超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生   作:奈音

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 ブルアカ原作はもっとブチギレミカを書くべき。
そんな感じをライアー・ライアーOP聞きながら書きました。


十 話 トリニティ総合学園 百合園セイア(上)

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――トリニティ総合学園 セイア 未来の記憶

 

 

 「――私は、そこをどけっていったよね…?」

 

 

 一撃だった。とワカモは考える。小手調べなどど考えていた自分が恥ずかしい…。カズマ先生から貰った、この特殊な青輝石のお守りを持っていなければ、間違いなく今ので終わっていただろう。懐に入れた一つ目のそれが砕け散る音を聞きながら、ワカモは今受けたダメージがすべて消え失せるのを感じ、壁を突き抜けて吹き飛ばされた、瓦礫の上から立ち上がる。

 

 

 「――あら、あらあらあら…?

  わたくしはこの通り傷一つついておりませんが、さっきのはなんだったのでしょう…?

  少し、軽く、撫でられたようにしか感じませんでしたので、思わず受けてしまいました…」

 

 

 その様子にミカは目を瞠った。破れた衣服以外に、まったく損傷が認められない、余裕を持ったその態度に。それなりに本気で懐に飛び込み、その腹立たしい横っ面を思いっきりぶん殴ったはずである。そのまま壁に叩きつけ、壁をぶち破るまで追い込んだはずなのに、まるでなんの痛痒もないようにピンピンしているように見える。声にも、体幹にも、足にもそのダメージの片鱗はうかがえない。ミカはじりじりと間合いを詰めながら、警戒する。

 

 

 「――わたしは、セイアちゃんのところに行かなきゃならないの…。

  これ以上、わたしの邪魔をするなら殺すよ?」

 

 

 「………もしかして、貴方は芸人一座のピエロかなにかなのでしょうか?

  あんなそよ風では虫一匹も殺せないというのに…

  それにいまさらお仲間の心配をしてどうするというのですか…?

 

  あぁ、お可哀想に…、あなたが殺したようなものでしょうに…」

 

 

 「――っ! っち、違う…!!

  そんなつもりじゃ、そんなつもりじゃなかった…!!」

 

 

 「その台詞を、この先の部屋で血だまりの中に沈む、あなたのお友達の前でも

  吐くことが出来るというなら、通してあげてもよろしいですわ…

 

  あぁ、言わなくとも結構…、

  どうせごめんなさいだとか、わんわん喚いて捕まるのが落ちですわ…」

 

 

  「それはっ――、貴方たちが、貴方たちがやったことでしょっ…!!」

 

 

 「そしてその手引きをしたのは聖園ミカ、他ならぬ貴方です…。

  その軽そうな頭で犯罪教唆という言葉を辞書で引いてはいかがですか…?

  ……ああっと、これは失礼しました、その程度も考える頭がないから、

  気に入らないから、痛い目に遭えばいいなんて、たいへん下らない理由で、

  お友達を、殺したんでしたっけ…?」

 

 

 「――違う! 違う違う違う違う…!!!

  私は殺してない! 私はやってない! そんなつもりじゃなかったのっ…!!」

 

 

 ぶんぶんと首を振って、現実から逃れるような顔を見せるようなミカを見て、ワカモはもう一押し必要だと判断する。

 

 

 「………はぁ、話には聞いていましたが、

  想像以上にくだらないことが分かって、わたくし失望しました。

  わたくし、このあと解体作業があって忙しいんですの…

 

  ――あぁ、あなたには、百合園セイアさんの頭を、差し上げる予定です…」

 

 

 「――あ、頭…? な、なに言って……」

 

 

 「足、脚部、腰、胸、手、腕、首、と。

  誰なのかも分からないようにして差し上げてから、誰だかわかるように

  頭 だ け は、貴女に差し上げますわ…。

  

  我々アリウスと、トリニティの友好の証の第一歩ですもの…

  もちろん、受け取ってくださいますわよね――」

 

 

 「――――――あ”っ……」

 

