ダンガンロンパシンフォニア〜ボクの愛と希望の法廷〜 作:パルティアン
ここまでの議論で全て明らかになった。後はこの一連の事実をまとめてこの悲惨な事件に幕を引く!!
クライマックス再現
ACT1
「この事件のきっかけは昨日のゲーム大会。運動系のゲームでヒドイ成績を出してしまった言村さんはその改善をすることを誓ったんだ。」
「そして言村さんはそれに向けてダンスゲームを使った秘密の特訓をするために深夜にゲームセンターに向かったんだ。」
「でもそんな言村さんを狙っている人物がいた。それがこの事件のクロだったんだ。」
「クロは言村さんがゲームセンターへ向かうことを知って、待ち伏せをするか跡をつけるかしてゲームセンターへと入った。」
「その際クロは自分がゲームセンターへと向かったことを隠すために防犯カメラで映像が撮影されていないインターバルの時間を利用したんだ。」
ACT2
「首尾よくゲームセンターに侵入したクロはそのまま犯行を実行に移した。」
「素手で言村さんの首を絞めたんだ。」
「だけどその時クロにとってもイレギュラーな事態が発生した。」
「言村さんの抵抗を受けたんだ。それによって手を引っ掻かれ、出血を伴うケガを負うことになってしまった。その痕跡は犯行現場となったと思われるプリクラの周辺に残っていたよね。」
「とりあえず傷口を押さえるためにクロは言村さんのハンカチを奪った。そして侵入したときと同じく防犯カメラのインターバルを利用してゲームセンターを脱出したんだ。」
ACT3
「でもそこでクロは気付いた。思ったより自分の出血量が多いってことにね。」
「でも真理ちゃんには頼れない。ケガの経緯を説明しなければならなくなるからね。だからクロは自分の持ちうる道具の中でこの問題を解決することにしたんだ。」
「そこでクロが使ったのははんだごて。高熱を発する機械を用いて傷口を焼いて無理矢理出血を止めたんだ。」
「この時の匂いが雷文クンが深夜に嗅いだ焼き肉の匂いの正体だよ。」
ACT4
「だけどそれだけじゃ足りなかった。傷口が露わになったままだったからだ。」
「普通のケガなら包帯でも巻いておけばすむんだろうけど今回はそうも行かなかった。学級裁判の中でクロのケガの話になることは時間の問題だったからね。実際、手に巻いていた包帯のせいで真理ちゃんも疑われているし。」
「そこでクロが思いついたのはファンデーションを使って傷口を隠すことだった。」
「だからクロは翌朝、人が少ない時間にメイクサロンに行ってファンデーションを使うことにしたんだ。」
「だけど再びイレギュラーが起きた。」
「人が来る可能性は低いだろうと思っていた時間に秘密裏に化粧の練習をしようとしていた靏蒔さんが不足したものを取りに来てしまったんだ。」
「そしてそこでクロと靏蒔さんは鉢合わせることになってしまったんだ。」
ACT5
「このままでは自分の犯行が明らかになってしまうと恐れたクロは口封じのために靏蒔さんを殺すことにしたんだ。」
「メイクサロンにちょうど人が来てしまう万が一の可能性を想定していたクロは前日のような抵抗を受けることを防ぐ方策を採った。」
「それは膝で靏蒔さんの腕を押さえつけて首を絞めることだったんだ。」
「そのせいで靏蒔さんは抵抗もできず、更には腕を骨折した状態で殺されてしまうことになったんだ。」
ACT6
「その後クロは早起きした日のふりをしてボク達と食堂で合流したんだ。」
「そして何も知らないふりをしてボク達と一緒に朝の食堂にやってこなかった2人を捜索していたんだ。」
「一つ一つの行動はできる人が多いものだったかも知れない。だけど、その全ての条件を満たし、今回の事件を成立させることができたのはクレイグ・ホワイトバーチ!キミしかいないんだ!!!」
「マジ…かよ…!」
「おい、クレの字!!なんとか言ったらどうなんでい!!」
「……。」
クレイグクンは未だ沈黙を貫いている。
「まずは投票だけ済ませてしまおうか。どうせ話はそこからだろう?」
「…そうだな。」
それに呼応するように証言台にボタンが表示される。早く彼の話を聞くためにもさっきまでの議論の結果を踏まえたその名前に該当するボタンを手早く押した。投票はこれまでよりも早々に終わり、すぐに投票結果が表示された。
投票結果→クレイグ・ホワイトバーチ
