超法規的組織シャーレ で 仕事をしたくない サトウカズマ先生   作:奈音

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※エデン条約へは原作(ブルーアーカイブ)通りに流れます。


エピローグ(1)

 

――ウトナピシュティムの本船(起動中) ブリッジ カズマ

 

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 ――ザザッ――

 

 

 「俺がお前に断りを入れず、不審に思われるような行動をしたのは、間違いのない事実だ。

  ……だから、俺はトリニティの生徒会であるティーパーティーのホストから、

  お前宛に、百合園セイアから聖園ミカ宛に、伝言を預かってる」

 

 

 「ふっ、ふざけないでよ…!!!!!

  出まかせ言ってこの場を凌ごうだなんて、もう出来ると思わない方がいいよ、先生…

  私は、前みたいに、もう丸め込まりたりなんかしないんだからっ…!」

 

 

 「【ミカ…】」

 

 

 「その声で口を開かないでっ…!!」

 

 

 「【君が、私に謝る声はずっと聞こえていたよ…

   そして、だからこそ、私は君を許そう、ミカ…】」

 

 

 「やめてっ…!!! やめてぇっ…!!!!!!!!」

 

 

 死んだセイアの声をそのまま耳に入れてしまった事で、酷く強い精神的な衝撃をその今にもひび割れそうな心の弱いところに受けてしまい、うまく力が入らず、身体の制御もままならない。

 

 

 「【私は君のことを、分かったつもりでいた。

   君の抱えていたものを、考えていたことを、その状況を…。

   私は、私は君を、ミカを知ろうとする努力を、怠っていた…。

   ――だからもし、次があるなら】」

 

 

 「――いやぁっ…!!!!やだ! やだやだやだやだやだやだ…!!!」

 

 

 「【私たちは、お互いに伝えあって、それで、その先を一緒に――】」

 

 

 「――――……あっ」

 

 

 ミカは自分の中で張り詰めていた全てのものが、次々と千切れていくような音を聞いた。消えていく、目の前の景色が。消えていく、今まで考えていたことの全てが。消えていく、なにもかも、なにもかもが、なにもかも――――。

 

 

 ――ザザッ――

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………なんだこれ? 白昼夢?」

 

 

 聖園ミカを、連邦捜査部シャーレに登録した後のこと。これからのことに関しては、後日また大聖堂秘密の部屋で集会を開くからその時に、という話になって。ミカをテレポートでトリニティ総合学園に送り届け、再びここへと戻ってきて…、妙に座り心地の良い船長席に座って浪漫を堪能していたら、少しの間、眠ってしまっていたようだ。

 ……それにしても。先ほどまで見ていた夢を、こんなに明確に覚えているのは久しぶりの感覚だとカズマは考える。なんだかいやにリアル感があって、まるで実在した過去のような、体中に纏わりつくような不快感があって…。いやいやまさかな…。

 

 なんだか嫌な予感がしてきたカズマは、早急にウトナピシュティムの本船の電源を落として立ち去ろうと思い立ち。

 

 

 「――なぁアロナ。

  なんかちょっと気分悪いから、もう帰りたいんだけど」

 

 

 「(――接続中――)

  (シッテムの箱

    ―未来観測機関「讖(しん)MkXIII-2号機」‐active

     ―サトウカズマの神秘【未来観測】‐active

       ―ウトナピシュティムの本船 ‐active)

 

  (――最適解の未来を演算中…、…。完了。実行します)」

 

 

 「――は?」

 

 

 暗転。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――サトウカズマのスキル 未来観測(複合暴走)

  ??? 補習授業部、アリウススクワッド

 

 

 「――――青春の(Blue)物語(Archive)を――――!!!!」

 

 

 ヒフミが、決意と共に、その小さな手を天に掲げ、それに引き裂かれるように、雲は払い除けられ、日が昇り、眩いばかりの光が、世界を満たした。

 

 

 「あ、雨雲が……」

 

 

 ヒヨリは、余りにも出来過ぎなタイミングで起きた天の意思に、呆然とし

 

 

 「気象の操作…? いや、これは……」

 

 

 ミサキは、なんとか現実の事象に落とし込んで自身の説得を試みるが――

 

 

 「き、奇跡、ですか…?」

 

 

 「っ、奇跡なんて…、いいや、あるか…(スンッ

  あるね、あるけど! 何これ…!

