悪役を与えられた藤丸立香が聖杯戦争でオベロンを召喚する話   作:凛夏ナツ

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悪役を与えられた藤丸立香がオベロンと動き出す話

 

「召喚したサーヴァントとケンカしたぁ!?」

 

 勢いよく顔をのぞきこまれた立香は目を丸くすると、へらりと笑って首をかしげた。目の前で腕を組んで唸るのは、意志の強そうなつり目が特徴的な少女だ。胸元の紅いペンダントが動揺を表すように揺れている。

 

「いやー、まあ、あはは? そんなわけで色々心配だから、一緒に戦ってもらえないかなあと」

 

 チームを組むことが出来れば戦力が二倍になるし、情報だって共有できる。囲まれて殺される確率も減る。裏をかかれる心配もあるが、今の立香には遥かにメリットの方が大きかった。

 

「よく殺されなかったものだわ。だからって、マスターがサーヴァントの護衛もつけずに敵の家までのこのこ来るなんて……あなたね!」

「ひゃい」

 

 思わず首をすくめる。

 深海の瞳を更につり上げる彼女は、立香と同い年くらいだろうか。確かに、令呪をさらして気絶していたマスターの立香が殺されていないのは僥倖と言う他あるまい。ついでに、叱る口調と容姿はどこぞのバビロニアの女神にそっくりなことをここに記しておく。

 

「お腹が減って行き倒れてるなんてバカじゃないの!? しかも、道の真ん中で! 令呪に気づいて私が拾ってあげたから良かったものの、車にひかれてたらどうするつもりだったのよ! ほんとに魔術師なのかしらこの子!!」

「ふぁい」

 

 怖い。めちゃくちゃ怖い。

 迫力が違った。美人ほど怒ると怖いというが、下手すると前世でケガして帰ってきたときのナイチンゲールより怖いのではないだろうか。いやまあ、どこでも寝るクセがまだ抜けてないんだよね。

 ……というのは嘘で、実のところは昨夜のエウリュアレ襲撃による出血と脱水、寝不足による意識消失である。理由も聞かずに家まで運んでくれた彼女には、感謝しかない。

 

「でも凛ちゃん、優しいよね。私を殺さないでくれたし、開いた傷の手当てもしてくれた」

 

「はぁっ!? な、なな、褒めたって私の機嫌はなおらないのよ!! 大体、そんなケガするくらいなら最初から大人しく引きこもってれば良いでしょう!? あと貴女ね……」

 

 少女はほおを染めて怒鳴った。口調は心なしか柔らかくなった気がするが、説教は続く。こってり三十分はしぼられたあと。立香はしおしおと頭を下げた。

 

「すいませんでした……」

 

「……」

 

 凛の視線と沈黙が痛い。

 

「……反省なさい。このおバカ」

 

『──冬木市、午後のニュースです。一週間前の7月12日、空から突如光が地表へ降ってくる様子が確認されました。落下地点は不明ですが、研究者の間では隕石が落ちたのではないかと……』

 

 テレビの音声が、静かな部屋にわずかな彩りを与えていた。時刻は夕方。やわらかなオレンジの陽射しが窓からは差し込んでいる。

 

「まあ凛、そこまでにしてやんな。良いんじゃねェの。儂には悪いやつには見えねェが」

 

 キッチンから出てきた人物に、助かったと立香の目がかがやく。赤い髪に和装。腰に刀を差している。

 

「セイバー!」

「おじいちゃん!」

 

「誰が爺だ、だれが」

 

 軽く村正は立香の頭を小突いた。

 夕食の準備をしていたらしい。花柄エプロンとおたまがやけに似合うのはなぜだろうか。

 

「昨日はありがとう! あの後大丈夫だった?」

 

「おう、良いってことよ。儂も危なかったが、うちのマスターが令呪で撤退させてくれてな。で、まさかお前さんもマスターだったとはなァ」

 

「実は、あの後ちょっとね」

 

