チート転生トレーナーと新妻スズカさん   作:ウマウマ

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プチ合宿へ

 

『そう、順調なのね』

「はい、なのでスズカに余計なことを吹き込まないでくださいね」

『そうね。お婆ちゃんの余計なお節介だったわね』

 

トレセン学園から帰ってきたら、父方の祖母から電話で連絡が来たので、俺は近況を話している。

 

「じゃあ、そういうことで」

『はいはい。おばあちゃんは見守ることにします』

「そうしてくれ、それと親父と話はしたか? 和解したとはいえ、あまり連絡取り合ってないって聞いたけど?」

『あら? この前、あの子と貴方のお母様も一緒にお茶を飲みに行ったわよ?』

「ん、そうなのか?」

『ええ、そうよ。だからこっちは気にしなくても平気よ』

「ならいい。兎も角、スズカの方は問題ないですよ。お婆ちゃん。だから改めて言っておくが」

 

俺は宅配で届いて、中身を確認した段ボールの中身を眺めながら、婆ちゃんに釘を刺しておく。

 

「YES、NO枕なんて送ってくるな! ってか、変な物は今後送ってこないでくれよ!」

「駆さん、あのこの枕のYES、NOって、どういう意味なんですか?」

 

ほら! 世代が違い過ぎるから、スズカも首ひねってるじゃねぇか。

マジで止めてくれよ! 誰も家に入れるつもりは無いが、たづなさん辺りが何か重要な話し合いで来た時にうっかり見つかったら確実にヤバイしろものだって!

 

『それくらい、分かりやすい方が夫婦円満の秘訣になるのよ』

「実体験!? いや、アンタも世代が違うな」

『あの子の妹。つまりは貴方の叔母さんの時は――「説明しなくていい!二度と連絡してくるな!」』

 

俺の叫びに、婆ちゃんは軽く笑い。

 

『それじゃあ、またね。可愛い孫』

 

そう言って電話を切った。

電話が切れて数秒後、俺は深いため息をついて、送られてきた荷物を改めて確認する。

 

送られてきた荷物は二つ。かなり大きい段ボール箱とクールの箱。

内容は食品と衣類。

 

保冷剤と共にパッケージされた食品。煮込み用の海産物。野菜。

これ明らかに内容が偏ってるよな。カキとかド直球じゃねぇかよ。

 

衣類系の段ボール箱は、枕のインパクトに眼がいったけれど。

 

「あ、駆さん。それは?」

「捨てる」

 

送られてきた箱の中にあった、ネグリジェとかもストレートだな! 下着が無いだけマシかもしれないが。

絶対に悪意があるだろう。あのババア。

 

「あ、あの、見せてください」

「駄目」

「え、でも」

「スズカにはまだ必要ないから」

 

そう言って、俺はキッチンの奥の棚からゴミ袋を取り出して捨てようとしたが。

スズカに止められた。

 

「あ、あの。見てみたいのです」

「スズカ、これは一応、そういう目的の為のデザインでもあるんだが?」

「で、でも、せっかく送られてきたものですし」

 

俺は小さく溜息をついて、スズカに釘を刺しておく。

 

「俺も男だ。頼むから、まだ着ないでくれよ」

「は、はい。……その、駆さんはこう言うの嫌いですか?」

「いや、好きだな」

 

俺の言葉にスズカはちょっと気恥ずかしそうに俺を見た。

 

「その、みたいですか?」

「みたいけれどさ」

「「…………」」

 

僅かな沈黙。俺とスズカは見つめ合う。

スズカはスッと俺の手に持っていたネグリジェが包まれたビニールパッケージを掴んでこう告げる。

 

「着替えてきますね」

「待って、本当に止めて」

 

俺はビニールパッケージをスズカに取られない様にしっかりと握り。

しばらくの間、スズカと押し問答をすることになった。

 

 

 

 

すっかり気温が上がり、熱中症などの危険性が出てくる季節ではあるが。

八月の後半のG3の新潟ジュニアステークスへ向けて、しっかりとトレーニングを行う。

 