  ――――まさか、戒律が…?」

 

 

 そして、その疑問を解決するよりも先に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「連邦捜査部シャーレ全権代理、生塩ノアが、ここに宣言します。

  ――――私たちが、新しいエデン条約機構。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………先生」

 

 

 「ここまでは俺が視た通りのまんまだ、どうにもならねーよ……」

 

 

 『――私は先生を信じてはいるが…、

  お願いだから収拾を付けてくれたまえよ????』

 

 

 サオリと、アリウス分校の生徒に変装したカズマ、通信機越しのセイアは既にこの流れを知悉していたのもあって、特に驚くこともなく、混乱し、足並みが乱れる生徒たちの様子を窺いながら、冷めた視線でそれを見つめる。かつて、古聖堂があった廃墟で、条約の発起人である生徒会長の代わりの代わりとなった少女が宣言する、楽園の名を冠する約束の再現を。

 

 

 「………ここからだぞ、俺は本当の本当にやりたくなかったが…。

  お前ら、準備は良いな」

 

 

 『ベアトリーチェとの契約を曲解し、歪曲し、望む通りの結果を捏造するためとはいえ、

  避けては通れない道か、私もできる限りサポートしよう…』

 

 

 「――待て、ミサキが来る。通信は控えた方がいいだろう」

 

 

 状況の変化に戸惑い、慌てた様子のミサキがサオリに駆け寄りながら、それでも淡々とした口調で報告を行った。

 

 

 「……リーダー、ユスティナの統制がおかしくなってる。」

 

 

 「そうか」

 

 

 その報告を聞いて、サオリは周辺のユスティナ聖徒を見渡すと、確かにミサキの言う通り、誰を攻撃していいのか判断しかね、戸惑っている様子だった。存在意義の根幹に疑義が生じたからか、その姿が揺らめき、薄く透けている個体も見受けられていて。

 

 

 「こ、混乱していますね……エデン条約機構を助けるのが戒律。

  しかし今はETOが二つあって……。」

 

 

 「………………」

 

 

 「リーダー……?」

 

 

 ヒヨリの言う通り、このままでは戦力として運用することは、絶望的だろう。元々、ゲヘナとトリニティに生徒数で圧倒的に負けているアリウス分校側の戦力を補填する意味で、最も重要な切札の一つではあった。だが、それがなんだというのだ。それがなくてもお釣りがくるような鬼札が、まだ、手元に残っているのだ。

 

 

 「……先生。私は今ここで、アクシズ教徒になることを宣言する」

 

 

 「…………おいおい、いいのか?

  アクシズ教も、キヴォトスの神秘とまじりあったせいか、

  教義を守らない者には、その効果を発揮しない。

  ……つまりだ、お前は、あの水の女神を心の底から崇拝した上で、

  リーダーとして行動しなければならない。

 

  それに教義にもある通り、アクシズ教はベアトリーチェの教えを――」

 

 

 「構わない…、私は。いいや私たちは、先生の生徒だからな」

 

 

 「………あー…。じゃ、号令を掛けろよ。

  多分だが、それでお前は今日からアクシズ教司祭だ」

 

 

 サオリは、深く、深く目を瞑り。アリウス分校で散々聞かされたアクシズ教の教義に関して思いを馳せる。どれもこれも馬鹿らしい程にいい加減な教義ばかりだが、それは言い換えれば、この教えが浸透した歴史の背景には、戦乱と貧困、明日も見えないほどの暗闇の時代が、長く永く続いたからこそ、底抜けに明るいように、バカバカしいように、笑い合えるように作られたのであろうことが伺える。

 実際、アリウス分校内での模擬戦において、教義を唱えながら襲い掛かってくる生徒たちは、腕が悪いものでも明らかに動きが変わった。神による救済と治癒が約束され、教義によって自己定義を強く補強された彼女たちには、水色の神秘が色濃く宿り、多少の傷なら時間が少しかかるが治ってしまうのだ。

 

 

 ――だから。

 

 

 だから、サオリは明確に意識して力強く、目を瞑り、拳を固く握りしめ、脅かされていた過去(ベアトリーチェ)のことではなく、輝かしくしていく未来(仲間)に思いを馳せる。…そうして開いた瞳は、天に上る曙光に照らされ、体中に漲る水色の神秘と混ざり合い、青空色に輝いていた。

 

 

 「――アクシズ教! 教義!!!」

 

 

 その日、不死身の軍団が、初めてキヴォトスの表舞台に立ち…。敬虔なアクシズ教徒による、ゲヘナとトリニティへの、進軍が始まった。

 

