ダンガンロンパシンフォニア〜ボクの愛と希望の法廷〜 作:パルティアン
CHAPTER5 (非)日常編1
「さてさて、かなり人数も減ってきたところだが、そろそろオマエの出番が来そうだぜ。」
深夜の学園の一室でモノトラが何者かに話しかける。
「まあこのままコロシアイを続けてもいいんだが、そうすると厄介になる奴も何人か混じってる。そしてそいつらが今生き残っている連中を表立ってか裏側からか、支えていると言っても過言じゃない。」
話し相手は身じろぎ1つすることなくモノトラの話に耳を傾ける。
「そこで、だ。誰でもいい。どんな手段を取ってもいい。奴らの中の誰か1人を殺してくれ。それをすれば奴らは空中崩壊をするはずだ。」
それは黒幕の不穏な企み。そしてそこで初めて話し相手が動く。と言ってもコクリと1度頷くだけではあったが…。
CHAPTER5 悲愴と熱情、そして運命 (非)日常編
キーン、コーン… カーン、コーン…
「おはようございます。7時です。今日も1日元気に頑張りましょう。」
昨日4度目の学級裁判が行われた。そして大切な仲間をまた2人も失った。でももうこんな状況に慣れてきてしまったのか、いつも通りレストランに向かわなきゃと思っている自分がいる。そんな状態に内心嫌気がさしながらも体を起こしてホテルに向かった。
「…おはよう。」
レストランに入ると既に来ていたのは鏑木クン・伊達クン・木田さんの3人。昨日まで朝一で来ていた雷門クンが欠けてなんとも寂しい感じがする。そしてそこまで時間もかからないうちに残りの3人も集まってきて7人、これで全員だ。
「いやあ、減ったねぇ。」
集まったメンバーをぐるりと見まわしながら真理ちゃんが感想を述べる。それもそうだ。一番最初にここに集まった時にいたのは全部で16人。でも今はもう7人。半分を切ったのだ。減った感じがするのも当然と言えよう。
朝食を食べ終わるとそのタイミングを見計らっていたかのように放送が入った。
『さてさて、学級裁判が終わったということは恒例の新エリア解放だぜ!今回はこのホテルの最上階だ!』
プツンと画面が落ちた後ボク達は顔を見合わせる。わざわざ放送で呼びかけるなんてモノトラの奴、何を企んでいるんだ…?
「でもまあ、新エリアについて知っておくことは大切さ。ここまで来ておいて探索せず引くなんてのはナシだろう?」
「ま、そりゃそうだな!」
朝食の片づけを済ませてボク達は最上階の探索に向かうことにした。
西棟から上がると大きな破裂音がフロアに響いた。
「!!?」
まさか、昨日の今日でもう…!?
ボクは急いで銃声が聞こえてきた目の前に見えている部屋に駆け込んだ。するとそこではライフルを構えた鏑木クンが何人も部屋に駆け込んできた様子に目を白黒させていた。
「…どうした、みんな顔を真っ青にして?」
「いや、だって銃声…。」
口々に突然の銃声について説明されると鏑木クンは手元のライフルに一度目を落としてからああ、と納得いったような表情をした。
「…すまない、まさか防音設備がなかったとは。」
「あー、ビックリした。」
説明を聞いてみるとこういう話だった。今ボク達が駆け込んできた部屋は射撃演習場。ピストルとライフル、それぞれを練習することができるらしい。鏑木クンは昔から銃に興味があったので試しにとライフルで1発撃ってみたところ血相を変えたボク達が部屋に駆け込んできた、ということだった。
「何事かと思ったでござるよ。」
「だが防音がしっかりしていないというのも納得だ。なぜこんな射撃演習場に扉がないんだ。」
呆れたように金谷クンが出入り口を見やる。確かにここの射撃演習場には扉がついておらず、3階のゲームセンターのようにそのまま素通りできる構造になっていた。これでは銃声は丸聞こえだ。
「それについては説明するぜ!」
そんな大雑把なホテルの造りに呆れているとそんなボク達の真ん中にモノトラがひょこっと顔を出した。
「ここの部屋には見ての通り、ライフルやピストルと言った銃火器が置いてあるんだぜ。まあ、もちろん、あくまで演習場だから人に向けられねーように短いチェーンで繋がっているわけだが。だが、だ。せっかくこんな立派な“凶器”が置いてあるっつうのに全く使えねーのは悪い冗談だ。だから何らかの方法でチェーンを切れば夜中でも持ち出せるようにしておいたってわけだ。」
夜中…、そうか。校則でホテル内のドアのついた部屋には夜時間中には出入りすることはできない。全く悪趣味な話だけどコロシアイの黒幕が考えそうなこととしては筋は通っている。
「…そうか、なら迂闊にここには出入りできないな…。」
