ダンガンロンパシンフォニア〜ボクの愛と希望の法廷〜   作:パルティアン

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CHAPTER5 非日常編-捜査-

さあここからが捜査本番だ。いろいろ情報を集めていかないとね。

とするとまず集めておきたいのがアリバイだ。と言ってもモノトラファイルには優クンの死亡推定時刻は書いていなかった。何かそこに重要な情報が隠されているのだろう。だけど大雑把な犯行時刻を推測することはできる。優クンは普通に昨日の夕食には来ていた。だからレストランを出ていくまでの8時くらいまでは確実に生きていたことになる。そこから今日死体が発見されるまでのおおよそ朝7時ごろまでの間、ほぼほぼ夜時間の間が犯行時刻だと言えよう。少々範囲は広いが、そこのあたりの行動を全員に確認していこう。

 

「鏑木クン。」

「…なんだ?」

「昨日の夜から今朝にかけてどこで何をしてたか覚えてるかい?」

「…昨晩か…。…基本的には部屋にこもっていたからあまり期待に添えるような情報はない。…だが、夜の3時から夜時間が終わるまでの時間は射撃演習場でライフルを撃っていた。」

「その間誰か来たりしたかい?」

「…いや、ずっと1人だったと思う。」

「思う?」

「…銃を撃つ都合上ずっとヘッドフォンを着けていた。…だから多少誰かが来たとしても気づけなかったと思う。」

「そっか。」

 

こりゃ情報なし、かな。でもまあ一応覚えておこう。どこかで重要になるかもしれないし。

 

 

 

コトダマゲット!

【鏑木の証言)

昨晩は基本自室にこもっていた。

その後深夜3時ごろからは射撃演習場で夜時間が終わるまで1人でずっとライフルを撃っていた。

 

 

 

念のため何か裏付けが取れるかもしれないしどこかで一度射撃演習場にも言ってみることにしよう。

ただ今はみんなのアリバイを集めることが先決。まずは他のみんなを探してみることにしよう。

 

「おーい、津田殿ー!!」

 

みんなを探して廊下を歩いているとちょうどそこに伊達クンがボクのことを呼びながら走ってきた。

 

「…とまあこんな感じだったよ。」

「ほうほうなるほど…。」

「で、そっちも呼び止めるってことは何か話しておきたいことがあったんじゃないのかい?」

「おお、そうでござった。先ほどジムの男子更衣室を調べていたらこんなものが落ちていたので回収してきたでござるよ。」

 

そう言って彼が取り出したのは30センチほどの金属の棒。この形に少々心当たりがある。

 

「これは…。警棒、だね。」

「警棒ってあの工事現場とかで使っている奴でござるか?」

「うーん、それとは用途がちょっと違うかな。これは特殊警棒、自衛用の武器だね。」

「それはまた物騒な。」

「まあね、映画とかなんかだとむしろ自衛よりも加害に使われたりするし。」

「されどこんな短い棒でどうやって戦うんでござるか?」

「ああ、これは伸縮式なんだよ。こんな感じで…。」

「…血痕…!」

 

実演と思って特殊警棒を伸ばしてみるとその側面にべっとりと血痕が付いていた。

 

「まさかビンゴとはね。」

「そうやって伸ばして殴るわけでござるな…。」

「…しかも実際に犯人もそんな使い方をしていたようだな。」

 

これは大きな手掛かりだ。きちんと覚えておこう。

 

 

 

コトダマゲット!

【特殊警棒)

ジムの男子更衣室の中に転がっていた。

伸縮式のもので伸ばすと側面に血痕が付いていた。

深見を殴打するのに使われた可能性が高い。

 

 

 

「…だがこれでは犯人像がまたややこしくなってしまうな…。」

 

伊達クンの一連の話を聞いて鏑木クンは顔をしかめる。

 

「確かにこれは状況が複雑だ。」

「なぜでござるか?」

「ほら、さっき女子トイレの件を話しただろう?」

「ああ、殺人に使われた道具の一部と血痕があったって話でござろう?」

「そうだ。で、わざわざ異性のトイレに入る必要もないのだから犯人は女子じゃないか、って話だったんだ。」

「そうでござったな。…ん?」

「…気づいたか。…校則の11、『生徒間の電子しおりの貸し出しを禁じる。』だ。…破ればおしおきの対象となるだろう。…女子は男子更衣室に入れないどころか開けることすらできない。」

「となると特殊警棒は誰が入れたんだ、って話になるんだ。」

「普通に考えたら男子なんでござろうがそれではわざわざ女子トイレに入った理由が説明つかぬな…。」

 

でもこの矛盾は何か重要なものな気がする。校則についても一応頭に入れておこう。

 

 

 

コトダマゲット!