【学級裁判閉廷】
「ぐぷぷ…。大!正!かーい!!!なんとなんと、3度目の学級裁判も正しい答えを言い当てたんだぜ!!そう、真夜中のゲームセンターで言村香奈を殺し、それを隠すために靏蒔由衣も殺した犯人は、超高校級のハッカー、クレイグ・ホワイトバーチなんだぜ!!!」
「……。」
喧しいモノトラの宣言とは対極にみんなは黙りこんでしまった。みんな心のどこかにはボク達の中に仲間を2人も殺すような人間がいるなんて信じられていなかったところがあったのだろう。
「お?何も聞かなくて良いのか?だったら早々におしおきに…、」
「待って。それはダメだ。ボク達はクレイグクンに聞かなきゃならない。なんでこんなことをしたのか。」
でもだからといってそのまま彼が死に逝くことを受け入れるわけにはいかない。これからも生きていくボク達の納得のためにもこの事件のきっかけを聞かなければならない。
「…確かにその通りでござる。今回はモノトラから何か動機を配られたわけでもござらん。つまりこの凶行はクレイグ殿自身の意思から来た殺人ということ。理由を聞かねば納得なぞできん。」
「およ?動機は配ったハズだぜ?」
「戯れ言を抜かすな。某はそれらしきものを一切見ておらんぞ。」
モノトラと伊達クンのやり取りを見てボクは1つ心当たりを思い出す。それは昨日の朝、ボクの部屋で見たあの動画。まるでテレビ番組でボク達の活躍を紹介するために流されるようなビデオだ。
「モノトラ、もしかしてそれってあの昨日の朝に来ていた動画のこと?」
とは言えボクの仮定が正しいかどうかといわれると自信が無いからその仮定をそのままモノトラにぶつけてみる。
「おお、さすが探偵。気付いてたか。」
「どういうことだよ!?」
「トラパッドにオレが新しい動画を送っておいたんだぜ。」
「つまりそれが新しい動機、ってことか。」
「なんで優はそれを知ってんだよ!!」
「一言で言うと見たから、かな。」
「なぜ言ってくれなかったんだい?」
「理由は大きく分けて2つだよ。1つはビデオの内容が確実に動機だと断ずるには根拠が足りなかったこと。もう1つはだからこそボクの悲観的な推理でみんなを混乱させるわけにはいかなかったこと。」
「だが動機は動機だったんだろ?」
「いや、動画のタイトル自体は“紹介ビデオ”だった。」
「紹介ビデオ?」
「誰かに向けてボク達1人1人を紹介するために用意されたビデオって感じだった。だから動機と言うには根拠が弱かったんだ。だから確信を得るまでは余計な言及は避けてたんだけど、今回はそれが悪手だったかも。申し訳ない。」
「深見殿の我々を気遣う気持ちも分かるでござるよ。理由があるなら皆も責めぬ。ただ1つ疑問があるでござる。モノトラよ、お主、なぜビデオのことを皆に伝えなかった?」
確かにそれは気になるところだ。同じビデオによる動機であっても前回の時は時間制限まで設けてボク達にビデオを見させようとした。でも今回はその働きかけどころか動機の存在すら周知していない。そこにどんな思惑があったのか。
「そいつはオレのマンネリ防止のための新たな取り組みって奴だぜ。毎回毎回オレの方から動機を見ろってのはつまらねーだろ?だからどんな動機なのか、そして誰が動機を持っているのか、全く誰にも分からねー状態でやってみようと思ったわけだ。さすがに誰も見なかったら教えたけどな。」
「そんな面白半分でやったでござるか?」
穏やかな伊達クンの話す声はワントーン低い。それほどまでに怒っているということなのだろう。だがそんな伊達クンの様子もモノトラは意に介さない。むしろ自分のやったことは正当だと主張するかのようにイスにふんぞり返って座っている。
「で、いいのか?オレが飽きたらもうおしおきだぜ?オレが何でビデオの存在を教えなかったかなんてどうでもいいだろ?」
「その通りだ。随分良心的だな。」
「その方がおもしれーからな。」
「ふん。結局悪趣味な奴だ。」
でもモノトラの言うとおりだ。ボク達はこの犯行の理由をきちんとクレイグクンの口から聞かなければならない。
「クレイグクン、キミが見たのはクレイグクンのこれまでの活躍をまとめたビデオだったんじゃないかと思うんだけど、それがどうして今回の2人も殺した犯行に繋がったのか、ボクには理解できない。」
「……。」