 

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

――ウトナピシュティムの本船(起動中) ブリッジ カズマ

 

 

 「………あ、あ? ――は? 嘘だろ…?」

 

 

 未来予知にまつわる事件はもう終わった。今日この日に。だから、とりあえずではあっても、ようやく全てが解決したのだと考えていたカズマは、やはり詰めが甘かった。いまや、このキヴォトスで未来予知に関する神秘を持った人物は、一人ではないのだ。そして、さらに言うのならば、カズマはよくよく考えておくべきだった。対聖園ミカ戦にかまけてばかりで、肝心要のことから眼を逸らし続けていたことに、真っ先に気付いていなければならなかった。

 

 百合園セイアが保有する未来予知の神秘は、決して万能ではなく、見たいものが視えるわけではなく、本来ならば一切制御などできないものだという事を、分かったつもりでまるで理解していなかった。最弱の冒険者であるカズマであれば、なおさらのこと…、覚えたばかりの神秘を自在に使いこなせるはずもなく。

 そんな不安定な状態のまま、ウトナピシュティムの本船に接続してしまえば――全てが未知の技術で構成された起動中の超巨大量子コンピューターに繋いでしまえば――意図しない挙動が生起する可能性を、カズマは完全に思慮の外に置いていた。

 

 

 「(――実行完了――)

  ………。………。………ふぁ(ゴシゴシ)。んんー!(伸び伸びー!

  よく寝ました! ――あれ? カズマ先生どうしたんですか?

  鳩が豆鉄砲喰らったような顔をし――」

 

 

 「………ッ!  ………ッ!!  ………ッ!!!!!!!」

 

 

 「あっあっあっ、やめて下さい、やめて下さいカズマ先生…!

  オデコをつんつんしないでくださぁい……!!」

 

 

 カズマは激しい動揺と、確定された未来への恐怖を紛らわすように、無言のまま感情を爆発させた。本来なら、今回もよく手伝ってくれたアロナにご褒美の一つでも買ってやって、今後もよろしくなみたいな感じで労ってやろうとか考えていたのが一瞬で全部吹っ飛んでしまった。そうやって継続してアロナのおでこを執拗に虐めていると、抗議の声が大きくなっていったのもあって、黙らせるために両頬をつねる。

 

 

 「――いひゃい!いひゃいれす!ハシュマしゃえんしぇい!!!

  ほほをひへははいへふははい…!!」

 

 

 「――またか! またなのか?!

  どうしてこう、青髪のファンタジー染みたやつは…、

  俺に面倒ごとを運んでこないと死ぬ病気にでも罹ってんのか…?!

 

  なーーーーにが最適な未来だ! 演算して実行だ!

  俺がテロリストになっちまってるじゃねーか!!! ざけんな!」

 

 

 「にゃんのほほは、ははひはへーーーん!!!(ぐにぐにぐにぐに」

 

 

 カズマは本当に今更ながら、黒服の言うことを聞いて元の世界に戻ればよかったと心底後悔した…。――と言うか今からでもいいから帰ろうかな。元の世界の座標は特定できそうなところまでは行ったって言ってたし…。いやいや待て待て落ち着けサトウカズマ、短慮はいけない。アロナ?が、言っていたことを思い出せ…、『最適解の未来を演算…』というやつを。あれで最適解ってことは、あれ以外を目指したらもっと酷いことになるってことなんじゃないのか…?

 そもそも今回の件も、セイアの未来視を共有したところから全力で軌道修正をしつつ、新しい能力を生やしたり、仲間が対応できるように戦力増強を図りながら、それでも最後は幸運に助けられて、本当の本当に紙一重のギリギリのところで収めることが出来たのだ。つまり、それが意味するところは…、今から準備しても詰むかもしれないということであり……。

 

 

 「――ぷはっ、いたたたたた…。

  ううっ…、ひどい! ひどいですよぉ、カズマ先生!

  ――ってあっ! なんで電源ボタンを長押しするんですか!!

