チート転生トレーナーと新妻スズカさん   作:ウマウマ

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第7話

エアグルーヴが桜花賞に続いて、オークスに勝利した。

 

アプリで俺はエアグルーヴを気に入っていたので、桜花賞が近くなった時にそれとなく、「季節の変わり目だから、熱に気を付けてな」と温かいレモン飲料を小まめに上げた。

スズカにも上げていたが、エアグルーヴを心配していたからかスズカはちょっと拗ねていた。

 

ハナさんにも気を付けるように言っていたお陰か。

無事に桜花賞に出走していた。

 

ちなみに熱を出したウマ娘がそこそこいたので、後にハナさんに感謝された。

どうもチームリギル内で熱を出したウマ娘がいたらしい。

あ、ちなみにアニメのリギルみたいに主要なウマ娘だけが所属しているわけではない。

所謂モブウマ娘も居た。まあ、みんな才能があるので流石リギルと思ったけど。

 

「おめでとう、エアグルーヴ」

「おめでとうございます。エアグルーヴさん」

「ありがとうスズカ。駆トレーナー」

 

レースの後の控室で、俺はスズカの付き添いでエアグルーヴにお祝いを告げる。

それから、スズカとエアグルーヴは柔らかな雰囲気で話し始める。

 

「来てくれてありがとうね」

「いえ、スズカも来たがっていたので」

「それで、レースはどうだった?」

「良かった。としか感想が出てきませんね」

「相変わらず、冷静ね」

 

自分が育てたウマ娘なら、「いけぇっ!」とか叫ぶだろうが。

割と冷静にレースを観戦できた。

ウマ娘のレースは競馬と違ってギャンブルではないし。

 

「そうですね。俺よりもスズカの方が興奮していましたね。良い刺激になったと思います」

「デビュー戦が楽しみね」

「ええ、俺もです」

 

順調にステータスが上昇しているので、出遅れでもなければ、スズカが負けることはない。

スタートの練習もしっかりとしているし。大丈夫だろう。

……アプリだとたまーに9着。みたいなことが起きるけれど。

 

「エアグルーヴさん、ライブの準備をお願いいたします」

「はい」

 

こうして、俺とスズカは二冠ウマ娘になったエアグルーヴのライブを見てからトレセン学園に戻った。

 

 

「エアグルーヴ、気持ちよさそうな走りでした」

「そうだな。必死だったろうけど、気持ちよく走っていたな」

「駆さん、私も気持ちよくレースで走れるでしょうか?」

 

少し不安げな表情のスズカに、俺はしっかりと答えてやる。

 

「慌てず冷静にスタートをして、自分のペースで先頭を走っていれば、スズカは気持ちよくゴールが出来ると思うぞ」

「本当にそう思いますか?」

「ああ、もちろんだ」

 

良かったと呟くスズカ。

駅から降りて、少し人通りが少ない歩道を歩きながら、俺は考える。

スズカの為に何が出来るだろうか。

 

「不安か?」

「ちょっぴり」

「そっか。手でも繋ぐか?」

 

俺がそう言うと、スズカは俺の方を見て「はい」と笑いかけてくれた。

 

「メイクデビュー、いつも通り走ればいいからな」

「はい」

 

そして、メイクデビュー当日。

 

『サイレンススズカ一人旅! サイレンススズカだけが、今! 最終コーナーに入りました!』

 

まあ、その予想していた通り。

大逃げに近い逃げで、スズカがメイクデビュー戦を勝利。

これにはハナさんと沖野トレーナー。スペシャルウィーク達、交友関係のあるウマ娘達が度肝を抜かれていた。

大差をつけての勝利だったからな。

 

「大逃げって言えるほどの逃げ。よくやらせたわね」

「本人にとって一番走りやすい方法を磨いた方がいいかと思いまして」

「それが、大逃げってことか?」

「はい、それにスズカはバ群が本当に苦手で、囲まれるとキレるんですよね」

「「え?」」

 

俺の言葉にその時のスズカのことを知っているスペシャルウィークは、「ああ、そうでしたね」と苦笑いを浮かべる。

スペシャルウィーク達黄金世代と模擬レースをしたことがあるのだが。

スズカが出遅れてしまい、埋もれたことがあった。で、キレて爆走して。結果的にギリ勝てた。

スペシャルウィーク達がちょっと怯えていたからな。

 

「掛かって無駄にスタミナを消費するくらいなら、自然と大逃げになる走りをさせた方が良いかなって」

 