「だからこそ君の口からきちんと説明を聞きたい。」
「………。」
「おい、この期に及んでだんまりってのはねえんじゃねえか?」
「……。はっ。」
これまで沈黙を貫いていたクレイグクンの口から久々に発された音はボク達を鼻で笑う空気の漏れる音だった。
「理解できねえのはこっちの方だぜ。なんでテメーらはそうやって平気な顔でいられんだよ?」
「…どういう意味だ?」
「そのまんまの意味だ。テメーらはここを出てえとは思わねえのかい、って話だ。外に色んなものを残してきてんだろ?」
その言葉にみんなが何を思い浮かべているかは分からない。でもボクが思い浮かべたのは前回の動機となったビデオで尋常じゃない出来事に巻き込まれていたと思われる刑事さん達の姿。
「それは動機ビデオにも利用された人たちってことかい?」
「まあそれもあるが、他にも色んなものを残してきてんじゃねえのか?例えばやりてえこととか、栄光とか。」
ボクは自分のやってきたことを自分の栄光だとは思っていない。むしろ何かが起こってからしか力を発揮できないことに苛立ちさえ覚えることがあった。でもそんな人ばかりじゃないだろう。真理ちゃんなんかは多くの患者さんから感謝されていただろうし、速瀬さんや雷文クンには多くのファンや成績がその活躍に伴っていたはずだ。それを捨てることに躊躇がないかと言われれば嘘になるのかも知れない。
「オレはよ、バスケができりゃ何でも良いんだ。デケー大会のが確かに上手え奴らとやれて楽しいけどよ、それは1つの楽しみ方だ。好きなバスケができりゃオレはどこにいようと関係ねえよ。」
「ボクはそもそも休職中だしね。それに医者として大事なのは命を救うことであって目立つことじゃないさ。」
「だそうだが?」
どうやらそんな考えはボクの杞憂だったらしい。彼らにとって外で何を為したか、為せるかは大きな問題じゃない。自分らしくあることが一番重要なのだ。
「やっぱ理解できねえわ。テメーら狂ってるぜ!」
「どの口が!!」
「俺ちん達は希望ヶ峰学園の生徒だぞ!!世界の希望になる存在なんだ!!そんな俺ちん達がこんなとこで朽ちて果てるなんてあってはならねえ話じゃねえかよ!!!」
「…それがお前の本心か。」
「ああ。俺ちんは最初の殺人が起こったときからずっとテメーらが鼻持ちならなかった。なんでこんなとこで、誰が次に誰に殺されるかも分かんねーのに仲良しごっこできんだって。むしろ殺した美作ちんや羽月ちんの気持ちのが理解できた。」
「ならなぜわざわざ防犯カメラを作ったりゲーム大会を企画したりしましたの?」
「んなん簡単だろが。俺ちんが死なねえためだよ。俺ちんはぜってえに死ぬワケにゃいかねえ。殺されねえために俺ちんの身に危険が及ぶ要素はできる限り排除したし、肚ん中で何思ってようと表向きはそれなりに仲良くしようと努めたさ。それも全部全部全部全部全部全部全部っ!!!生きて!!こんなとこさっさと出てくためだ!!!」
もう全て諦めてやけになったのか、クレイグクンはこれまでずっと心の中でジュクジュクと渦巻いていたヘドロのような感情を全てぶつけてくる。そしてその奥底にあったのは自分は世界の希望の象徴だという中途半端に肥大化したプライド、そして、いつ自分が誰に殺されるか分からないというこれまでの態度からは想像も付かなかったような恐怖心。
「フーッ!フーッ!」
一度に全てを吐き出したからか、クレイグクンは肩で息をしていた。
人を食ったようなその態度の裏に隠していた彼の心の弱い部分。そのうちのどちらかだけでもボク達が気付いてあげられていたらこんなことにはならなかったのかも知れないと思うと裁判前の怒りの感情はだんだんの内に後悔の感情に変わっていく。
「貴様が俺達のことが気に食わなかったことはよく分かった。だがなぜ今だ。そんなに外に出たかったのなら前回の動機の時に早々に誰かを殺していれば良かったじゃないか。」
「おい秀の字!!」
「……。」
「その沈黙が答えか。」
「…どういう、意味だよ…?」
