鉄血のオルフェンズ 鮮血の海   作:聖成 家康

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ロボット書くの楽しい!!


3『地平線に昇る』

 

「夜明けの地平線団だと?!」

 

 焦ったオルガが飛び込んできて、ユージンとダンテは彼に状況を説明する。

 

「エイハブウェーブの反応は、すぐそこで止まっている。かなりの大所帯だぞ」

「向こうのボスが通信を入れてきた。どうする? オルガ」

「繋げ」

 

 通信機器の並べられた部屋の一画。小さいコンピューターのモニタに、髭を生やした大男の姿が映し出された。

 

『俺は夜明けの地平線団団長、サンドバル・ロイターだ』

「……鉄華団団長、オルガ・イツカだ」

 

 椅子に座った大男は、随分と余裕そうにふんぞり返っており、団長としての権限を優雅に堪能しているように思えた。

 

「何が目的だ? 海賊如きが」

『俺たちの目的は、お前自身がよく知ってるんじゃないのか? えぇ?』

「……なんだと?」

『渡せよ、早く』

 

 大男とオルガの間には、決して噛み合わない歯車が置かれているようであった。渡せと言われても、何を渡せばいいのか、そもそも鉄華団に海賊の望む物があるのいうのか。

 

「クーデリアお嬢様はうちにはいないぞ」

『革命の乙女なんざに興味はない。早く渡せ』

「だから何をだ!!」

『しらばっくれるなら、力づくだな』

 

 通信は切れる。オルガは、訳の分からぬ状況に苛立っていた。

 

「何を渡せってんだ……!! 早く迎え撃つぞ!! ありったけの戦力で出迎えてやれ!!」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 鉄華団本拠地の格納庫は、一気に騒々しくなり、敵を迎え撃つ準備が着々と進められていた。

 

「お前らきっぱりやれよ!! 海賊相手だからといって油断するなと、団長からの命令だ!」

 

 おやっさん、の愛称で親しまれる整備係の雪之丞が、MS(モビルスーツ)の整備を進める団員達にテキパキと指示を入れている。

 

「おお、三日月。バルバトスはいつでも出れるぞ――なんだ、お前か」

 

 三日月と間違えられたシアは、雪之丞の前に佇むバルバトスを見上げ、目を細めた。

 

「フォルネウス……だったか? あれも整備は済んだ。出られるなら、いつでも行けるぞ」

 

 雪之丞はそう言い残し、他のMS(モビルスーツ)整備に手を貸しに行った。

 

「シア。出ないの?」

「……いや、出るよ。敵が来たんでしょ?」

「そうだけどさ、何か元気無さそうじゃん」

 

 遅れてやってきた三日月に、シアは心配されてしまった。

 

「う、ううん。平気。大丈夫だから」

 

 そう言って、シアは綺麗に整備されたフォルネウスに乗り込んだ。

 

「シア。お前、この武装の使い方は分かるのか?」

「はい。何度か使った事があるので、大体は」

「そうか。俺たちはこの機体の事はあんまり分かんねぇから、出来ることはすくねぇかもしれん」

「ありがとうございます」

 

 雪之丞に見送られながら、コックピットが外部と遮断され、暗闇に包まれる。阿頼耶識システムが作動し、フォルネウスの見ている景色が彼女とリンクされ、コックピットは一気に明るくなった。

 

『シアちゃん。敵は多いから、気をつけてね』

 

 メリビットの通信を聞き入れ、シアは息を呑んだ。

 

 目を見開き、シアは出撃する。スラスターから放たれる爆炎は、フォルネウスに莫大な推進力を与え、格納庫から火星の荒野まで、ものの数秒で駆り出させた。

 

 地上に足を着けば、慣れない衝撃がシアを襲った。

 

「そういえば……地上で戦うの初めてだ」

 

 阿頼耶識があるから何とかなるが、地上での戦闘は、初めてのパイロットにとっては慣れない物であった。

 フォルネウスがエイハブウェーブの反応を捉えた。接近する敵MS(モビルスーツ)の数は、四機。

 

「四……か。大丈夫かな」

 

 少し不安になるも、フォルネウスは腰に配備された蒼い刃の太刀を引き抜いて、さらにそれを分断し、二刀流にして構えた。

 

 接近する敵MS(モビルスーツ)。重厚感のあるあのフォルムからして、ロディ・フレームだということが一目で分かるが、シアには機体の種類などどうでも良かった。

 

 スラスターで敵の死角へ瞬時に回り込み、回転斬りで一撃、二撃と素早く叩き込んで、早くも一機を撃破。

 降りかかる敵の攻撃を片方の剣で受け止め、もう片方で攻撃し振り払う。

 二度振り下ろされる大剣の攻撃を避け、コックピットへ二対の刃を突き刺し、二機目を撃破。

 

 敵の機銃掃射は、黄金の装甲を前にしては豆鉄砲に過ぎず、あっという間に距離を詰められて、機体を大きく切り裂かれてしまう。

 

 残るは一機。相手の武装は、自分と同じような太刀だった。

 二対の剣を合体させ、一本の長い太刀へ変形させ、相手のぶつかり合う。

 

 火星に響き渡る鉄の音。大地を飛び交う火花。すべてが混ざり合って、戦場の殺伐とした空気を作り出していた。

 

 敵の攻撃が入り、フォルネウスは大きく後退。大量の砂埃が、黄金の機体を包み込んだ。

 

「ふーっ……ふーっ……」

 

 そんな激しい戦闘を繰り広げても尚、自然と、呼吸は平常を保てている。

 

(どうして……私、こんなに冷静なんだろ)

 