ちなみに、キレた場合スタミナを消費した後、無事に勝ったとしてもその後かなり不機嫌になる。

本人にもどうしようもない感情らしい。スズカは結構そういうところが不器用だ。

 

ハナさんは難しそうな表情をして、沖野トレーナーは面白そうな表情をしていた。

 

「では、スズカを迎えに行ってきます」

「おう、行ってこい」

 

 

 

「スズカ」

「駆さん」

 

駆け足でスズカの元へ行くと応援してくれたファン達へ手を振り終えた後。

 

丁度退場するところだった。俺とスズカはターフから退場する。

通路を歩きながら、俺はスズカを祝福する。

 

「メイクデビュー勝利、おめでとう」

「ありがとうございます。駆トレーナーさん」

「次はライブだ。頑張れよ」

「はい! 見ててくださいね」

「ああ、ずっと見ているからな」

 

このままスズカがライブの準備にそのまま向かうような雰囲気だが、俺達は控室へ向かい、待機する。

控室で待機している間は、レース後のスズカの脚を確認。それが終わると俺は椅子を並べて横並びに置いて、俺達はくっついて座る。

 

「あ、あの走ったばかりなので」

「俺は気にしない。それに今は少し傍に居たいんだ。駄目か?」

「い、いえ、大丈夫です」

 

汗の匂いを気にするスズカ。だが、気にしすぎだ。

俺はスズカに確認してから、髪を撫でる。

くすぐったそうにしながら、スズカはちょっと躊躇するように俺の肩へもたれ掛かる。

 

「気持ちよく走れました」

「それは良かった」

「駆さんのお陰ですね」

「スズカの実力でもある」

 

俺がそう言うとスズカは小さく笑う。

 

「スズカの御両親、来れなくて残念だったな」

「はい、でも、大丈夫です。駆さんが居てくれるから」

 

俺は無言でスズカの肩に手を回す。

本当ならスズカの御両親は来るつもりだった。

それをやんわりと止めたのが婆ちゃんだ。

 

止めた理由は親に甘えるよりも俺に甘えさせろと。

俺は婆ちゃんに「親が居なければ確かに俺に甘えるしかないが。依存になるかもしれない。それは駄目だ」と言ったが。

婆ちゃんは「親離れ、子離れはどちらにしても必要だ」と言われたスズカの御両親は今回はスズカのレースを見に来るのを止めた。

 

確かにスズカは俺に遠慮があるとはいえ、割と甘えん坊だ。

御両親にも割と甘えるそうだ。

婆ちゃんも、スズカの両親が過保護だと見抜いていたんだろうな。

 

「御両親が来ない理由ちゃんと聞いたか?」

「はい」

「そうか、すまない」

「ううん、駆さんが悪いわけじゃないです。寧ろ感謝しています。それに」

「それに」

「今は甘えてますけど、駆さんにも甘えさせてあげますね」

 

優し気に笑みを浮かべるスズカに俺は「疲れた時は頼む」とだけ言った。

しばらくして、スペシャルウィークなどもやってきて祝福してくれたので、俺はとりあえずスズカから離れて祝福しに来てくれたみんなを控室に招き入れる。

 

メジロドーベルとタイキシャトルも良い仕上がりだ。

二人も無事にメイクデビュー戦で勝利することになる。

 

 

そして、ウイニングライブも無事に終わり。

後日、トレセン学園で俺達は取材を受けることになった。

 

「では、サイレンススズカさんは目標が無いと?」

「あ、はい。そのレースで気持ちよく走りたい。そう思ってトレセン学園行きました。明確にどのレースを目指している。と言うものはありません」

「それは珍しいですね」

「ええ、俺も初め少し驚きました」

 

取材に来た方は月間トゥインクルの方だったので、俺も落ち着いて対応する。

まあ、メイクデビューしたばかりのウマ娘に意地の悪い質問はしないか。

 

「それでは、今後の目標のレースなどは」

 

記者の質問にスズカが俺を見た。

俺は一応、良いのか? と聞いてから、記者の質問に答えることにした。

 

「出走が出来るなら、G3の新潟ジュニアステークスをその後はレースを一つ挟むか分かりませんが、ジュニア級のG1の朝日杯かホープフルのどちらかを」

 

そこまで言いかけて、スズカが俺の左腕の袖を引いた。

どうした? とスズカの方を見るとスズカが何でもないようにこう言った。

 

「朝日杯とホープフルは二つとも出走するんじゃないんですか?」

「いやいや、出ないから! あの冗談を本気にしないでくれ」

「え? 二つとも?」

「ああ、待ってください。記者さん。前にスズカに冗談でスズカの脚なら二つとも勝てるなって言ったんですよ」

 