水分補給と休憩をちゃんと設けながらも、ギリギリのラインを見極めてスズカを磨き上げていく。

中央トレーナーとしてのチートスキルが無かったらスズカは怪我していたりする可能性があると思うと安堵すると同時に他のトレーナーやウマ娘に対して、罪悪感が出てくるが。

 

まあ、その辺は割り切るしかないか。

 

「スズカ、休憩だ」

「は、はい」

 

練習場でメニューを終え。息を乱しながらも、それでもしっかりとした歩調で俺の元へやってくるスズカ。

今日は練習場を長めの時間使用できるので、事前に用意していた、キャンプ用品の寝ることも出来る折り畳みの椅子と小さめの日除けの為にタープを設置しているのでそこへ移動させる。

地面に突き刺すタイプではないので、たづなさんもOKを出してくれた。

 

同じ練習場で走っている他のウマ娘とトレーナー達が「いいな、それ」って感じで見ているので、多分使う人増えるんじゃないかな。

練習場は広いから、日陰があるところまでそれなりに距離あるからな。

 

「ほら、スズカ。水分補給。でも、飲み過ぎないように」

「はい」

 

俺はクーラーボックスからそこそこの温度に冷やしたスポーツドリンクを取り出し、スズカに手渡す。

スズカは受け取ったドリンクを美味しそうに、でもゆっくりと飲んで水分補給を行う。

あまり冷たいと身体に悪いから、そこそこの温度にしている。

 

「タイムも順調に縮んでいる。ただ、やはりコーナーで膨らむ。まだ、力が足りない。無理せずに内からではなく外めからコーナーに入ると良い。ジュニア級だ。無理に膨らまない様に走ろうとすれば脚に負担が掛かるから無理するな」

「でも、それだと追いつかれませんか?」

「今のスズカのスピードとパワーは同世代のウマ娘よりも頭一つ分以上は上だ。多分、スズカに勝てる可能性があるのはタイキシャトルかドーベルだろうな」

 

あの二人はスズカ以外の同世代のウマ娘で勝てる可能性は低いだろうな。

そもそも、グラスワンダーやライスシャワーのような、メンタルお化けじゃないと。

適正と脚質のランクでまず負けるだろうし。一応、アプリ版で言うところの芝Aとか距離適性がAのウマ娘もいるけれど。

スズカにビビッて、ティアラ路線に変更していたからなぁ。

才能やステータスで勝てる可能性があっても、メンタル面でビビったら勝てるモノも勝てない。

 

「そう言う物ですか?」

「スズカの場合、タイキとドーベルの二人は別路線だし。結果として、タイムアタックみたいになるだろうな。だから、無理しないように」

「分かりました。膨らまない位置からコースに入る……」

「何度か走ってみよう」

「はい」

 

そう言いながら、スズカは思い出したかのように上着のジャージのファスナーを全開にする。

そして、パタパタと熱を冷まそうとする。

一瞬、むわっと熱気が出たような錯覚をしたが、今日はそこまで暑くない。

スズカが走っているからと日陰から出たから、熱さで頭をやられたのかもしれない。

 

「駆トレーナー?」

「どうした?」

「いえ、ジッと私を見ていたので」

「ははっ、気にしないでくれ。見惚れていただけだから」

「きゅ、急にそういうことを言わないでください」

「あ、すまん」

 

俺は自分用のペットボトル飲料を取り出して、一口飲む。

 

本音を言うともう一度くらいスズカをレースに出したいが。

どーも、チートスキルの方で警告が出ているんだよね。

嫌な予感がビンビンでさ。

 

新潟ジュニアステークスで負けるなら、もう一つレースに出すが。

今はトレーニングをしておいた方がいいな。

 

「そうだ、八月の上旬。どこか出かけるか?」

「え?」

「練習はしっかりとする。それで休憩もしっかりとする」

 

メリハリは大事だ。アプリだとジュニア級の時は合宿には参加しなかったけれど。

この世界ではちゃんと合宿に参加出来た。とは言え、大半のジュニア級の子達はまだ身体が成長途中。

普段とは違うトレーニング! よりも、普通に下地を作る方を優先した方がいいからな。

 