「ほお。相棒のクラスは何だい」

 

「……ライダーかな」

 

 ブランカに乗って飛び回るのだから、間違いではあるまい。プリテンダーなんて質問攻めに遭いそうなクラス、簡単に明かす訳にはいかなかった。もしこの地に召喚されている本物のライダーと遭遇した時は……その時考えよう。

 

「あ、そうよ! あなたとあなたのサーヴァントについて、しっかり聞かせてもらうんだから! セイバー、お茶!!」

「ほいよ。嬢ちゃんも」

 

 すかさず出されたお茶には付け合わせに簡単な料理までついている。ふわりと香ばしいバターが香った。

 

「なにこれ?」

「鮭とキノコのバターホイル焼きだ」

「めっちゃ美味しい」

 

 さすがおじいちゃん。お茶を飲みほして、さっそく皿に手をのばす。感心しながら、立香はここに来る前のことを思い出した。

 

 

『邪魔。足手まとい』

 

 偵察から帰ってきたオベロンは辛辣だった。参加しているサーヴァントについて、一緒に立香も調べに行くと告げた際の返答がこれである。

 

『私だって探すことくらい出来るよ! 見た目からどのサーヴァントか分かるし。役に立てると思う!』

 

『……へえ?』

 

 オベロンが浮かべたのは黒い笑みだ。

 立香が横になっているソファに手をつくと、上から見下ろす。散らばったオレンジの髪をすき、異形の手とは反対の、白くて細い指がするりと立香の頬をなぞった。ぐっと顔を近づけてささやく言葉はたぶん、オルタの鎧よりもトゲが多い。

 

『カルデアの記憶なら俺にもあるけど? なんなら僕、一応ブリテンを滅ぼしきるくらいの力はあるつもりなんだけどなー? それでマスター、一緒に来て何が出来るって?』

 

 いつもの二倍増しで悪態がひどい。

 立香のほおを冷や汗が流れ落ちた。

 わかる。これはオベロンがそこそこ機嫌が悪いときの態度である。何故だ。そんなに地雷だったのか。

 

『精々大人しく、そこで傷が痛いって泣きわめいてなよ。俺はもう少し探ってくるからさ』

 

『……』

 

 パタンと部屋の扉が閉まる。

 ベッドに残された立香はへこんでいる……わけもなく。

 

『……ふふ、ふふふふふふふ』

 

 夕焼けの髪がふるふると揺れる。

 オベロンの言葉は、逆に立香に火をつけていた。その程度でへこむ藤丸立香ではない。こっちは伊達にマスターやってなかったのだ。

 

『ついて行かせてもらえないなら、一人で行くもんね! オベロンよりもすっごい情報掘り出してやるんだから!』

 

 

 

「……って啖呵きって、」

 

 結果、行き倒れたあげく他のマスターに保護されている訳だが。

 

「嬢ちゃん、夕飯も食ってくだろう?」

「もちろん!」

 

 訂正。しっかり夕飯までご馳走になるつもりな訳だが。おじいちゃんのご飯は美味しいのだ。

 

「──って感じ!」

 

 一通り立香の説明を聞き終えると、凛はわなわなと唇を震わせた。

 

「立香あなた、自分のサーヴァントのことほとんど分かってないじゃない! 妖精の王様ァ? 何よその適当な説明! 何よそのまぐれみたいな召喚!」

 

「ごちそうさまでした!」

「おう、細っけェんだからまた食いにこいよ」

 

「って、聞いてないし!」

 

 ごめん、凛ちゃん。

 凛のツッコミを聞きながら、心のなかで立香は謝る。立香はイレギュラー過ぎたのだ。前世の記憶と全てのサーヴァントの情報を持っていることは、さすがに話せなかった。必然的にオベロンのことも当たり障りのない範囲しか伝えていない。

 

「……最後には、必ず話すからさ」

 

 

「あなたのサーヴァントが協力的でない今、手の令呪はこれで隠すこと。魔術を施してあるから無いよりましだと思うわ。帰りもセイバーに送らせるから待ってなさい」

 