「貴様はただの臆病者だ。殺すことも殺されることもどちらも嫌だ嫌だのわがままで押し通そうとした。1回ビデオを見たくらいじゃおしおきの恐怖が拭えなかったんだろう?人を殺すという行為への嫌悪感が拭えなかったんだろう?今回のビデオでここに留まり続けて誰かに殺されるかも知れない恐怖との戦いに終わりが見えないことに怖くなったんだろう?俺はこのコロシアイを肯定するつもりは毛頭無いが、少なくとも羽月は貴様のように流されて殺したわけではなかった。自らその道を選んだ。美作は学級裁判で疑われた深見のことを庇い、自らの行為に対する責任を取った。どちらも覚悟があった。貴様とは違う。何が希望だ。そんな御託を並べる前にそのつまらん虚栄心の仮面を捨てたらどうだ?」
金谷クンの言葉に乗っているのは心の底からの軽蔑。そしてその言葉を受けたクレイグクンはふるふると震えている。そして。
「…クソが。」
「何だ。良く聞こえないな。」
「…クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!俺は間違ってねえ間違ってねえ間違ってねえ!!あああああああああ!!!!!」
一言で表すならばキャパオーバー。金谷クンの言葉が数刺しした彼の心は完全に破れ、支離滅裂なことを叫ぶしかできない、壊れたAIとなっていた。
「だそうだ。下らん。恐怖心ばかり膨れ上がって、それをつまらん虚栄心で塗り固め、そのくせ頭が回るから小賢しい罪を犯す。そんなくだらない人殺しがそこのバカだ。」
「…それは違うよ。」
「何?」
「確かに彼が恐怖心を虚栄心で塗り固めた人だったのは事実だと思う。だけど、そんな彼の心の風船にガスを送り続けて、そして最後に針を刺したのは、紛れもないモノトラ、そしてその後ろにいる黒幕だよ。」
「そんなことは分かっている。だがそんな黒幕の掌で踊り続けたのを俺は下らんと言ったんだ。」
金谷クンは再び氷のような視線を未だ叫び続けるクレイグクンに突き刺す。
「モノトラ。アレが五月蠅くて敵わん。さっさと終わらせてくれ。俺は部屋に戻って寝たい。」
「おう秀の字、いくら何でも言い過ぎじゃねえのかい?」
「じゃあ何か?怖かったな、かわいそうだったなとアレの頭でも撫でてやれば満足か?アレはその身勝手さ故に2人殺したただの人殺しだぞ?」
「っ!」
どれだけクレイグクンが言葉を尽くそうときっとボク達には彼の気持ちの1パーセントも理解できないのだろう。あそこまで大きく膨れ上がった恐怖心とそれを完全に外から固めていた虚栄心は。だからこそ、金谷クンの突き放す言い方にもなんて反応して良いのか分からないんだ。
そんな心がゴチャゴチャしているボク達を更に混乱させるように悪意は投げ込まれる。
「で、もう良いのか?おしおきをはじめちまうぜ?」
「…。」
「……。」
「沈黙は肯定と取るぜ?ってなワケで超高校級のハッカー・クレイグ・ホワイトバーチのために!!スペシャルなおしおきを用意したぜ!!!」
「ああああああああああああ!!!!!」
叫び続けるクレイグクンと沈黙を貫くボク達。そんな正反対の様相を呈した裁判場を尻目にモノトラはおしおきの起動スイッチを押した。
クレイグクンがクロにきまりました
おしおきをかいしします。
暗闇の部屋。冷たいコンクリートに押し固められたその匣の真ん中にポッと明かりが灯る。
無機質なその青い明かりはゆっくりとその正面に座る人物の顔を映し出す。
その正体はクレイグ・ホワイトバーチ。今まさに断罪されんとする咎人。
超高校級のハッカー・クレイグ・ホワイトバーチのおしおき
《名前のない英雄》
画面に映し出されるのはどこかの会社のセキュリティ。疑惑の真相を突き止めるために深く深く潜ってゆく。
キーボードを叩く手は止まることはなく、目にも留まらぬ速さで記号を打ち込んでゆく。
瞬間、鮮血のように真っ赤な画面。
WARNING。そこから先は何が起こるか分からない。そんな警告。だけどそんな障害に彼の手は止まるどころかむしろ加速してゆく。
破る。くぐる。潜る。乗り越える。
多くの障害を乗り越えた先、そこにあったのは1つの宝箱。
それを開くため彼は高らかに音を響かせてエンターキーを強く叩く。
ゆっくりと開く宝箱。その中にあったのはモノトラ印の爆弾。それが画面の中で爆ぜる。
ダミーだったかと戻ろうとしたその瞬間、部屋が宝箱のように開く。差し込む閃光に目を細めているとそこに何かが降ってくる。
自らの横に落ちてきたそれをみると、それは先ほど画面の中で爆ぜたものと同じデザインの塊。
マズいと思ったのももう遅い。
