ダンガンロンパシンフォニア〜ボクの愛と希望の法廷〜   作:パルティアン

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CHAPTER5 学級裁判 閉廷

これが最後だ。ここでとどめを刺してこの悲劇の全てに終止符を打つ。ボク自身の決着のためにも、そして優クンの弔いのためにも…!

 

 

 

クライマックス再現

 

ACT1

 

「今回のクロにはこれまでとは違う要素が1つある。それは黒幕の内通者であったことだ。」

 

「黒幕の力も存分に利用できるクロは自分の存在を仄めかす脅迫文とクロの名前を使って優クンを呼び出す手紙の2通を優クンに送り付けた。」

 

「脅迫文で対象を絞らない殺人を仄めかされた優クンはこの手紙に乗らざるを得なかった、という訳だね。」

 

 

ACT2

 

「実際にクロが犯行に及んだのは夜中のことだった。」

 

「ボク達が寄宿舎の個室で行っていたパジャマパーティーを抜け出したクロは隠し持っていたスタンガンと特殊警棒を使って優クンを気絶させたんだ。」

 

「犯人は気を失った優クンをホテル1階の女子トイレに運び込んでホースで拘束して一度放置した。」

 

「そしてその時優クンから電子しおりを奪ってジムの男子更衣室に犯行に使った道具を置いていったんだ。」

 

「その後何食わぬ顔でパーティーに戻ることで殺害やその偽装まで含んだ一連の犯行を自分には不可能だとボク達に誤認させたわけだね。」

 

 

ACT3

 

「クロが再び動き出したのはパーティーが終わり、ボク達のほとんどが既に寝静まったころだった。」

 

「クロは気絶した優クンの拘束を解いて、これまで優クンを縛り上げていたホースを使って今度は優クンを絞め殺したんだ。」

 

「しかもその時の殺害方法は少々特殊だ。首にかけたホースの両端を持ち、うつぶせの状態の優クンの頭を足を押さえつけながら引っ張り上げたんだ。」

 

「これは優クンの死んだ理由を他殺ではなく自殺に見せかけるための偽装だったわけだけど残念、医者のボクにはその不自然さは丸分かりさ。」

 

「実際優クンのオデコには強く抑えつけたせいでできたと思われる擦過傷も残っていたしね。」

 

 

ACT4

 

「その後クロは優クンをより自殺らしくみせるための細工を行った。」

 

「まずクロは優クンをエレベーターの中に放り投げたんだ。そしてその音を電子しおりの機能を使って録音した。」

 

「そして録音した音源をアラームに設定して7時に音が鳴るようにセットしてエレベーターのドアの付近に残したんだ。」

 

 

ACT5

 

「ここからクロはさらなる偽装を重ねた。」

 

「まずは殺害に使ったホースを切ってその端に切れ込みを入れて死体のそばに置いた。」

 

「その後ピアノ線、いや、この場合はバイオリンの弦、と言った方が正確だね、をエレベーターのワイヤーに輪っかになるように縛り付けてその輪を切っておいた。そしてその弦を通した状態でエレベーターの天井の扉を閉めた。」

 

「ここまでの一連の偽装を通してクロは優クンがホースの切れ端とピアノ線を使ってエレベーター内で首吊り自殺をしたと見せかけようとしたわけだ。」

 

 

ACT6

 

「仕上げにクロはホテルのレストランの前で待機してアラームの音が鳴るのを待った。」

 

「そして音が鳴ったタイミングでエレベーターへと向かい、死体の第一発見者となったわけだ。」

 

 

「ここまでの緻密な犯行、それを行うことができてかつ、それを行うメリットがある今回のクロにして黒幕の内通者。その正体は、木田結弦さん、キミなんだろう?」

 

 

 

「これが事件の真相さ。」

「……!」

 

結弦さんと視線がかち合う。彼女は憎悪のこもった視線でこちらをねめつけてくる。

 

「…反論は、ないでござるな?」

「投票に移るぞ。」

「もう何が何だかわけわかんねえけど、合ってんだもんな?」

 

色々と起こりすぎて既にみんな疲労困憊といった様子だ。全員言葉数も少ない。

早く投票を済ませてしまった方がいいだろう。

 

 

 

投票結果→キダユヅル

 

 

 

【学級裁判閉廷】

 

 

 

「投票も済んだところで結果を発表するぜ!5回目の投票、その結果は…!なんと!意外や意外!?まさかの!!!大!!正!!!かーい!!!そう、黒幕の指示のもとにこれまでの学級裁判で大活躍を見せていた深見優を殺害した犯人にして内通者の正体は!こちらも学級裁判でそれなりの貢献を見せていた木田結弦さんだったんだぜ!!!」

