超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生 作:奈音
そんな感じを「杖と剣のウィストリア」OPを聞きながら書きました。
それでは、ムリゲー第三部、vs.聖園ミカ(余波)編、始まります。
――連邦捜査部シャーレ カズマの執務室
緊急!流星群対策リモート会議の記憶 ヒマリ リオ
『……いいですか、カズマ先生。
以前にも言ったとおり、流星群というのは、1秒間に平均40kmの速さ。
つまり、時速14万4千kmの速度で流れ落ちます…』
「……………。
って言われても、どのくらい速いのかすら理解できないんだが…」
『流星が人間の視覚情報に映り込むのが上空100kmからとされていますから、
そのまま燃え尽きることなく堕ちてくる流星群の場合、光情報を感知してから…、
――およそ2.5秒後に地表に激突します』
「……………100kmを2.5秒」
もう諦めた方がいいってことか…?と、カズマが遠い目をしているのを横目に、画面上のヒマリは続けて口を開く。
『ただし、これは、燃え尽きる大きさの流星を基準としていますし、
突入角や、時間帯、実際に観測された流星群の知名度等を考慮すると変動が激しく、
今回の、燃え尽きない程の大きさの基準にはならないはずなのですが…』
そのままチラリと、別窓で静聴しているであろうリオに視線を送り、その意図に気付いたリオがこくりと頷く。
『――もちろん、タイミングは把握しているわ。
幸運なことに、該当する未来観測はモニターしていた時間帯だったから、
計測時間を出すことは可能よ』
『話が早くて助かります。
……では、発光から迎撃まで、どのくらいの時間がありましたか?』
『――6.25秒。
それが、カズマ先生達が魔法を発現させた時間よ』
『――ということは、未来を知った上でそのタイミングに放った、いうことですね。
しかし、2.5秒で落ちるはずが、4秒近く違うのはいったい?
何故そんなにも猶予が…。』
はてはて、と画面上のヒマリは目を瞑り、リオもそれに連られるように考え込んでしまう。そんなリモート会議中の画面の前で、二人の話に全く付いていけてないカズマは、今しがた耳に入れた情報をもとに、パソコン上の電卓アプリを使って計算を行い始める。そしてその自らが導き出した計算結果を見て、ふふんと胸を張り、頭の良さそうな会話をしている二人に見えるように、その計算結果の示された画面を共有する。
「……おいおい、6秒であってるんじゃないのか。
見ろよこれ」
その画面上には、[6.944444444444444e-4]という数値が示されていて。
『…………』
『…………』
ヒマリとリオは、なにをバカなというようにその画面に目を向け、すぐさま、そうかバカなんだ、という結論に一瞬で至ってしまい沈黙する。そして、それはそれで好都合であると言う事にも気が付く。
『――なるほど、つまり』
『神秘は個人の主観によって変動する、その証明になってしまいましたね…。
ところで、カズマ先生、手持ちの電卓で同じ計算をしてみて下さい』
「――ん? えーっと」
カズマは言われるがままに、ガサガサと机の中を漁り…、しばらくの間、タンタンタンッ、と軽快に電卓のボタンを叩く音が響いて、
「………あれ? なんでだ?」
『見せて下さい』
「………お、おう」
そうしてカズマから、二人に見えるようにカメラに差し出された、その電卓の表示欄には、[0.00069444]という数値が表示されていて、
『………聖園ミカ生徒会長は、100kmを時速14万4000kmで除算した。
最初のカズマ先生と同じ手順、同じ考え方で。
その認識で神秘のことを考えているから、速度に関する物理法則を捻じ曲げた。
そういうことで、いいのかしら?』
『それ以外に考えられませんね』
「……………あの」
『最大ダメージ倍率2391%は、100%から見ると、2000倍ではなく、
23.91倍なんですよ? カズマ先生』
『そう。だから23.91×10で、お相撲さん239.1人分の――』
「お前らここぞとばかりに過去のことを蒸し返すんじゃねぇよ!!
マジで怖かったんだからな! というか240人分でも十分恐いわ!!