 凛が渡してきたのは手のひらを覆うグローブだ。どことなく前世で使っていたものに似ている。

 

「うわあ、何から何までありがとう!」

 

 ゆるゆると夕焼けが薄れゆく。立香は駆け出して、振り返ると叫んだ。

 

「本当にありがとう凛ちゃん! 大丈夫、まだ夕方だしすぐそこだから! 今度はうちにも招待するね!」

 

「立香!」

 

 一歩踏み出すと、呼び止められる。

 顔を真っ赤にした凛が、そっぽをむいて口を開いた。

 

「ど、同盟のことは前向きに考えてあげるわ! ……気をつけて、帰りなさいよ」

 

「うん! ありがとう!!」

 

 一人、黙々と足を動かす。帰り道には誰も居なかった。黄昏の中に、歩く影が長く伸びた。夕焼けに向かって湿った空気と宵闇が迫る時間帯は、人影の輪郭も曖昧に溶かしていく。

 恐怖へといざなうように。狂気の満ち満ちる箱庭へと、導くように。

 

 其は罪人なり。

 五つの楔の生け贄なり。

 決戦の地に贖罪を求むるは、降臨者の慈悲なり。

 

 

「──ねえ、わたしとお祈りしてくださる?」

 

 つい、と服の袖をひかれた。

 幼い声だ。暗く、おぞましく、狂っていて、それら全てを愛らしさで覆い隠している。

 

「ダメかしら……ああ、いきなり頼んだら困ってしまうわね。そんなことにも気づけなかったなんて」

 

 足がとまる。立香の影を呑み込んで、後ろから闇が差していた。

 

「──わたし、いけない子だわ」

 

 

 

「いやー、どうやら僕はマスターとの縁に嫌われてしまったみたいでね。気づいたらここにいたんだ。憐れなはぐれサーヴァントだよ」

 

 オベロンは片ひじをついて、胡座を組んでいた。口角こそ上がっているが、黒銀の髪からのぞく瞳はぞっとするほど冷めている。向かいにあるのはつづら折りの御簾だ。近代的なフロアの中にあって、明らかに浮いている。外側からは人影だけが透けて見えた。

 

「にしても、素晴らしい場所だなあ! どうしたらこんなに素敵な場所を選べるんだい?」

 

 ちりん。ちりりん。

 御簾の人影が動いた。 

 

「心にもない賛辞はおやめなされ。拙僧、キャスターでございますゆえ。なけなしの魔力を編んで庵を作った次第にて」

 

「……ふうん?」

 

 オベロンはことりと首をかしげる。庵と言うには立派過ぎた。

 高層ビルの最上階、ワンフロアを貸し切ったそこには、人の背丈ほどの箱が整然と並んでいるのだから。箱からはわずかに稼働音が漏れている。聖杯から与えられた知識が、スーパーコンピュータだと正体を告げていた。

 

「そちらのクラスをお伺いしてもよろしいですかな?」

 

 探るように影が問う。オベロンは軽く肩をすくめてみせた。リノリウムの床と一面のガラス窓に覆われたフロアは、氷点下まで冷えきっている。

 

「僕? 僕はただのライダーさ。困ったことに能力も支援向きでね。仲間がいた方がこちらとしても都合が良い。利害の一致ってことで考えておくれよ。昨日の敵は今日の友って言うだろう? 明日の敵が友だって良いじゃないか」

 

 アサシンが気配を消して人知れず殺すことを得意とするならば、プリテンダーの本懐は演じることである。あたかもそうであるように、言葉に疑う余地のない説得力を滲ませて。それはつまり、その身に纏う霊基や魔力でさえも真似てみせることを意味する。

 オベロンの言葉に、人影は納得した様子をみせた。

 

「ンン、確かに。マスターとのパスが繋がっている様子もありませんな。……ええ、ええ、良いですとも! お互い不憫なサーヴァント同士、手を取り合ってこの戦に挑みましょうぞ!!」