「クソが…!ずっとアタシらを騙してたってのかよ…!」

「有体に言えばそうなりますわね。そのつもりで最初から皆さんの中にいましたから。」

「最初から、ということはお前はもともと黒幕側の人間だ、ということか。」

「ええ、そうですわ。」

「いったい何のために?こんな大掛かりなことに付き合うことがキミにとってどんな意味を持つんだい?」

 

ボクが彼女の真意を問うた瞬間。

 

「意味?そんなものありませんわ。」

 

彼女はぐじゃりと笑った。

 

「………は?」

「だから、意味なんてありませんわ。だってわたくしは絶望的に無意味で無意義で無気力で、無価値な人間なのですから。」

「待つでござる!話が支離滅裂すぎて何が何だか…!」

「わたくし、バイオリンなんて大嫌いですのよ。音楽一家だからって無理やりやらされて、やらせてくれなんて一言も言ってないのにレッスンばかりで世の中のことなんて何も教えてもらえなくて。外に出たらわたくし、バイオリンが弾けること以外何もない空虚な存在で。」

「それがコロシアイと何の関係があるってんだよ!?」

「大いに関係ありますわ。だってそんな空っぽなわたくしにあの方は存在意義を与えてくれたのですから。」

「…あの方?」

「ああ、愛しの盾子さま…!」

「江ノ島盾子、か。」

「“超高校級の絶望”、でござるか…。まさか木田殿…!」

「ああ、きっと彼女は絶望の一派だ。確か超高校級の絶望は以前希望ヶ峰学園でこれと同様のコロシアイを起こしてる。」

「つまりこのコロシアイの背景にも超高校級の絶望がいる、という訳か。」

「うふふ、どうでしょうね?わたくしは少しでもあの方に近づきたかっただけ。少しでもあの方のお役に立ちたかっただけ。」

「江ノ島はすでにこの世におらぬでござろう?」

「天のあの方に喜んでいただくための努力ならいくらでもできますわ。」

「くそ!話にならねえじゃんか!」

「いや、今の一連の話で分かったことがあるよ。彼女は超高校級の絶望の一派で、既に死亡しているその首魁、江ノ島盾子のためにこのコロシアイのサポートをしている。」

「…だが深見を狙った理由は全く分からないな。」

「黒幕のサポートのため、だろうね。ここまで人数が減ってきたということは黒幕にとってどうあっても自然に自らの正体に着実に近づかれているということ。そこに“超高校級の探偵”である優クンが残り続けていたら?」

「きっと奴ならいつかその正体にたどり着いただろうな。」

「黒幕が何者で、超高校級の絶望との間にどんな関係があるのかは分からない。このコロシアイをボク達にさせている目的もね。だけど今その正体がバレたくないと思っていることは確かだね。」

「そんで邪魔になった優をこいつに殺させたってことかよ…!」

「おそらく、ね。それが彼女の言う“あの方に喜んでいただくための努力”ってやつだろう。」

「だが深見の肩書が分かっている以上放っておけば厄介になるのは目に見えていたはずだ。なぜ最初からコイツを動かさなかった?」

「恐らく想定外に早くことが動いたからだ。恐らく彼女の役目はボク達をコロシアイをさせる方向に誘導すること。その手段は問わず、ね。だけどその一番手っ取り早い手段は彼女自身が1回目のコロシアイを起こすことさ。事件が解決すれば残ったボク達にはどうあれ“殺人”という手段が脳裏にこびりつく。1回目の動機というトリガーをきっかけに彼女が最初のコロシアイを起こさせて、残ったボク達にドロドロのコロシアイをさせること、それが元来の彼女の目的だったはずさ。」

「…確かに何もなしに1回目の殺人を起こさせるのは一番骨が折れる。…それを自らの手の者にやらせてコロシアイを無理やり始める。…ありうる話だ。」

「だけど黒幕にとって想定外のスピードで泊クンが殺人に動いた。結果奏さんがクロになり、死んだ。それによって図らずもコロシアイが始まってしまった。」

「だから木田殿が動く場面がなくなってしまった、と。」

「そこで動いたのが今回のプランB。しっかり準備を整えて黒幕的に厄介そうな誰かの殺害に動いた。そのターゲットがここまでの4度の学級裁判で目立った活躍を見せた優クンだったわけだよ。」

「色々なリスクを天秤にかけて自らの正体がバレることを最も忌避したわけか。」

「そういうことさ。そうまでして黒幕の達成したい目的が何なのかはさっきも言った通り分からない。けれど黒幕が相当焦っていることは間違いないだろうね。」

「こんだけ大きく動いてきたんだもんな…。」

「きっとボク達は今黒幕の尻尾を掴みかけてる。今はどれだけ意味不明に聞こえようとも彼女から情報を引き出す必要が…」

 