【校則11)

電子しおりを他人に貸与してはならない。貸与が発覚した場合はおしおきの対象となる。

 

 

 

さて、あとは伊達クンに聞いておくことがあるな。

 

「どこまで意味があるのかという話はあるんだけど昨日の夜はどこで何してたか教えてもらえるかい?」

「アリバイという奴でござるな。確かに夜時間を通してとなるとアリバイはないでござるな…。だが昨晩は深見殿と金谷殿と共に夜会をしていたでござるよ。鏑木殿にも声をかけたでござるが振られてしまったでござる。」

「それは何時くらいまでの話だい?」

「うーむ、某の最後に記憶が残っているのが11時少し前でござるな…。その後は寝落ちしてしまってよく覚えておらぬのだ。だが金谷殿は先に寝ておられたし11時ごろには終わっていたのではなかろうか。」

「朝は?」

「うむ、金谷殿はおったがな、深見殿はおられなんだ。その間は誰が何をしていたかは全く分からぬ。」

「ということは11時ごろが優クンの生存が確認されている一番遅い時間か…。」

 

まだ完全に信じたわけではないけど11時以降のみんなの行動を追っていく必要があるかもしれないな…。この情報は気に留めておこう。

 

 

 

コトダマゲット!

【伊達の証言)

昨晩は鏑木以外の男子も一部屋に集まって夜会をしていた。

夜会は11時ごろには自然にお開きになっていたと思われ、その後のそれぞれの行動は分かっていない。

 

 

 

「それじゃ某は他のところを捜査してみるでござるよ。」

「ああ、任せたよ。ちなみに他の人はどこにいるか分かるかい?」

「そう言えば先ほど金谷殿が倉庫に入っていくのを見かけたでござるよ。」

「そうかい、ありがとう。」

「…それならちょうどいいだろう。」

「何がだい?」

「…この特殊警棒だ。…他のところで見かけた記憶がない。…恐らく倉庫にあったものだと思う。」

「なるほど、なら話を聞くついでにちょっと探してみようか。」

 

倉庫に入ると金谷クンは奥の方の棚を調べていた。

 

「や、順調かい?」

「津田か。」

「何か探し物かい?」

「いや、あの天井からぶら下がっていたピアノ線、アレがどこから来たものかと思ってな。」

 

確かに、アレの出どころも不明だ。

 

「何か分かったのかい?」

「いや、依然不明だ。そっちはこんなところで何をしている?」

「事件が起きたであろう夜の間のみんなの行動を聞いて回っていてね。」

「そうか、それなら昨日はずっと伊達の部屋にいたぞ。」

「ああ、例の夜会だね。」

「なんだ、伊達から聞いていたのか。」

「まあね。でも一人だけの証言じゃ信じ切ることはできないからね。」

「とは言っても結局のところ両方眠っていたんだ。証明はできんがな。強いて言うのであれば伊達が人の腹を枕にしていたせいで身動きは取れなかったというくらいだがそれも俺が勝手に言ってるだけと言われればそこまでの話だ。」

「うーん、確かにね…。まあそのあたりは必要に応じて学級裁判で詰めていくよ。」

「それがいいだろう。」

 

そこまで言うと金谷クンはその場を去っていった。

さて、じゃあボク達はもう一つの目的を果たすとしようか。

あの特殊警棒の出どころ、それを探る必要があるからね。

一つ一つの棚に設置されたプレートを調べていく。お菓子、衣料品、レクリエーションと順にプレートを見送っていく。

 

「おや…?」

 

そしてその中に一つ気になる文言を見つけた。それは“防犯”の二文字。そもそもこんなコロシアイなんぞさせておいて防犯も何もないように思うがまあ置いてあるのだから仕方あるまい。

そのエリアに置かれていたのは大きな巾着袋。その袋の真ん中にはでかでかと防犯セットと書かれている。

 

「…開けてみるぞ。」

 