  待って、待ってくださいカズ――」

  

 

 「………………」

 

 

 カズマはしばらくの間、電源の落ちたシッテムの箱に映る、自身の顔を眺めながら沈黙し、

 

 

 「帰って寝よう」

 

 

 考えることを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

――連邦捜査部シャーレ カズマの私室

 

 

 「ただまー」

 

 

 「――あっ、おかえりなさい、カズマ先生!」

 

 

 「おうセリナ!」

 

 

 「はい!」

 

 

 鍵のかかっていた筈の自室へ入ると、そこにはセリナがいた。

 

 

 「………(ダッ!」

 

 

 「………(ガシィッ、ドスン!」

 

 

 そして、カズマは有無を言わさず拘束された…、あっという間だった。抵抗は無意味だった。そのままベッドに縛り付けられ、点滴を刺され、いつ何時、誰にでも振りまかれているセリナの笑顔から、陽の光を消したような対応を受けていた。

 

 

 「………………(ダラダラダラダラ」

 

 

 「………………(ニコニコニコニコ」

 

 

 ……まぁ、それはそうだろうというか。カズマの与り知らぬところで、そうされても仕方のない事件が発生していたからなのである。さかのぼること、キヴォトス路地裏大祭でセリナとセナに緊急拘束された後のこと。精密なメディカルチェックを受けたカズマは、その場で「生きているのが不思議なくらいの疲労の溜まり方」と診断されたことにより、セイアにより救出(?)されるまでの間は、VIP用治療室に軟禁されていたのだが。

 

 

 「先生? 私言いましたよね?

  ――次同じような騒ぎを起こしたら許しません、って…」

 

 

 「い、言ってたような? 言ってなかったような…。

  そもそもあの後、気を遣ってこっそり抜け出したから騒ぎになんて――」

 

 

 「…………(ニコッ」

 

 

 「ひぃ…! な、なんでもありません、セリナ様!」

 

 

 セリナから微笑みを向けられただけで、カズマは黙ることを選んだ。言葉を介さなくても伝わるものが、確かにそこにはあった。

 

 

 「…………そうですね。カズマ先生の擬態は完璧でした。

  バイタルも、点滴の減り具合も、ベッドに寝かされていたカズマ先生人形も…。

  キヴォトス路地裏大祭での、花火と流星の催しで、カズマ先生がテレビに映るまではですが」

 

 

 「わ、悪かったって…、医者の言うことを聞かずに出て行って――」

 

 

 「――そうじゃありません!!!」

 

 

 「――ひぇっ…!」

 

 

 カズマは、普段からお日様のような笑顔を振りまいているセリナを怒らせてしまっては一大事だと、ささっと謝って許してもらおうとしたが、いつにない剣幕で声を荒げるセリナの様子に、ビクゥッ…!と体を震わせてしまう。な、なんだ?俺としては、迷惑を掛けないように静かに抜け出したつもりだったが、それが却ってもっとやばいなにかを知らないうちにやってしまっていたとかそういうキヴォトス由来のやつなのか…?などと、異文化交流に失敗してしまった外国人のようなことを考えていたのだが、

 

 

 「――カズマ先生が原因で、その後の合同医療本部は上から下への大騒ぎだったんですよ?!!

  私がカズマ先生人形を、なんとかセーフハウスまで護り切ったからよかったものの…」

 

 

 「う、うん、そっかー…。俺の人形を護り切っれてよかっ――。

  ――………ん?」

 

 

 何かがおかしいと感じたカズマの言葉はそこで止まり。

 

 

 「あの日の合同医療本部は、キヴォトス中の生徒が運び込まれていた場所だったんです!

  そこにあんな危険物を放置していくなんて…、しかも1/1サイズ!!

  ――先生は何を考えてるんですか?!!」

 

 

 「――おい、そんなことよりセリナは何を考えて俺の人形を持って帰ったのかを詳しく」

 

 

 「何を、何を考えてかですか?! 当たり前のことを聞かないでください!

  おうちでしっかりお世話するために決まってるじゃないですか…!! ……あっ!」

 

 

 「――ほう」

 

 

 カズマの両目がキラリと妖しく輝く…。山海経の一件でシュンにこんこんと説教を受けてからというものの、カズマは自身に向けられる好意に関して自覚的になっており…、まぁだからといって年頃の少女たちへ気軽にアプローチできるわけもなく、

 

 

 「――おいセリナ。

  お前の隠れ家で俺の人形がどういうお世話をされてるのかを詳しく聞こうじゃないか」

 

 

 「プ……、プライベートなので黙秘します!」

 

 

 「おいおいセリナ、俺がどこの誰だか忘れたか?

  あらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる超法規的機関…、

  連邦捜査部シャーレのカズマ先生だぞ?

