幻想再帰のアリュージョニスト二次創作「コルセスカさん変形する」【togetterでも投稿中】 作:鳳卵
だが、それに対し地下アイドルは、じらすようにゆったりと喋(しゃべ)り始めた。
「アレは…ここではない場所、今でない時に活躍した“悪の英雄”のコスプレだよ。
あのシナモリアキラに、実質的に勝ち越しした、最強無敵の番外魔将だね!」
「だから、そんなモノ聞いたこともないと言っているだろうが。
この時点での魔将は既にわずか四人で、番外など少なくともセレクティ派にはいない 。
敗退した九人にもそんなヤツはいないし、新しく任命されたという話も無い。
その番外なんとかは、魔将でもなんでもないはずだ」
疑念を浮かべる女教師。
それに対し、
「なるほど、そういうことですか」
と人面樹は急に心得顔になった。
「分かるのか?」
「ええ、まあ大半は推測ですが」
知ったかぶりではあるまいな、という女教師の疑いの視線を、人面樹はさらりと躱(かわ)す。
そして彼女は、解説を始めた。
「アレは失われた世界線、有り得た『今』からの漂着物です。
別ルートから紛(まぎ)れ込んだ『バグ』と呼んでも良い。
そこの地下アイドルが、どこからそんな情報を得たのかは分かりませんが、ここは夢の中。
集合無意識を経由して、そうした遺失情報が紛れ込むことも、有り得なくはないでしょう」
「失われた世界線から漂着した『墓標船』もどき?
そして、アレが実在し得た魔将の模倣だと…?
馬鹿馬鹿しい。
過去が二つも三つもあって、たまるものか!
“別ルート”など、ただの貴様の世迷言ではないか。
実在が証明出来ない“世界線”など、所詮は存在しない虚無でしかない!」
「貴女が覚えていないだけで、別世界線の話はもう何度もしたのですけどね。
まあ、失われた真の第六位という過去に依存しきり、更に悲惨な過去にすがるしかないのが今の惨(みじ)めな貴女です。
そんな有り様(さま)では、他の世界線や有り得た別の過去なんて、認められないのは当然でしょうね」
「なんだと!」
「おや、やりますか?」
そしてまた魔女たちは、二人だけの世界に引きこもろうとした。
しかしここに、それを許さない者がいる。
彼女は、魔女たちの間へ強引に割り込む。
「その通り!
アレは“夢の中の夢”から帰ってくる途中で拾った台本に書いてあった存在だ。
シナモリアキラに勝ち越したという、縁起が良い“役”だったから、試しに景気付けの登場演出に採用してみたのさ!
まあ、だいぶ情報が欠落していたし結末の無い半端な状態だったから、多少は推測と想像で補う必要があったんだけどね。
でも、流石は陰から全てを操るとされるエクセレント大魔将だ!
あんなに強力な魔弾も、しっかり抑えきれたね!」
威勢よく自慢じみた説明を行う地下アイドルだったが…
「とはいえ、ソレももう無いようですね。
異なる世界線の記録を保持するのは、とても難しいことですし、それも当然でしょう。
しかも、それもおそらくは、強化前のアキラ様にまぐれで勝った程度でしかない相手。
たとえ再現が持続したとしても、私に勝つのは不可能だったでしょう
そちらの産業廃棄物相手なら、話は別かもしれませんが」
「フン、腕だけお化け(フリークス)が良く言うものだ。
アキラくーーシナモリアキラに勝ち越しただと?
そんな妄言を吐き散らすとは、私の生徒とは思えん狂乱ぶりだ。
どうやら、再教育が必要なようだな…!」
その自慢が逆鱗に触れてしまったのか、二人は、恐ろしい気迫を背負って威圧してきた。
魔女たちは、共にシナモリアキラの敗北を全く認めない。
だが、その二人に向かい、ラリスキャニアはまたも決然と言い放った。
「いいや、あの大魔将は、確かにシナモリアキラに勝ったんだよ。
まあ、実を言うと漂着した台本はわずかな断片で、戦いの決着はどうなったのか良く分からない。
けど、先が無いということは、つまりそこでもう、シナモリアキラが主役の物語は終わりを告げた、と解釈しても良いんじゃないかな?
主役が勝って、何かを獲得して終わる物語もあれば、負けて全てを失い、敵に主導権を握られる物語もある。
英雄の物語と言うのは、そう言うものだとは思わないかい?」
「…敗北の先には、死と屈辱が待つだけです。
そんな最悪な結末(バッドエンド)、私は絶対に認めません
アキラ様は絶対に負けません。
それに、彼の苦悩と屈辱を思う存分味わって良いのは、この私、アキラ様と不即不離の左手(ディスペータ)だけなのです!」
「そもそも、それは貴様が勝手に断言しているだけの解釈に過ぎん。
アキラく…シナモリアキラは、何度敗北してもわた…トリシューラの助力によって転生を繰り返し、最終的には必ず勝利し続けてきた!
現時点まではそうだったし、これからもそうだ!
シナモリアキラは、決して失われない!」