あともうやめてくださいお願いします!!」
そんなこんなで。カズマはしばらく黙っていることにした。
『まぁ、しかしこの場合は、非常に幸運であったと言うべきでしょうか…。
流星と数学に関してもっと深い興味を示されていたら…、
現在の我々では、とてもではないですが対応できなかったでしょうから』
『すべての条件が最適に噛み合った場合の、実際に観測された流星の速度は、1秒に71km。
時速25万5600kmの流星群を出された時点で、詰みね。
この話の本当に恐ろしいところは、聖園ミカ生徒会長が、流星に関する認識を
本当にそうなってしまうでしょう、という点にあるけれど――」
現状のままであれば、辛うじてではあるが、打開できる可能性は高い。しかし、問題はその後にある。第一波の流星群を薙ぎ払った後に襲ってくる、撃ち漏らしやその残骸。そしてそれは第二波も同様だ。カズマ先生と忍術研究部を狙い撃つように追いかけて来るそれらをなんとかしなければ、キヴォトスの住人である忍術研究部なら痛い痛いで済むだろうが、カズマ先生はひ弱な一般人でしかないのだ。保険として、プロテクションの魔法や、シッテムの箱による防護もあると聞いてはいるが、限界がある。
『――残骸の速さはどれくらいですか?』
『どれも一様に時速200km…、
おそらくは、自由落下速度の限界を基準にしているのでしょう』
『銃弾よりは遅いようですね…。しかし』
『えぇ。それ相応の訓練を受けているか、元々のフィジカルと反射神経がなければ、
まぐれはあっても、二度目はないわ。』
『……百合園セイアさんの未来観測によって視えたという、
カズマ先生の頭部に向かって行った、恐らくは撃ち漏らした流星に関しても懸念があります。
とてもではありませんが、人間の反応速度、反射神経で避けれるものではありません』
『そうね。
……6.94秒で考えたとしても、おおよそ秒速14.4km、時速5万1840km。
最初よりはましになったわね、少なくとも光よりは遅いわ』
『何の慰めにもなっていませんが…。
まぁ、光の剣の大爆発からも生還したカズマ先生ですから…。
今回も一度くらいは、まぐれで何とかならないでしょうか…』
『………。
そのまぐれで、なんとかしてしまえそうなのが、カズマ先生なのだけれど』
そして、それを機に、活路を見出すための会話がいったん止まってしまい。
『………………』
『………………』
沈黙がその場を支配し、
「………………なぁ」
『はい』
『なにかしら?』
二人からの、食い付く様な反応の早さにちょっと体を引きながら、カズマは空気を読むのを間違えたわと、少し後悔した。ちょうど話の腰が折れたように感じたので、今までの話で出てきた神秘がどうこうという辺りを詳しく説明して欲しかっただけなのだが、こちらに向けられる視線はそういう感じではない。
まるで空でも駆け上がっていくようにぽんぽん進んでいく話が急に止まったので、まぁいいかなとか考えていたのだが、おそらくは、カズマよりもカズマのことを真剣に考えてくれている、その話を中断できるはずもなく――
「………えーっとだな。たぶん、そのくらいならなんとかなる。
やって欲しいことが三つあるが」
カズマは視線を左上に逸らしながら、二人が会話しているのを黙って聞いていた最中に考えていたことを、頭の中で順番に思い浮かべていく。
『――伺いましょう』
「ゲヘナ‐トリニティ間の特急電車の貸切と、
そこに先行させるイタズラ☆ストレートのラストライブと道路の調整。
あと、シズコに連絡を取ってライブに合わせたイベントの開催を頼むわ」
『………。まだライブも始まっていないから、
私の権限でその程度の調整を行うことは可能ですわ…。
でも、カズマ先生…、いったいなにをされるつもりなのですか?』
うまくハマればいいが、うまくいかなければそこまでだ。未来を考えて対策することが不味いのなら、その手数を圧倒的な数の、制御不可能な不確定要素で覆いつくしてやろう。それでダメなら、また、その時に考えるしかない。
「要するに、速さが問題なんだろ?