せっかく自分の好きな部屋を見つけたのに、と鏑木クンがシュンとしている。普段あんなにクールなのにああも落ち込んでいるとなんだか大型犬を見ている気分だ。
「まあ、こういう部屋があるってわかってればいいんじゃない?いきなりの銃声だったからみんなびっくりしちゃっただけだし…。」
「ここで撃っている分にはそこまで危険でもありませんしね。」
「まあそれはそうだが。」
突然の銃声の理由に納得したところでみんなは安心した様子でその場を後にした。多少の不安は残るけれど基本的には問題ないと判断してボクも他の場所の探索に向かうことにした。
次に向かったのは今いた射撃演習場の廊下を挟んだちょうど反対側。丸に3本の波線の立っている見慣れたマークの付いた紫色の暖簾をくぐるとそこは足湯だった。そしてその奥には2つほど部屋があり、そちらも何らかのスペースになっているようだった。
「なんだ、深見か。」
足湯には既に金谷クンが入っていた。そう言えば前に大浴場が解放されたときも真っ先に入ってたっけ。
「もしかして泉質調査?」
「その通りだ。よくわかったな。」
「前にも似たようなことがあったからね。で、どんな感じ?」
「まあ黒幕の奴が用意したにしては悪くない。ただ屋内のものだからな。もう少し温度が低くてもいいだろう。その方がくつろぐには向く。」
何と細かいレビュー。ほんとに温泉が好きなんだなぁ。
足湯の湯船の周りにはタオルの自動販売機も設置されている。どうやらこのタオルはモノトラメダルを使って購入することが可能なようだ。
せっかく来たんだし入らないという手はないだろう。前回までの学級裁判で手に入れたモノトラメダルでタオルを買って足湯に入ることにした。
確かにこれはちょっと熱いかも…。土地によっては駅前に足湯が設置されてるところもあるけど、そういう場所のはいろいろな場所を観光で歩き回った人が利用する前提だ。足の回復には熱いお湯は必須だ。それに夏場はともかく、冬の寒い時期に入るなら屋外の足湯はある程度の温度が必要だ。でもここは違う。ここは屋内、しかもホテルだ。もう少し温度が低い方がいい。この場所は金谷クンが言った通りのくつろぐこともそうだけど、もう一つ、ここで偶然出会った人とコミュニケーションを取ることも目的の一つに入っているはずだからだ。
「…よくしゃべるな。」
「え、口に出てた?」
「割としっかりな。」
恥ずかしいな。
「だが意見を共有できたのは僥倖だ。意外と深見と俺は好みが近いのかもしれんな。」
「考え方もね。」
なんて言ったってくらやみハウスの改造の件に真っ先に危機感を覚えた二人でもあるんだから。だからこそ真理ちゃん以外だと一番信頼しているかもしれない。
2人の間に流れる沈黙。しかし決して気まずいということはない。むしろ気を使うことなく自分の思うがままに時間を過ごすことができるのでかなり落ち着いた心持ちだと言えよう。
その後足の疲れがかなり取れた気がするので足湯から上がって探索を続けることにした。
次に気になったのはこの足湯スペースの奥の部屋。2つほど扉が設置されている。扉に窓はついているものの部屋の中の明かりは弱く薄暗くて外から中の様子をうかがうことはできないがなんとなく同じ間取りの部屋なのではないかと思われる。とりあえず部屋の中を探索してみよう。
「ああああああ~。」
一歩部屋に入ると中では速瀬さんがマッサージか何かを受けているのか、気持ちよさそうな声を上げている。衝立で仕切られているので中の様子をうかがうことはできないしそんな覗きのようなことをする気もないけれど。
「…こっちもか…。」
取り合えず速瀬さんにはあとから話を聞くとしてとりあえずこの部屋について調べてみよう。
まず部屋に入って感じたのは3階のメイクサロンの元はまた違う甘ったるいにおい。まあ一言で言うならば蜂蜜や花のような香り。これは恐らくオイル…?壁の棚に所狭しと並べられている瓶を1つ手に取ってみるとそこにはやはり“OIL”と書かれていた。その他の棚を見てみるとサイズの違う茶色のタオルが積み重ねられている。
衝立の奥からは速瀬さんの声の他にはシュンシュンと機械が何かを吐き出すような音が聞こえてくる。
ここまでの情報を総合して推理するとここの部屋はエステだろう。と考えるとやはり隣も同様の間取りのエステサロンだろう。本来ならここでエステとマッサージを受けることができるのだろうけどボク達以外に人っ子一人いないこのホテルでは無用の長物と言えるだろう。
…あれ?だとしたら速瀬さんは誰からマッサージを受けているんだ…?
