ソードアート・オンライン~白の銃士と血の喰種~ 作:碧桜琥珀
ダンジョンで狩ること二時間。
分かれ道の多いダンジョンだが、ほとんど狩りつくしてしまったな。
「ちょっと休憩するか」
買っておいたパンと水をオブジェクト化させ、ゆっくり食べた。
すると、もの凄いスピードで走ってくる二人の姿が見えた。
キリトとアスナだ。一体何事だ?
二人は俺に気付き、座り込んだ。
激しく肩を上下させている。
「…………どうした?」
落ち着いた頃を見計らって、話しかける。
キリトが座り込んだまま、吹きだした。
それにつられて、アスナも笑う。
「いやー、逃げた逃げた!」
「こんなに一生懸命走ったのすっごい久し振りだよ」
ひとしきり笑い、二人はため息をついた。
「大丈夫か?」
俺が怪訝な顔をして二人を見ると、キリトがこっちを見た。
「ちょっとボス部屋を覗いたんだけどさ……」
「二人してビビっちゃったんだよねー」
アスナが面白そうな声で言う。
ボスか……そんなにやばい奴だったんだろうか。
「挑むのか?」
「いや、あれをこの人数じゃ無理だな」
キリトが苦笑交じりに言った。
すると、後ろから六人のプレイヤーが鎧をガチャガチャいわせながら歩いてきた。
「おお、キリト!しばらくだな」
その中のリーダー格らしい野武士面の男が、キリトに走り寄って行った。
キリトも腰を上げて、男と向き合った。
「まだ生きてたか、クライン」
「相変わらず愛想のねぇ野郎だ。珍しく連れがいるの……か……」
俺やアスナを見たクラインが、呆けた顔をしている。
恐らく、アスナに見惚れているかなんかだろう。
その後、キリトがクラインとアスナをお互いに紹介し、『風林火山』というギルドのメンバーらしい五人が自己紹介をした。
すると、さらなる大人数の足音が聞こえて来た。
「キリト君、『軍』よ!」
アスナの声にはっとして足音の方向を見ると、重奏部隊が二列縦隊で歩いてきた。
俺たちの近くで止まり、先頭にいる男が「休め」と言うと、後ろに居た人たちが盛大な音と共に倒れこんだ。
先頭の男は仲間に目もくれずにこちらへ歩いてきた。
後ろの人たちと装備も少し異なり、多少豪華なつくりとなっている。
男はヘルメットを外した。
かなりの長身で、年齢は三十代前半といったところだろうか。
短い髪に角ばった顔、太い眉の下には小さい目が鋭く光っていた。
「私はアインクラッド解放軍、コーバッツ中佐だ」
すると、キリトが「キリト。ソロだ」と短く返し、そしてコーバッツが軽く頷いた。
「君らは、もうこの先を攻略しているのか?」
「……ああ。ボス手前まではマッピングしてある」
「うむ、ではそのマップデータを提供してもらいたい」
横柄な口調で、当然だと言わんばかりの男の態度に、クラインが立ち上がった。
「な……て……提供しろだと!?手前ェ、マッピングする苦労が解って言ってんのか!?」
胴間声で喚くクラインに、コーバッツも声を張った。
「我々は諸君ら一般プレイヤーの解放の為に戦っている!諸君らが協力するのは当然の義務である!」
…………呆れた。
どういう生き方をすればここまで横柄になれるのか。
コーバッツの言葉に憤るアスナやクラインをキリトが制し、マップデータをコーバッツに送信した。
「協力感謝する」
全く感謝の気持ちなどかけらも無さそうな声で言い、仲間を引き連れて先へと進んだ。
軍が見えなくなったあたりで、俺は口を開いた。
「あいつら、ボスに挑むんじゃないのか?」
「いくらなんでもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど……」
他のメンバーが心配そうな顔でキリトを見つめる。
「……一応様子だけでも見ておくか……?」
その言葉に全員が首肯した。
俺は早速上階へと向かう道を歩いた。
後ろでキリトやアスナがいちゃついていたが、気にはしないことにした。