 

 ああ、心底下らない。

 オベロンは笑みを浮かべた。完璧で、見るものをはっとさせる、魅力的な笑みだ。

 

「やったー、嬉しいなあ。こちらこそ、よろしくね?」

 

 フロアには静かな稼働音が響くだけだ。目を細めると、さらなる情報を引き出すために口を開く。

 

「それで法師さまは、聖杯を何に使うのかな。願う理想があるんじゃないのかい?」

 

 ちりん。ちりりん。

 

「ンンンンンンンンン……」

 

「んー?」

 

 思案するように御簾の影がゆらぐ。両手を伸ばしたが如く、影が大きく広がった。

 

「……とある者への執着と言っても過言ではありますまい。そのために更なる高みへと上り詰め、愉悦を味わう。なんと甘露なことでしょう! 拙僧が拙僧であるがゆえに! 悪とは他人の信念や信条、筋というものを踏みにじってこそ。苦痛で歪む顔を見るのは心底気持ちが良いものですぞ」

 

 どこまでも自分の心のままに理想を追い求め、他人の運命をねじ曲げて、苦しむ様を嘲笑う。オベロンは、静かに呟いた。

 

「……悪とは、エゴなのかい?」

 

「ええ、エゴですとも。して、ライダー殿。勝利の暁には何を望むのですかな?」

 

「いやーどうかな。僕は存在自体が夏の夜の夢のようなものだからね」

 

 毒気のない顔で、へらりと虫は笑う。

 泥のつまった聖杯など、『予言の子』に群がる妖精どもと同じくらい価値がない。一国を滅ぼすためにお膳立てしたのが自分とはいえ、もう一度過去に戻ってやりたいとは思わない。

 

『おねがい。オベロンは私のことが嫌いでしょう? 最初で最期だからさ……ね?』

 

 絶対にあなたなら、私を殺してくれると思ったの。

 あの時。最後の瞬間。血まみれで伸ばされた震える手。光の消えかけた夕焼けの瞳。

 

「……」

 

 悪とはただそこにあるもの。

 他人の物語を消費しながら、人間や妖精みたいなどうでも良いくせに幸せそうな奴らなんてどうでも良い。ぽっかり奈落の口を開け、世界を終末へと導くのは、輝く星がそこにあるから。

 

 オベロンは口の端を歪めて嗤った。

 

「いつか、全部めちゃくちゃにしてやろうと思って、とか? なーんてね」

 

『見守っていてほしいんだ。頑張れる気がするから』

 

 妖精郷の滅びの運命を見届けた。終末装置は、再び物語を見守る。いつでも消し去ることは出来るのだから。奈落はいつだって悠々と口を開けて、獲物が堕ちてくるのを待っている。

 

 切りかえるようにポンと手を叩く。オベロンは片膝を立て、その上にあごをのせた。

 

「ありがとう、そろそろ帰るよ。法師さまは美しく、モースもびっくりしちゃう、荒々しい獣みたいな人だね。だから、畏れ多くてこんなのもらえないよ」

 

 異形の手の中で塵になったのは、目玉のついたヒトガタの独特な紙。式神と呼ばれるものの類いだ。人影は残念だというように唸った。

 

「なんと。徐々に蝕まれてその綺麗な顔が腐り落ちる、会心の呪いだったのですがなあ。さ、さ、残りはまだありますゆえ、遠慮なさらずとも良いのですぞ。……そうそう、そちらもお忘れなきよう」

 

 どちゃり。

 黒いものが足下に捨て返される。落ちてきたのは虫の死骸だった。オベロンもまた、笑んでみせた。

 

「おや残念。置き土産だったのに」

 

 蟲の顔が凶悪に歪んだ。

 

「ああ、知らないかな? ちなみにそれ、死番虫って言うんだ。とにかく全てを食い散らかすヤツでね。法師さまはマツの木みたいに良い香りがするから、デザートくらいにはぴったりなんだろうなー。あ、そうだ、」