少し後ろめたさを感じつつも新しい階の状況の確認のためと言い聞かせて衝立の奥を覗く。するとそこでは
「ほいっと!そらっ!もういっちょ!」
モノトラが文字通り全身全霊をかけて速瀬さんにオイルマッサージを施していた。
「どういうこと…?」
「おう、優じゃねえか!お前もマッサージを受けに来たのか?だったら今ここはアタシが先約だ!もうちっと待ってくれ!」
「いや、というよりなんでモノトラが速瀬さんにマッサージを施してるの…?」
「それはだな、従業員が足りねーからだぜ!」
身も蓋もない。
「本来ここにゃ希望ヶ峰学園を卒業した一流のエステティシャンがいたんだが、まあここをオレ達が使うことになった時にゃもういなくなってたんでな。仕方なく代わりにこのオレがマッサージも担当してるってわけだ。」
「こんなちっこいぬいぐるみでも意外と腕がいいんだぜ?」
「あ、そう…。」
それはよかったね…。
「さて施術完了だ!このホテルに来る前よりも解れてるはずだぜ!」
「おー、体が軽いぞ!ありがとな!」
テンションが上がった様子の速瀬さんがガバッと起き上がる。背中にムラなくオイルを塗るためにはどんな格好をしていたかは推理するまでもなく、背中にかかっていたバスタオルが勢いよく宙に舞ったかと思うとその筋肉質でありながら女性らしさも残した肉体が文字通り露わになった。
「うわあ!速瀬さん、前!前!」
「あ、わり。」
「いいから早くこれを!」
できる限りその姿を見ないよう床に落ちたバスタオルを拾って速瀬さんに差し出す。早く着替えてもらわないとこんなところ誰かに見られでもしたらボクのここでの社会的生命が…
「おや、優クン。随分とまあ楽しそうなことをしてるじゃないか。」
あ、終わった。しかも一番見られたくなかった人に見られた。本格的に終わった。色々と。
などと考えていたのだが、当の真理ちゃんは不機嫌そうにぶつぶつと呟くだけでその矛先は一向にボクに向かうことはない。聞こえてくるワードの一部を拾い上げてみると「脂肪」「どこが」「ステータス」「希少価値」となんだかそれだけでは支離滅裂で一体彼女が何を言わんとしているのか一切想像もつかないまま真理ちゃんが出て行ってしまった。
助かった、ようには思えないけどボクのこの生活の中での社会的生命は奇跡的にわずかな期間の延命に成功したようだ。
一通り西棟の探索を終えて今度は東棟に向かうことにした。東棟にはズラッと並んだ客室の中に一か所高校生のボク達には何となく入ることが躊躇われるようなオトナでオシャレな雰囲気を醸し出している部屋がある。扉に近づくとそこには金属製のプレートがかけてあり、そこにはオシャレなフォントで“Bar”と書いてある。高校生のボクが入るのに二の足を踏んでしまうような雰囲気も当然だ。だってここは大人の社交場、色鮮やかなカクテルなどを嗜みながら静かに交友を育むような空間だからだ。とは言え探索をしないわけにもいかない。扉のベルをカラカラと鳴らしながらガラス張りの木製の扉を押し開けた。
「あら、深見さん。」
そこでは先に木田さんが調査を進めていた。ボクと同じ高校生でありながらその深紅の大人びたドレスを纏った姿はこのバーの雰囲気に似合っていた。バーの中はその雰囲気を壊さないように薄暗く保たれている。
「あなたもここの雰囲気に惹かれて?」
「うん、まあそんなとこ。」
「いいですわよね、こういうバー。一度入ってみたかったんですの。」
「あれ、入ったことなかったの?」
「こう見えてもわたくしまだ未成年ですのよ?」
「でもソフトドリンクとかは飲めるし何だったらバイオリンの関係者とかと一度くらいは来てるのかななんて勝手に思ってたよ。」
「そういうところの線引きはきちんとしていますわ。」
「じゃあ今は?」
「わたくしたちだけしかいませんから内緒ですわ。」
茶目っ気たっぷりに返事が返ってくる。
「逆に深見さんはこういう場所に入ったことがあって?」
「うん、なくはないかな。」