それに今日開かれてるのは祭りだしな…、だったら祭りにしてやろうって話だ…。
そもそも、建前上はその為に開いたんだから、みんなで楽しまないとな」
カズマはそう言うと、ニヤリと笑った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――現在。トリニティ総合学園 サンクトゥス分派中央棟
幼女弾:ハナコ
戦闘中:ワカモ、ミカ(ROUND1)
偽装中:アズサ、セイア、紐セイア
「………カズマ先生」
「うん」
「――聖園ミカが、滅茶苦茶怒ってるな」
「そうだな」
「覚悟を決めてきたとは言え、私は少し怖くなってきた…。
なんというか、サオリから戦闘訓練を受けている時とは、また別の怖さというか…」
「分かる分かる。メンヘラって恐いよな」
「たぶんそれは違うと思う」
バカみたいな会話をしつつも、カズマとアズサは協力して、ガラスの破片を拾い集めていた。それは、例えるならばヘイローが砕かれた後のような形をしており…、カズマが山海経に派遣された時に、春原シュンの伝手で紹介してもらったガラス職人に秘密裏に造らせたものであった。
「大きなものは全部回収できたぞ、カズマ先生。
しかし、砕けた小さな破片まで拾っている時間はなさそうだ…」
「――ま、どーせこの後の戦闘の余波で、
壁は吹っ飛ぶわ、窓ガラスが砕け散るわが起きるから、
あんまり気にしなくてもいいだろ…」
「………それもそうか。よし戻ろう、先生」
「おう」
カズマはアズサに護衛してもらいながら、“潜伏”のスキルを使用しつつ、音を立てぬよう細心の注意を払い、戦闘中の二人に気取られないよう、先程まで居た部屋に戻る。ドアをそっと開け、そして閉めて仕舞えば、そこは凄惨な殺害現場だ。
救護騎士団のミネから貰った血液パックを用いて凄惨に彩られた床からは、鉄錆の匂いが立ち込め、その赤い絨毯の中央には、頭部の中央にぽっかりと穴が空いているように見える、偽装死中の紐セイアが横たわっている。
「――うっ」
「何度見てもグロいなぁ…」
カズマが、学校の文化祭のお化け屋敷メイクについての品評をしているような軽快で、ささっとセイアが待つ部屋の奥へ足を進めるのを横目に、アズサは普通に吐いた。ただし、手持ちのビニール袋を持参しているので、その虹色の軌跡はどこにもこぼれずに済んだが…。
カズマは、そういえば紐セイアを除く三人で連携をとりつつ、殺害現場を一緒に作っていた時も、アズサが途中から吐き気がすると言って気をやってしまい、申し訳なさそうに何度も謝っていたことを思い出して…、まぁそれも仕方のないことかもしれないと考えた。
カズマのスキルである
なので、カズマがよしよしと、しんどそうなアズサの背中をさすってやり、しばらくそうしていると、部屋の隅で三角座りをしていたセイアが、背中のランドセルを嫌そうに担ぎながら、床を覆う血液に触れないよう、慎重に。そろりそろりと、こちらに向かってやってきた。
「――カズマ先生」
「おうセイア。あー…、アズサ、行けるか?」
「……あぁ。少し取り乱した、すまない、カズマ先生。
それよりも、これは本当に貰ってもよかったのだろうか…」
アズサは、何度か深く深呼吸して調子を取り戻すと、いつもの戦闘準備を行いながら、今回の作戦で使って欲しいと言われた、不思議な仮面を懐から取り出す。カズマがゲマトリアから手に入れた、オカルトアイテムの一つであるそれを。この仮面が、カズマからアズサの手に渡ってからというものの、何度もアズサ自身によってその効果を検証された結果、隠密行動には最適なものであるということが分かり、それを興奮気味にカズマに報告したところ、じゃあそのまま貰ってくれと言われてしまい、困惑しつつも拝領していたのだ。
「もう一人が付けてる腕輪も、アズサが持ってる仮面も…、
付けるだけで強力な認識阻害の効果があるなら、今回の作戦にぴったりだしな。
またなんかあった時に役に立ちそうだから、持っといてくれよ。
………あれ?
もう一人の…もう一人…? ハ…、花? ……あれ?」
カズマは誰だっけ、と不思議そうに首を傾げ、
「………?? どうかしたのか、カズマ先生?」
「――…もう一人の協力者の名前を思い出せないんだよ…。
こう、喉元までは出ている感じでさ…」
カズマが真剣に首をひねっている様子を、アズサはジト目で批判の視線を向けながら、
「……まったく、何を言ってるんだ? 今までずっと一緒にやってきたじゃないか…。
まったく、私は覚えているぞ。シスター…、シスター…、あれ?」
「――? ……ハナコがどうかしたのかい?」
「「それだ」」
「……………???」