「そこまでだぜ。」

 

「モノトラ…!」

「それをオレが黙って見過ごすとでも思ってんのか?」

「てめえっ!!」

「うふふ…。」

「それにしてもコイツのこの言いぶりでここまで推理してくるとは思わなかったぜ。意外と一番厄介だったのは深見に隠れて推理というもう1つの牙を隠してたオマエだったのかもしれねーな、津田真理奈。」

「お褒めに与り光栄だ。その栄誉に免じてもう少しだけ彼女と話をさせてもらえないかな?」

「いんや、そうはいかねー。オレの、黒幕の目的はまだ先にある。ここで終わるわけにはいかねーんでな。ここでコイツの口は塞がせてもらう。」

「それは残念。」

 

くそっ、黒幕の意思は変わらないか…!ここで少しでも情報を得て黒幕を倒すことに繋げたかったのに…。いや、そう考えているのが分かっているからこそここまで頑なだとも言えるかもしれない。

そして件の本人はまるで自分には関係ないとでも言わんばかりに穏やかに、而して狂気的な微笑みを浮かべている。

 

「じゃ、話はここまでだ。ここからはお楽しみの時間だぜ。そう、わっくわっくでどっきどっきの5度目のおしおきタイムだぜ!」

 

これ以上は残念だけどどうしようもない。今は黒幕の正体を追うための次なる手段を考えなければ…!

 

「それじゃ張り切っていくぜ!おしおきターーーーイム!!!」

 

当の結弦さん本人は自分が死ぬという段になっても様子を崩さない。

ああ、彼女は本当に根本的にボク達とは違う生き物なのだと思い知らされる。

でもやはり彼女に一言だけ聞いておきたい。

 

「結弦さん、キミはここまで一緒に過ごしてきたボク達のことをどう思っていたんだい?」

 

その瞬間、彼女の首に枷が噛みつく。

結弦さんはこれまで浮かべていた笑みをまるでスイッチを切ったかのように止めるとボクの問に対する答えを発した。

 

 

 

「なにも。」

 

 

 

その無機質で冷たくて、まるで金属製のデスマスクのような顔のまま結弦さんは鎖に引きずられていった。

 

 

 

 

キダさんがクロにきまりました。

おしおきをかいしします。

 

 

 

大きなホールの中、3つの明るい視線が木田結弦だけを見つめている。その視線に照らされて彼女はゆっくりとその手に持ったバイオリンを彼女の細い首筋にあてがった。

 

今から殺されんとする彼女のその姿はまるで辱めを受ける前に命を絶たんと短刀の刃筋を自らに向ける武家の姫のようでもある。

 

そしてそんな彼女の表情からは何も感じることはできない。そこに映されているのはただの虚無である。

 

 

超高校級のバイオリニスト・木田結弦のおしおき

《死線上のアリア》

 

 

彼女がゆっくりとその手に持った弓を弦に当てる。そして静寂から滑らかに移行するように曲を弾き始める。

 

曲の名はG線上のアリア。

 

画面越しから聞こえてくる穏やかな曲調とその美しい音色は今この時間が彼女の処刑の時間だということを忘れさせてしまう。

 

その感想を抱いたのはボクだけではなかったみたいで、周りで見ていた他のみんなも目を奪われ、息を飲んでいる。

 

しかしその夢は直ぐに醒まされる。

 

彼女の足元の床が開く。

 

轟音と振動を立てながら床板が離れていく。

 

床板の移動が止まり、再びバイオリンの音だけが流れるようになった時、その舞台の様子は先ほどまでとは一変していた。

 

彼女の足元に広がるのは4本のワイヤーとその下には底の見えない奈落の闇。正直なぜ彼女があそこにハイヒールで立ち続けられているのか分からない。彼女が立っているのはその一番端だ。

 

すると空から壁が降ってくる。

 

いや、壁じゃない。あれは、弓だ。

 

ゆっくりとライトに照らされるようになると降ってきたものに木のフレームがついているのがうっすらと分かるようになってきた。

 

それと同時に今彼女が立たされているワイヤーの正体もやっとわかった。

 

バイオリンだ。彼女は今バイオリンの弦の上に立たされている。

 

彼女の足元のワイヤーに壁が触れると壁はゆっくりと今度は前後に動き出す。

 

その動きに合わせて強烈な低音がボク達の鼓膜を襲う。

 

その音圧のせいでボク達は身じろぎ一つできない。画面の外にいるボク達ですらこうなのだ。その場にいる彼女はいかほどの圧を受けているのだろうか。

 