「あら意外。逆にあなたはこういうところにはあまり入りたがらないものだと思っていましたわ。」
「ボクも能動的には入らないよ。捜査に必要だったりしたときに入っただけ。」
「補導されますわよ。」
「残念ながらボクのバックには刑事さんたちがついてるもので。」
「あら羨ましい。」
そう言葉を返すと木田さんはつつーっとバーカウンターにその細い指を這わせながらカウンターの内側のスペースに入っていく。その様子にどこか色っぽさを感じてしまう。ボクに背を向けた木田さんはズラッと並んだボトルの一本を手に取りふわっとこちらをもう一度振り返る。
「何かお飲みになって?」
「何かジュースはあるかな?」
「ここには今あなたのお口に合いそうなものはありませんわね。」
「それは残念。」
バーカウンターの背中の棚にはお酒しか並んでいない。まだボク達には少しだけ早い代物だ。仕方がないのでバーの中を少しだけ調査してソフトドリンクを切らしていること以外世間一般で言うところのバーと大差ないことを確認してからボクは廊下に出た。
廊下に出て最後に残った場所に向かう。残ったのはホールの奥の部屋。ここにはガラス張りの重い扉がついていてそこから中の様子をうかがうことができる。外から見た感じでは緑の葉っぱが青々と生い茂っているのが見えた。
ガラスの扉を押し開けると一気にかぐわしい花の香りと命溢れる緑の葉っぱの香りが鼻腔をくすぐる。天井もガラス張りになっていて中の植物たちは欲しいだけ太陽の光を浴びることができるようになっている。それぞれの植物の足元や木の幹には彼らが何者であるのかを示すネームプレートがかかっている。ここはいわゆる植物園という奴だろうか。と言ってももちろんホテルの中なのでそこまでの広さはない。だから正確には植物庭園とでも呼ぶのがよいのだろう。その入り口のすぐ近くに刀を帯びたすぐに誰か分かるシルエットが立っていた。
「おお、深見殿もここに来られたか。なんとも落ち着くでござろう。」
「うん、なんだかここにいると殺伐とした状況にいることなんて忘れちゃいそうになるよ。」
「ほんとでござるな。」
伊達クンとそんな話をしたところでこの植物庭園の調査を開始する。まず目に入るのはやはり部屋一面に咲く色とりどりの大きな花々。南国風と思しきその花々はこちらを見ろとばかりに大輪の花を咲かせてその存在を主張してくる。そしてこの美しい花々を維持するためにこの部屋の中はかなり気温が高めに維持されているようだ。
部屋をぐるっと見回っているとその中にこの南国の自然には似つかわしくない、無粋とも言うべき機械がぽつねんと立っていた。近づいてみるとそれはスプリンクラーの制御装置のようだ。確かにここは本来日本。四季はあっても雨季はない。ここの植物を維持するためには高い気温だけではなくこまめに水を挙げる必要があるのだろう。実際この機械の液晶画面を見る限り毎朝8時にこの植物庭園ではスプリンクラーによる散水が行われるらしい。不用意にこの部屋に入るようなことがあればここで濡れ鼠になってしまう。気を付けなければなるまい。
そして最後に調べるのはこの機械のそばにあった物置小屋。こちらは無機質な姿をした制御装置とは一転してこの庭園の雰囲気に合わせて丸太で組まれたロッジになっていた。木製の扉を開けるとそこにはこの庭園を管理するために使うと思しき一連の道具が揃っていた。鍬や鋤に大きなスコップ、果てにはつるはしなどが壁にかかっている。棚にはじょうろやホースが置いてあり、必要に応じてスプリンクラー以外でも水やりができるようになっているらしい。足元には土や肥料が重たそうな袋に入っており、更には植物の病気や害虫に対応するための薬品なんかもボトルに入って置いてある。しかも人体には無害なものと配慮までされていると来ている。モノトラは一体ここでどれだけの期間ボク達を拘束しておくつもりなのだろうか。
「ふう、こんなところかな。」
「お、もういいでござるか?」