セイアはなんのことか分からずにきょとんとしているが、カズマとアズサはそれどころではなかった。ハナコに渡して使わせている腕輪も、カズマがアズサに渡した仮面も、おそらくはそれなりにヤバいものだとなんとなく察してしまったからである。
なにせ、セイアにハナコの名前を聞かされてからは、次々とその名前や性癖、身体の姿形や整った容姿を思い出していくのだが、ものの数秒立たずにまるで靄に掛かったかのごとく薄れていくのである。……という認識をすり合わせた三人は、セイアには大した影響がなかったのを不思議に思いつつも、早急にハナコに連絡を入れておくことを決め、もう一つの問題である”認識阻害の仮面”を囲みつつ、
「カズマ先生…、この仮面もかなり不味くないか?」
「用事が終わったらすぐ外すか、壊した方がいいかもな…。
――覚えてる今のうちに、ハナコにモモトーク入れとこう」
「私もメッセージを残しておく」
「なるほど。そういうことなら私もそうしておこうか…」
ここにきて、ゲマトリアから貰ったオカルトグッズをなんとなくで便利に使用してきた弊害が出てしまい、次への動きが少し鈍ってしまったが、予定通りに、アズサはハナコと同じ”若返りの薬”が充填されたピストル型注射器を装備し、認識阻害の仮面を付けてから、ハナコが担当しているエリアの反対側の掃除に向かっていった。
カズマはカズマで、見かけ上はそのままに見える、光学迷彩を纏ったセイアを背負い、背中から指示を受けながらえっちらおっちらと、早足でトリニティ総合学園の屋上を目指して駆けていく。勿論、カズマにそんな根性と体力は存在しないので、パワードとスピードゲインの補助魔法を自身に掛けてからだ。
走りながらも、考えるのは問題の流星群のことだ。それまでに、どれほどの猶予があるのかセイアの予知であっても分からなかったため、ワカモには戦闘の状況が分かるように、常時オープン状態のミレニアム式小型無線を付けてもらっているから、決定的な時間までに準備が完了できることは分かっている…。分かってはいるのだが、なんというか、こう、実況動画で神プレイを披露しているのを見て簡単そうだと思うのと、実際に実機でやってみると全然感触が違うという事を嫌というほど思い知らされてきたカズマの体から緊張は抜けない。
そして。そして、セイアを背負ったカズマの足が、目的であるトリニティ総合学園の屋上へたどり着き、弾かれたようにセイアが空を見上げ――
「――! カズマ先生!! 今すぐ詠唱を始めてくれっ…!!!」
既に未来が変っていることを突き付けられ、脊髄に氷柱を叩きこまれたような悪寒を覚えるが即座に、
「――もうかよっ…!! ミチル、ツクヨ、イズナっ…!!」
だから、それを受けたカズマは、この為に頭部に付けていたインカムを通信状態にして、
『承知!』
『は、はいっ…!』
『準備万端です、主殿っ…!!』
「――詠唱開始だ!!!! いくぞっ…!!!」
キヴォトス路地裏大祭、その夜の部を最初に彩るのは、かつて百鬼夜行連合学院で開催されたお祭りで放たれた、カズマにとっての黒歴史。お祭り運営委員会が、ミレニアム製のホログラム花火を撃ち上げるよりもいち早く、遥か天高い上空で、百鬼夜行の全天を覆う程の規模の大爆発を起こした爆裂魔法。満を持して、その二度目の、より派手な御披露目が、訪れる。
『――黒より黒く、
――闇より暗き漆黒に、
――我が真紅の金光を望みたもう……。』
ミレニアムサイエンススクール郊外で、ミチルが。
『――かっ、覚醒の時来たれり…!!
――無謬(むびゅう)の、きょっ、境界に堕ちし理(ことわりっ)………!!!』
ゲヘナ学園郊外で、ツクヨが。
『――――無暁(むぎょう)の歪みと成りて、現出せよ……っ!!!』
トリニティ総合学園郊外で、イズナが。
――そして、そして。この時の為に、未来観測機関「讖(しん)MkXIII」を、ランドセルに内蔵されている全身光学迷彩と同様に、背負えるサイズまでサイズダウンしたことによって機能を縮小しつつも、その能力を最大限に発揮できるようになったセイアが、全身の神経をとがらせ…
――――天に星が瞬く。
いくつも、いくつも、いくつもいくつもいくつも…。それは見るものが見れば、流れ星のように映っただろう。遥か天高い宙空から、流れ落ちる星々。本来ならたまたま夜空を見上げていた者が、流れ落ち、燃え尽きる前に、三度願いを唱えれば叶うとうたわれた、遥かなる惑星への儚い願いとなるもの。それが、それらが、燃え尽きることなく群となって、流星群となって、聖園ミカに立ち塞がる全てに向けて、その願いを叶えるために流れ、落ちる。堕ちていく――。
その光を、一つも見逃すまいと睨みつけるセイアは、ここだと世界の全てが叫喚するかのように訴える直感、その未来予知の能力が拡張されたものに従い、叫ぶ。
「――いまだ!! 合図を――!!」