鏑木クンはその中の一つを乱雑に掴むとがさっと開く。

中から出てきたのは3つのアイテム。

1つ目は催涙スプレー。襲われた際にその襲撃者の目を目掛けてこの唐辛子の辛み成分たっぷりの薬剤を吹き付ける。相手が痛みに悶えている間に逃げるという算段だ。

2つ目はスタンガン。こちらはサスペンスドラマでもおなじみだろう。実際はあんな風に気絶したりはしないけれど相手の動きを止める分には十分有効だ。

そして最後は特殊警棒。伸縮式だ。そして先ほどの伊達クンが見せてきたものと同じもの。つまりアレはこの袋から取り出されたものとみて間違いないだろう。

 

「参ったな…。」

「…確かに。」

 

そう、この倉庫にあったものの中から持ち出されたということは、つまりこの特殊警棒は誰にでも持ち出せたということだ。となると人数の少なくなった今それを誰がやったのか明らかにするのは至難の業だ。

だが他にも殴打するだけならば使えるものがたくさんあるはずなのにわざわざこれを持ち出したことには意味があるはずだ。きっとそれは何かの突破口になるはず…!

 

 

 

コトダマゲット!

【防犯セット)

倉庫に置かれていた物で、中には様々な防犯グッズが入っている。

中身は伸縮式の特殊警棒、スタンガン、催涙スプレー。

 

 

 

倉庫で分かることはこんなところだ。

あとまだ話を聞けていないのはマハさんと結弦さんの二人だ。とりあえず二人を探しながらホテルの外に出てみよう。

噴水の近くまで行くとマハさんが地面にしゃがみ込んでいた。

 

「どうしたんだい?」

「おお、真理奈か!ちっとこれ見てくれよ!」

 

そう言ってマハさんが指さしたのは噴水の付近に落ちた血痕。

 

「これは…!」

 

確かここからエレベーターまでの間には特に血が垂れたりなどはしていなかったはずだけどでもこれはかなり気になる。

 

「これぜってえ優のだよな?」

「うーん、奏さんの件もクレイグクンの件もあるからそこはなんとも言えないけどでも今回の事件に無関係ということはないだろうね。」

 

ただ問題はどうしてこんなところで流血沙汰になっているのかという話だ。ここはあまりにも現場から離れすぎている。もしここで何かあったとしたら犯人はなぜエレベーターまで死体を運ぶというしちめんどくさい方法を取ったのだろうか…?

 

 

 

コトダマゲット!

【血痕)

噴水の付近に付着していた。

ここでも事件にまつわる何かが起きたものと考えられる。

 

 

 

「…速瀬に昨日の話を聞かなくていいのか?」

 

ボクが血痕の件について考え込んでいると鏑木クンが声をかけてきた。

そうだ。そもそもその話をしに来たんだったな。

 

「マハさん、昨夜のアリバイについて聞かせてもらってもいいかな?」

「ゆうべの?つったって基本的には真理奈も知っての通りだぞ?」

 

知っての通り、それは昨日のパジャマパーティーの話を言っているのだろう。

 

「…私はその件について詳しく知らない。…できたら改めて詳しく教えてもらえると助かるんだが。」

「おお、そうだな!アタシらは昨日の夜アタシの部屋でパジャマパーティーをしたんだ。」

「…どれくらいの長さだ?」

「えーっと…、夜時間が始まる前位に始まって、夜中の2時くらいに解散したぞ?その後は部屋で寝ちまって分からん。」

「…その途中で抜けた者はいなかったか?」

「あー、11時くらいからトイレやら何やらでみんな1回ずつは抜けたな。つっても5分か10分くらいだ。」

「…ならばその間の犯行は厳しいか。」

「だけど重要な証言だよ。犯人の犯行の行動を考えるのに役立つかもしれない。」

 

 

 

コトダマゲット!

【パジャマパーティー)

昨晩速瀬の部屋で開かれた。午後11時頃から全員が何かしらの理由で一度は抜けたがその時間は5~10分程度。

その後深夜2時に解散となって参加者全員が部屋に戻った。

 

 

 

あとまだ話を聞けていないのは結弦さんだけか。

ホテル内の事件に関係しそうなところにはいなかった気がするけど…。

 

「あ、マハさん。結弦さんを見かけていないかな?」

「ん?結弦ならさっきホテルに戻ってくのを見たぞ?」

「…すれ違ったか。」

「じゃあ探しに行ってみることにするよ。ありがとう。」

「いいってことよ!」

 

