Red Flood × 宇宙世紀(仮)   作:うねる蛇

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正直予想できていませんでしたが、前回の話が(当社比で)意外にも好評だったので連載化して続きを載せておきます。
正直全くもって完結させられる気がしませんし、何よりお察しの通り不定期・亀投稿ですが、そんな拙作でももし面白いと思ってもらえたらぜひ高評価・お気に入り登録・感想などお願いします。

前置きはここまで。
それでは、引き続き本作『Red Flood × 宇宙世紀(仮)』をお楽しみください。


新しき世界への適応、そして再会

(ん…?ここは…)

 

ヨーゼフが再び目を覚ますと、彼はある女性に優しく抱きかかえられていた。

どうやら先ほどいた病院の廊下を歩いているらしく、側では新しい父親らしき男性が一緒に歩いて、ヨーゼフを抱き抱える新しい母親らしき人物と談笑している。

 

(…さっきのはやはり夢ではなかったようだな。まさか赤子として一から人生をやり直すことになるとは…まるで本で読んだ東洋の宗教の”リンネテンセイ”のようではないか…)

 

ヨーゼフは思わぬ展開の連続に、頭を抱えたい気分に襲われた。

最も、今生まれたばかりの赤子である彼はそれもできないのだが。

先ほど起きていた時も、混乱しすぎて思わず大声で泣いてしまったのだが、赤子になっていた彼が泣いてもあいにく普通のこととしか思われなかったらしい。

 

(まあ、何はともかく、この状況に適応していくしかあるまい…幸いにも、この二人が話している言葉はドイツ語だ。一からの言語の習得はしなくて済みそうだな…)

 

ヨーゼフは安堵したが、それは、束の間のものに過ぎなかった。

その安堵が吹き飛ばされたのは、病院から外に出た瞬間のことだった。

 

ヨーゼフは驚愕のあまり目を見開いた。

彼の頭は上空を向いているはずであったが、その上空に上下逆さまの街があった。

否、彼はおよそ円筒形の形をしている巨大な構造物の中におり、その内側の面に町ができていたのだ!

街のない部分からは星々が透けて見えていたのも、ゲッベルスの狼狽に拍車をかけた。

 

(な…なんだ、これは…!?もしや、ここは地球でないとでも言うのか…!?)

 

ヨーゼフは酷く動揺し、また泣き出してしまった。

後にヨーゼフも知ることになるのだが、彼が生まれたのは地球ではなく、宇宙に浮かぶ数多くのスペースコロニーの一つであった。

サイド2、通称ハッテ、コロニーパンチ名”アイランド・イフィッシュ”。

それがヨーゼフ・ゲッベルス改めヨーゼフ・グリゴーの新たな故郷であった。

 


 

時は経ち、宇宙世紀0041年。

ヨーゼフ・グリゴーは五歳となっており、現在他の子供達と共に公園で走り回って鬼ごっこで遊んでいた。

 

(ヨーゼフ・グリゴーとしての人生もなかなかに悪くないな…まさか健常者として、他の子供達とこうやって共に走れる日が来るとはな…)

 

他の子供達が鬼ごっこに夢中になる中、ヨーゼフは走りながらもそのように思考する。

前世──ヨーゼフ・ゲッベルスとしての人生──で、彼がこうやって他の子供と走り回ったりして外で遊ぶことはほとんどなかった。

かつて前世において四歳の頃に小児麻痺を患った彼は、それを治すための手術の後遺症として発育が著しく遅れ、結果的に左右の足の長さが異なる身体障害者となったためである。

それが原因で、生涯に渡って整形具に萎えた方の足を包んで、それを後ろに引きずるように歩くことしか知らなかった彼にとって、健常者の子供と同じように走り回ることは、とても斬新で楽しい体験だった。

そして、それは宇宙世紀のスペースコロニーという、基本的に英語が話される未知の環境に適応しなければならないという心理的負担を相殺して余りあるほど、彼のメンタルにとっては大きなプラスになっていた。

 

(今ならわかる、これぞ私の前世に足りなかったもの、五体満足の身体だ!)