 

   そんな俺には、今後のシャーレに関する業務に影響が出ないよう…、

  その俺を模した人形で、業務形態へのイメージを損なうことが起きないように

  努めないといけないんだよ…。

 

   ――つまり!

  俺の人形がセリナにどんなお世話をされているのかを事細かく詳細に!

  事情聴取する義務があるってことなんだよぉ…!!

  ――とりあえずセリナのパジャマの色からな!」

 

 

 「お、横暴! 横暴です!

  カズマ先生の職権濫用を主張します…!

  そもそもパジャマの色は関係ないじゃないですか?!」

 

 

 「お、おい、やめろよ…、職権濫用なんて人聞きが悪いだろ?

  シャーレの今後ために、いまのいままで…。

  俺の人形と添い寝してたセリナのパジャマの色が業務的に必要なだけなんだって!」

 

 

 「――な、なんで一緒に寝ていたことを知ってるんですか?!」

 

 

 「えっマジで?」

 

 

 「えっ?」

 

 

 「………えっ?」

 

 

 しばらくの間、2人の間に沈黙が下りて。カズマは、ハッといち早く我に返ると、最近こういうことがよく起きていて、弱みを握られたりと言った具合に痛い目に遭わされていたことから、そのために編集しておいた『セリナ用』と印字されたレコーダーを取り出そうと考えたが、ベッドに縛り付けられていたことを思い出し、仕方なく。

 

 

 「………え、えっーーと…?

  じゃ、じゃあ? 俺本人と添い寝するか?」

 

 

 苦し紛れに、とりあえずセリナの願望?を叶える方向で話を進めるが、

 

 

 「ハ」

 

 

 「ハ?」

 

 

 セリナの顔が徐々に赤くなっていき、そのまま首元まで真っ赤に染まっていって、

 

 

 「ハレンチですぅぅぅううううぅぅうううううう…!!!」

 

 

 ドドドドドドド!と音高く土煙を立てながら脱兎の如く、セリナはその場から逃げ出してしまい、

 

 

 「――お、おい! せめてこの縄を解いてから――!!」

 

 

 勘弁してくれとばかりにカズマが声を上げた時には既に手遅れで、羞恥に駆られて走っている割には几帳面なセリナによって、外へ繋がる扉はしっかりと閉められたうえで施錠されてしまい…、――バタン!ガチャガチャ!という音を最後にして、カズマ一人が残された部屋は静寂に包まれた。

 おいおい嘘だろ?と思いながら、事態の解決を図るために周囲を見渡すと、そこには『救護騎士団特注、トータル健康セット!』と銘打たれた箱から、栄養ドリンクが取り出されたままになっていて…、おそらくあのまま黙ってセリナの看病を受けていれば、いろいろと面倒を見てくれたんだろうなという心遣いが伺えるようだった。……まぁ、それにしたって神出鬼没すぎるのは、ちょっと、いやかなり怖いので控えて欲しいところだが。

 なんだか一気に気が抜けてしまって、どっと疲れたような気分になったカズマは、大きく溜息を吐くと、腕に繋がれた点滴が、ポタリポタリと管を通って落ちていく様子を眺めながら、目を閉じていく。

 

 

 「――寝よう」

 

 

 だから、そのまま寝た。

 

 

 暗転。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――サトウカズマのスキル 未来視(LUCK値依存自動発動)

  ??? ベアトリーチェ

 

 

 

 「お前だっ――!! お前だ、サトウカズマァ…!!!!

  殺さなければならなかったのは、百合園セイアでもなければ、聖園ミカでもなかった…!!!

 

  お前さえっ…、お前さえいなければっ…!」

 

 

 再び巨大な魔と化したベアトリーチェが、その爪牙を力任せに振るうが、今までの戦闘で限界が近いのか、先程まで嵐のように暴れまわっていた時よりかは幾らか動きが鈍く、身体強化魔法を重ねがけした状態のカズマでようやく、なんとか紙一重で逃げ回ることが出来た。

 

 

 「うぉぉおぉおおぉぉおおおおおおおおぉおお…!!!

  死ぬ死ぬ死ぬしぬぅ…!!!!」

 

 

 「――――死ねェ…! 今すぐ死ね!!!」

 

 

 「チクショウ…、畜生!

  結局、バケモノ相手に追いかけまわされるのはどこ行っても変わらないのかよ…!!

  だけどな、お前がそういう感じになったんなら、俺も覚悟が決まった…!