なんだか無駄に歩き回っているような気がするけどもう一度ホテルに向かってみることにするか。

 

「…木田はどこにいるのだろうか?」

「さあ?全く見当もつかないよ。」

「…む、そうか。」

 

一体どこをほっつき歩いてるのやら。でもだったら先に一度見ておきたいところがある。

 

「あ、一度射撃演習場に行っておいてもいいかい?」

「…私の証言についてか。」

「気を悪くさせたかな?」

「…いや、私がいることで気を遣って行けないのならどこかで提案しようと思っていた。」

「ドライだね。自分が疑われてるかもとはならないんだ?」

「…むしろ昨晩一人でいたのだ、疑われるのもやむなしだろう。…論理的に詰めていけば私が犯人かどうかは自ずと分かるだろうしな。」

 

ここまで来るとドライというより自分のことをどうなってもいいと思ってる?

その割には捜査はきちんと手伝ってくれているからどうなってもいいのは自分だけでそれに他の人を巻き込むのは違うと思っている手合いか。

 

 

 

とまあ彼のプロファイリング擬きはこんなところにしておいて射撃演習場に向かう。

射撃演習場に入って周りを観察してみるがとりあえず目立って変なところはない。まあそう簡単にはいかないよね。まあここに警察の科学捜査の設備でもあれば鏑木クンの袖やら何やらを調べれば硝煙反応で一発で彼がここにいたかどうかは分かったんだけどな。

ただ強いて言うのであれば。

 

「これはまた山盛りだね。」

 

この射撃演習場のごみ箱は大量の空薬莢でいっぱいになっていた。

 

「…ほぼ休まず撃っていたからな。」

「なるほどね。と言ってもこの薬莢がいつ撃たれたものかが分からないからなぁ…。」

 

例えば数日かけてため込まれたものだとしたら一概にこれが昨晩の鏑木クンのアリバイを示すものだとは言い切れない。

 

「それならいい話を教えてやるんだぜ!」

 

薬莢の撃たれた時間がいつか、それを考えていると急にモノトラが話しかけてきた。

 

「なんだい、キミは知ってるっていうのかい?」

「ああ。そこのごみ箱はな、昨日の夜時間前にオレが一度片づけたんだぜ。」

「なるほど、つまり今山盛りになっているこの空薬莢は昨日の夜時間の間に撃たれたものだ、というわけだね。」

「ま、そういうこった!じゃ、ヒントはここまでだぜ!」

 

そう言うとまたモノトラはどこへということもなく消え去った。

モノトラはこれまでこのコロシアイに関わることで嘘は吐いていない。恐らくボク達の本物の反応を見られなければつまらないとか理由はそんなところだろうけれどこれは純然たる事実だ。それにこんな結局嘘か本当か確認のしようのないことを偽っても意味がない。そう考えるとこの情報は信じてみてもいいのかもしれない。

だとすると夜時間の間にごみ箱が口いっぱいになるほど弾丸を撃ったのは…。

 

 

 

コトダマゲット!

【大量の空薬莢)

射撃場のごみ箱に大量の空薬莢が捨てられていた。

モノトラによると昨日夜時間の直前に射撃演習場のごみ箱は片づけたとのこと。

 

 

 

ここで調べることはこんなところかな。

再び1階へと戻るとちょうど現場の目の前で結弦さんと鉢合わせた。

 

「あ、津田さんに鏑木さん!よかったわ!」

「おや、何かボクに用事かな?」

「いえ、たまたまホテルに戻ってきた速瀬さんにお二人がわたくしを探していると伺ったものですから。」

「それならこちらこそちょうどよかった。少々話しを聞きたかったところなんだ。」

 

と言っても彼女は昨晩ボクと一緒にパジャマパーティーに参加していたから特段追加で話すようなことは何もなかった訳だけれど。

とまあ会話を終えようとしたその時、鏑木クンが少しいいだろうかと口を挟んだ。

 

「…すまない、あともう少しだけ聞いておきたいことがある。…私が悲鳴を聞いて現場にたどり着いたのは2番目で、その時には既に木田が死体を発見した後だった。…なぜ木田はエレベーターの中に死体があるとわかったんだ?」