 海賊の元で戦っていた時は、毎回毎回、死にものぐるいだった。負けたら、自分には何も残らない気がして、勝ってもただ“生きる”しかできない気がして。なのに、死にたくはなくて。

 

 左腕部に取り付けられた滑腔砲を展開し、150ミリの砲弾を敵機にお見舞いする。装甲を穿つ弾丸と共にスラスター噴射で滑走。ボロボロになったナノラミネートアーマーへ、追い打ちの斬撃を叩き込み、回転しながら停止した。

 

 フォルネウスの背後を爆炎が覆い尽くし、金色の装甲に微かな赤みを加え、消えてゆく。

 

「私は……なんで」

 

 頭が空っぽになったシアは、フォルネウスを繰り、さらなる敵を求めて荒野を駆ける。

 

 暫く荒野を駆けていると、遠くの方に、戦闘中の鉄華団機を見つけ、スラスター噴射を強めた。

 

 

『うわぁぁぁぁっ!!』

 

 新入りの乗った機体が地面に倒れ、トドメを刺される寸前にまで至る。

 大剣を振り翳すロディ・フレームに、フォルネウスの太刀が突き刺さり、新入りは命拾いをする。

 

『あ、ありがとう! お姉ちゃん!』

「……」

 

 少年の礼に返事を返す事なく、混戦状態の戦場へと足を踏み入れていく。

 

『ん? シア。いたんだ。ここはいいから他に――』

 

 交戦中のバルバトスを襲おうとしていたロディに、滑腔砲をお見舞いし、間一髪のところで撃破した。

 

『いいって言ってるじゃん。他のところも戦ってるから、そこに行ってあげて』

「……あ。ご、ごめんなさい」

 

 長らく口を閉ざしていた為か、口内がカラカラでうまく声が出せなかった。

 

 フォルネウスの方向を急転換し、再び火星の荒野を駆ける。

 

 すると、真っピンクに染まった紫電が複数のロディ・フレームに囲まれているのが見えてきた。

 

「確かあれって――」

 

 スラスター噴射を一気に強め、獅電と組み合っているロディに強烈な一太刀を叩き込んでやった。

 

『うぉっ!? あ――あぁ!! シアちゃん!! た、助けてくれたのか!?』

「シノさん……でしたっけ」

『“さん”なんていらねぇよ、軽々しく呼んでくれて構わねぇ!』

「じゃあ……シノ。まだ戦える?」

『当たり前よ!!』

 

 興奮気味のシノと背中合わせになり、取り囲まれたロディ・フレームと今一度向かい合う。

 

 スラスターを噴射し、二対の機関銃の軌道が飛び交う間をすり抜けて、分断した剣で二機のロディ・フレームを斬りつける。

 そのうちの一機に、頭上から襲いかかり、コックピットに剣を突き立てて沈める。剣を合体し、機関銃を太刀で防ぎながら、もう一機に長い刃を突き立てれば、リアクターの熱で機体は暖かに包容される。

 

 シノの紫電はシールドを用いて、メイスによる素早くも力強い攻撃で敵を圧倒していた。先程までの劣勢が、まるで嘘のようだった。

 

『うぉぉらぁぁ!! 海賊如きに鉄華団が負けるかよぉ!!』

 

 

 二人は取り囲んでいた敵機を全て撃破し、荒野に立ち尽くした。

 

『助かったぜシアちゃん! ありがとよ!』

 

 礼を言われたシアは、不思議な感覚を覚えた。

 

「あ……うん。大丈夫だよ」

 

 海賊の所に居た時には、味わった事のない感覚だ。胸が熱くなるような、そんな感覚。

 

「なんか……ありがとう。シノ」

 

 礼を言う筋合いは無いが、彼女の口から自然と、そんな言葉が零れ落ちたのだった。

 

 

「うぉぉぉぉ……! めっちゃ可愛いぃぃ……!」

 

 シノは通信を一時切り、コックピットの中で一人、何かを噛み締めるように顔を歪めていた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 新人が多かった為か、多少の犠牲者を出してしまった鉄華団だったが、何とか敵を退ける事に成功した。

 オルガに呼ばれたシアは、大柄な男だらけの会議室に一人、三日月の隣で肩を竦めていた。

 

「夜明けの地平線団……火星と地球の間を活動域にしている大海賊。うちに攻めてきたのは、そのほんの一部らしい」

「まじか!? 結構な数いたぞ!?」

 

 オルガの言葉に、ダンテのみならず皆が驚愕する。

 

「俺たちを襲った理由は?」

「分からねぇ。とにかく()()()()()の一点張りでな。こっちの話なんか聞きやしねぇ」

 

 オルガがそう答えるも、当然、質問した明弘の疑問は解消されないままであった。

 

「オルガ、どうするの」

 

 座っていただけだった三日月が口を開き、オルガを見上げる。

 

「……仲間がやられた。数人だが、それでも、あいつらは鉄華団の仲間を――家族を殺した」

「やられっぱなしじゃいられねぇ。本格的に潰しに行く」

 

 オルガはそう言って拳を握り締めてから、シアの方に目を向けた。

 

「シア。お前がいなかったら、犠牲者がもっと増えていたかもしれない。感謝する」

「……いいんです……寧ろ、感謝しないといけないのは私の方ですよ」

「次も頼む。ミカを支えてやってくれ」

「俺は一人でいいよ」

 

 三日月はそう言っていたが、オルガは譲る気は無さそうだった。

 

「……うん。分かった」

 

 シアはそれより、オルガの言った“家族”という言葉が、どうにも引っかかっていた。

 

(家族……って……なんだろう)

 

 

 

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