俺の言葉になるほどね。と納得する記者。

話はこれで終わるつもりだったのだが。

 

「二つとも出たいです」

「ええ……」

 

マジな表情のスズカに俺と記者さんも困惑することになった。

この後、記者さんに朝日杯とホープフルの二つに出走すると言う話は書かないでほしいと伝え、記者の方も本格化が始まったばかりのジュニア級のスズカの言葉を真に受けたりはしなかった。

 

 

 

メイクデビューで勝利したスズカは今年の注目のウマ娘の一人となった。

 

メジロドーベルやタイキシャトルよりも注目度が上だった。

大差での勝利だったからな。

 

それと別に隠していないので俺とスズカの関係は即座にバレた。

ただ、借金などについては書かれていない。

トレセン学園側がバレて直ぐにそれとなく情報を開示したらしい。

 

スズカがデビューしたので改めて、たづなさん経由で「健全なお付き合いを」と釘を刺された。

ま、その辺は別に問題はない。問題なのは。

 

「この雑誌の取材はお断りで、お願いします」

「は、はい」

 

珍しく俺は心を制御しながら、無表情で向かいの席に座るたづなさんに返答をした。

ちょっと怖がっているたづなさんには申し訳ないが、取材を申し込んできた元々の雑誌の内容が少々下世話だったので弾いた。

 

「それと月間トゥインクルともう二社のモデルの話ですが。穏当なモノで」

「はい、それについても毎年のことなので、こちらでも目を光らせています」

 

メイクデビューをしたウマ娘の特集があり、そのモデルとしての衣装も穏当なモノにしてもらう。

本人が好んで露出や大人っぽい衣装もある。スズカが望むなら、少々大人っぽい恰好でもいいけれど。

個人的には嫌だなと。

 

「世間の目はあまりよくなさそうですか?」

「いえ、サイレンススズカさんとの関係は好意的にみられていますよ。親子のファンが多いですね」

 

後で知ったが、スズカとピクニックへ行った時に出会った家族の人達がファンになってくれた後、色々とSNSで書き込んでくれたらしい。

そこから、幼い子供がいる家族がファンになりやすくなったそうだ。

 

「それは良かった」

「ただ、借金の一件のことが露見すると少々炎上する可能性があるかもしれませんね」

「ええ、それについては既に支払いを終えました」

「え?」

「実はスズカの家の借金はもうないんです」

 

後々面倒になるのは分かり切っているので、スズカのメイクデビュー前に、二年くらい前に描いた絵画複数をオークションで売却して金を作った。

足りない分は元々の貯えを使った。

 

婆ちゃんに支払って、スズカの家の借金はチャラにしてある。

スズカの御両親が俺に土下座してきたのは驚いたが。額が額だったので受け入れた。

ただ、その後すぐに、泣きそうな表情でスズカも俺がさらっと支払ってしまったので、申し訳なかったのだろう。

土下座してしまって色々と大変だった。

 

「必要な手続きは終えてます」

「そ、そうですか。ですが、これで懸念は一つ消えましたね」

「ええ、ただ。スズカが今まで以上に、俺に気を使っているようで」

「確かにそうですね。大金ですから」

 

本当はもう少し隠しておくつもりだったのだが。

まったく、スズカの御両親には困ったものだ。

 

「ああ、そうだ。たづなさん。少し相談があるのですが」

「なんでしょうか?」

 

俺はたづなさんに、気が早いが。と前置きをして。

 

借金のことでスズカが、俺へどうにかして恩を返したいと空回りし始めたのでその対策をしたいことを伝えた。

 

既に気にするなと言っているが。無理そうなので、押して駄目なら引いてみろの精神で、俺はたづなさんにちょっとお店を紹介してもらうことにした。

 

「俺はスズカと義務や金を理由に結婚するつもりはありません。だからこそ、一度スズカを連れて、ウェディングドレスを見に行こうと思っています」

 

俺が長年チート能力があったとはいえ、かなりの金額の借金を完済してしまった。

それに焦ってしまっている、スズカ。

あえてウェディングドレスを選ばせて、少し冷静にさせるつもりだ。

正直、自分で外堀埋めているようでちょっと怖いけど。

 

「ショック療法という訳ではないですが。婚約者として何かしないとって、スズカは焦っているようですね」

「なるほど、それでウェディングドレスを?」

「はい、今のうちにどういうのが良いのか。自分で選ばせて気を逸らそうと思いまして」

 

こうして、後日。俺達は休みをとってウェディングドレスを見に行くことにした。

 

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