幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第95話(77~78の途中まで)

少女は、感激のあまり泣きそうになりながら、叫んだ。

 

「その通りですね!

そんなふうに戦えば、たとえ、シナモリアキラの世界のアイドルのように、全アイドルにとって武術が必須の項目となり、『武道館』を目指すことになっても、あるいは、『ヤキュウ』とかいうスポーツで『トウキョウドーム』を目指すことになっても、ついていけそうです!

九人程度なら、ボクでも十分に分裂出来ますし!」

 

「それは良かったです」

 

「それに、シナモリアキラも、そのうちモデルウォークを捨てて、車輪だけで動くようになるかもしれません!

そうなれば、ボクが触手ウォークでモデル部門一位を目指すのも夢じゃありませんね!」

 

「それは…ええっと、良かった?ですね」

「はい!」

少女は興奮のあまり、困惑する少年を置き去りにしていたが…

 

やがて、

 

「お世話になりました。

あなたのおかげで大切なことに気づくことが出来ました」

 

別れの時が訪れた。

 

いつの間にか、すっかり日も暮れている。

永遠の真昼のはずだった教室を、夕日が赤く染め上げている。

 

ただ、地下アイドルの視線は、まだあの“遊戯盤世界”に注がれていた。

正確には、その最下段にいた者の行方に。

 

そこでは、二つの小さな影が飛び交っていた。

 

どうやら、どこからもはみ出してしまったらしい棒人形が、両腕義手の棒人形と戦っているようなのだ。

 

二つの影は、空中に足場を生み出しながらあちらこちらへ跳ね回り、やがてついに義手の人形が、はみ出し者を新しい居場所(スタート)に放り込(シュート)んだ。

 

それは、ラフディボールに似て非なる、戦闘(ケンカ)という対話を経て、初めて辿(たど)り着けるような、愛情ある父権的庇護(パターナリズム)だった。

『女性的』または『異端』(クィア)的、『異邦人』(ゼノグラシア/グロソラリア)的……

 

あるいはいっそ『異獣』的な要素で補完された『父権的』な保護。

 

そうした仕組みは、秩序の法下に馴染(なじ)まない者に対し、第五階層の法(システム)が出来る最後のサポートだった。

 

都市のシステムからはみ出した者を、同じようにはみ出しがちな者を馴染ませるための“媒介者”として用い、水と油を石鹸(せっけん)で混ぜるように、その“異質さ”を中和させるのだ。

 

もちろん、それでも上手くいかず、結局第五階層を去っていく者もいるのではあるが……

 

それでも多くの者は、自分と第五階層に似た要素を見出して落ち着いたり、あるいは全く新しい要素として自身の性質を第五階層に組み込んだりして、なんだかんだで居場所を作り出し、承認を獲得していった。

 

ほら、今も三人ひと組、総勢十二人の狩猟犬(シナモリアキラ)が、都市の四方へと去っていく。

 

彼女たち狩猟犬が真に追うのは、獣でも犯罪者でも無い。

その真の獲物は、より幸福な未来であり、在るべき第五階層の姿(ヴィジョン)であり、そして何より、いつか誰もが還るべき『故郷』(ホーム)であった。

 

これが、これこそが、幻想再帰都市・シナモリアキラなのだ。

 

地下アイドルは、そのことに納得すると、目線を戻した。

それは前へ、ここまで自分に付き合ってくれた相手に向き合うためであり、その返答に耳を傾けるためだった。

 

「いいえ、その答えは、最初から貴女自身の中にあったもの。

僕はそれを見つけるお手伝いをしただけです」

 

「それでも、お礼を言わせてください。

ありがとうございます!」

 

それは、さわやかな別れだったーーだが、少年は少女を呼び止める。

 

「ああ、そうだ。

最後に、もう少しだけ良いですか?」

 

「はい、どうぞ!

なんなりとお聞きください!」

 

「いや、大したことではないのですが」

 

少年は、はにかみながら語る。

 

「ボクは、貴女は今も、十分にアイドルをやっていると思います。

貴女は、美しく輝いていますよ」

 

「そ、そんな…!」

 

少女は、夕陽の光の中でもはっきり分かるほど赤くなる。

 

そんな彼女に向けて、少年は更に言葉を贈った。

 

「希望は未来ではなく、貴女の中にあるのです。

僕がやったことは所詮(しょせん)それを映し出す…そう、一種の『鏡』に過ぎません。

貴女は、確かにオリジナルではないかもしれません。

けれど、『本当の本物』なんて、実はどこにも無いものなのです。

『才能』などというものは、忘却と欠如と異質性、そして変わり映えのない日々の積み重ねに過ぎません。

たまたま、他の人が気づかなかった。

発表出来なかった。

既にあっても知られなかった。

そうした、偶然の産物に過ぎないのです。

『天才』と呼ばれるような人物にしても、少し見方を変えればただの"生きづまった人"でしかありません

そう、たとえば…僕の部下が、実はどうあっても不器用ではた迷惑で、愚か過ぎる愚者であるように。

貴女は、夢に過ぎないかもしれません。

でも、貴女はあり得たかもしれない可能性でもあります。

目覚めると忘れてしまう夢でも、人はきっとそれからも何かを持ち帰る。

僕は…そう信じています」

 

「よく考えられたお言葉、ありがとうございます。

でも…ボクは、あんまり自分の『才能』に自信を持てないのです。

ここでのお話で、世界変動の荒波に立ち向かっていく踏ん切りだけはつきましたが…」

 

「どうしても、自信を持てないのでしたら、いっそ習ってみてはいかがですか?」

「習う、ですか?」

 

「ええ」

 

そして、少年は爆撃札のように、奇抜なアイディアを投げ落とす。

 

「歌姫が貴女の理想なら、その歌姫に聞いてみるという手もありますよ」

 

少女は、仰天(ぎょうてん)した。

 

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