 

 ――ドクン。と大きな鼓動がミカの胸を打つ。――ドクン、ドクン、ドクン、と…。その鼓動はやがて全身にくまなく巡り、やがて耳の中が鼓動の大音量で埋め尽くされ、甲高い超音波のようなものが鳴り響くようになって、やがて何も聞こえなくなっていく――。頭に血流が流し込まれていくのが分かる…、理解を拒む脳味噌が悲鳴を上げているのが分かる…、やるべきことを決めた思考が、全身に酸素を運ぶために全力で稼働し始めたのを感じて、ミカの瞳孔が急速に収縮する。……こいつは、いま、何といった。何を言った。セイアちゃんをどうするって、言った…。ふ。ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな…!!!

 辺りは静寂に包まれた夜闇であり、風一つ吹いていないにも関わらず、大気が聖園ミカを中心にして押しのけるように広がり、その鼓動の音までが空気を伝わって周囲に鳴り響いていく。それをミカは極度の緊張状態による錯覚だと感じていたが、実際はそうではなかった。その身に溢れるエネルギーが体から溢れ、周囲の世界を侵していたからなのだが、ミカがそれに気が付くことはない…。

 あぁ、心臓がいやにうるさい。でも世界はとても静かだった。顔の形が歪んでいくのを感じる。その瞳から見える世界が澱んでいくのを感じる。全身に漲る力が、膨れ上がり捻じ曲げられていくのが、感じられる…。 

 もうそこには、淑やかで、天真爛漫として、美しい美少女然としていたミカはいなかった。徐々に顔も形も雰囲気も、幽鬼のようなそれへと変貌していき、やがて、頭の中が真っ赤に塗潰されていくのを感じた。そこに行ってはいけないと分かっていても、もう止めることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――殺す。

 

 

 ――――殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――必ず、殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”…!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――――天に星が瞬く。

 

いくつも、いくつも、いくつもいくつもいくつも…。それは見るものが見れば、流れ星のように映っただろう。遥か天高い宙空から、流れ落ちる星々。本来ならたまたま夜空を見上げていた者が、流れ落ち、燃え尽きる前に、三度願いを唱えれば叶うとうたわれた、遥かなる惑星への儚い願いとなるもの。それが、それらが、燃え尽きることなく群となって、流星群となって、聖園ミカに立ち塞がる全てに向けて、その願いを叶えるために流れ、落ちる。堕ちていく――。

 

 

 「――大した大道芸ですわね……。

  生徒会長なんかやめて、そちらの道にお進みなっては――?」

 

 

 だが、それでも、ワカモは泰然とした態度を崩さなかった。想定以上の、更にその上の規格外の事態だ。だが、だからといってやることは変わらない。この場で、聖園ミカと明確に敵対すること、その上で先生の合図まで足止めすること…。それがカズマ先生から与えられたオーダーだ。

 

 

 「――壊れちゃえ、壊れちゃえ……、壊れちゃえっ――!!!!」

 

 

 「お可愛いことですこと――」

 

 

 そして、星降る夜の帷の中で、二つの影は激突した。

 

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――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――トリニティ総合学園 大聖堂秘密の部屋での記憶

            サクラコ、ミネ、セイア、ハナコ

 

 

 「――――以上が、私が見た最新の予知夢で、

  貴方に接触しようとした理由だ、カズマ先生…。

 

  ………その予知夢の中で、私は生きていた…。

  彼女たちの会話の中で、死んだことになっている私は生きていた。

  ――激化する戦場の外で、あなたに背負われ、その光景を見ていた」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………」

 

 

 「………………(そうなりますか…)」

 

 

 「………………(どうして俺はこうも未来視に呪われてるんだよ!!)」

 

 

 おそらくこうなるだろうなと、いろいろと今後の展開に関して話し合っていたハナコとカズマはそれなりの覚悟を持っていたので、そこまで衝撃的な内容とも感じず、沈思黙考して今後に関しての展開を考えたり内心愚痴る程度の余裕はあったが、その話をしたセイアを含めて、サクラコとミネに与えられた衝撃は大きく、三人とも気が抜けたような顔をして、強い精神的動揺から、なかなか抜け出せていないような素振りを見せていた。

 しかし彼女たちとて、それぞれの組織のまとめ役として君臨しているだけあってか、その時間もいくばくか少なく、まず最初に、ハナコによって言葉巧みに誘導され、碌に事情も聞かされずにやってきたサクラコが、抗議の声を上げた。

 

 

 「ハナコさん、これはいったいどういう…!!