(今思えば、前世に私が障害者になるように神が運命付けたのは、一種の試練だったのかもしれない…そのハンディキャップがありながらもドイツを社会主義と栄光に導いた私に、神は褒美として今世のこの健康体をくれたのかもしれないな…!)

 

かつて前世では自分を障害者にした神を憎んで無神論者となった彼も、こうして今世で五歳になる頃には──かつてDSRPを率いていた頃の教会へのお世辞などではなく──本当の意味で神に感謝するようになっていた。

 

余談だが、ヨーゼフはこのあと積極的に運動をするようになり、また学校でも前世の知力を発揮してすぐに英語を習得した上でメキメキと成績を上げていったため、文武両道な模範生徒として皆から頼られる人気者になった。

前世で学生時代に人に寄り付かれる経験がなかった彼は困惑したが、それでも彼にとっても悪い気分ではなかった。

その様子を授業参観で見たグリゴー夫婦はとても喜び、少し苦しい生活の中でも彼をいい学校に行かせるための資金を確保しようと決意したのだった。

 


 

宇宙世紀0043年。

この時ヨーゼフ・グリゴーは七歳の誕生日を迎え、ついさっき両親から誕生日プレゼントとしてもらった情報端末の電源を入れていた。

 

(やはりすごいなこの世界の技術水準は…私があの世界で見たコンピューターより遥かに優れた代物を、父さんのような質素な生活をしている一般人でも容易く手に入れられるのか…しかも今回もらったこれは設置型だが、持ち歩きできる物も中にはあるらしい…)

 

彼はそのように前世との技術水準の違いに改めて驚愕しつつも、早速この情報端末で一番に調べたかったことを調べ始める。

 

(ふむ…よし、コロニーネットに接続完了…ヒストリーデータベースに接続…なるほど、ここに文字を入力すれば結果が出てくるのか…)

 

彼は歴史好きの父親から、かつてヨーゼフ・ゲッベルスという人間が過去にこの世界に生きており、有名だったことを聞き出していた。

その”ゲッベルス”がどういうことをしたのかまでは”難しいだろうから、もう少し大人になったら説明してあげるよ”と言って教えてくれなかったものの、彼はそれを知ることを諦めはしなかった。

あいにくまだ七歳である彼は歴史のクラスを受けることができなかったため、別の方法でこの世界の歴史、およびこの世界での自分について調べることにした。

誕生日プレゼントは何が欲しいかと聞かれた時に、この情報端末を頼んだのはそのためだった。

 

彼は早速情報整理用のメモ帳代わりに買ってきた白紙のノートを用意し、端末の検索画面に”ヨーゼフ・ゲッベルス”と文字を辿々しく打ち込み、一呼吸して”enter”を押した。

 

彼は一番上に出てきた、ヨーゼフ・ゲッベルスについての解説ページへのリンクを押した。

 

(なるほど、この世界でもどうやら私はドイツに…ん?待て、NSDAP(ナチ党)?なんだそれは、この世界の私が所属しているのを見るに、DSRPのような政党なのか…?)

 

彼はまず党の方から調べ、その概要を通読した。

彼が最初こそ”この世界の私は一体どのような偉業を成し遂げたのだろうか”という期待を胸に読み始めたそれは、中を読み進めるたびに、彼に吐き気を催させた。

 

結局彼の調べ物は夜が明ける頃まで続いた。

メモ帳代わりに使ったノートはほぼ全てのページに文字がぎっちり詰まっていた。

その内容は今世と前世の歴史の分岐点らしき日露戦争での日本の勝利から、ドイツ革命の失敗、ロシア内戦での赤軍の勝利、ナチ党の概要、第二次世界大戦の顛末などなど、多岐に渡っていた。

 

(…どうやらこの世界の私は最低な人物だったようだな…どう性格が捻じ曲がったら計画的な民族の虐殺による浄化などという人間性に欠けたことができるんだ…?)

