ラグネ・カイクヲラで『一番』を目指そう 作:氷月ユキナ
私は魔力がバレた夜、自分の部屋で神眼で自分のステータスを見ていた。
【ステータス】
名前:ラグネ HP76/76 MP17/17 クラス:
レベル4
筋力1.72 体力1.87 技量5.33 速さ2.52 賢さ3.47 魔力0.76 素質2.24
【スキル】
先天スキル:魔力操作1.66
後天スキル:
固有スキル:
このステータスから、特訓で強くなっていった。
そうだ、固有スキルの名前は
カナミのセンスに合わせてみたけど、どうかなコレ。
それと、効果は恐らく成長チートらしい。レベルの上がるスピードがおかしいしね。
……その他でやったことは、まずは今まで遊び半分でやっていた『魔力操作』などを実戦でも使えるようにして、『剣術』を鍛えるために剣も振るう。
固有スキルの
魔法は前世からのロマンだったので、『神聖魔法』も使える。
初めて使ったときは本当に興奮した。
特訓は、カイクヲラ家の用意した指南役の下でリエルと学んでいた。
他にも貴族の屋敷とか国の学院などで、他国の騎士候補たちと実戦をした。
結果は負けたこともあったけど、勝とうと思えば勝てた。【星の理】での『反転』もできるし。
こうして数年後、リエルは順調に国でも噂される有望な騎士候補となった。
そんなある日、私はリエルに話しかけられていた。
「──ラグネは『
「えぇ、知っていますよ。レヴァン教の予言に出てくる、千年後に『再誕』する聖人様をお守りする七名の騎士様……って、少し胡散臭い言い伝えのやつですよね?」
「うん、それ。俺も初めてこれを聞いたときは、たくさんある御伽噺の一つだって思ってたけど……どうやら、実際は違うみたいだ」
「違う、ですか? もしかして、本当に聖人様が『再誕』でもするんですか?」
……ラスティアラか。
「するらしい。しかも、その『再誕』の日は、そう遠くないってさ」
「え……!? そ、それは本当なんですか……?」
驚く『演技』をしながら、『
このまま順調に行くと、私は『
『
「本当だよ。……なんでそんなことを知っているかというと、その『
あぁ、リエルが『
そりゃなぁ……あんな強いし。素質値も1.80だしね。
「ただ、ラグネ……。一度この話を受けると、もうここには戻って来られなくなるかもしれないんだ。だから──」
「あっ……」
話している最中にやって来たのは、カイクヲラ家の当主である旦那様とママの二人だった。
「ふふっ、今日も鍛錬しているのね。立派よ、ラグネ。この調子でリエル様をお守りできる最高の騎士になるのよ……」
「……はい、もちろんです」
私はママの望む通り頷く。
「失礼しました、旦那様。参りましょう」
「うむ」
二人はこの場を去っていった。
はぁ──……やっと行ったか。
「……ラグネ、もっと素直になってもいいんじゃないのか?」
「……リエル様?」
「侍従長さんのことが嫌いなんだろう?」
「い、いえ! 私は彼女を尊敬していますよ……? 私を拾ってくれた恩人ですし……」
「……そうやって、自分を誤魔化してるラグネを見るのが俺は辛い」
……私の『演技』が、見抜かれてる?
いや、そんな訳ない……! 自分でも本心かどうか分からないレベルまで『演技』しているのに……!?
「ご、誤魔化してる? 何をですか……?」
「俺にはラグネが無理をしてるように見える。いつもラグネは人を立てるし、どんなときでも褒める。騎士たちとの決闘だって上手に負けてる……けど、それは本当のラグネじゃないだろう? あの侍従長さんを真似して、誰からも好かれようとしてるだけだ」
「…………」
「確かに、侍従長さんは本当に凄い人だよ。お父様や兄様からは好かれてる理由も、よくわかる。ただ俺は、ああいう八方美人な人は苦手だ……」
……私は、思わずリエル様のステータスを見た。
【ステータス】
名前:リエル・カイクヲラ HP210/210 MP103/103 クラス:騎士
レベル12
筋力4.58 体力4.25 技量2.34 速さ2.72 賢さ4.22 魔力3.26 素質1.80
【スキル】
先天スキル:属性魔法1.64 剣術1.58
後天スキル:神聖魔法1.02 武器戦闘1.63 魔法戦闘1.66
レベルは、あれから私も上がってリエル様と同じ12になっている。
スキルを見るが、リエルに『演技』を見抜けるようなスキルは無い。
それなのに、見抜いた?
