幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第96話(78~79の途中まで)

「で、弟子入りですか!?

そうか…そういえば、歌姫には、既に英雄という弟子がいましたね。

既に一人卒業生がいるのなら、入れ替わりで師事するのはそこまで難しくないかも…?

で、でも、たとえなんとかアポを取れても、あの『歌姫spear』相手に上手く交渉が出来るかどうか……

せめて、同じアイドルオタク同士でしたら、幾らでも話せるのですが」

 

職業柄アイドル研究ばかりしているボクも、いちおうアイドルオタクなので、と自嘲する少女。

 

そこで、少年は更なる声援を贈る。

 

「大丈夫、同じアイドル同士、きっと仲良くなれますよ!」

 

「そうでしょうか…いや、そうかもしれませんね!」

 

そして、気を取り直した少女は、最後に景気づけのため、元気に振る舞ってみせた。

 

「帰ったら、アストラルネットで『ハルなの。』さんと『歌姫spear最高!』さんに、さっそく相談してみます!」

 

「…そのお二人とは、お友達なのですか?」

 

「はい!『ハルなの。』さんは英雄アズーリアの熱狂的なファンで、『歌姫spear最高!』さんは、その名の通り歌姫の古参ファンです!

あ、『歌姫spear最高!』さんの方は、最近『チョコレートリリー』の箱推しになったとか。

お二人とはアイドル情報をリサーチしているときに知り合ったのですが、どちらもすごく推しの情報に詳しいのですよ!」

 

そこで少女は声を潜め、それがとても重要な情報であるかのようにささやいた。

 

「そしてなんと、どうもそのお二人は、英雄アズーリアの隊のメンバーらしいんです!

推しと一緒に働けるとは、なかなかすごい職場ですよね!

だから、お二人に聞けば、歌姫や英雄と仲良くなる方法もきっと分かります。

今までは、正体バレや相手の地雷を踏んでしまうことが怖くて、なかなか踏み込んだ話が出来ませんでしたが…今度は、勇気を出して仲介を頼んでみようと思います!」

 

「あー、ええ、それはとても良いことですね!」

「はい!」

 

それで問題は、ひとまず解決した。

 

気づけば、教室はすっかり暗くなっていた。

扉にだけ残照の光が残り、床を明るく照らし出している。

 

そして少女は、

 

「ありがとうございました!」

 

元気な声で別れを告げ、光り輝く扉へ向かって去っていった。

 

その扉の先には何があるのか?

少女は、そんなことずっと前から知っていた。

 

そこには、大切な人がいるのだ。

 

「やあ、ラリスキャニア」

「久しぶり、ラリスキャニア」

 

合わせ鏡のように、二人は向かいあう。

最少の量によって再現される、最大限の定義。

有限の無限。

 

二人の間に、余計な言葉はいらなかった。

二人はどちらも、同じ『ラリスキャニア』なのだから。

 

「さあ、行こう!」

「行こう!」

 

そして、どちらからともなく掛け声が発され、影のように重なり合う。

 

「「このアイドル業界に旋風を巻き起こすんだ!

二人で、いや“ボクたちみんなで”さ!」」

 

二人は同時に大きく手を開き、また握りしめる。

確かな何かをつかんだように手に力をこめ、二人の少女は決然と出て行った。

 

 

 

 

闇に沈みかける教室の中、少年は、何かに突き動かされるように未(いま)だに語り続けていた。

 

「貴女は、少しだけボクに似ていたのです。

唐突な出現、後から与えられた役割と自己同一性(アイデンティティ)

他人の期待に応えなければ、存在することすら許されない在り方……

いくら、必要とされるのが嬉しいことだと言っても…それはやっぱり、ちょっと悲しくて、寂しいことですよね…」

 

それは、ちょっとした独り言。

 

明かされても驚きを誘うこともなく、武器になって敵を討つこともなく、そしてもちろん世界を揺るがすことなんて有り得ない。

 

それは、そんな蛇足の裏設定だった。

 

そして、少年はなぜかとても悲しげだった。

彼の視線の先は先ほどの黒板に向けられている。

 

燃えている。

この上なく繁栄していたはずのその小世界は、闇の中、紅蓮の色を以(もっ)て染め上げられていた。

 

だが、少年の顔には、驚きが全く無い。

まるでそれが当たり前のことであるかのように。

 

彼が作る劇(ものがたり)は、全て悲劇になってしまうと、予(あらかじ)めそれを予知していたかのように。

 

ただ、黒板は、その全てが燃えているわけではなかった。

その四隅だけはまだ火が回っておらず、たとえば、義手の人影はわずかに燃え残っていた。

 

少年は、人影を強く見つめる。

 

まるでそれが、彼に残された、たったひとつの希望であるかのように。

 

「さあ、ボクもそろそろ帰るとしましょうか」

 

そして少年は小声で語り始め、それはやがて、歌となった。

それは、誰にも届かない、誰に聞かせるつもりもない小さな歌だった。

 

少年は独り、誰もいない夕暮れの教室で歌い続ける。

誰のためでもない、少年自身すら望んでいないかもしれない、そんな歌を。

 

少年はアイドルではない。

だから、これは聴衆(ファン)のために歌われる言霊(メッセージ)では有り得ない。

 

それは、あるいはもはや存在しない誰かに捧げられた歌。

 

重すぎる罪ゆえに、悔やむことすら許されない贖罪。

 

もしかしたらその歌は、本来なら歌うことすら誰にも許されないような…名前すら忘れられた誰かや“ 誰かたち”のため、もしくは永遠に失われた時間のための鎮魂歌(レクイエム)だったのかもしれない。

 

間違いなくその歌は、存在しないはずの場所、あり得ないはずの時間でしか歌えないもの。

 

結局、そんなものは、少年自身にすら届かないのかもしれない。

 

けれども、そしてそれでも……そんな推測など微塵も寄せ付けないように、少年はただ、歌い続けた。

 

誰も聞かず、誰も評価しない舞台(ステージ)の中、ただひたすらに歌ったのだ。

 

それはあるいは、絶対に叶わない片想いのための恋歌(ラブソング)だった。

 

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