チート転生トレーナーと新妻スズカさん   作:ウマウマ

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スペ

新人トレーナーが将来有望なウマ娘のサイレンススズカと電撃契約。

まあ、それなりの騒ぎになった。

 

それと隠してはいないので、俺とスズカが婚約者同士だと言うことは直ぐにバレた。

とは言え、たづなさんが事前に気を使ってくれたのだろう。

発言力のあるベテラントレーナー達がそれとなく気を使ってくれたので、思っていたよりは風当たりは強くない。

強くないが、何にもないわけではない。

 

「恥ずかしくないのかしら?」

「何がですか?」

「借金を理由に婚約者になって、契約を結んだそうじゃない」

「ええ、事実です。ですが、何故そうなったのか。それを知らない貴女に文句を言われる筋合いはない」

 

教職員専用の休憩室の自販機で一服していると、若い女性トレーナーがそんなことを言ってきたので、そう返した。

俺の言葉にムッとした表情をする若い女性トレーナー。

ま、はたから見たら俺は悪役だからなぁ。

 

「それと文句を言うなら、欧州の金融危機を招いた連中か、会社を傾かせたスズカの父親。もしく俺の祖母へ」

 

もう決まったことを、後から俺に言われても困るよ。

俺がそう言うと、何か言わないと気が済まなかったのだろうな。

 

「……サイレンススズカは優秀なウマ娘よ」

「そのようで」

「今のような状態では、メンタル面で問題があるのでは?」

「それは無いですね」

 

俺が断言すると俺に話しかけてきた若い女性トレーナー以外の周りで様子を伺っていた他のトレーナー達も反応する。

 

「まず、スズカの借金は何時でも俺が肩代わり出来ます。走ることも体力を考慮した上で自由に走らせます。当然、学校も退学する必要はない。他にも問題ないと言える理由はありますがプライベートのことなので言う必要はありませんね」

「……随分、自信があるのね」

「ウチの腐れババアが切っ掛けとは言え、スズカは俺の婚約者。年下の婚約者のメンタル面をケアするのは当然では?」

 

俺の腐れババア発言に周りは驚いている。

 

「兎に角、周りにとやかく言われる筋合いは無いです」

「……サイレンススズカは貴方にふさわしいとは思えないけれど?」

「それを決めるのは俺達じゃない。スズカ自身だ。……俺に絡んでる暇があったら、トレーナーとしての仕事をしたらどうだ? 俺はスズカだけを見ていればいいが。貴女の場合は貴方のことを必要としているウマ娘が複数いる筈だが?」

 

いい加減うんざりしてきたので、俺はそう言って、その場を後にする。

彼女は俺の一年先輩のトレーナーで、チームのサブトレーナー。何人かのウマ娘の面倒を見ていたはずだ。

まだ、個人で契約しているウマ娘は居なかったような気がする。

 

代々ウマ娘に関わっている家の人間でも新人だと個人で契約できない場合もある。

俺達の世代のトレーナーも個人で契約しているのは今のところ半分くらいだろうか?

直ぐにチームへ所属してサブトレーナーになった者も居れば。

単独で活動しているトレーナーも居る。

 

「しばらくは。トレーナーの友人は出来そうにないな」

 

どーすっかなぁ。結構、大変そうだなぁ。

友達が居ないと、スズカの並走相手とか他にも色々と情報交換も出来ないし。

 

 

 

「あ、もしもし、たづなさんですか? 変質者が学園内に。ええ、スズカの同室の子の足を触って蹴り飛ばされて。はい、死んでません」

「す、スズカさーん」

「大丈夫よ。スぺちゃん」

 

俺はスマホを仕舞い。歩道で仰向けで気絶している沖野トレーナーを眺める。

この人、この世界でも相変わらずなのか。

俺はトレーニングの為に、スズカと待ち合わせをしていたコースへたどり着くと、ちょうど沖野トレーナーがスぺの足をベタベタ触って顔面をぶっ飛ばされるところだった。

 

まあ、ちょっと安心した。

チームシリウスが無いが。沖野トレーナーのスピカとおハナさんのチームリギルはあったから、居るのは知っていたけれど。

 

「う、うぅっ、ここは?」

「起きましたか? 変質者」

「えっ、変質者って」

「スズカの後輩の足を撫でまわして、後輩の子に顔を蹴り飛ばされたんですよ」

 

覚えていますか? と聞くと。ああ、と納得した表情になる沖野トレーナー。

 

「いやぁ、良い脚だったから、思わず撫でてしまってな」

「今、たづなさんに連絡をしたので安心してくださいね」

「マジかよ! 全然安心できねぇよ!」

 

慌てる沖野トレーナー。まあ、たづなさん怖いからな。

 

「って、お前は確か」

「あ、サイレンススズカのトレーナーです。それとスペシャルウィークにまずは謝った方がいいですよ」

「あー、そうだ。すまなかった」

 

沖野トレーナーは立ち上がり、直ぐにスぺに頭を下げた。

いきなり脚を撫でまわした男に頭を下げられて、戸惑いながら謝罪を受け入れるスぺ。

 

「は、はい、その。分かりましたから頭を上げてください」

「お、おう。ところで、お嬢さんお名前は?」

「スペシャルウィークです」

「良かったら、俺の所に来ないか?」

「いえ、結構です」

 