「──だから……、ラグネ! 俺と一緒に大聖都へ行こう……! あの侍従長さんから離れて、大聖都で新しい自分を見つけるんだ! そのほうが絶対にいい! 俺はラグネにラグネらしくあってほしい!!」
リエル様は私の肩を掴む。
だけど、私は知ってる。原作で、リエル様はママが私を『
「……いや、違うか。いま言ったのは、たぶん建前だ。俺はラグネと一緒にいたいだけだ。ただ、ラグネとずっと一緒にいたいから、俺は侍従長さんから君を引き離したい……! それだけなんだ!!」
「……私で、いいんですか?」
「ああ」
「……私は、『
「関係ない」
私は、リエルが殺される時が来ても、ママを止めようとはしていなかった。
けど、もう無理だ……。
もう、リエル様を私は見捨てられない。
だから──
「……一緒に、行かせてくださいっ!」
私は、原作とは違って頷いた。そして、決心した。
ママなんかに、リエル様を殺させないと。
「……ありがとう、ラグネ。あと数日で、俺を迎えに『
「……リエル様、しつこいです」
「うっ……、それは酷くないか……?」
「これが素の私ですよ。そっちこそ、いいんですか?」
「そっちこそしつこい、良いに決まってるだろ?」
その夜、私は自分の部屋のベッドで熟考を始める。
まず、リエル様の死因は原作でも詳しく書かれてないが、確かモンスターに殺されていた。
ママを納得させるには、リエル様の死を偽装する必要がある。
そのためには、リエル様にそれを話すしかない。
原作知識も合わせた、私の全てを。
次の日の鍛錬の後、私は【星の理】をも使って誰にも聞かれないようにしてから、話した。
一つ一つ、自称神様以外の覚えている必要な事を、全てを話した。
それを聞いたリエル様は、何も言わずに私を抱きしめてくれた。
私は、泣いた。おそらく、ラグネになってから初めての事だった。
──そして、何日か後の夜。近隣の村にモンスターが現れた。
その時、全てがリエル様を不利にしていた。時間帯、体調、立地、情報の伝達、敵の種類、敵との相性、100%ママのせいだ。ウザい。
私の耳にその話が入ってこないように調整されていたので、私は誰にも気づかれないように『スキル名のないスキル』を使ってリエル様とモンスターを処理しに行った。
誰もいない場所へリエル様がモンスターをおびき寄せてから、私がお得意の奇襲で倒して、リエル様はそのまま行方不明になるよう家に帰らず、私は何事もなかったように屋敷に戻った。
リエル様は、私より先に連合国へ向かうらしい。
『先に行ってるよ、ラグネ。待ってるから』と言われた。
その翌朝、目覚めると屋敷内は騒然としていた。
駆け回る侍女たちに話を聞くと、リエルがモンスターと相討ちとなったことになっていた。
この時、私は初めてママを出し抜いた。
ザマァみろ、バーカ。
「あは、あははは……」
笑いが込み上げてくる。リエル様は死ななかった。
私のお小遣いを貸しているので、数日は生きられる。
「これでラグネがヴァルト国一番の騎士ね」
その確信を持った瞬間、後ろから声が聞こえた。
振り返ると、回廊にママが一人で立っていた。
私は、"状況が良く分かっていない少女"を演技する。
「ママ……。どうして……、リエル様を……?」
「ラグネ、これは随分と前から決まっていたことなの。もうカイクヲラ家は、当主だけでなく嫡男も私の虜になったわ。だから、もう五男の一人くらいいなくなっても問題ないの。むしろ、問題だったのは、あの男がラグネに匹敵する『素質』を持っていたこと。そして、私たちに迫るほどの目を持っていたこと。明日、新たな『
要件を言うと、ママは侍従長としてリエル死亡という事故の対応へ向かった。
それを見送る私は一歩も動かない。
最愛のリエルを失って放心している『演技』をする。
「どうして……。どうして、リエルが……」
信じられない、という言葉を呟くが、内心は喜んでいた。
そして、その晩。
日が落ち始めた時間に、『
「──そ、葬儀……!? リエル・カイクヲラは死んだのですか!?」
「はい……」
この人は……?
【ステータス】
名前:ハイン・ヘルヴィルシャイン HP263/263 MP80/80 クラス:騎士
レベル19
筋力8.08 体力7.08 技量7.35 速さ9.40 賢さ9.66 魔力6.15 素質1.98
【スキル】
先天スキル:最適行動1.16 風魔法1.60
後天スキル:剣術1.80 神聖魔法1.18
……あ! この人がハインさん!?
「──困りましたね。予言だと、最後の枠を埋める騎士はカイクヲラ家にいるという話……。これでは七人目が揃いません──」
私が居るよー!
「カイクヲラ夫人、非礼を承知の上で聞かせて頂きたい。……他のご子息たちは騎士を目指していませんか?」
「……いいえ。騎士としての鍛錬を積んでいたのはリエルだけです」
「そうですか……。申し訳ありません。嫌なことを聞きました」
わーたーしー!
「いいえ、失礼なのはこちら側です……。本来すべき歓待を、満足にできず……」
「そのような気遣いは必要ありません。夫人は私たちのことより、ご自分の心配をなさったほうがいい」
どうやってアピールするかを考えていると、ママが渡り廊下から来た。
こういう時は役に立って……ぇぇ?