強い光と共に炎の花畑が広がる。
花が全て散り、煙が晴れてゆくとそこに斃れていたのは黒焦げになった人型の何か。
既にその顔は焼き尽くされ、元が誰だったのかなんて他の人が見ても分からなくなってしまった。
彼のことを多くの人はとある呼び名で読んだ。それは常に画面の中で戦い、表に顔を出すことが無く、その正体を誰も知ることがなかったことからつけられたあだ名。
でも顔が焼き尽くされ、真に彼が何者か分からなくなった今、その彼の姿はまさに・・・。
「いーやっほおおぉう!!エクストリーーーーーム!!!!おしおきは爆発だぜーーーー!!!」
「・・・・・・・・・。」
言葉が出ない。彼の行いは決して赦されることではない。だからこそボク達はみんなでその罪を明らかにし、糾弾した。けれどこんな、こんな死に方をするべきだなんて誰も思ってなんかいない。
「クソっ・・・。」
そう零すのがやっとだった。
「ふうっ。爽快なおしおきも終わったとこだしオマエラもさっさと戻って休めよ。体調不良で死なれたって何も面白くねーからな。」
メインイベントは終わったとばかりにボク達に興味を無くしてさっさとモノトラは去って行く。まるでこのコロシアイが日常の一部であるかのように。
クレイグクンがずっとずっと心の中に爆弾のように抱えていた恐怖心。それは多かれ少なかれ今の僕たち全員が抱えているもの。
取り残されたボク達の間に流れていたのは不安だった。いつそれが誰の中で爆発するのか、それは誰にも分からないことだったから。
誰も足を動かせないでいるとすっと金谷クンがエレベーターの方に歩き出した。
「早く戻るぞ。こんなところにいたって気が滅入るだけだ。俺はさっさと帰って寝る。」
振り向かずに放ったその言葉はボク達に対して“生き抜いてみせる”と静かに、強く宣言したように聞こえた。
「ええ、そうですわね。」
「腹も減ったしな!」
「それはいつもじゃねえのか?」
「うるせー!」
不安は消えない。それは仕方が無い。でもきっとみんなで力を合わせて頑張れば今度こそみんなでここを出られるんじゃないか、そう思える。ボクはみんなの後に続いてエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターが到着するとみんなはそれぞれ自分の部屋に戻っていった。ボクもそうしようかと一歩足を前に出すと、
「深見殿、少々よろしいか?」
伊達クンに呼び止められた。
「どうしたの?」
「しばしお付き合い願いたい。」
「うん、いいけど。」
「ここで話すのもなんだ。移動するでござるよ。」
伊達クンに付き従ってたどり着いたのはメイクサロン。今朝はここでボク達2人が靏蒔さんの死体を最初に発見した。
「某は1つ後悔していることがあるでござるよ。」
ぽつりぽつりと伊達クンは話し始めた。
「こんなコロシアイに巻き込まれておきながら、某は心のどこかで自分とその大事な人だけは殺したり殺されたりなんてことに巻き込まれることはないと思い込んでいたでござる。」
大事な人、か。ここでそう言うってことはそれって・・・。
「それって・・・、靏蒔さんのこと?」
「さすがでござるな。深見殿には分かってしまうでござるか。そうでござる。先ほどは大切な人、などとごまかした言い方をしたが、端的に申せば某は靏蒔殿のことが好きだったでござるよ。」
そうなんじゃないかと思っていた。だって彼女と話しているときの伊達クンはいつもより楽しそうだったから。
「始めは美しい人だ、とそれだけだったでござる。でも、一緒に過ごす内に気付いたら、とそんなところでござる。」
「そっか。」
「某は臆病者でござる。靏蒔殿は、靏蒔殿だけは死なぬとそう思い込んで自分の気持ちを伝えるのを先延ばしにし続けた。月並みな理由でござるが、某のこの気持ちを伝えて今までのように接することができなくなるのが怖かった。」
今は全て片付けられて綺麗になった、でも今朝は確実にそこに彼女がいた場所を見つめ伊達クンは零す。心なしか声が震えている。
「然れど、こんなことになってしまうならば伝えておけばよかった・・・。」
そう呟いた瞬間、彼の双眸から涙が溢れ出す。
「好きだったっ・・・!好きだったでござるよ・・・!今頃申してももはや遅いやも知れぬが、某は靏蒔殿のことが好きでござった・・・!!うああっ・・・!ああああっ・・・!!」