「ああ、そう言えばその話をするのを忘れるところでしたわ。」

「つまり第一発見者はキミだったのか。」

「ええ。わたくし、いつも通り7時少し過ぎにレストランの前にやってきたのですが、中に入ろうとしたその時に突然現場の方向から何か大きなものが倒れるような音が聞こえてきたのです。不審に思って近づいてみるとエレベーターがドアの開いた状態で停止していたので中を覗いてみましたらそこで深見さんが亡くなっていましたの。」

「偶然だったわけだね。」

「ええ。わたくしも驚いてしまって悲鳴を上げたところに鏑木さんがやってきて、彼がちょうどレストランに向かうところだった他の方々を呼んで到着したところで死体発見アナウンスが流れましたわ。ああ、そう言えば伊達さんは話を聞いて津田さんを呼びに寄宿舎に戻ったと聞き及んでいますわ。」

「うん、確かに伊達クンがボクを呼びに来てくれたよ。」

「…なるほど、そういう流れだったのか。」

「死体発見時の状況か…。覚えておいた方がよさそうだね。」

 

 

 

コトダマゲット!

【木田の証言)

7時ごろレストランに入ろうとしたその時にエレベーターの方から何かが倒れるような大きな音がしたので行ってみたらそこで深見が死んでいた。

 

 

 

「ではもう少し捜査してきますわ。ごきげんよう。」

 

そう言うと木田さんは颯爽とこの場を離れていった。

その一方でボクはここまでの状況に少し引っ掛かりを覚えていた。

 

「…どうした?」

「いや、少し気になったことがあるんだ。」

「…気になったこと?」

「ああ。そもそもなぜあんなところで優クンは死んでいたんだ?夜時間も明けようという時間に上の階へ行く理由なんてそうそうない。」

「…クレイグと靏蒔くらいだったな。」

「それもどちらもかなり特殊な事情だ。もしかしたら優クンの方にも何かあったんじゃないかと思ってね。」

「…なるほど、わざわざ夜時間中に部屋を出た理由か…。」

「だからボクは一度優クンの個室を見てみようと思ってる。もし何かヒントがあるならば人目につきにくい個室だろうからね。」

「…そうか、ならば私はもう少しホテルの中を捜査してみようと思う。」

「うん、じゃあいったんここでお別れだ。」

「…ああ。…また扉の前で。」

「うん、じゃあまた。」

 

ここまで捜査の相棒となってくれていた鏑木クンといったん別れ、ボクは自分の疑問のヒントを探しに優クンの部屋へと向かうことにした。

 

 

 

優クンの部屋の扉の前。ゆっくりとドアノブに手をかけて引き下ろす。ガチャリという穂とがして扉が軽くなる。カギは開いている。その現実にまた優クンが死んだのだという現実を再認識させられる。

生真面目な優クンらしい整理整頓された部屋。昨日まではここにいたはずのこの部屋の主はもういない。

 

「じゃあちょっと家探しさせてもらうよ。」

 

軽く手を合わせてから部屋の中の捜査を始める。

クローゼット。彼の服と同じものが何セットも入っている。シンプルないつもの洗剤の匂いがする。そう言えば昔あまり香りの強い洗剤とか香水は尾行の邪魔になるからあまり好きじゃないとか言ってたっけな。

ベッド。昨日は男子も伊達クンの部屋に集まっていたらしいからそこに優クンのいた痕跡は残っていない。彼がここで生きていたという体温(あかし)も。

本棚。彼のこれまで解決してきた事件のファイルや彼の好んだ推理小説なんかが所狭しと並べられている。この事件の中にはボクもその場に居合わせたものも入っているのかもしれない。

机。彼の生真面目さが如実に表れた綺麗な机。本立てにはいくつかの参考書と犯罪心理学にまつわる本が立ててある。

 

「この中で何かあるとしたら…。」

 

机、だろう。ここは自分の部屋、誰かが侵入することを想定してものを隠すことはしないだろう。だとすると最低限自分の意思で人を招き入れたときに人に見られにくく、わざわざ人が手を触れない場所に“しまう”だろう。ならばその場所として一番該当するのは机だ。

と言っても机の上は整理整頓されている。彼が掴んでいるものが紙のメモだったとしても表立った本に挟むことはすまい。本人を前にして机自体をガサゴソと探すようなマネは普通はしないだろうけど目についた本を手に取るくらいは人によってはするかもしれない。だとしたら本に挟んでおくのはリスクだ。

となると一番可能性が高いのは…。

 

「引き出し、かな。」

 