「実はたづなさんに聞いたら、小規模の合宿場もあるらしくてさ。移動や休みを含めると実質五日くらいか。海でプチ合宿してみるか?」

「海、ですか?」

「ああ、トレセン学園の土地だから、誰も来ないらしいからさ」

「い、行きます」

「良し、じゃあ。準備していってみようか」

 

こうして、俺達はプチ合宿へ行くことになった。

 

 

「普段の大型合宿場の直ぐ近くだったんですね。この合宿場」

「ええ、そうよ。だから、こうして迎えに来れたわけだし」

 

俺はワゴン車の助手席に座りながら、運転席のハナさんの言葉を聞く。

 

「でも、来てくれて助かったわ。チームには同じジュニアの子達も居るから、良い刺激になるわ」

「そうですね」

 

俺はバックミラーに映った落ち込んでいるスズカに声をかける。

 

「スズカ、俺も悪かったからそんなに落ち込まないでくれ」

「落ち込んでませんよ。ええ、落ち込んでいません」

「拗ねているのか」

「いいえ、拗ねてませんよ」

「ごめんなさいね。まさか、合宿場に来た初日に遊ぶつもりだったなんて思わなかったから」

「あははは……」

 

ハナさんの言葉に俺は苦笑いをする。

実は俺も合宿の途中に休みを入れるつもりだったのだが。

思ったよりもスズカは海が楽しみだったらしく、合宿場に着いて直ぐにスぺ達と選んだ淡い緑色のワンピースタイプの水着を着て、俺の所へやって来た。

 

そして、俺も予定を変更して今日はスズカを思いっきり遊ばせてあげようと思って合宿場の入り口を出たところでハナさんに捕まったわけだ。

 

「ま、エアグルーヴもいるみたいだから、胸を借りると良い」

「あ、そうですね。確かに」

「ええ、エアグルーヴもこの前、勝負したら、負けたとずっと言っていたから、ちょうどいいんじゃないかしら?」

 

強いウマ娘と競い合えると考えたからなのだろう。

拗ねていたスズカはチームリギルのメンバーがいる場所に到着するまでに精神を安定させ。

 

トレーニングの最後に行われたクラシック級のウマ娘も混じったレースで一着で勝利していた。

もちろん、全員がベストなコンディションではなかった。

エアグルーヴの調子も普通だったしな。

 

こうして、プチ合宿の初日は無事に終わった。

 

 

 

「随分、浮かれているように見えるな。スズカ」

「そう見える?」

「ああ、レースの時は驚くほど真剣に走っていたが」

 

練習が終わり、色々と片付けた後。

駆とハナの二人は明日以降の打ち合わせで席を外していた。

 

そして、スズカ達は多くのウマ娘達が今日寝泊まりをする大型の合宿場の入り口のエントランスのソファが置かれているスペースで休憩をしている。

 

「ちゃんとトレーニングもしているし、大丈夫だろうが。いまいち不安でな」

「大丈夫よ。メリハリが大事だって駆さんも言っていたし。その辺りはしっかりとしているわ」

「駆さん、ね」

「どうしたの、エアグルーヴ」

「いや、大丈夫だと聞いていたが。うん、ここまでくると認めるしかないな」

「認める?」

「ああ、スズカのトレーナーは大丈夫だと」

「そうね。エアグルーヴにはずっと心配かけさせたわね」

 

二人は親友で、走りではライバル同士だった。

そんな時に本格化が一年ズレ、更にスズカの父親の会社の借金。そこから婚約者が出来た。

 

もしかしたら、スズカはトレセン学園を退学するかもしれない。

 

サイレンススズカと親しいウマ娘達はどうすることも出来ず、歯痒い思いをしていた。

 

「既に知っているが、駆トレーナーはいい人なんだろう?」

「え、ええ。とっても良い人よ。私には勿体ないくらいに……」

「何かあったのか?」

 

言いながら少し落ち込むスズカにエアグルーヴは問いかける。

 

スズカも少し迷いはあったが、エアグルーヴに相談することにした。

 

結果、年頃のウマ娘達がそういう話をしていれば、自然と周りのウマ娘達は寄ってきてしまう。

 

スズカも流石に言えることと言えないことは弁えていたが。それでも、色々と話をしてしまい。

 

それが結果的に年頃のウマ娘達を刺激することになってしまった。

 

 

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