崩れ落ちて今やもう届かない愛の言葉を涙と共に溢れさせる。その伊達クンの背中をボクは眺めていることしかできなかった。
数分後。
「すまぬな、付き合わせてしまった。」
「いいんだ。でもなんでボク?」
「なんとなく、でござるよ。もしかしたら心のどこかで共に死体を発見した深見殿にならこの気持ちを吐き出せるとそう思ったのやもしれぬな。」
「そっか。」
「でもやっと気持ちの整理がついたでござる。某はまだ死ねぬ。必ずや生き延びて、どこよりも高い場所からもう一度この気持ちを、今度は靏蒔殿に聞こえるように高らかに叫ぶでござる。その時までは死ねぬ。だからそのためにも深見殿には共に戦ってほしいでござるよ。」
「うん、もちろん。」
ボクも決意を新たにする。ボクは必ず生きてここを出る。そしてその時には・・・。
CHAPTER3 心と口と行いと才能で END
TO BE CONTINUED・・・
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【生存者】
超高校級の探偵 深見優(フカミユウ)
超高校級のレーサー 速瀬マハ(ハヤセマハ)
超高校級のバスケットボール選手 雷文竜(ライモンリュウ)
超高校級の外交官 金谷秀征(カナヤシュウセイ)
超高校級の医者 津田真理奈(ツダマリナ)
超高校級の歴史学者 伊達小十郎(ダテコジュウロウ)
超高校級の大工 鷹岡筋次(タカオカキンジ)
超高校級の??? 鏑木麗(カブラギレイ)
超高校級のバイオリニスト 木田結弦(キダユヅル)
残り9人
ということで無事第3章が完結致しました。いかがでしたでしょうか?人の複雑な感情の絡み合いが起こした悲劇でしたが、一体どうすればよかったんでしょうね・・・。
次回からは第4章が始まっていきます。ここからは後半戦です。深見くんたちの戦いを見届けていただければ幸いです。ということでまた次回!
前作の反省を生かして早々に推しのアンケートをしてみたいと思います!
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深見優
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速瀬マハ
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雷文竜
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金谷秀征
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羽月翔子
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津田真理奈
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伊達小十郎
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鷹岡筋次
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言村香奈
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美作奏
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鏑木麗
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泊直哉
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クレイグ・ホワイトバーチ
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靏蒔由衣
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大地真英
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木田結弦