ダンガンロンパシンフォニア〜ボクの愛と希望の法廷〜 作:パルティアン
キーン、コーン… カーン、コーン…
「おはようございます。7時になりました。今日も1日元気にがんばりましょう。」
だんだんこの自室で寝起きすることに慣れてきてしまっている事実に恐怖を覚えている今日この頃だけど、現実逃避しているわけにも行かない。ベッドから身体をゆっくり起こして服装と神を整えるとボクは部屋を出た。
ホテルに入って食堂に入ろうというその瞬間、後ろから声をかけられた。そちらを振り向くとその声の主はクレイグクンだった。
「よっ、深見ちん!」
「どうしたの?」
「いやぁ完成したぜ!」
「完成?」
「おいおい忘れちまったのか?もちろんアレだよ!防犯カメラ!」
「え、もう!?」
「部品もハンダも自前のものが部屋に揃ってるし一晩あればちょちょいのちょいよ。ま、詳しい話は朝飯を食った後にでも。ま、こんなとこで立ち話もアレだしな!」
「そうだね。」
そしてその通り、朝食をみんなが一通り食べ終わったタイミングでクレイグクンが話を切り出した。
「深見ちんと金谷ちんには昨日のうちに少し話してあるんだがよ、ゲームセンターにコイツを取り付けようと思う。」
「それは何だ?」
「防犯カメラだよ、靏蒔ちん。ゲームセンターに取り付けるのさ。」
「なぜゲームセンターだけなのだ?」
「そいつは単純、倉庫にビデオカメラが1つしかなかったからさ。ビデオカメラを改造して俺ちんのパソコンからハッキングをかけて映像をリアルタイムで資料室のパソコンにデータで送る。ゲームセンターはこれまでのエリア含めて一番雑多だからね、一番殺人に向いてる。ここを抑えるだけでも防犯効果があるだろ?」
「なるほど、理解した。」
「…だがそれを我々に伝えてよかったのか?…美作や羽月のようにもし殺人を企む者がいたら真っ先にカメラを壊すかも知れないぞ?」
「そのためのリアル配信でしょー。データさえきちんと送られていればカメラ本体に何か起こっても大丈夫、って寸法よ。」
「それだけではないな。もしキミが殺人をしたとしたら?さっきキミはキミのパソコンからハッキングをかけてカメラから資料室のパソコンにデータを送れるようにしたと言っていたね?ならばキミのパソコンからデータを操作するのも簡単じゃないのかい?」
「その心配も尤もだ。だから俺ちんはきちんとハッキング対策をしてある。データに悪さをする奴がいたら逆ハッキングを仕掛けてハッキングをかけた端末をダメにしちまう。さすがに俺ちんのパソコンでやってみせるのは困っちまうけど資料室のパソコンの内の一台で試してみせることはできるぜ?」
「そういうことであれば。」
「つってもまだ稼働できてるわけじゃない。プログラムができたってだけでね。実際に動くかどうかはこれからカメラを取り付けないと分からない。そこでこれから何人かに手伝ってほしいんだけど構わないかい?」
「うん、いいけど。」
「じゃあボクも付き合おうか。」
「アタシも!なんか面白そうだしな!」
「深見ちん、津田ちん、速瀬ちんありがと。あと1人くらい来てくれると助かる。できたら男手がいいな。」
「それなら某も手伝おう。」
「お、伊達ちんサンキュー!じゃあこの5人で設置してくるぜー。」
「…頼んだ。」
こうしてボク達はゲームセンターに防犯カメラを設置することになった。
朝食の片付けが終わった後すぐ、ボク達は早速防犯カメラの設置に乗り出した。
カメラはボクが預かり、コードとか必要な道具をみんなで手分けしてゲームセンターの入口に運び込んだ。
「さて、まずはカメラ本体を設置するぜ。」
「どこを見えるようにすんだ?」
「まあ入口全体だな。入口に死角がない画角にしたい。」
「それなら全部じゃなくて良いんじゃない?こうやってホールが映るように少し下げてゲームセンターの中からカメラを設置すれば…、ほら、誰か通れば映るでしょ?」
「おお、ほんとでござるな!」
ライブハウスから持ち出した2つの脚立を並べてその上でボクと伊達クンで角度を確認する。交代してみんなで画角を確認すると全員の納得を得ることが出来た。
「それじゃあここに延長コードを延ばしてっと…。」
「じゃあこっちはこっちで固定するでござるよ。」
「うし、これでカメラの方の設置は完了だな!」
その後伊達クンが電源スイッチを入れてまずはカメラ本体の設置が問題なく終わった。
「さて本番はここからだ。夜時間の間は資料室にゃ入れねえからな。理論上はこれで使えるはずだが如何せん実際に繋いでみなきゃ分からん。」
「じゃあ早速つなぎに行こっか。」