  今後のトリニティを占う重要課題を話し合うとしか、聞いてませんよわたくしっ…!」

 

 

 「――はい、言ってませんから♡」

 

 

 「言ってませんから♡、ではなくっ…!!

  あ、あなたという人は、なんでそうも悪びれなく…」

 

 

 「ハナコ、君にしては意地の悪いことをする。

  どうして事前に説明しなかったんだい…?」

 

 

 「では逆にお聞きしますが、ある程度の事情をサクラコさんにお話ししたとして、

  ここで言い含められた後のサクラコさんならともかく、

  事前に聞いてしまったサクラコさんの様子は、明らかにおかしくならないと、言えますか?」

 

 

 「………サクラコは、もともと妙なイメージを持たれがちだから、

  その僅かな印象の差異すら、”敵”に露見することを避けたかったということかい…?」

 

 

 「はい♡」

 

 

 「――お待ちになってください。両者ともわたくしのことを好き勝手言っていますが…、

  そういうことが分かっているなら、

  今後の私のイメージ戦略にも、手を貸してくださいますのよね…?」

 

 

 「(――サッ)」

 

 

 「(――サッ)」

 

 

 「(――サッ)」

 

 

 「どうしてお二人とも即座に顔を逸らすのでしょうか…、いいえ、お待ちになってください。

  先生…? カズマ先生まで、

  どうしてこちらを頑なに見ようとしないのか、お話を伺っても…?」

 

 

 「――ヒィェッ…!」

 

 

 カズマはダラダラと顔中から冷や汗を流しながら、ニコニコと仄暗い笑みを浮かべるサクラコの視線から逃れようとするが、キヴォトス在住の運動能力に勝てるはずもなく、回り込まれ、顔を覗き込まれながら凄まれてしまう。

 

 

 「――お止めになったほうがよろしいかと。

  サクラコさんはそう言ったときに浮かべる笑顔が恐いと評判の理由を、

  ご自身で自覚しておられないのですか…?」

 

 

 「――くっ、じ、自覚していますっ…!

  ですから今は、最大限友好的な笑みを浮かべているではないですかっ…!!」

 

 

 「(………友好的な? ふむ?)」

 

 

 「(あらあらまぁまぁ)」

 

 

 「(お前を今から殺すって意味じゃなかったのか…)」

 

 

 「(――サッ)」

 

 

 「どうして皆さまそろいもそろって、きょとんとした顔をされるのですかっ…?!!

  団長…? ミネ団長? どうしてあなたまで顔を逸らすのです……」

 

 

 「………人には得意不得意があります、気に病むことはありません」

 

 

 「――――………どうして…????」

 

 

 話が逸れに逸れ続け、今後のトリニティの未来を占う、真面目な話のために集まったはずの面々は、とりあえずその話は置いておいて、虚脱状態になってしまったサクラコがこのままでは困るということになり、その今後のイメージ戦略に可能な限り協力するということでいったん話を付け、気を取り直したところで話を再開することになった。

 

 

 「――ごほんっ、お見苦しいところをお見せしました…。

  セイアさんの、今後トリニティを襲うであろう未来と、

  カズマ先生の、その敵勢力の計画に乗っかりつつ、

  状況をコントロールするために動くというお話でしたわね…」

 

 

 「………まぁそれはそうなんだが、その前に、ちょっといいか?」

 

 

