ラグネ・カイクヲラで『一番』を目指そう   作:氷月ユキナ

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6.照明、治癒、安堵、雄弁、安定、沈静、制御

 私はティーダと接近戦で斬り合うが、なかなか当たらない。向こうの攻撃はさっきから少しかすってるというのに。

 

 それに、さっきから使ってくる『闇魔法』が超ウザい。

 

「──魔法《心異・窮足(ヴァリアブル・パラライズ)》」

「チッ」

 

 私はすぐさま魔法を『反転』し、ティーダに剣を向ける。

 

「はあっ!」

 

 一閃。

 

 だが、それも簡単に避けられる。

 

「──《ワインド》!」

 

 後ろからリエルの援護が来たので、私はそれに当たらないように立ち回りながら新たな『魔刃剣(マナフランベルジュ)』を短剣型で創り投げまくる。

 

「ふふっ──、くはははっ! 君達は、すごくいいなあ……! それに、どういう力か知らないが、本当に私の魔法が通用しないのか! これだからたまらない!」

 

 ティーダが叫んでいるが、言葉を返す余裕は私にはない。

 

 さっきから剣を折られまくって『魔刃剣(マナフランベルジュ)』を創る魔力も尽きてしまい、HPも使っているのだから。

 

 私の欠点は魔力が少ないことだなぁ……。

 

「けど、私だって魔法をレジストされ慣れている。そういった魔法使いは、特定のレジストしかできないことが多い……!!」

 

 ……それは違うんだよね。私はレジストしてるんじゃない。効果を『反転』しているだけだ。

 

 だから──

 

「──魔法《心異・閉穏(ヴァリアブル・パラノイア)》」

 

 精神を高揚させる魔法も、全く効かない。

 

 

【ステータス】

 名前:ラグネ・カイクヲラ HP126/403 MP0/91 クラス:騎士

 レベル21

 筋力9.05 体力9.82 技量28.02 速さ13.23 賢さ18.24 魔力4.01 素質2.24

 状態:精神()()3.98 ()()0.42 部位()()0.08 ()()1.99 出血0.17

 

 

 『神眼』で確認すると、見たこともない状態異常……状態異常ですらない何かがあった。

 

 高揚って『反転』すると沈静になるんだ……。

 

「……まさか、これも打ち消せるとはね! あァ、楽しいなァ!」

「そうっすか! こっちは全然楽しくないっすけどね!!」

 

 さっきまでは戦闘で精神も高揚していたが、沈静のせいでなくなった。

 

 これ、興奮も無くなっちゃったし、ありがたいのか迷惑なのか分かんないな。

 

「ふふふっ! くはははっ! さァ、そろそろ終幕といこうか!」

 

 ──? いったい何を──

 

「──『世界(あなた)が私を裏切った』──」

「────ッ!」

 

 その詠唱を聞いた瞬間、私の中の()()()()()()()()()()()()という考えがなくなった。なぜならこれは、ティーダの()()()()()なのだから。

 

 そして、()()()()()()

 

「──『私は幻を追いかける幻』──」

 

 一応、ラグネ(わたし)の詠唱は知ってる。

 

 これは、反射光を浴びた全ての事象を、例外なく『反転』する魔法だ。

 

 原作ラグネはその生という概念を死に『反転』させていたが、そんなことをしたら私も死ぬ。

 

「──『もし全てが黒に染まるなら』──」

「──『世界(あなた)に存在さえもできない』──」

 

 だから、私はティーダの魔法の全てを『反転』する。絶対に。というか出来ないとヤバい。

 

「──『私も私を裏切り続ける』。──()()地迷いの霧と夜の終わり(ミストラスト・スプリットランズ)》」

「──『私は湖面に浮かぶ掬えぬ月』──()()逆さ湖月の夢呪い(インヴァーテッド・ラグネクオリア)》!!」

 

 ティーダの本当の魔法が完成し、黒い霧と闇が出てくる。

 

 この魔法は、対象に『不信』を押し付けて自分自身を信じられなくさせ、疾患者に自分の行動を疑わせて、その信念を根元から腐らせていく精神干渉魔法。

 

 例えば、自分の視界の明るさが信じられなくなり、まるで『暗闇』のように冒す。

 私はそれを『反転』させ、自分の視界を明るくさせる。

 

 例えば、自分の身体が動くと信じられなくなり、まるで『麻痺』のように冒す。

 私はそれを『反転』させ、自分の身体を治癒させる。

 

 例えば、自分の行動の正義が信じられなくなり、まるで『恐怖』のように冒す。

 私はそれを『反転』させ、自分の行動の正義を信じ安堵させる。

 

 そうやって私は、全ての根本を腐らせる魔法の効果を『反転』していく。

 

「──なッ!? これは──!?」

 

 私の魔法に驚いたティーダは、狼狽えた。そう、()()()()()

 

 その隙を、()は狙う。

 

「──ふっ!」

 

 ティーダの背後にいたリエルは、手に持っていた剣でティーダの首と胴体を切り離した。

 

「……はぁ、俺のことを忘れないでくれよ、ティーダ・ランズ」

「──ア、ァ、──ス、すまない。君たちノ、勝ちだな」

「……は、はは、あはは……そうっすね、私たちの勝ちっす……!」

 

 私は終わったという安堵感に身を任せ、床に倒れる。

 

 ティーダは首だけになったというのに、笑っていた。

 

「フフフ……アリガ…トウ……私ノ…望みは叶った……」

「……ティーダのお兄さん、この戦いは楽しかったっすか?」

 

 私は、ふと思ったことを口に出した。

 

「アあ……もちろン……楽…シ…カッたなァ……」

「……なら、良かったっす」

 

 その言葉を残して、ティーダは光となって消え去った。

 

【称号『闇の洗い流し』を獲得しました】

 闇魔法に+0.50の補正がつきます

 

 光の跡残っているのは、一つの黒い魔石だけだった。

 

「……これって」

 

【守護者の魔石】

 守護者ティーダの魔力の結晶

 

 理を盗むものの魔石……。

 

「……すまない、ラグネ。前に聞いたアイカワ・ヒタキのことは知ってたけど、それでも倒しちゃった」

「は…はは……いいんすよ、そんなこと……これはさすがにしょうがないっす……それと、リエル……」

「なんだ?」

「……地上まで、よろしくっす」

「え? それって──」

 

 正直、私はもう限界だった。MPゼロの状態で本当の魔法まで使ったし……。

 

 リエルの言葉を聞き終わる前に、私の意識は深い眠りに落ちてゆくのだった。

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