次は資料室のパソコンにデータを送るプログラムを準備する。
資料室に入ると一番手近なパソコンを起動させ、クレイグクンはそこに自分のノートパソコンを繋いだ。そして10分ほど作業するとボク達の方を向き直った。
「これでとりあえずはできあがってるはずだ。」
「じゃあ見てみようぜ!」
「そう慌てんなって。行くぜ?スイッチオン!」
そう言ってクレイグクンが資料室のパソコンを操作するとその画面いっぱいに先ほど電源を入れて放置してきたカメラからの映像が映し出された。
「これは成功、ということでいいのかな?」
「ま、とりあえずはな。でも100パーじゃない。」
「どういうことでござるか?」
「ここの倉庫に置かれていたビデオカメラもこっちのパソコンも少し型式が古いんだ。そこに無理矢理通信装置を取り付けて映像データを送れるようにしたんだが、そのせいで少し不具合が起こってる。」
「不具合って何だ?」
「1時間当たり5分、映像が撮れない時間が生まれてる。この5分間は映像がカメラにもパソコンにも記録できねえ。だからもしこの5分間に何かあったらお手上げって話さ。」
「なぜそんな話を?ボク達が悪用するかも知れないよ?」
「コイツは俺ちんなりの誠意さ。防犯カメラがその役割を果たさない時間があるなんて大事なことを俺ちんしか知らないってのはアンフェアだ。だけど全員に教えて悪用されたらカメラの意味がない。だから手伝ってくれたみんなにだけ特別に知っておいてもらうってなワケさ。」
「具体的にはどの辺りの時間だい?それが分かっているだけでも警戒が出来る。」
「そうだな。具体的にはさっきカメラとパソコンを繋いだのが9時半ちょうどだったから大体毎時25分から30分くらいの時間帯だと思ってよ。」
「つまりその時間を跨いでゲームセンターにいた場合は警戒が必要だってワケだね。」
「そういうこと。ま、他のみんなはこのことを知らないからわざわざゲーセンで悪さはしねえだろうし、杞憂だとは思うけどね。」
「だけど知っておいてよかった。ありがとう。」
「いんやそれほどでもー?」
こうしてクレイグクン発案の防犯カメラは無事セットされ、1つコロシアイを防ぐ方策が確立された。
「あ、そうだ。」
「どうしたの?」
「これでゲーセンの安全もある程度確保されたことだし、ここでみんなで遊ばね?」
「ゲームするってこと?」
「ああ。ゲーム大会さ。ちょうどここにはスコアが出るゲームとか賞品で比べやすいゲームとか色々あるからね。それで勝負しようって話さ。」
「確かに面白そうだな!」
「某これまでげえむなるものをやってこなかった故自信はないがワクワクするでござるな!」
「じゃあその話はお昼の時にでもみんなに伝えておこうか。」
こうしてクレイグクンの発案でゲーム大会を開催することになり、この場にいなかったみんなも乗り気になってくれた。
クレイグクンを中心に午後は何人かで明日のゲーム大会に向けた準備をしてくれることになった。ボクはそのメンバーから外れたので、自由に過ごすことになった。
あまり行儀の良いことじゃないけど図書室で本を借りて部屋で紅茶でも飲みながら読書をしようと本を持ったままキッチンに入るとそこでは言村さんがお菓子を物色していた。
「あれー、深見くんだー。」
「や、言村さん。おやつタイム?」
「うん、そうだよー!深見くんも一緒に食べるー?」
「じゃあご一緒させてもらおうかな。」
その場で温かい飲み物を飲みながら言村さんと他愛もない会話をした。不思議な性格をしている彼女のペースを掴むのに少し苦労はしたけど…。
「そう言えば言村さんは“超高校級の数学者”って話だけど、何がきっかけで数学をやろうと?」
「んー?んー。ごめん、覚えてないやー。」
「覚えてないの!?」
「うん、気付いたら計算してたからー。」
「そんなに小さな頃から?」
「うん!香奈のおうちはねー、パパがいなくてママが先生やってたんだよねー。だから香奈はいつもおうちで一人だったんだー。」
「そうなんだ…。」
「でもおうちで一人でいてもつまんないでしょー?だからママがおうちに置いてた教科書を読んでたのー。」
「お母さん、数学の先生だったんだ。」
「そう!」
「でもよく分かったね。数学ってことはお母さん少なくとも中学以上の先生でしょ?難しかったんじゃない?」
「うーん、そうでもないよー?本に書いてあるのを組み合わせればいいんだからー。」
それが一番難しいんだけど…。
「おうちでずーっとそればっかりやってたらお母さんビックリしちゃってねー。いーっぱい難しい本買ってきてくれたんだー。それをずーっと解いてる内にいつの間にか有名になってたんだー。」