その答えは直ぐに明らかになる。

 

彼女の眼窩や鼻、口の端からスーッと赤い筋がこぼれ出す。

 

しかし彼女の表情は一切変わらない。顔色一つ変えることなく、彼女はバイオリンを弾き続ける。

 

やがて徐々にこぼれる血の量が増えてゆく。

 

恐らく立っているのも精いっぱいのはずなのに彼女はそれでも弾き続ける。

 

彼女の(おと)は既にこちらに聞こえてこないというのに。

 

そうこうしているうちに彼女の動きが止まる。それと同時に壁の動きも止まり、音圧の鎖からボク達も解放される。曲が終わったのだろうか。

 

ほっと一息ついた直後、画面の中の彼女の体がぐらりと傾いた。

 

ボク達が画面の前でアッと声を出した直後、何かが砕け散った音がスピーカーを通して裁判場に響き渡った。

 

 

 

「エクストリィーーーーーム!!!オマエラも叫びたかったら叫んでいいぜ。せっかく裏切者を殺せたんだ。気分爽快だろ?」

「んな気分になれっかよ…!」

 

正直裁判を生き残ったという安堵感や優クンの仇を取ったという達成感よりも今の数分間の間に目の前で起こった出来事に関する混乱の方が大きかった。連れて行かれる直前の彼女の狂気と虚無の表情。ボク達はこれまで幾度の学級裁判を乗り越えてお互いへの理解を深めてきたと思っていた。口幅ったい言い方をすれば絆を紡いできたとそう思っていた。いや、そう思い込んできた。でもそれをボク達はもう信じられない。

 

「ちぇっ、つまんねーの。じゃオレは明日以降のこともあるんで先に戻るぜ。」

 

そんなボク達の様子を見てモノトラは興が削がれたらしく鼻を鳴らしながら戻っていった。

その場に取り残されたボク達はただただ無言だった。

モノトラの言った通り、裏切者は死んだ。もうボク達の中の不安要素は何もないはずなのに、ボク達の距離は初めて会った時よりも遥かに遠くなってしまったように感じられた。

 

「……戻ろう。」

 

誰かが徐にこぼす。確かにここに残り続けても何にもならない。

それをわかっているからみんなは無言でエレベーターに乗って戻っていった。

当のボクはと言うと、ここから足を動かす気力すらなく、たった一人で証言台に立ち尽くしていた。

どれほど時間が経っただろうか。そろそろ戻らないと。

歩き出そうと思って顔を上げる。その先に目に入ったのは今回の学級裁判の中心となった人、これまでずっとボク達を助けてくれた人の遺影。

 

「…優クン…。」

 

ずっと実感が持てずにいた。あれだけ死体の捜査をしておいて、あれだけ事件の真相を暴くための裁判をしておいて。あれだけ、結弦さんのことを糾弾しておいて。でもすべてが終わった今、彼の遺影が目に入ると急に深見優という人間の死が、彼はもう存在しないという事実が、吸血鬼の心臓に打ち込まれる杭のように無理やりボクの心に実感としてねじ込まれた。するとそれに押し出されるようにボクの両の眼からは涙が流れてきた。

喉からはせき込むような音しか漏れ出てこない。

言葉と顔と心と、思い出せる限りの全てを思い返しながらボクは泣いた。そして気づいたころにはもうすでに夜の7時を回ろうとしていた。その頃にはもう涙も何もかも涸れ果て、逆に1つの決意だけが残っていた。

 

「ボクは必ず生きてここを出てみせるよ。だからキミも心だけでも一緒に来てくれると嬉しいな。」

 

それまではしばしお別れだ。ボクは勝利を掴むため、明日まさにその決戦の舞台となるその部屋を後にした。

 

 

CHAPTER5 悲愴と熱情、そして運命  END

TO BE CONTINUED…

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級のスナイパー       鏑木麗(カブラギレイ)

 

残り5人




だいぶまた間が空いてしまい申し訳ございませんでした。ですがこれにて5章が完結です。
そして次回からは第6章、つまり最後の戦いが始まっていきます。この物語もクライマックスに向かって突き進んでいきたいと思いますのでどうか見守っていただければ幸いです。
それではまた次回お会いしましょう!

前作の反省を生かして早々に推しのアンケートをしてみたいと思います!

  • 深見優
  • 速瀬マハ
  • 雷文竜
  • 金谷秀征
  • 羽月翔子
  • 津田真理奈
  • 伊達小十郎
  • 鷹岡筋次
  • 言村香奈
  • 美作奏
  • 鏑木麗
  • 泊直哉
  • クレイグ・ホワイトバーチ
  • 靏蒔由衣
  • 大地真英
  • 木田結弦
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