをやってしまえば【サイバーカラテ】はもはや”サポート”の領域を超えて、ユーザーを支配する道具として機能するようになってしまうからな。

…もっとも、本来ヒトの思考に存在しなかった"冷静な判断"や"外部データに基づく選択肢"を提供している時点で、サイバーカラテは、既にそのユーザーの意識を大幅に"改造"していると言っていいんだけどな。その"改造"と干渉による支配の距離は、そう遠くはないだろう」

 

まあ、そんなことは置いておいて、とラリスキャニアは腕を大きく動かして話題を転換することを示した。

 

「それはともかく、ボクは最初は【シナモリアキラ】に勝つのはそう難しくないと、そう思っていた。そしてアイツに勝つことこそが、アイドルとしてのボクの存在を確立させる一番の手段であるとも。

 

だが、この間のルウテトを巡る騒動で、ボクは気付いたんだ。気付いてしまったんだよ…」

天使(レオ)触手は、変わらぬ穏やかさで尋ねた。

 

「貴方は、何に気付いたのですか?」

「あの騒動で、ボクは恐ろしいものを、そしてとても素晴らしいものを観た。

 

次々と自己を更新(アップデート)し、存在の定義を塗り替えていった【シナモリアキラ】。恐ろしいまでの力を持ち、世界とヒトの運命を操る女神、そしてその女神や竜を打ち破った神話のような英雄(アイドル)たち…詳しいことは思い出せない。

 

だが、とてつもない、ボクのこれまでの経験や知識ではとても測れない、そんな舞台(レビュー)を目撃したことだけは間違いない。このボクが、アイドルの舞台(レビュー)を見間違えるはずが無いのだから。

そして、そこでボクは気付いたんだ。

 

ラリスキャニアは、そこで一旦言葉を切り、目の前の天使(レオ)触手を見つめた。

天使(レオ)触手は、はいはいとラリスキャニアの話に相槌を打ち、その頭の猫耳は、その相槌のたびにぴょこぴょこと動いている。

ラリスキャニアは、緑色に輝くその猫耳に充分癒やされて力を蓄え、再び話を続けた。

 

今は、疑似餌触手の再現度チェックより、その触手相手の疑似対話(セルフトーク)で自分自身の心を整理することの方が大切だからだ。

「ボクはあの舞台(レビュー)で、ボクと『シナモリアキラ』の違いを悟った。

 

それまで、ボクと『シナモリアキラ』は良く似ていると思っていたけど、それはただの勘違いに過ぎなかった、とね」

「ただの勘違い、ですか?」

 

天使(レオ)触手が、そこですかさず合いの手を入れる。

話し手であるラリスキャニアとの呼吸の合わせ方、話のうながし方、誠実な傾聴の姿勢。

 

そのどれもが見事で、ラリスキャニアの中にある公社のトップのイメージ通りだ。

それも当然、この天使(レオ)触手は、ラリスキャニアが形作り、自らの都合の良いように動かしているモノなのだから。

 

その動作は半ば無意識に依存しているが、ラリスキャニアが演じている役者がラリスキャニアにとって心地よいように振る舞うのは、当然であると言える。

 

ラリスキャニアは語る。

己との対話によって、己自身を見極めるために。

己にとって”最適”な選択を行うために。

 

「そうだ、勘違いだ。ボクとアイツの間に似たところなど無かった。同じ転生者だとしても、ボクは運命に”巻き込まれ”た者であって自分から運命を動かせる器じゃない。せいぜい、同じ転生者という属性で"踏み台"になって、アイツを輝かせる敵役(アンタゴニスト)が関の山だろう」

 

「どうして…貴方は、そんなことをおっしゃるのですか?」

 

自分を気遣うそぶりを見せる天使触手に対して、ラリスキャニアはぞんざいに答えた。

 

「あの壮絶な舞台で、あの神話劇(レビュー)でボクは気づいたんだ。ボクは【シナモリアキラ】を観ていたようで、実は何も観ていなかったことに。

ボクが観ていたのは結局…」

 

ここで、ラリスキャニアは、壁に映像を投影していた端末のアプリを解除した。

途端に賑やかだった壁は、元の洞窟へと姿を戻す。

華々しいライブも、熱い対決も、派手なアクションを決める幻影も、その全てが消えていく。

 

ラリスキャニアの眼の前で、互角の勝負を演じるかに見えた二人の小人も水たまりに降った淡雪のように、瞬く間に消えていった。

まるで、そこには最初から何も存在していなかったかのように。

そして、その後に残ったのは…。

 

「ボクが観ていたのは、最初からコレだけ。ボクは一人で空回りしていただけだったんだ」

今ラリスキャニアが指さした先にあったのは、映像では無かった。

そこにあるのはただ一つ、ロウソクが照らし出す影。

ラリスキャニアの影だけが、そこにあった。

 

「ボクが追いかけていたのは影だけだった。ボクは、【シナモリアキラ】にボクがボク自身でいて良い理由を求めていたんだ。成功を、地位を、承認を、そして価値を。だが、そこにはボクが求めたようなものは何も無かった。ボクは虚無を追い求めていたんだ…」

 

 

 

 

 

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