ソードアート・オンライン~白の銃士と血の喰種~   作:碧桜琥珀

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なんか妄想してたら出来て来たから投稿
批判とかやめてね心居れるから


始まりの日

無限に広がる蒼穹、そこに浮かぶ巨大な石と鉄の城。

それがこの世界の全てだ。

直径およそ十キロメートルの基部フロア、百に及ぶ階層に分けられていて、それぞれをつなぐ階段は各階に一つづつしかない。

城の名は『アインクラッド』。約六千もの人間が呑み込まれた剣と戦闘の世界。

それがこの―――――『ソードアート・オンライン』だ。

 

鈍色に光る剣を構え、俺は目の前の敵を見据えた。

気味の悪い液体に体を濡らし、四足歩行でこちらを睨んでくる獣。

レベル70のモンスター、『ポイズンビースト』だ。

口から紫色の涎をぼとぼとと撒き散らしながら、獣が芝生の地面を蹴った。

「ぐがぁっ!」

煩い咆哮が俺の耳を劈く。

毒々しい色の牙を剥き出しにして、凄まじい速さで突っ込んできた。

俺はタイミングを合わせて右手の剣を振った。

水色のライトエフェクトを纏った刃が、獣の牙ごと頭を裂いた。

起こしたモーションに従い、システムが自動的に通常ではありえない速度で俺の体を動かす。

これがこの世界における戦闘の最大要素、『剣技』―――――『ソードスキル』だ。

俺が今放ったのは右から左へと行う水平斬り技、『ホリゾンタル』。

綺麗に斬り抜けた敵の頭から、血液代わりに鮮紅色の光芒が飛び散る。

敵の上に名前と共に表示されている横線、HPバーと呼ばれる青色のそれはぐんぐんと削られていき、一ドットも残さずに消えた。

断末魔を上げる間もなく、獣はガラス塊を割り砕くような大音響とともに微細なポリゴン片となって爆散した。

これがこの世界における『死』だ。

瞬時であり簡潔、一切の痕跡を残さない完全なる消滅。

視界の中央に紫色のフォントで浮き上がる加算経験値とドロップアイテムリストを確認して、俺は剣を鞘に収めた。

「……もう用は無いかな」

誰もいなくなった迷宮を後にして、俺は街への帰り道を歩いた。

そしてあの日のことを思い出す。

二年前。全てが終わり、始まったあの日を。

 

『ナーヴギア』。それがこの|VRMMORPG《仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム》、『ソードアート・オンライン』を動かすゲームハードの名前だ。

頭から顔まで覆う流線的なヘッドギア。

ユーザーの脳そのものとアクセスし、五感全ての信号をナーヴギアでキャッチする。

つまりゲームの中に入り込み、自分の体を動かすようにアバターを動かすことができるのだ。

ゲームによるが視覚や聴覚はもちろん、嗅覚、味覚、触覚まで現実のもののように感じることができる。

ヘッドギアを顎下のアームでロックし、「リンクスタート」の開始コマンドを唱えた瞬間に別世界へと行くことができる。俗に言う、「フルダイブ」だ。

半年前、二〇二二年五月に発売されたこのマシンは、遂に完全なる仮想現実(バーチャルリアリティ)を実現した。

現実世界のユーザーの体への信号はすべて遮断され、仮想世界で存分に発揮される。

まさにゲームの中に飛び込むというこの体験のインパクトは、多くの人間を魅了していった。

しかし、始めの方はつまらない教育系ソフトしか無く退屈していた。

そこで二〇二二年十一月六日の日曜日。

この『ソードアート・オンライン』が発売されたのだ。

ナーヴギア初となるMMORPGは、爆発的な人気となり、ベータテストを経て正式サービスが発表された。

ここはアインクラッド第一層の街、『はじまりの街』。

全プレイヤーがここから始まり、ゲームを進めていくのだ。

俺は慣れない体を操作しながら、着々と準備を進めていた。

安物の剣とポーションを購入し、モンスターを狩るべく『草原』へと向かおうとすると、巨大な鐘の音が世界に響いた。

 

