転生宿儺〜呪術廻戦がバディものだったら〜 作:ニゴリエース
「──自惚れてた」
──独り言。
死の間際、少年は語る。誰に聞かせるでもない、思わずこぼれ落ちた魂の本音。あるいはその裡に潜む
「俺は強いと思ってた。死に時を選べるくらいには強いと思ってたんだ」
それは少年の背負った罪、傲慢の対価。
「あ゛ー死にたくねえ!!嫌だ!嫌だぁ!!……でも死ぬんだ……」
少年は叫ぶ。己の弱さを、嘆きを。その声を聞き届けるものはいない。その存在すら定かではない神も仏も、彼の命を救いはしない。
(「正しい死」か?じゃねえよ甘ったれんな。呪術師に悔いのない死はない、だろ)
それでも少年は立ち上がる。その死が正しかったと言えるために。己が憎悪を、恐怖を、後悔を、全て出し切り、拳に乗せ、渾身の一撃を放つ。
死に際につかんだ呪力の操作。しかしその拳は届かない。所詮ひと月しか呪術師として積み上げていない虎杖悠仁では、目の前の死、特級呪霊を祓いのけることは叶わない。
少年は死ぬ。惨めに、無様に。過去現在未来の塵芥と同じように、何も成せずに。
「ククク、面白いものが見れた。褒美だ、少し代われ小僧」
しかし、捨てる神あれば拾う
──これは、少年が世界に抗う物語。
ーーーーー
2018年6月 宮崎県仙台市 杉沢第三高校
夜の高校にて、呪術高専1年生にして二級術師である伏黒恵は窮地に立たされていた。請け負った任務──特級呪物『両面宿儺の指』の回収の最中、呪霊の強襲から居合わせた一般人──虎杖悠仁を庇い、重傷を負ってしまったのだ。
(術式途切れた……!クソ、頭回んねえ……)
校舎の外に叩き出され、意識が朦朧としている伏黒にトドメを刺さんとする六本足の呪霊。まさしく絶体絶命、今まさに断たれようとした伏黒の命、だがしかし。
ゴッ
「大丈夫か!?」
地面に叩きつけられる呪霊。先ほど彼が助けた虎杖が渾身の一撃を呪霊の頭部に叩き込んだのだ。
「言ってる場合か、帰れと言っただろ」
「今帰ったら夢見悪いだろ?それにな、こっちはこっちで面倒な呪いがかかってんだわ」
そのまま伏黒を庇うように呪霊に挑みかかる虎杖。迫り来る腕を躱し、蹴りを叩き込むも──無意味。振り下ろされた腕によって地面に叩きつけられてしまう。
「無駄だ、呪いは呪いでしか祓えない」
「早く言ってくんない?」
「何度も帰れっつったろ、あの2人を連れて逃げろ。呪力のないお前がいても役に立たねえんだよ」
そう言って同じく巻き込まれたオカ研の2人をみやる伏黒。しかし虎杖は「このまま置いていけば伏黒は死ぬし当人もその気である」と言うことを直感的に理解していた。だから退かない。
必死で打開策を探す虎杖。その時ふと疑問が浮かぶ。
「なあ、なんであの呪いはこの指狙ってんだ?」
「喰ってより強い呪力を得るためだ」
その言葉に虎杖は一つ妙案を思いつく。それは良く言えば思い切りのいい、悪くいえば短絡的で愚かしい行動。しかし、その行動が2人の運命を大きく変えることとなる。
「なんだあるじゃん全員助かる方法。俺にジュリョクがあればいいんだろ?」
そう言って懐から取り出したるは先ほど回収した両面宿儺の指。それを虎杖は躊躇なく──
「あーん」
「なっおい馬鹿!!やめろ!!」
伏黒の制止も聞かず、大口を開けて飲み込んだのだ。
(特級呪物だぞ!?猛毒だ!確実に死ぬ!だが万が一、万が一……!)
思案する伏黒。虎杖が指を飲み込んだのを見た呪霊は、怒りのままに虎杖へと突っ込む。哀れ虎杖は呪霊に抵抗すら出来ず指の猛毒に斃れ──
「ク、ククク」
ザフッ
瞬間、虎杖に迫っていた呪霊の上半分が消し飛ぶ。下手人は大きく手を振りかぶった虎杖。いや、もはや彼は虎杖ではない。
「ああ……やはり光は生で感じるに限るな」
(最悪だ!最悪の万が一が出た!!)
呪いの王 両面宿儺 現代に受肉
「いやしかし……よもやよもやだ。あの
誰に聞かせるでもない独り言を呟きながら歩く両面宿儺。そして彼は街が一望できるところまで歩いて行き、感嘆の声を上げる。
「素晴らしい、夜ですら明るく、有象無象の人間は命の危険すらなくのうのうと生き、数を増やす。喰うも殺すも際限なし、か。あれからおよそ1000年、いい時代になったものだな」
不穏な言葉を口にする両面宿儺。しかし、予想に反して彼の思い通りになることはなかった。
ガシッ
「あ?」
「人の体で何してんだよ、返せ」
なんと両面宿儺の腕が彼の意に反して動き、彼の首を引っ掴んだのだ。そして口もまた勝手に動く。その言葉を紡ぐのは受肉によって死亡したはずの虎杖悠仁。
「お前なぜ動ける?」
「?いや俺の体だし」
あしゅら男爵みたいになってない?などと気の抜けたことすら言ってのける虎杖。そして両面宿儺は自分の意識が抑えこまえれる感覚を覚える。抵抗も徒労に終わり、あっさりと肉体の主導権が両面宿儺から虎杖へと戻る。
「動くな」
しかし、それを理解しているのは当人たちだけである。
声を上げたのは伏黒。声に反応した虎杖が振り向くと、伏黒は指で印を結び。臨戦態勢をとっていた。
「え?」
「お前はもう人間じゃない。……呪術規定に基づき、虎杖悠仁、お前を──」
下されるのは残酷な宣告。これより彼はその意志にかかわらず、大きな流れに飲み込まれていくこととなる。その先に待つのは希望か、絶望か。
「呪いとして、
呪い呪われ、少年の道はどこへ進む?
別に転生宿儺は善人ってわけじゃないです。