「うん、取り合えずはね。」
「じゃあ一緒に戻るでござるよ。そろそろ他の皆も集まっている頃でござる。」
「そうしよっか。」
一通り5階の探索を終えたところで報告のために一度伊達クンと一緒にレストランに向かうことにした。
「お前たちは気づいているか?」
レストランに全員が集まると金谷クンがおもむろにそう切り出した。
「主語をくれ。」
もっともだ。
「先ほど調査した5階、それがこれまでと異なる箇所についてだ。」
「あー、そういうことね。」
「速瀬さん分かるんですの?」
「いんや、わからねえ。」
「じゃあ心当たりがあるかのような発言はしないでくださいまし。」
漫才のようなやり取りを繰り広げる速瀬さんと木田さんをよそに鏑木クンがハッと何かに気づいたような表情をする。
「…もしかして階段のことだろうか?」
「階段、でござるか?」
「…今日もこれまで通り階段を使って5階まで上がったんだがよく考えると5階まで上がったところで階段が切れていた。」
「っつうと?」
「…このホテルは5階建てなのではないだろうか。…ホテルにしては少々小さいような気もするが。」
「なるほど、確かにそうだ。このホテルはこれ以上上には広がる先がない。とすると少々絶望的な話になってくるね。」
「絶望的?」
「ほら、当初の目的を思い出してごらんよ。ボク達が最初各階の調査を進めていたのはどこかしらに出口のヒントがあるかもしれないと考えたからだ。しかし残念ながらこれまでこのホテルの敷地内のどこからもこの場からの出口のヒントは掴めていない。そして唯一チャンスがあったとすればいまだ解放されていないフロアだけだった。だけどこのホテルにはもう他のエリアはない。いや、もしかしたらないことはないのかもしれないけれどそれと思しき場所はない。つまり?」
「これ以上わたくしたちはヒントを得ることができない、ということ…。確かに絶望的ですわね…。」
鉛のような空気が流れる。ボク達が調査を続けて手に入れた事実がボク達はここからは出られない、というものでは然もありなんという話ではあるけれど。いや、出る手段がないわけではない。たった1つ、明日にでも出られるかもしれない方法はある。
「つまり結局のところ殺し合え、ということでござるか…?」
「ばっか、滅多なこと言うもんじゃねえぞ!」
「…相済まぬ。」
伊達クンの気持ちもわからないではない。ボク達はもうすでにここで約半月もの時を過ごした。そしてその中で多くのものを喪った。もうたくさんだという気持ちも、早く出たいという気持ちも、そしてその手段がもう1つしか残されていないのではないかという気持ちもよくわかる。でもここで折れるわけにはいかない。だってボク達はその喪ってきたみんなから希望を託されてここにいるのだから。それに可能性だってまだ残されてる。
「まだ可能性はあるよ。」
「…本当か?」
「ほら、ここに来た日の翌日、それこそ伊達クンたちの班が言ってたじゃない。フロントの後ろに開けられない扉があるって。それ自体が出口かどうかはわからないけどそこに何か重要な情報が眠ってる可能性は高いと思うよ。だって同じ1階にあったのにそれより上の階とか外の建物よりも開放を遅らせてるくらいだからさ。」
「確かに深見の言うことにも一理ある。その開放条件がまたコロシアイを乗り越えることなら本末転倒な気もするがな。」
「それはボク達次第じゃないかな。ボク達がこれ以上殺人を起こす気がないってわかったら何か黒幕が動いてくることはあり得るし、その中であの扉が開放されることも可能性としてはゼロじゃない。」
「じゃあ結局アタシたちは今まで通り、コロシアイを起こさせない方向で行けばいいってことだな!」
「まあとりあえずはそういうことじゃないかな。」
「あー、安心したら腹減ってきちまった。メシにしようぜ!」