  お前は、魔王軍幹部のバケモノ共と、扱いが同じでいいってなぁ…!!」

 

 

 「ワケの分からぬことをペラペラと…、疾く疾く死ねぇ…!!!!」

 

 

 「うぉぉおぉおおぉぉおおおおおおおおぉおお…!!!(ゴロゴロゴロ

  流石にこれ以上躊躇ってたら死ぬっ…!

  ……くっそ、こいつを使うのは黒服に止められてるから、

  出来ればもう触りたくなかったが…」

 

 

 一息の間合いから、巨大な鉤爪をいまにも振り下ろそうとするベアトリーチェを、カズマは視界に収め、

 

 

 「シャァアアァァアァアアアアアアアアア…!!!」

 

 

 「――来い、アリウススクワッド…!!!!」

 

 

 そしてそれは、未来より来る。カズマの手元でカード状のそれが光を放ち、周囲を遍く照らし…、ホワイトアウトする。だからなんだとベアトリーチェはそのままの目算で爪を振るい。――ガキン、と甲高い金属音が、振り下ろした爪を、振り切る前に止められた感触がして。

 

 

 「――ありがとう、カズマ先生」

 

 

 白く染まる視界の中で、徐々に光量が収まってきたその中心から、ぼやけたような、不明瞭な、青く、黒い輝きが収束し、 

 

 

 「………et omnia vanitas!」

 

 

 敢えて、その時分に浸かっていた神秘の収束砲を万感の思い共に、戻らぬ過去に向かって、全て虚無に消え失せろと撃ち放つ。

 

 

 「――バカな、サオッ…グゥアアアァァァァァァァアァァアアアアアアアアアアアアアア…!!!」

 

 

 突然の奇襲に、一瞬気を奪われるも、咄嗟に身を捻ったベアトリーチェの右脇腹を大きく削ったその砲撃は、その背後の壁を、またその奥の壁をと、次々と突き抜け…、綺麗な円状の破壊痕を残し続けていく。先ほどまで行われていた戦いで、せいぜい弱らせるくらいが限界だったのが嘘のような砲撃を行った、その錠前サオリは、アクシズ教の大司教法衣を身に纏い、その後ろに、同じく大司教法衣をそれぞれの好みで改造制服にした、三人のアクシズ教徒を従えていた。

 

 

 「……えへへへ、楽しいですね、嬉しいですね…。

  また、先生にお会いすることが出来るとは思っていませんでしたが――」

 

 

 「――カズマ先生は必ず約束を守る、それが分かっていたから、

  私たちはこの日が来た時の為に、鍛錬を怠った日は一度もなかった…」

 

 

 「………ま、そうだね。

  リーダーも張り切ってるみたいだし、私たちも続こうか。

  あ、でも、先生の号令は欲しいかな、ね、リーダー…?」

 

 

 「――………あぁ」

 

 

 その四人は。錠前サオリが、秤アツコが、戒野ミサキが、槌永ヒヨリが、まだ終わっていないと振り返ることなく吹き飛んでいった敵を見据え、徐々に立ち上がっていく様子のソレと対峙する。その中で、サオリがカズマの方へ少しだけ振り返ると。

 

 

 「――号令を頼む、カズマ先生」

 

 

 「………まったく意味が分からんが、今はそれどころじゃないから行くぞぉ…!」

 

 

 カズマは正直、この状態のアリウススクワッドの面々に聞きたいことが山のようにあったが、事態が切迫しているのもあって、そんなくだらないことを問い詰めている時間も惜しく、彼女たちが今一番求めているであろうことを行うために、腕を振り上げ、アクシズ教の聖句を大声で唱え始める。

 

 

 「――――アクシズ教!! 教義!!!!!」

 

 

 水色の神秘が、辺り一面に広がる。それはアクシズ教徒への、存在を補填する力となり、

 

 

 「「「「アクシズ教徒はやればできる、

     できる子たちなのだからうまくいかなくても、それは貴方のせいじゃない」」」」

 

 

 四人の大司教がそれに続く。

 

 

 「――うまくいかないのは世間(ゲヘナ・トリニティ・ベアトリーチェ)が悪い!」

 

 

 ヒヨリが、過去のことを思い出して、若干涙目になりながら唱える。

 

 

 「――嫌なことからは逃げればいい、逃げるのは負けじゃない

    逃げるが勝ちという言葉があるのだから…!!」

 

 

 ミサキが、かつての自暴自棄になっていた自身を顧みながら、大声で唱える。

 

 

 「――迷った末に出した答えはどちらを選んでも後悔するもの…!