足元に三段に分かれて設置されている引き出し。ここならなんとなく勝手に開けるのを躊躇われるだろう。何かを人目につきにくいようにしまっておくとすればここか。

一番上。中に入っていたのは工具セット。きっと女子の部屋の裁縫セットと対になっているのだろう。だがこれ以外は何も入っていなかった。

真ん中。電車の模型。何々…、男のロマンエクスプレス…?何だいこれは…?子供のころは人並みに電車も好きだったとは思うけどそんな模型を買うほどとはおばさんからは聞いてないけどなぁ…。

一番下。二枚の封筒。封蝋は剥がれている。そして封筒にはモノトラの目と同じ模様。多少申し訳ないとは思いつつも中身を見る。

 

一枚目。

 

 

『私は君たちの中に潜む黒幕の内通者その人である。今から2日後君たちの中の誰かを殺す。それを阻止したくばそれまでに私の正体を突き止めることだ。もちろんだがこのことは他言無用だ。このことを誰かに話した時点ですぐにでも殺害計画を遂行する。』

 

 

これは…!黒幕の内通者からの手紙…!しかも脅迫状…!

二枚目。

 

 

『調査は順調かな?私の正体には近づけているだろうか?さて、キミは恐らく私の手の者の寄越した手紙によって焦っていることだろう。そしてこのままでは奴の思い通り殺人が起こるだろう。私はそれでもかまわないのだがこのまま一方的なゲームというのも面白くない。そこでキミにはヒントを与えようと思っている。午前0時、日付が変わった時に植物庭園に来たまえ。そこでヒントを授けよう。』

 

 

こっちは黒幕からの手紙…か…?いや、それにしては怪しすぎる…!でも状況が状況だ。内通者の情報を手に入れるためにリスクを冒した可能性は否定できない。もしかしたら優クンはこの手紙に乗ったのかもしれない。

この二通の手紙、きっと事件の真相に関わる重要な証拠だ…!

 

 

 

コトダマゲット!

【二通の手紙)

深見の部屋の机の引き出しに二通の手紙が残されていた。

一通目は黒幕の内通者からのものでタイムリミットまでに自分の正体を突き止めなければ殺人を犯すという脅迫状。

二通目は黒幕からの手紙と思われ、内通者のヒントが欲しければ日付が変わった時に植物庭園に来いというもの。

 

 

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「さーて、戦いの時間だぜ!オマエラは至急赤い扉の前に集合してくれ!」

 

時間、か…。

名残は惜しいけれど行くよ。ボクにはやらなきゃならないことがある。キミを殺した犯人を見つけるという大事なことが。

 

「じゃあ行ってくるね。」

 

裁判が終わればここは完全に閉ざされて二度とは入れない。彼の気配を追うこともできなくなってしまう。だから一旦ここでお別れだ。

ボクはゆっくりとさよならを言うように優クンの部屋のドアを閉めた。

 

 

 

赤い扉の中に入ると既に他のみんなは揃っていた。

 

「な、なあ、やっぱ大丈夫か?」

「大丈夫かどうか、それは今問題じゃないよ。今はまずここを乗り切らないと。そうしなきゃ優クンを悼むことさえできないんだから。」

「…津田がそう言うのなら行こう。…その決意を前に気を使い続けるのは野暮だ。」

「そう、だな。っしゃ!行くぞ!」

 

ボクはみんなと共に一歩前へと踏み出す。ボクはまだ生きていたいから。キミという存在をまだ忘れたくないから。

 

「だから見守っていてくれよ。」

 

檻のような扉が閉まり、がたんと一度大きく揺れる。決意を胸にボク達は再び地下深くへと潜り込んでいった。

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り6人




少し時間がかかりましたがここまでで捜査編です!なかなか自分が最初想定した通りの反応を得られているか分かりませんが面白いと思っていただけると幸いです。
次回からは学級裁判編、どんな結末が待っているのかお楽しみに!

前作の反省を生かして早々に推しのアンケートをしてみたいと思います!

  • 深見優
  • 速瀬マハ
  • 雷文竜
  • 金谷秀征
  • 羽月翔子
  • 津田真理奈
  • 伊達小十郎
  • 鷹岡筋次
  • 言村香奈
  • 美作奏
  • 鏑木麗
  • 泊直哉
  • クレイグ・ホワイトバーチ
  • 靏蒔由衣
  • 大地真英
  • 木田結弦
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