「すごいね…。」
「だからー、なんで数学を始めたのかは分かってるけどー、いつそれを始めたのかは覚えてないんだー。だから香奈にとって数字はちっちゃい頃からのお友達なんだー。」
「すごいね…。でも寂しくなかったの?」
「うーん、寂しかったんじゃない?」
「なんで疑問形なの?」
「覚えてないから?だけどー、数学に没頭して当時の気持ちを覚えてないってことは当時の香奈は寂しかったんじゃないかなーって。でも結局覚えてないからただの想像ー。」
「そっか。」
「でも今は気にしてないよー?だってあの頃があったから今の香奈があるんだし。お母さんだって1人で頑張って香奈を育ててくれたんだから感謝してる。」
「じゃあ絶対ここを出ないとね!」
「うん!」
不思議な雰囲気を漂わせていた彼女の心の根っこの一端を知ることが出来たところでボクは言村さんと別れ、別の場所に向かうことにした。
もう少し時間がありそうだ。もう少しホテルの中を散策してみよう。
ゲームセンターに向かってみるとそこにはレースゲームで遊ぶ速瀬さんの姿があった。
「お、優じゃねえか!アタシにちっと付き合えよ!」
ボクは速瀬さんに誘われて一緒にレースゲームをすることになった。実際の車ではないにも関わらず速瀬さんのドライビングテクニックはとてつもなく、圧倒的な差を付けられて負けることになった。
「そう言えば速瀬さんは何で運転免許を取れてるの?まだ高校生でしょ?」
「そりゃアレだよ。レーシングカーの運転のライセンスと車の免許は丸っきり別物だからだよ。」
「そうなの!?」
「ああ!だからアタシぐらいの年のレーサーは多くないがいるっちゃいるぜ?」
「そうなんだ…。」
初めて知った…。
「アタシも1日でも早くレーサーになりたくて調べまくったからな。その辺の知識は優にも負けねえ。」
「どうしてそんなに熱量を持ってたの?」
「アタシの親父がな、レーサーだったんだ。腕の良いレーサーでよ、日本一だったと思うぜ。」
「じゃあお父さんに憧れてレーサーになったんだ。」
「うーん、それはちっと違うな。親父を越えるためだ。」
「越えるため?」
「親父は高校生の内にレーサーになって高校卒業後に一気に名を馳せた。だったらアタシはもっと早くライセンスを取って、もっと早く名を馳せる。そうすりゃアタシは親父以上のレーサーで、日本一のレーサーだ。それにアタシにはそれが出来る自信があった。」
「それで実際に最年少のレーサーで勝利数も圧倒的なんだもんね。本当にスゴいなぁ…。」
「いや、優も充分すげえぞ?っつうか今の状況ならむしろ優がいなきゃアタシらはみんあ早々に全滅してた。どんな才能もテキザイテキショ?って奴だ。」
「こんな適所ほしくなかったけどね…。」
「ハハハ、違いない。」
カラカラと笑った後速瀬さんはふと真面目な顔になる。
「アタシの才能はここじゃあんまし役に立たねえ。でもだからこそアタシはここを出なきゃ行けねえ。諦めらんねえ夢もあるしな。」
「夢?」
「ま、その辺はまた機会があったら話すよ。でもずっとここから出なきゃって気持ちは買わんねえんだ。」
「それって…。」
「あ、勘違いすんなよ?こんなところで野垂れ死ぬのはごめんだけど誰かを殺すのはもっとごめんだ。絶対に出口を見つけるなり黒幕をぶっ飛ばすなりして真っ当にここから出て行く。そんでぜってえに夢を叶える。」
「うん、そうだね。頑張ろう。」
「何言ってんだ。この目標は正直アタシだけじゃ力不足だ。特に頭の力の方がな。そいつを補うには優、お前の力が必要だ。手伝ってくれるか?」
「うん、もちろん。ボクだって外に出て大切な人たちが無事か確認しなきゃ。」
「ああ、そうだな!じゃあよろしくな!」
そう言って速瀬さんは右手をスッと出してくる。ボクもそれに応じるように右手を出し、ぐっと握り合う。普段の動きの激しいレースの中でハンドルを話さないように握力の鍛えられた彼女との握手はちょっと痛かったけれどだからこそその右手から彼女の強い思いが伝わってくるようだった。
速瀬さんと別れて部屋を出るとそこでは少し不機嫌そうな顔をしながら真理ちゃんが立っていた。
「あれ、どうしたの?」
「いや、随分仲よさそうだなと思ってね。」
「速瀬さんと?いやちょっと雑談してただけだけど。」
「そう言ってキミは一昨日も事件が発覚する直前まで彼女といたらしいじゃないか。」
「金谷クンも一緒にいたけどね?」
「やっぱアレかい!?優クンもおっきい方が良いってのかい!?」