それは、爆裂魔法を操る者たちの手綱を取り、指揮するかのように、
「行くぞ、お前ら! タイミング合せろよっ――――!!!」
『――――承知! ミチル流忍法…!』
『――――はっ、はい! ツクヨ流忍法…!』
『――――了解です、主殿! イズナ流忍法…!』
――突如として宙空に線を引いた、星々を彩るかのように、祭りの会場の空を包み込んだ三つと、その中心の一つの巨大な魔方陣が、天に連なるように、14の機械音を奏でながら積み重なっていく。七色の星の光が四人の周囲を取り巻き、空と大地を震わせる独特の音が響き始める。それは空へと続く階梯であり、星の光すら焼き尽くす鼓動であり、大気を震わせる原初の炎の息吹であった。その奏でられた奇跡の音階が臨界に達し、爆裂魔法を操りし者たちの腕の中に、いまかいまかと崩壊を齎す光源が、始まりの鐘の合図を待つ状態となり、
「――放てっ…!!」
そのセイアの合図とともに、
『『『「――――――――エクスプローーーージョンッ……!!!!」』』』
全ての呪文の上に君臨する、最高位の爆裂魔法が、空を割り、同時に、四人の手元で青輝石が砕ける音がして、
『『『「――テレポートッ…!!!!」』』』
第二波の流星群と、第一波の流星群の撃ち漏らしとその残骸を処理するために用意された特別ステージへ。五人はそれぞれがいた場所から一瞬にして消え失せる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――キヴォトス路地裏大祭 ゲヘナ-トリニティ間 全線貸切特急ホーム
任意全員参加型イベント『
忍術研究部、セイア、ミネ
【――路地裏大祭、実行委員会からお知らせ致します…。
『
もしくは並走車両コースへお進みください。
流星が迫って来た時点でイベント開始となりますので、ご了承ください…。】
【――繰り返し、お伝えします。
『
もしくは並走車両コースへお進みください。
流星が迫って来た時点でイベント開始となりますので、ご了承ください…。】
「走れっ――!!」
テレポートした先の、特急列車のホームで待機していたミネに、背中に背負っていたセイアを預けたカズマは、忍術研究部を率いてすぐさま走り出した。
「ご武運を…!!」
カズマからセイアを受け取ったミネは、セイアを俵の様に担ぎ上げると、カズマたちとは反対の方向へ。脱兎のごとく駆け出していく。
「――なっ、ミ、ミネ…?!
これはいったいどういうことなんだい…?!
私がカズマ先生たちの側にいなければ、未来干渉が出来なく――」
「存じております!」
「だったらなぜ――!!」
「……わたくしも、詳しいことを全て聞いたわけではありませんが、
対策することで対抗される圧倒的物量には、
圧倒的な物量の不確定要素で対抗すると、カズマ先生が仰っておりました」
「そんな、どうにかなるかも分からない博打に――」
「――いいえ。
カズマ先生は、もう覚えたと、仰っておいででした」
「………覚えた? 覚えたって――」
いったいなにを、と言いかけて。その時、セイアの脳髄に、稲光の様に走る一つの解答があった。霞沢ミユ、狐坂ワカモ、阿慈谷ヒフミ、浦和ハナコ、久田イズナ、千鳥ミチル、大野ツクヨ、棗イロハ、白洲アズサ、そしてアリウス分校のアクシズ教徒たち。その共通点は、いずれもカズマ先生が持つ別の世界の超自然的な神秘、カズマ先生がスキルと呼ぶものを習得させたところにある。そして、そのスキルを大人のカードを用いて、誰かしらに与える度に、カズマ先生が愚痴を零すかのように言っていたことを思い出す。
カズマ先生が持つ、そのカードのもう一つの使い方。スキルの使い方を誰かに教えることで、そのスキルを習得させることが出来るようになる、とは真逆の使用方法。誰かにスキルの使い方を教えてもらうことで、そのスキルを使えるようになる。不特定多数が持つ神秘を、自分のものにする神秘のことを。そしてその神秘の習熟度は、神秘を継続して使用する者の側にいることで、より習熟度が上がるという話を。
「――まさか」
特急列車の発車を告げるベルが鳴る。セイアは、おそらくはその予想通りだろうと言う事実に近しい推測に愕然とし、ミネから逃れようと抵抗していた身体をピタリと止める。もうそうなってしまえば、ミネに担がれたまま、地下へと続く階段へと運び去られて行くことを受け入れる他ない。セイアは、徐々に地上から地下へと沈みゆく視界に歯痒い思いをしながらも、カズマ先生たちを乗せた列車が、ホームから消えていく様を、祈るような瞳で見つめ続けた…。
このすば原作を読んでいる方は知っているかもしれませんが、あの世界のカードは存在自体が反則です。まぁ、それがあっても魔王軍に勝てないので、ダークファンタジー度高いんですよね…。