ママの隣にいる男の人って──
【ステータス】
名前:パリンクロン・レガシ HP241/241 MP47/47 クラス:騎士
レベル17
筋力6.09 体力7.62 技量9.18 速さ4.38 賢さ5.67 魔力3.68 素質1.80
【スキル】
先天スキル:観察眼1.34
後天スキル:剣術1.68 神聖魔法1.17 体術1.67 呪術0.41
パリンクロンさん……見た目だけで既に胡散臭いなぁ。
「パリンクロン! この大事なときに、あなたはどこで何を!」
「ああ、ハインか。悪い、道に迷ったんだ」
「はあ……。そういうことにしておきます。いまはそれよりも──」
「ああ、聞いたぜ。どうも困ったことになったな。はははっ」
「笑い事ではありません。私たちはフェーデルト様から今年までに『
「いや、ハイン。候補者はいなくもないみたいだぜ?」
「……いなくもない? それはどういう意味です?」
そして、パリンクロンは私を指差した。
「奥方、そこにいるのはここの娘か? 剣を帯びているが」
ぱ、パリンクロンさん……っ!
私はパリンクロンさんを信じてたっすよ!
「……いいえ。彼女は警護の者です。元々は侍女でしたが、思いがけぬ才能があったので別の仕事をさせています」
「リエルって新人には強い侍女が従ってたって聞いてるぜ。おまえがそうだな?」
「え、ぁ……リエル様とは、よく一緒に居ましたが……」
うぅ……! いざ何か言おうとすると何も言葉が出てこない……!
「騎士様……。仰るとおり、ラグネは常にリエルの鍛錬に付き合っていました。……うちの自慢の一人です」
「ハイン、こいつはリエルと同じ鍛錬してたみたいだぜ?」
「それがどうしたというのです?」
「仕方ないから、こいつを連れて行こう。逆にお買い得な話だ」
「は、はあ?」
「──っ!」
うおお! パリンクロンさんがこっちの味方してくれるなんて……!
さっきママと一緒に居たし、これもママのお陰? すっご。
「不慮の事態だ。だが、『
「パリンクロン、馬鹿を言わないでください……! 『
「でもよ、今回は『素質』重視の人事だろ? 俺はいけると思うぜ? なにより、面白そうと思わないか?」
「リエル・カイクヲラは本土で最も期待されていた少年と聞きます。そこの彼女には申し訳ありませんが、彼に匹敵するものがあるとは思えません。ここは大聖堂で候補者を選定し直すのが一番です」
「……よーしよし。だってよ? 頑張れ、チビ。選定だ。そいつは都でも一二を争う騎士だからな。勝てば、超有名人になれるぜ?」
……ここで私に戦えと?
「いまここで選定したいということですか……?」
「私がこの人と……?」
……さて、戦うならどうしようか。
やっぱり何時もの『魔力物質化』で剣を創って不意討ち? それとも『魔力物質化』で糸を創って絡め手で行くか? いや、これは騎士としての戦いだし、糸は辞めておこう。印象が悪くなったら不味い。【星の理】を使ってもいいけど、これは本当の奥の手だから人前で使いたくない。ハインさんは、私なら殺すのは簡単だけどそれは駄目だし……。なら、まずは油断させてから──
「──っ!!」
思考していると、ハインさんが目を見開いて、大きく跳躍して私との距離を空けた。
え、私殺気とか出しちゃった? そういうの感じ取れる人?
「なっ。ハイン、こいつでいいだろ? いま、おまえに勝つ気満々だったぜ?」
「勝つ気というか、いまのは……。しかし、確かにあなたの言うとおり、悪くないです」
「こいつはカイクヲラ家の養子にでもして、連合国に連れて行けばいい。それなら予言からも……まあ、そう遠く離れてないだろ。俺らも怒られないで済む。万々歳だ」
「無理やりですね……。そういうのは、なんというか……」
「お前好みの悪くない展開だろ? どっかの劇場で見たことある成り上がりものだ、これ」
「……否定はしません」
……この世界に成り上がりものとかあるの? 始祖カナミのお陰かな?
色々あるなら、私は"盾の勇○の成り上がり"が見たい。無いだろうけど。
「この少女を推すならば、周囲の人間を説得する必要がありますね。それと色々潜り抜けないといけないことも多そうです」
「そこは俺たちの得意分野だろ?」
「上には私が通しますね。他の『
「わかった。ただ、お偉いさんは他の候補者を用意するだろうな。こいつと違って、つまらなさそうなやつを沢山な」
「これ以上、私みたいな人間は要りません。『
「色んな意味で鍛え甲斐があるよな。未完成だからこそ、面白いし──」
よーしよし、いい方向だ。
「──ラグネ、よかったわね。ずっとずっとラグネは騎士になりたがってたものね……。誰もが憧れる騎士に……」
「ご家族の方ですか? 見たところ、姉妹のように見えますが……」
「はい。私とラグネは二人だけの『家族』です」
ふざけんなキショいわ。
「ラグネなら、最高の騎士に……。いえ、世界で『一番』の女の子になれるわ。だって、私の娘だもの。私の娘だものね……」
誰がお前の娘だよバカ。
「うん! 行ってくるね、ママ」
私は、ようやくママと離れられると
──こうして、私は感動の涙の別れ(笑)を済ませ、屋敷を去ることになった。
私は、リエル様が待っている連合国で『幸せ』になれる。確実に、言い訳のしようもなく、安らかな『幸せ』を得る。
そう感じて、私は笑った。