 

「とぉっても術が上手いから、もしかして法師さまの真名は、あの有名な陰陽師だったりするのかなあ?」

 

 ちりん。ちりりん。ちりりりりりりりりり。

 

「それじゃ、せいぜい仲良くしようね?」

 

 オベロンの身体を足下から湧いた虫たちが這い回る。頭のてっぺんまで覆われたかと思うと、そこには誰も居なくなっていた。

 

「ンンン。ンッふ、ンンンンンン!!!」

 

 御簾の影が足を踏み鳴らす。頑丈に造られたはずのフロアがきしみ、壁がたわみ、冷たい室内の空気がビリビリと音をたてた。

 

「おのれ晴明……セイメイィィぃいいいいい!!!!」

 

 めきゃりと鋭い爪で割かれた御簾からは、獣さえも易々と引き裂く腕が飛び出していた。

 

 

 夜の街、路地の片隅にて。

 

「!」

 

 ずぶり。

 見下ろせば、胸から黒い槍が突き出ている。引き抜かれて鮮血が飛び散る。そのまま地面に崩れ落ちると、背後で振るって血を払い落とす音がした。

 かろうじて意識を保った視界で見れば、そこにあったのは黒い狂王の姿だった。

 

「あの時の逆だな」

「……そうね」

 

 校舎への襲撃を指しているのだろう。本当に、男だからと油断したものだ。

 

「ふふ、楽しかったわ。もう少し遊びたかったけれど、本当よ……」

 

 言い残すと偶像の女神は光の粒となって消えていった。

 

「ふん。悔やむなら、俺の前に立つんじゃなかったな」

 

 消えた辺りを紅玉の目で見下ろしていた男は、ピタリと動きを止める。そして、唐突に手元の槍を投げつけた。隅の電柱が砕け散る。

 

「おい、いつまでコソコソ見てやがる。てめェも殺すぞ」

 

 狂王が曲がり角の先を睨むと、一人の男が姿を現す。革靴が路地裏にコツリと響いた。独特の黒い外套、ぴったりと撫で付けた髪。滑るような歩き方。

 

「失礼。大変鮮やかな槍さばきだったものでね。こちらに戦う意思はない。場合によっては、君の力になろうとも。光の御子……いや、反転したクーフーリンといったところか」

 

 舌打ちと共に狂王からの殺気が増す。

 微笑んだ男は何もないことを示すように両手をあげてみせた。その言葉はどことなく胡散臭い。

 

「てめェは誰だ。何の目的でここに来た」

 

 男は取り出したパイプを咥え、思案げに腕を組む。

 

「ふむ。聖杯戦争で真名を名乗るのは本来良しとされないが、構わないだろう。私は参加者では無いからね。……シャーロック・ホームズ。探偵だとも」

 

「ここには証拠を集めに来たんだ。全てが揃わなければ犯人は明らかに出来ない。証明は成立しない。現場百辺と言うだろう? ワトソンくんは居ないからね。安楽椅子探偵も、たまには動かねばなるまいよ」

 

「さて、実際の参加者の君から話を聞こう。今回の聖杯戦争で、何かおかしな点はなかったかね?」

 

「あァ? そんなもん無ェ……」

 

 狂王の脳裏によぎったのは、どこまでも澄んだ夕焼けの瞳。困ったように笑う少女。どこか、見覚えのある気がした。

 

『私の一番槍だった君になら、殺されてもいいかな、なんて』

 

「ふむ、何かあるようだね。是非とも聞かせてもらえないだろうか」

 

 ホームズは様子を見てとると、片眉を上げた。

 探偵の前に、必ず事件のヒントは現れるようになっている。散らばったピースを集め、真相へたどり着くのはそう遠くない。

 

「私は聖杯戦争の裁定者として呼ばれているからね。違反者には相応の罰を下す必要がある。君の話はとても──興味深い」

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