こんな重苦しい中でもマイペースな速瀬さんには毒気が抜かれるような気がする。でもそんな緩さがきっと今のボク達には大事なんだ。それに希望はまだあるんだ。ここまで来て黒幕になんて屈しない。必ずここから今いる全員で脱出するんだ!そう決意を固めてボク達はみんなでキッチンに料理を取りに向かうのだった。
そして今日はそのまま1日が過ぎていったのだった。
【モノトラ劇場】
「人間は生きていく中でいろんなことを考えなきゃならねえんだぜ。」
「学校のこと、仕事のこと、お金のこと、結婚のこと、生きるって何か、死ぬって何か、遺すって何か、遺されるってどういうことか、とかな。」
「頭が痛くなっちまうよな。」
「けどいつか必ずその時は来てしまう。」
「だからこそ今のうちにたくさん、たくさん、脳みそが沸騰しそうなほど考えて」
「その時が来た時に後悔しないように生きていくんだと思うんだぜ。」
「でもまあ、受験当日に受験票を置いてきてしまうように」
「何か致命的な後悔を遺してきっとその時を迎えるんだろうぜ…。」
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【生存者】
超高校級の探偵 深見優(フカミユウ)
超高校級のレーサー 速瀬マハ(ハヤセマハ)
超高校級の外交官 金谷秀征(カナヤシュウセイ)
超高校級の医者 津田真理奈(ツダマリナ)
超高校級の歴史学者 伊達小十郎(ダテコジュウロウ)
超高校級の??? 鏑木麗(カブラギレイ)
超高校級のバイオリニスト 木田結弦(キダユヅル)
残り7人
えー、大変長らくお待たせいたしました。ついにダンシン第5章開幕でございます。直近の投稿から約4か月、今までにないくらい期間を空けてしまいました。まあそれは4年目にしてついに某感染症に罹患するなど個人的な事情が重なりに重なった結果だったわけでございますが、ここからはできる限り期間は空けすぎずに第5章をお送りしていこうと思いますのでどうか温かい目で見守ってやってください。
さて、久々の設定裏話は4章のタイトルについて解説していこうと思います。4章のタイトルは「別れの曲と言う勿れ」です。これはかなりわかりやすいポイントが2つあります。1つは別れの曲。こちらはショパン作曲のエチュードです。そしてもう1つが「と言う勿れ」の部分。こちらは実写ドラマ化もされた人気漫画「ミステリと言う勿れ」です。この2つのワードを掛け合わせることで犯人の殺人を犯し外に出ようと言う気持ちと一方でこんな形で友の作ったものを利用する形で友と別れたくなかったという葛藤の様子を表してみました。黒幕の卑劣な策謀に惑わされ歪んでしまった2人の友情。もし出会った場所が異なったのならばきっと本当の意味で2人は親友であれたはずなのに…。
ということで今回はここまでです!それではまた次回お会いしましょう!
前作の反省を生かして早々に推しのアンケートをしてみたいと思います!
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深見優
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速瀬マハ
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雷文竜
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金谷秀征
-
羽月翔子
-
津田真理奈
-
伊達小十郎
-
鷹岡筋次
-
言村香奈
-
美作奏
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鏑木麗
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泊直哉
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クレイグ・ホワイトバーチ
-
靏蒔由衣
-
大地真英
-
木田結弦