 ――と、ここでカズマの物言いが入る。なんというか、トリニティでも屈指の美少女たちに囲まれてしまって落ち着かないと言うのもあるが、この閉鎖空間で会議が始まってからというものの、気になって仕方がないことがあったのである。

 今回の命題である、暗殺対象の百合園セイアと面と向かって接しているからか?いいや違う、ここで顔合わせをするという事が決まった後から、ある程度の情報共有を済ませており、ここでは初対面だがそうでもないようなものだ。ある程度は、お互いのスタンスについても理解は進んでいるため、気まずさもない。

 では、シスターフッド所属の歌住サクラコがいるからかというとこれも違う。会議が始まる前に少し話をしたのだが、サクラコとカズマは、どうも初対面ではなかったらしい…。カズマには全く覚えがなかったが、マリーと一緒に裏路地での炊き出し予行練習をしていた時に、ところどころで作業員として参加していたらしく、その時のことについて(サクラコができる最大限の)友好的な笑みを浮かべながら話をされ…、あ、これは副音声的な意味で「私に挨拶もなく、シスターフッドをもよくもこき使ってくれましたね」的なメンチ切だわやっぱ宗教関係は怖いと、カズマは怯えていたのだが、それも先の一連の会話で解消されたので、それでもない。

 つまり――――。

 

 

 「――――私に、何か問題があるのでしょうか、カズマ先生」

 

 

 カズマが問題視しているのは、トリニティ総合学園・救護騎士団の団長、蒼森ミネである。

 

 

 「いや問題って言うか、純粋に疑問なんだが…。

  ミネの印象がさ…、セリナとハナエから聞いた印象と全然違うんだが」

 

 

 「………そう、でしょうか?」

 

 

 「俺がお前のひととなりを人伝に聞いた限りは、問題が発生すれば、

  その発生源に向かって問答無用で突っ込んでいって、物理で解決!みたいなの

  ばっかりなもんだったから、大人しく座って話をする姿がイメージと噛み合わなくてな――」

 

 

 「………えぇ、その認識は間違っていません、カズマ先生。

  『救護』が必要な方を誰一人、逃がさない。当然のことです。

  ただその過程で、少々、不要な障害物が立ち塞がることも、ままありますので…、

  事態の解決には、『救護』を達成するためには、必要な手段がある…。

  ――それだけのことなのです。

 

   ただ、いま私がここで話を聞く必要があると判断したのは

  『救護』を達成するための『患部』が不明確だからです…。

  更に言えば、『要救護対象』とその『患部』が明確に判明しなければ、どこへ、適切に、

  必要な手段を使えばいいのか、分からないでしょう…?」

 

 

 蒼い瞳の中に、意思の炎をメラメラと燃やしながら、言葉を重ねるごとに、カズマに向かってズイズイズイッと迫ってくる姿は、なんというか、とても恐かった。それは例えるならば、カズマが、親に手を引かれて幼稚園に通っていた頃、何もされないと分かっている筈なのに、ただ相手の身長が高いからというだけで、そこらの小中学生がなんか恐しく感じる感情に似ていた…。先程まで座っていて気が付かなかったが、立ち上がってズイズイとカズマ迫ってくるミネの圧に押されて、思わずこちらも席を立ってカズマが後ずさってると、自然と顔と顔を突き合わせる形となり、ただそれだけで見下ろすようにされながら追い詰められているように感じた。

 

 

 「――――………ミネ、随分と立派なことを言っているが…、

  それなら、いい加減政治を私に任せきりにせずに、『ヨハネ分派』の首長として、

  ティーパーティーに参加してくれないかい?」

 

 

 「………政治の場には『要救護対象』が存在しません」

 

 

 そうやってズンズン迫っていたミネの背後から上がったセイアの声によって、燃え上がっていた瞳の中の炎が、スン…、と鎮火する。そして今まで何事もなかったかのようにスススっと元の席に着席し、涼しい顔をして紅茶を啜り始めた…。カズマはそんなミネの様子を、完全に白けた表情で見つめていた。

 

 