沖野トレーナーの誘いに即答するスぺ。一応、フォローしておくか。

沖野トレーナーはかなり成績の良いトレーナーなのは既に情報を得ている。

トレセン学園に行く前に有名どころのトレーナーは全員調べているからね。

 

「あー、スぺシャルウィークだったよね」

「は、はい。スズカさんのトレーナーさん」

「駆で良いぞ。えっと一応、フォローしておくと沖野トレーナーはトレセン学園でも上位のトレーナーだぞ」

「え?!」

「そうなのですか?」

「おいおい、上位って言うなよそんなこと」

 

驚くスぺとスズカ。ちょっと嫌そうな表情をする沖野トレーナー。

 

「君がどういう目標があるのかは分からないが。上を目指すつもりがあるのなら、脚を勝手に触った料金として契約しても良いのではないかな?」

「いや、待て、無理にとは言わねぇよ」

 

断られても仕方がない。という表情の沖野トレーナー。

 

「いいんですか? スペシャルウィークの脚を撫でまわしたのって、逸材だからじゃないですか?」

「まあ、良い脚をしていたのは確かだが。それだけじゃない」

「他にどんな理由が?」

「我慢できなくて、つい触っちゃってさ」

 

恥ずかしそうに頭をかく沖野トレーナー。

俺は沖野トレーナーの背後に音も無く近づいてくるたづなさんにこう告げる。

 

「痴漢はここに居ます。連れて行ってください」

「え?」

「はい、分かりました。行きますよ」

「え、ちょっと!? たづなさん?!」

 

助けを求める声が聞こえてきたが、俺は無視してスズカとスペシャルウィークへ視線を向ける。

 

「大変だったな」

「い、いえ、ありがとうございました」

 

俺がスぺに向かってそう言うと。スぺは慌てて頭を下げてきた。

 

「スズカも遅れてすまなかった。確認だが、今日はスペシャルウィークと一緒でいいんだな?」

「はい、駆さんも今日は軽めにすると言っていましたから」

「ああ、ちょっと体力的にきついかと思ってな」

 

それから、一通りスズカとスぺはトレーニングに励んだ。

俺もスぺにアドバイスをしながら、スズカの調整を行う。

 

「ど、どうでしょうか?」

「そうだな。個人的には、先行で走らせたいな」

「先行、ですか?」

「ああ、差しはどうしてもバ群に飲まれる可能性がある。スペシャルウィークは」

「あ、スぺって呼んでください。長いですから」

「分かった。スぺがスタミナに自信があるなら、先行がいいと思う。長距離は差しがいいかもしれないが」

「なるほど」

「ま、参考程度にしておけ」

 

こうして、俺は一日のトレーニングを終えた。

で、その帰り道。周りに誰も居ないことを確認したスぺが俺に聞いてきた。

 

 

「あの、もしかして、スズカさんと駆トレーナーって付き合ってます?」

 

スぺの言葉に足を止めてしまう俺達。

俺はスズカを見ると、スズカは首をぶんぶんと横に振った。

 

「なんでそう思ったか、聞いてもいいか?」

「え、えっと、走るフォームの時に駆トレーナーは私の身体に触れる時、指は二本で軽く触っていました」

「まあ、年頃の娘さんだからな」

「あ、ありがとうございます。えっとそれで、スズカさんの時はしっかりと手で腕や足を握っていて、その時のスズカさんの顔は嫌がっていなくて」

「まあ、少しは信用してもらえてると思っているから」

「信用してるから、安心してくださいね。駆トレーナーさん」

「ありがとう」

 

俺がそう言うとスぺは手をこちらに向けて。

 

「それです、二人のその表情」

「はい?」

「どういうこと、スぺちゃん」

 

スズカの言葉にスぺはこう告げた。

 

「その、お二人がやり取りをする時、なんというかなんとなーく甘い雰囲気と言いますか。二人が優し気な表情をしていると言いますか」

「な、なるほど」

「それに、タイムを計った後。スズカさんもう一度走りに行く前に、尻尾を駆トレーナーの左手首に一瞬だけ、巻きつけましたよね」

「え?」

「ああー、してたな」

 

本当に一瞬だったのに、良く気付いたな。

スズカは無意識にやってたのか。

 

「そ、そんなことしてないわ。スぺちゃん」

「いいえ、してましたよね。駆トレーナー」

「ああ、割と最近、一瞬だけ尻尾を巻きつけて来るぞ。スズカ」

 

「え、ええっ!?」

 

少しだけ頬を赤らめて、驚くスズカ。

え、無意識だったのか?

 

「無意識にやっているなら、それだけ俺に慣れたってことで」

「は、はい、そうですね」

「え、えっと。それで、お二人は……?」

「ああ、そうだな。教えておくか。ただ、隠していないけれど、大っぴらにしているモノではないから。周りには言わないようにね。理由が理由だし」

「あ、はい。分かりました」

 

 

五秒後、婚約者同士だと教えて、スぺが大声を上げた。

とりあえず、落ち着かせて、恋愛話に眼を輝かせるスぺに言える範囲で俺とスズカの馴れ初めを教えておいた。

 

スズカは改めて、婚約者同士だと言うことを自覚したのか、かなり恥ずかしそうにスぺを止めようとしていたが。

 

先頭民族で割と暴走しそうになることが多いスズカのストッパーは多い方がいいので、俺は言える範囲でスぺにスズカの弱点となる話を教えておく。何かあったら止めてね。スペ。

 

 

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