    どうせ後悔するのなら、今がらくちんな方(過去との訣別)を選びなさい!」

 

 アツコが、これだけ成長しても未だに色濃くその人生に影を落とす原因に思いを馳せながら叫び…、そして、その聖句の流れに導かれるように、もう一人の影が、その場に顕現する。

 

 

 「――汝、死後を恐れるなかれ。

  未来のあなたが笑っているか、それは神ですらも分からない…。

  なら…! 今だけでも笑いなさい…!!!」

 

 

 同じく、大司教法衣を折り目正しく纏った白洲アズサが、錠前サオリと並ぶように戦線に加わり、

 

 

 「「「「「――マダムの胸は、パッド入りいいぃぃぃぃいいいいい!!!」」」」」

 

 

 お前が私たちにやってきたことは、全て打算と欺瞞に満ちたものだったのだと、真なる神の教えとその神秘を体の奥深くに宿した、水の女神の信徒たちは、かつてアリウスを支配していた偽神に向かって、悪神滅ぶべしと、悪魔と魔王軍を弾圧するアクシズ教の似姿となって、突撃していく。

 

 

 「――この、慮外者どもめがぁ…!!

  お前たちを拾い、育ててやった恩を忘れたかっ…!

  長年続いたアリウスの内乱を沈めたのが、誰なのか覚えていないとでもっ…!!」

 

 

 ベアトリーチェはその巨体を活かしながら、力強く四肢を振り回すが、明らかに現在の練度と比して桁違いな戦闘機動を繰り出すアリウススクワッドに追いつけず、彼女たち五人は、ベアトリーチェの肢体をまるでアトラクションかの如く…、腕を駆け上り、背を滑るように駆け、次々と痛撃を与えていく。

 

 

 「――ひとときも忘れたことは無いとも。

  貴女を最期に問い詰めた時に、どんな返事が返ってきたのかも、鮮明に覚えている」

 

 

 「……悲しいですねぇ、悔しいですねぇ。

  全部が全部、ご自分の都合でやったことを、恩着せがましく言われるのは…、

  とてもとても辛いですねぇ…」

 

 

 「その意図がなかったとしても、私たちが恩を感じていたのは本当のこと。

  でもね、ベアトリーチェ、あなたの意図に沿うなら。

  恩を返すのと同じくらい、仇には報いなければならない」

 

 

 「………私は別にそういうのはないかな。

  どうでもよかったんだけれど、カズマ先生が、

  もう一度ぶっ飛ばせばすっきりするって言うからさ。それだけ」

 

 

 「”自分を抑えて真面目に生きても頑張らないまま生きても、

   明日は何が起こるか分からない。

   なら、分からない明日の事よりも確かな今を楽に行きなさい。”

 

  ――それが今だ、ベアトリーチェ…!」

 

 

 「――このっ…!

  邪教に犯された狂信者どもめがぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁああ!!!

 

  こうなればもはや色彩を――!!」

 

 

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

――連邦捜査部シャーレ カズマの私室(拘束治療中)

 

 

 目が覚めた。最悪の目覚めだった。

 

 

 「………………」

 

 

 意図せずして、睡眠しただけでも発動する能力、それが百合園セイアが保有する未来視の神秘である。その融通の利かなさと、恐ろしさに関しては、カズマがこれをスキルとして取得すると決断した時に、よくよく考えていたつもりだった。視えてしまえば、抗いようのない絶望が襲い掛かってくると分かっていながら、未来に祈る事すら許されない、その最大の欠点を。

 どうやらその未来の中でカズマは生きてはいるようだが、一度目に見えたテロリスト行為手前な感じも、2度目のなぜか正面切ってベアトリーチェと戦う羽目になっているのも、安全安心安定のニートライフを過ごしたいカズマにとっては、最悪の未来を宣告されたようなものでしかなく、途方に暮れて、天を仰ぐほかない。

 

 

 「………………」

 

 

 いつものように目と耳を塞いで布団をかぶって寝てしまいたいが、そうすれば夢の続きを見る羽目になるだろう…。そうなってしまう確信がカズマの中にはあった。早急にシッテムの箱を起動して、アロナの機嫌を取りつつ、未来観測機関「讖(しん)MkXIII-2号機」と接続してもらって、この能力の抑制を行いたいところだが、全身をベッドに縛り付けられたままなのでどうにもならない。あれ? これもしかして、俺がキヴォトスに来て以来の、一番の危機じゃないか?不味くないか?、とつらつら考え始めたところで――

 

 

 「――カズマ先生! いらっしゃらないのですか?!(ドンドンドン!