草原への道の近くに居たはずだが、俺は強制的に転移されて広場に来ていた。

どうやら俺だけでなく、全てのプレーヤーがこの広場に集められているらしい。

周りの騒めきに耳を傾けていると、ログアウトという単語が頻発に聞こえて来た。

「ログアウト……?」

ウィンドウを開きスクロールさせて確認すると、ログアウトボタンが無くなっていた。

「どうなってんだ!?」

ログアウトができない。

つまり、現実世界に戻れないということだ。

こんなバグがあったとするなら、GMが説明する何なんなりするはずだが……。

「あっ……上を見ろ!!」

誰かが叫んだその声につられて上を見ると、そこには異様な光景が広がっていた。

百メートル上空。第二層の底を深紅の市松模様が染め上げていく。

よくよく見ると、二つの英文が交互に表示されていた。

【Warning】と【System Announcement】と読める。

【警告】と【システムのお知らせ】……かな。

運営のアナウンスが入るのか、と安堵していると、赤く染められた天井の中央から、血の雫のようにどろりと垂れて来た。

異常な現象に身を強張らせていると、高い粘度を感じさせるその液体は人の形を作り上げていった。

身長二十メートルはあるのではないかという、真紅のフード付きローブを纏っている男だ。

しかし、顔がない。

フードの中身は全くの空洞で、フードの裏の縫目までくっきりと見えていた。

不意に男の右腕が動くと、白色の手袋が見えた。

「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ」

巨大な男から発せられた声だ。

私の世界……ということは、やはりGMなのだろうか。

「私の名前は茅場晶彦(かやばあきひこ)。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ」

茅場晶彦?確か、このゲームのディレクターだったか。

あまりそういうのに興味がない俺にはどれほど凄い人物なのか分からなかったが、周りのざわつきから察するに相当凄い人なのだろう。

「プレイヤーの諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく『ソードアート・オンライン』本来の仕様である」

仕様……?どういうことだ。

ログアウトできないことが仕様だって?

「諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない」

この城……アインクラッドのことだろうか。

つまりこいつはこう言ってるのか。

「ゲームクリアするまで解放しません、ってか」

俺の呟きに、周囲の人がざわつき始める。

困惑する人、恐怖する人、怒りを持つ人、様々な表情が読み取れた。

「……また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合―――」

わずかな間。

ここにいるおよそ一万人が息を詰めた、途方もなく重苦しいその空気の中で、その言葉は発せられた。

「―――ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる」

始めは、言葉の意味が解らなかった。

俺の脳自体が、理解することを拒んでいたのかもしれない。

しかし、現実は待ってくれない。

ナーヴギアの三割はバッテリセルだ。

もし無理やりナーヴギアをユーザーから引き剥がそうとすれば、そのバッテリーに溜め込んだ電力を放出し、電子レンジの要領で脳を蒸し焼きにする……と。

そういうことを、こいつは言ってるのだ。

「イかれてる……」

そう呟かずには居られなかった。

状況は絶望的。

100層もあるというこのゲームをクリアする。

それには一体どれくらいの時間がかかるのだろう。

一年?それとも二年か?もしかすると、五年はかかるかもしれない。

どうにしても、一日やそこらで終わるような話ではない。

まだ何か話をしている茅場の話は全く耳に入ってこなかった。

それは恐怖ゆえだろうか、それとも絶望による自己防衛だろうか。

どれも違う。俺は、俺はこんな状況下で―――

「ははっ」

興奮していた。

ワクワクが止まらない。

心臓の鼓動がどんどん早まって行った。

命を懸けたゲーム?おいおい、今までそんな衝撃味わったことないよ!

広場に居るほぼ全員がアイテムストレージを開く動作をしていた。

俺もつられて開くと、アイテムストレージには先程買った装備やアイテムの他に、『手鏡』というアイテムが入っていた。

不思議に思いながらもそのアイテムをオブジェクト化すると、小さな四角い鏡が現れた。

鏡を覗き込むと、俺がとくに弄っていない初期設定のままの顔が映っていた。

突然、白い光がアバターを包んだ。

俺だけではない、他のアバターも光に包まれている。

視界がホワイトアウトし、二、三秒経つと視界は元に戻った。

しかし、持ったままだった手鏡に映ったのは……

「……俺じゃん」

 

現実世界の、俺の顔だった。

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