ソードアート・オンライン~白の銃士と血の喰種~ 作:碧桜琥珀
「はぁ……はぁ……」
息苦しい。
この世界では呼吸は必要ない。
しかし、ストレスやら何やらで来た頭痛と息苦しさが、俺の視界を揺らしていた。
「何だってんだよ……くそ」
あのままアカネに殺されたら、俺は元の世界に戻れたのだろうか。
……いや、もしかすると、茅場が俺を騙しているかもしれない。
俺の記憶を何らかの方法で探ったか、それともリアルで見たのか、分からないが。
……だが、そんな事をして何の意味があるのか。
動揺を誘うとしても、俺くらいにしか使えない。
「やっぱり、デュエル扱いなのかな」
どう見てもプレイヤーアバターだった。
モンスターとのバトルのような形式なのかな……。
「待てよ、俺」
なぜアカネと戦う……殺し合う事を考えているんだ。
クリア報酬の武器に惹かれているのか?
ああ、確かにそれもある。
あいつは昔から嘘も誇張もしなかった。
そのアカネがあそこまで言ったんだ。
本当に異常なパラメーターの武器なのだろう。
興味はある。それも物凄くな。
でも…………
「俺は……殺せるのか?アカネを」
アカネのクエストを知ってから、一週間がたった。
キリトたちから送られてきたメッセージによれば。キリトとアスナが結婚したらしい。
色々とあったようだが、無事に丸く収まったようで良かった。
今は戦闘から身を引いて、第二十二層南西の南岸。
そこにログハウスを購入して、ゆったりと暮らしているらしい。
俺もこの一週間、宿に籠りっ放しだった。
気分を切り替えると同時に、俺はお祝いを持っていくことにした。
お祝いはたまたま入手できた『ラグーラビットの肉』×10だ。
S級食材で、しかもこれだけの量があれば、しかるべきところに売れば小さな家一つくらい買えるだろう。
まぁ、特に欲しい物もない俺としては、金は必要ないしな。
これだけあれば人が沢山来ても足りるだろう。
二十二層に転移して、のんびりと歩いた。
ここの空気は心なしか美味しく、美しい木々と泉が俺の心を洗ってくれた。
「いいところだな……」
暫く歩いていると、ログハウスが見えて来た。
こじんまりとしているが、いい雰囲気だ。
二人で住むならこれくらいが丁度良いのかもしれないな。
ドアを数回ノックすると、中から「はーい」という声が聞こえて来た。
ぎいっという気持ちのいい音と共に扉が開くと、栗色の髪が目に入った。
「リア君!来てくれたんだ」
「久し振りだな、アスナ。キリトは中か?」
「他にもたくさん来てくれてるんだよ。さ、リア君も入って入って!」
家の中はなかなか騒がしかった。
随分沢山と客が来ているようだ。
木のテーブルを囲んで、複数の人がいた。
五人。…………俺と合わせて、六人か。
見知った顔は……キリトとクラインだけだな。
「よう、リア」
ソファに座ったキリトが、片腕を上げてはにかんだ。
「よう、キリト。ほら、これは土産だ」
アイテムストレージからラグーラビットを全てオブジェクト化し、高らかと掲げた。
「おお、それは……!」
クラインが感嘆の声を漏らした。
キリトも驚いた表情をしている。
「ラグーラビットだ。沢山あるから、全員食べれると思うぞ」
アスナが持ってきてくれた茶を受け取って、俺はクラインの隣に座った。
「アスナ、料理頼めるか」
「ラグーラビットかぁ、懐かしいね。またシチューにする?」
「シェフのお任せで」
キリトとアスナのやり取りを見ていると、自然と笑みがこぼれた。
すると、キリトが怪訝な顔をして見て来た。
「何だよ」
「いやぁ、何でもないよ。それよりキリト、この可愛らしいお二人さんは誰だ?」
一人は明るい茶髪のツインテール。赤色のリボンで髪を結んでいる。
年齢はとても若いだろう。中学生くらいではないだろうか。
『美人』というよりは『可愛い』とか『愛らしい』という言葉が似合いそうだ。
肩には水色の小さい竜が乗っていた。
もう一人はピンクっぽいショートカットだ。白い髪留めで前髪を止めている。
そばかすがチャーミングで、年齢は俺とそう変わらないだろう。
「ああ、ツインテールの方がシリカ、ショートの方がリズベットだ。二人とも、こいつはリアだ」
紹介された、まずはシリカに手を差し出す。
「よろしく、シリカ。その竜はフェザーリドラか?テイムしたのか」
「は、はい!ピナっていいます」
小さくて可愛らしい手だ。
いいなぁシリカ。恋人とかよりは娘として可愛がってやりたい。
続いて、リズベットに手を差し出す。
「よろしく、リズベット。どこかギルドに入っているのか?」
「よろしく、リア。私は鍛冶屋をやってるの。四十八層に店があるから、武器が欲しかったら寄ってみてね」
すべすべとした心地よい手だ。
うん、キリト。なぜお前の周りはこう美人が多いんだ。
「さぁみんな!ラグーラビットのシチューと照り焼き、サラダとジュースだよー」
おお、大量だな。
この人数でも、食べきるには結構かかるな。
……クエストの件は、食べ終わってからでいいかな。