幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第97話・乱入者のエントリー(79~80の途中まで)

 

 

 

 

それは、まさに激突の瞬間だった。

 

学生服に身を包んだ二人の美女が、ラフディボールのスティックを共に振りかぶり、今まさにボールを打ち据えようとする、丁度その時、そのタイミング。

 

二人の身には呪力が満ち、その口からは、強大な神秘が込められた呪文が放たれつつあった。

 

「全惑星、模倣完了。

天体図、掌握!

球神の宇宙(ソラ)の怒りを知れ!

大地よ、天の女王に従うが良い!

燃え尽きるが良い!

セレスティアル・オーブ・ザ・サ…」

 

片方が天体の呪力を引き出せば、もう片方は、

 

「さあ、出艦の時刻です。

弔鐘の音が導く先。

業火の海が、貴女を待っている。

複合偽槍(艤装)・鎧骨螺旋一角式!

発…」

 

巨大な何かを動かそうとしていた。

 

両者が狙うのは、高速で移動する弾丸だ。

それは、今は一度跳ね上げられ、二人の間で停止している。

 

だが、その動きは決して止まってはおらず、それどころかこれまでよりも更に速く突き進もうと、加速を重ねていた。

 

弾丸に与えられたのは、“必ず目標を貫く”そして、“決して止まらない”という二つの呪的性質。

 

そして、“『報復』(やられたらやりかえす)”という最も単純で、それゆえに逆に何よりも強力な呪いの重ねがけ。

 

それらが弾丸に、“静止しつつもなお加速し続ける”という、矛盾した性質を与えているのだ。

 

応酬(おうしゅう)の度(たび)に膨(ふく)れ上がったその呪力は、いまや戦略級呪術に匹敵する強度であった。

 

だが、その矛盾もここまでだ。

矛盾は、いつか解消される。

 

世界は安定を求め、序列構造はたったひとりの頂点だけを認める。

 

二人の魔女が、かつての不安定な希望と幸福から、絶望と挫折という、エネルギー的に安定した零(ゼロ)状態へと転落したように。

 

それは、この世界の当たり前(ゼオーティア)な摂理である。

 

エントロピーは不可逆であり、ヒト(ロマンカインド)は己が妄想した怪物に飲み込まれ、言葉は全て無価値な記号に堕し、そして…関係は全て破綻するのだ。

 

すなわち、魔球たる弾丸は、決して宙に留まったままではいられない。

舞台に現れた銃は、必ず発射されるのが世の習い。

 

そして必ず、舞台に立つ二人のどちらかに命中し、その命を奪うのだ。

 

悪魔の左手か、支配の女教師か、運命の天秤はどちらに傾くのか。

それは、二人の激突が、今まさにその雌雄を決しようとした、丁度、そのタイミングで――!

 

その時、突如として現れた何者かが、天秤の柱を掴(つか)んだ!

 

すなわち、猛然と飛来する弾丸を一つの手のひらが、受けとめたのだ!

見ればその手は、奇妙な皮の長手袋に包まれている。

 

「誰だ!?」

「何者ですか!?」

 

二人が驚愕(きょうがく)の声を上げるのも、至極(しごく)当然。

それは、これまで誰も見たことがない不審人物だったのだ。

 

フードと長衣で全身をすっぽりと覆ったその姿は『夜の民』のように見えた。

 

だが、その衣服の材質は異様だった。

 

ぬらぬらと奇妙な光を放っているように見えるのだ。

しかも、その表面には、まるで鱗のような模様もあった。

フードの両サイドには、巨大な眼球らしき飾りまでついている。

 

そう、それはまさに――

 

「蛇だと!?」

「どちらかと言えばトカゲでは!?

その割には尾も長いですし、確かに蛇皮ではありますが」

 

手足を生やした、蛇のきぐるみであった。

そこで、文字通りの蛇足的存在が口を開く。

 

「我こそは、大魔将を超えた大魔将!

ペプシ・トリス…いや、バス・リスク?

兎に角(とにかく)、世界周回蛇(ヨルムンガンド)とか、有翼蛇神(ケツァルコアトル)的な、なんかすごい感じの蛇なのだ!」

 

思わず、顔を見合わせる魔女二人。

 

気まずい沈黙が、広がった。

未(いま)だ動いているのは、捕らえられながらも、なおも猛烈な回転を続ける魔弾のみ。

その放つ摩擦音だけが、背景音楽(BGM)としてその場を満たしていた。

 

そして、なんかすごいらしい蛇(自称)は、その気まずい空気の中、なおも発言を続ける。

 

「あー、そう!

我は番外の最強!

全てを裏から支配する1001人管理会?理事会?

とにかく、そう言った陰謀の支配者なのだ!

え?名前が聞きたい?

聞きたいはずだよね!

ならば仮に、EX(エクセレント)大魔将・夜刀(ヤト)とでも名乗っておこう!」

 

それを聞いた魔女たちの表情が、微妙な具合に固まる。

それが即座に嘲笑(ちょうしょう)へと移行していないのは、乱入してきたEXなんとかに、確かな実力があったからだ。

 

なにしろ、奴はあれほど強大化した魔弾を、未だに受け止めている。

 

本調子の魔女たちならいざ知らず、そんな真似は誰にでも出来るものではない。

 

そこだけ見れば、確かに夜刀とやらは、名乗りに恥じない実力を備えているようだった。

…その割に、正しい【宣名】なら巻き起こるはずの圧力は、そよ風ひとつ、起こりはしなかったのだが。

 

 

 

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