 「――――なぁ、ティーパーティーって大丈夫なのか…?」

 

 

 「身内の恥を晒すようだが、あまり、大丈夫ではないんだ…」

 

 

 「まぁ、だからこそ、トリニティ内のいろんな組織に顔が利いて、

  仲の悪い組織同士でも、うまいこと折衝できる私が、

  次期ティーパーティーに選ばれるなんてことになってるんですよ♡」

 

 

 「………うわぁ、俺こんな組織の長とか絶対嫌だわ…」

 

 

 「私もです♡」

 

 

 「ハナコ、君というやつは…。

  いや、ここまで組織の長の足並みがそろわないなら当然か…」

 

 

 「――――………ハッ。ええっ、ハッ、ハナコさん…?

  ハナコさんは次期ティーパーティーに選ばれていたんですか…?

  シスターフッドに来て下さると言う話は、嘘だったんですか…?」

 

 

 途端にオロオロと狼狽えだすサクラコ。どうやら、聞かされていなかった政治的動静を一気に浴びせかけられて呆然としていたようで、ハナコに向けて救いを求めるような視線を向けているが、ハナコはニコニコ笑顔の能面で、うふふ♡ そんな話もありましたね、とだけ返す。そんなやり取りを見てるだけで、カズマはなんだかサクラコが可哀想になってきた。

 

 

 「――おい、ハナコ。

  俺はサクラコがどんな奴なのか、だんだんわかってきたぞ…」

 

 

 「面白い方でしょう…?」

 

 

 「いや普通に可哀想なんだが…?

  ――おいミネ、ここにいるのは、お前の言うところの『要救護対象』とやらじゃないのか。

  政治的な傷で困ってるみたいだから、『救護』してやれよ」

 

 

 「――――………私の専門外です。

  しかし要請があれば、救護騎士団は誰の声であっても応えるでしょう」

 

 

 「――だとよ」

 

 

 おいおい大丈夫かと思いつつ、カズマは完全に白けていた。

 

 

 「そ、それは実質、政治的な職務放棄宣言と何も変わらないのでは…?」

 

 

 そして、ふたたびのサクラコによる、どうして…????が始まり、話が進まなくなってしまったので、セイア、ミネ、サクラコ、ハナコの間で、緊急事態に限って政治的行動を補助するという約定が結ばれた。そして、それを暢気に眺めていたカズマに四人の視線が突き刺さる。

 

 

 「――え、なに? 俺?」

 

 

 「なぜそこで、私は無関係ですと言う顔を出来るのか、

  私には理解しかねるが…、ハナコ、カズマ先生はいつもこういう感じなのかい?」

 

 

 「だいたいこういう感じですね♡」

 

 

 「先生、さすがにそれはどうかと…」

 

 

 「せ・ん・せ・い…。勿論、カズマ先生も、協力してくださいますわよね…?」

 

 

 四者四様に、カズマの余りの情のなさに関して詰められるが、カズマはこれでも気を遣った方だと自負していた。というかサクラコの笑顔がとても恐く、カズマは早口気味に弁解を始めた。

 

 

 「――待て待て待て…。

  よく考えろって…、そもそもここまでの事態になるまで、というか…、

  俺がここまで駆けずり回って色々なことが分かっても、分かるまでの間は、

  どうせお前らは自分自身の問題だとか、トリニティの問題だとか言う理由で

  シャーレに要請一つ出してなかっただろ…?

  つまりだ、お前らはトリニティという国家という枠組みに等しい学校を

  自分たちで守るべきものだと自負する、矜持があるわけだ。

 

   そこのセイア風に言わせるならば、外部の協力を得ることによって弱みを見せることは

  今の状態のトリニティにとって有用になるかどうか分からないから、

  やめておこうみたいな話でもしてたんじゃないのか?