「えっ?えっ!?どういうこと!?」
「分からないならいいっ!」
そうまくし立てると真理ちゃんはボクの元を去って行った。
「え、ええ…。」
結局真理ちゃんが何を考えているのかよく分からないまま真理ちゃんと別れることになってしまった。ちなみにこれは夕食後に雷文クンから聞いた話なのだが、真理ちゃんはどうやら筋トレを始めようとしているみたいで2人に相談してきたらしい。真理ちゃんは真理ちゃんだと思うけどなぁ。真理ちゃんの上腕二頭筋や大腿四頭筋がどれくらい大きかろうとボクにとって大きな問題じゃないしむしろ筋トレをし続けると身長は伸びにくくなるなんて聞いたこともあるけれどまあそこはボクよりも雷文クンや鷹岡クン、そして医者である真理ちゃん本人の方が詳しいだろうからボクが口出しするのはやめておこう。
そうこうしているうちに夜時間を迎え、ボクはゆっくりと睡眠に向かって行くのだった。
キーン、コーン… カーン、コーン…
「午後10時になりました。これより夜時間となります。ホテル本館内の該当施設はロックされますのでご注意ください。それではよい夢を。お休みなさい。」
【モノトラ劇場】
「人が死んで悲しいのは肉があるうちだ。」
「焼いちまって骨になっちまえばもう諦めが付く。」
「そりゃそうだよなぁ。」
「肉が付いてりゃ起き上がってきても驚きはしてもやな気分にはならねえ。」
「生きてたときのまんまならな。」
「でも骨が集まって起き上がってきたら」
「怖いぜえ…?」
・
・
・
【生存者】
超高校級の探偵 深見優(フカミユウ)
超高校級のレーサー 速瀬マハ(ハヤセマハ)
超高校級のバスケットボール選手 雷文竜(ライモンリュウ)
超高校級の外交官 金谷秀征(カナヤシュウセイ)
超高校級の医者 津田真理奈(ツダマリナ)
超高校級の歴史学者 伊達小十郎(ダテコジュウロウ)
超高校級の大工 鷹岡筋次(タカオカキンジ)
超高校級の数学者 言村香奈(コトムラカナ)
超高校級の??? 鏑木麗(カブラギレイ)
超高校級のハッカー クレイグ・ホワイトバーチ
超高校級の弓道家 靏蒔由衣(ツルマキユイ)
超高校級のバイオリニスト 木田結弦(キダユヅル)
残り12人
どうもお久しぶりです!色々11月中を忙しく過ごしている内に1ッか月以上投稿が空いてしまいました…。まだもう少しだけ日常パートが続きますのでのんびり気長に待っていただければと思います。
続きまして今回の設定裏話!今回は第1章のおしおきの話をしていこうかなと思います。
第1章のおしおきのタイトルは「アイネ・クライネ・フェアツヴァイフルングムジーク」です。これは超高校級の作曲家、美作奏さんのおしおきだったわけですが、こちらのモデルも章タイトルと同じく、モーツァルト作曲、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」です。元の曲が直訳すると「小さな夜の曲」になっているのに対してこちらのおしおきは直訳すると「小さな絶望の曲」となっています。おしおきの内容はモーツァルトの時代は戯曲などの指揮を作曲者本人が行っていたことから指揮者として立ち、その指揮台でムリに身体を動かされて壊されるというイメージになっています。奏でられた音楽の中で望まぬ形で身体を破壊されて死んでゆく、そこで聞こえてくる音楽はまさに彼女にとって「絶望の曲」だったのではないでしょうか?
というわけで今回はここまで!また次回お会いしましょう!!
前作の反省を生かして早々に推しのアンケートをしてみたいと思います!
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深見優
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速瀬マハ
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雷文竜
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金谷秀征
-
羽月翔子
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津田真理奈
-
伊達小十郎
-
鷹岡筋次
-
言村香奈
-
美作奏
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鏑木麗
-
泊直哉
-
クレイグ・ホワイトバーチ
-
靏蒔由衣
-
大地真英
-
木田結弦