幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】   作:鳳卵

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第98話(80~81の途中まで)

「やめておけ。

そんなことが、いつまでも続くはずがない」

 

「アレに同意するのは腹立たしいですが、その通りです。

そのままだと、確実に破滅しますよ」

 

二人の忠告は、着ぐるみが握り続ける魔弾に向けられていた。

 

それは、火山の噴火口のごとき爆発的なエネルギーを破裂させんと、今か今かと待ち受けていたのだ。

 

「ほら」

「言わんことではない」

 

そして、二人の予言は即座に成就される。

 

魔弾から強烈な圧力が放たれ、怪人物の身体を襲ったのだ!

 

次の瞬間、安っぽい蛇皮が吹き飛び、人影は光に包まれた。

哀れ、着ぐるみ怪人は木っ端微塵となった…かに思われたが……

 

爆音と閃光、それらが生み出した空白を、高らかな声が切り裂いた。

 

「輾転反側(てんてんはんそく)

行ったり来たり!

昼夜を迷って悩んでも!

夢の階段、駆け上がる!

十二の影を引き連れて、地下アイドル、ここに見参!

アイドル好きな子、知らない子!

今日から君たちも、ラリスキャニアちゃんの子豚ちゃんだよー!」

 

新たな名乗りと共に、今度こそ疾風が二人の魔女の髪を揺らす。

圧力は弱いものの、これが真の【宣名】であることは疑いようがない。

 

爆発の残光をスポットライト代わりに、今、一人の地下アイドルが降り立った。

 

ラリスキャニアが、ここに再臨、いや再誕したのだ。

 

 

だから、まず言うべき言葉は、これしかない。

 

「ただいま!」

 

そう告げた彼女は、その手に大切な友人か家族のように魔弾を――いや、もはや呪力を失った一つの義眼を握りしめていた。

 

と、思いきや、握り締められたモノの姿が変わる。

それは、小さな鏡だった。

 

と、そう観えたのも束(つか)の間、それにはすぐに大量の亀裂が走り、瞬(またた)きの猶予(ゆうよ)もなく砕け散る。

 

少女の手から小さな光の爆発が広がり、先程の大爆発をなぞるように拡散していった。

 

「アレは、義眼の複写品(イミテーション)だったのですね」

 

少女は、状況を整理するかのように語り出した。

 

「幻覚呪術で欺瞞した鏡を対象に見せ、それを自分の一部と思い込ませることで、実際に、眼球の高精度な複写を成立させる…言わば、手品の『すり替え』(ミスディレクション)と似た技法ですか。

『杖』技術で義眼を作るのは、非常に困難なことで知られています。

しかも、強大な『邪視』を秘めたモノとなれば、数十人がかりか超高位の呪術師数名の協力が不可欠だったはず。

いくらラクルラール先生でも、通常は存在しないはずのそんな高度な呪具を、どうやって用意したのかは疑問でしたが……なるほど、実は実態が存在しない幻影、関係者の了解の中だけで成立していた小道具だったのですね。

これは、“眼”を奪われたことになったボク自身、そして、おそらく先生の手腕を良く知る“観客”の無意識的な協力があって、初めて成立する呪術的な“罠”(トリック)だったというわけですね。

流石はボクの先生と、ここは称賛を贈っておきましょうか」

 

そして、彼女は提案する。

 

「夢と現実、ちょうど二面に分かれていることですし、お二人とも、同時進行でボクと対バンライブしませんか?

その方が楽ですし」

 

「なっ!」

「なんだと!」

 

観客(オーディエンス)の反応は最悪だった。

けれど、その感情の揺れ動きにも、確かに価値はあった。

 

その時、まるで空間自体が動揺したかのように、夢世界全体に大きな波紋が走ったのだ。

 

そして波紋が映し出すのは…もちろん、水面だ。

 

波紋を経て鏡のように澄み渡った天が映し出すのは、吸血樹と化した女神触手に未(いま)だ囚われたままの…ラリスキャニアの姿であった。

 

地下アイドルの言葉の通り、彼女をめぐる争いは、二つの面にまたがって行われていたのだ。

 

当然のことながら、魔女二人は申し合わせたように異議を唱えた。

 

「世迷言を…!」

「私たち二人を相手に勝てるとでも?

…まあ、私はともかく、今ここにいるコレは見る影もなく弱っているようですが」

 

と、思いきや、

 

「フッ…笑わせてくれる。

弱り具合は、貴様も大して違いはあるまい。

いや、頭の弱りっぷりは、流石の私も負けるか。

何が“愛の巣”だ!

この寄生虫ゾンビ女が!」

 

「なんとでもお言いなさい。

羨(うらや)ましいでしょう。

貴女のような永遠独り身モデラーには、ひとりコツコツ遊びがいのないプラモデル相手に、一人おままごとでもしているのがお似合いですよ」

 

「プラモデルではなく、レジンキャストキットだ。

遊びがいが無いとは、いかにも脳が腐ったゾンビ女神らしい言い草だな。

所詮は死体。

与えられた遊び(ゲーム)をなぞることしか出来ないらしい」

 

「なんですって!」

「やるか?」

 

すぐにお互いの言い争いに移った。

どうやら、二人の魔女の興味は、基本的にお互いだけにしかないようだ。

 

大して有名でもない地下アイドルなど、はなから眼中にないのだろう。

 

とは言え、

 

「しかし、さっきのは何だ?

あの下手な演出は?」

 

「確かに、それは私も気になります。

あの魔弾に込められていた呪力は相当なもの。

ちょっとやそっとでは、打ち破れないはずです。

 

あの妙なきぐるみは、一体どこから持ち出してきたのですか?

そういえば、どこかで見たような気もしますが…」

 

それでも二人は、ラリスキャニアにも興味を示してきた。

 

否、そうせずにはいられないのだ。

なにしろ、彼女が今しがた打ち破った魔弾は、いわば二人の対決が相乗効果で生み出したモノ。

 

どちらもアレを独力では退(しりぞ)けることが出来なかった。

 

けれど、それにも関わらずラリスキャニアは、まさにその撃退を成し遂げたのだ。

 

二人より明らかに、力も知識も劣っているはずの彼女が。

 

ならば、魔女たちがその理由を知りたがるのは、むしろ当然のことと言えるだろう。

それは、己の敗因の究明であると同時に、宿敵への勝因の解明であるのだから。

 

四つの貪欲(どんよく)な眼(まなこ)がたった一人の少女に集中する…!

 

 

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