 

   それに最近の俺の基本スタンスは、

  この治外法権みたいな権力をぶんぶん振り回すことじゃないしな…」

 

 

 「――――随分とよく回る舌だと感心するが…、

  ハナコ、やっぱり先生は普段からこんな感じなのかい…?」

 

 

 「ちなみに今のは要約すると、

  面倒くさいから嫌だ「おまっ、ハナコ!」と言ってるだけです♡」

 

 

 「先生、それはさすがに…」  

 

 

 「――先生、カズマ先生…。

  この集まりはハナコさんからの呼びかけによって成立したと言ってもいいでしょうが、

  この場の誰もが、その中心が貴方でなければ成立しないと考えています。

  どうか、ご協力いただけませんでしょうか…?」

 

 

 「ぇえ…?

  ………うーん、じゃあ、俺が今後のために用意した段取りに関して、

  お前らが文句言わないって言うなら、考えるが…」

 

 

 「随分と勿体ぶった言い方だが…、関わりたくないと言いつつ準備万端とはね…。

  それは、その内容も明かさずに、受け入れろと言う話かい…?」

 

 

 「――まぁ、別に事前に言ってもいいんだが、後になってから、

  そんなの嫌だとか、そこまでとは聞いてなかったとかゴネられたら面倒だからな」

 

 

 「………いいだろう。

  『あの』シャーレのカズマ先生がそこまで言うのなら、私は受け入れよう。

  しかし、この件は、ここの全員が納得しなければ、

  先生は積極的な協力しない…、そう受け取っても?」

 

 

 「――まぁ、そうなるな。」

 

 

 「私は最初から共犯者なので、大丈夫です♡」

 

 

 「――私も先生の評判は聞いております、問題ありません」

 

 

 「わ、わたくしは、なんだか今までのやり取りで、既に不安で一杯なのですが…、

  皆様に異論がないと言うのでしたら、受け入れましょう…」

 

 

 「――決まりだ。

  それでは、先生、その段取りの内容とやらを、教えてもらっても…?」

 

 

 カズマは、ある程度、話の流れの主導権を握れたことにホッとしつつ、この状況になって更にニコニコ笑顔になったハナコに対して、打ち合わせ通り、ハンドサインを示す。

 

 

 「………ハナコ」

 

 

 「――はい♡ みなさん、こちらの丸薬をどうぞ♡」

 

 

 「――これは…?」

 

 

 「………私でも知らない薬です、漢方薬のようなにおいがしますね」

 

 

 「もしかしなくても、これを飲むんでしょうか…?」

 

 

 「――まずは体験版だ。説明するよりも、飲めばすぐわかる」

 

 

 そして、その場の少女たちは、カズマの号令によって、山海経の天才薬師、薬子サヤお手製の『若返りの薬』を、呑み込んだ…。カズマがあらかじめ前置きした通り、その薬の名称とその効果に関して詳細に説明していれば、この場の誰もが手に取ろうとすらしなかっただろう。ただ、この薬を飲む寸前に、全員に注意喚起できたのが誰かというと、使用用途のない薬であっても集める趣味を持つ、救護騎士団団長の蒼森ミネだけだけだったのだが…、ミネはミネで、かの高名な山海経の天才薬師、薬子サヤを象徴するマークを見つけた時にはもう、身体に影響はないでしょうと特に気に掛けることなく呑み込んでしまっていた。

 意外なことに、キヴォトスで出回っている一般的な救急BOXは薬子サヤお手製が基本であり、その信頼性の高さもあって、公共から一般まで広く出回っているものなのである。つまりなにが言いたいのかというと、この後に待ち受ける未来は、命が掛かっていないこともあって、たとえセイアであっても避けることが出来ない運命だったという事である…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




――という感じで「ROUND1」の覚醒ミカ(反転×)はこんな流れで、どうしようという話でした。ここまで持ってくるのに10話近くかかってしまいました、どうして…?
 気になってる点として、ミネ団長の眼はよく見ると緑色なんですが、緑というか青碧っぽいんですが、緑でも青と表現することはある(信号機並感)ので、文章の流れ的にこうしました。

ところで、その、感想を、感想ももっと欲しいなって…
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