  ――カズマ先生!!(ドンドンドン!

  緊急事態です…!!!(ドンドンドンドン!!」

 

 

 厄介ごとが向こうからやってきた。うーん、どうしよう。ものすごく出たくない。と言うか聞きたくもない。このまま知らんぷりすれば帰ってくれるだろうかと一瞬思いを馳せるが、このよく通る声色から判別するに、ドアを叩いているのはミネだろうかと考える。と、なると、なんの対応もせずに放っておけば――

 

 

 「……………これだけ音を立てて呼びかけているのに、生活音が一切聞こえない?

  まさか――!!」

 

 

 ピタリ、と音が止み。何やら思案する雰囲気が漂ってきて、

 

 

 「――確か、カズマ先生の合同医療本部での診断結果は、

  相当ひどいものだという報告があった筈です…。

  セイア様やミカ様に対応されていた時は、気を張っていたからか、

  しゃんとされていましたが…。

 

  緊張の糸が切れたことによって、急速な体調の悪化も有り得る可能性が――いけません!

  カズマ先生、失礼します…!!!! ――救護!!!(ドゴォ…!!」

 

 

 ドアを蹴破るくらいのことはやるんじゃないかと思っていたが、うん、まぁそうだよな。ミネならそうなるよな、と言う感じでカズマは完全に諦めていた。まぁ、監禁と拘束で元々身動きが取れなかったので助かったとも言えるのだが。

 ……というかその扉って一撃で蹴破れるもんなんだなと、カズマは改めてキヴォトスの住人が持つポテンシャルにドン引きしたが、それはそれとして。

 

 

 「――カズマ先生! ご無事ですか?!

  返答がないため、先生の生存確保の為に扉を損壊したことをお許し下さい…!」

 

 

 たぶんフレームが歪んでるから全損扱いになるなぁ…、新しい業者探すかなぁとかカズマが他人事のように考えていると、盾を正面に構えたミネが手早く室内に侵入してきて―― 

 

 

 「…………、これは失礼しました。

  この手際は…、セリナでしょうか? 絶対安静の治療中にお騒がせして申し訳ありません」

 

 

 「――おいミネ。もっとなにか言うことがあるんじゃないのか?」

 

 

 「………そうですね。

  『救護騎士団特注、トータル健康セット!』があるのでしたら、

  栄養ドリンクを飲んだ方がよろしいかと。

  滋養強壮の効果があり、体調不良の回復の助けや、疲労回復の効能があります。

 

   しかし、カズマ先生は絶対安静中のようですので、よろしければ私が介助いたしましょう。

  横臥状態でも飲めるよう、ストローが付属でついておりますので」

 

 

 ――そうじゃない!と反射的に言いそうになるも、ごそごそ、バリバリ、スッ…、と手際よく準備を終えたミネが、カズマの口許にストローを寄せて来たので、まぁ疲労が取れるんならと、カズマは特に抵抗なく栄養ドリンクを飲み干した。

 

 

 「…………はぁ、それで? こんな朝早くから何の用なんだよ?

  言っておくが、俺は見ての通り疲れ果ててるから、厄介事はもう勘弁しろよ?」

 

 

 ――などと、カズマにしては珍しく、経緯はともかくとして、ミネが純粋にカズマの体調を心配してくれたり、前に手厚く看護してもらったこともあって、カズマが話ぐらいは聞いてやると言う態勢をとったことで、ついさっきから、カズマの救護が最優先事項になっていたらしいミネは、そうでした私としたことが忘れていました、とハッとしたような顔をして。

 カズマが飲み終わった栄養ドリンクの空ビンを、いそいそと片付けてから、緊張した面持ちで、言い放つ――

 

 

 「………ミカ様が――――」

 

 

 一息。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――ミカ様が、アリウスに報復すると、置手紙を残して…、

  今朝未明に、出立されたようなのです…っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――嘘だろ…?」

 

 

 やっぱり聞かなきゃよかったと、カズマは心底、後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 




※エデン条約へは原作(ブルーアーカイブ)通りに流れます。

続きは、年末までに書ければいいかなって…
と、ところで、感想と評価とお気に入りといいねがもっと欲しくてぇ…、承認欲求モンスターが育たなくってぇ…
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