(しかもこの世界の私が支えていた男…アドルフ・ヒトラー…名字こそ違えど母親の名前から見ても間違いない、こいつは前世のオーストリアの総統(アドルフ・ペルツル)じゃないか…こいつは確か前世では民族の強制同化こそ強行したものの、ここまで過激で人間性に欠けた男ではなかったような気もするぞ…)

 

彼はそう考えた後、あまりの疲労に勉強机の隣にあるベッドに倒れ込んだ。

彼が夜通しで見たホロコーストなどのさまざまな惨い記録は、まだ幼い身体の彼を疲れさせるのには十分すぎた。

 

ちなみにこの数時間後に起こしにきた両親はヨーゼフの七歳児らしからぬ目の濃い隈に驚き、心配のあまり何かあったのかとヨーゼフを問い詰めた。

ヨーゼフはこの新しい両親のためにも、2度と許可を取らずに徹夜はしないと心に誓ったのであった。

 


 

さらに時は過ぎ、宇宙世紀0048年。

ヨーゼフ・グリゴーは十二歳となっていた。

この頃になると彼はすでに小学校を卒業し、今はサイド2の学園都市コロニー内で、中学校の校舎に向かって歩いているところだった。

もっとも、中学といっても6年制で、かつその上には大学しかないため、旧西暦の日本の基準ではどちらかというと中高一貫校のようなものではあるのだが。

 

(さて、今日からどのような子たちとクラスが一緒になるのか…少し緊張してきたな)

 

昨日は入学式のみで今日が初の授業日であるため、ヨーゼフは些か緊張していた。

やがて校舎に着いた彼は、前日に指定されていた教室…1年B組の教室にたどり着き、自由席だったので窓側の席に座った。

机の上には新品の教科書が何冊か置いてあり、ヨーゼフは先生が来る時間までの暇つぶしも兼ねて、早速それらのページをめくり始める。

 

右隣の椅子が動かされる音がする。

どうやら誰かが隣に座ったらしい、ヨーゼフがそう思い横を見た瞬間、彼の脳内に稲妻が走った。

隣に座っていた、そのメガネをかけた新入生の横顔には見覚えがあった。

否、()()()()()()()()()()()()()()

 

ヨーゼフ・グリゴーの脳内に溢れ出すは、かつてヨーゼフ・ゲッベルスだった頃の記憶。

政権を取る前は自身のDSRPと彼の率いるKPDの二党の連立について幾度も協議し、その甲斐あってかSPDの勝利という大半の予想を覆し連立して彼らが政権に就いた。

そしてやってきた第二次大戦の開戦後に、連立与党の指導者同士として二人三脚の如く駆け抜けた、泥臭くも祖国の勝利のため奮闘した日々。

思い描く夢こそ異なれど性格の相性がとても良く、戦後に共に政権を退いた後も、親交は続いていた。

時折家族を連れて互いの家を訪問し、思い出話に話を咲かせながら談笑し合うこともあった。

…年上であったため自分より先に大往生した、年老いた彼の遺体を火葬場まで見送ったあの日の記憶も。

 

もう二度と会えないと思っていた親友が、真横の席に座って教科書を興味深そうにめくっていた。

 

「…ラデックさん…?貴方なのか…?」

 

右隣に座った相手はその言葉にこっちを向く。

最初は困惑していた相手も、こちらの顔をまじまじと見た後驚愕した様子を見せて言葉を返した。

 

「同志ゲッベルス…君か!?」

 

かつて”赤き洪水”の世界のドイツでその名を馳せた二つの魂は、こうして再び宇宙世紀の世界で巡り合った。

それがこの宇宙に何をもたらすのか、まだ誰も知る由はなかった…。

 




RF側の登場人物解説:

『アドルフ・ペルツル』(史実名:アドルフ・ヒトラー)

みなさんご存知の総統閣下だが、RF世界では史実と違いがんを早期発見できた母親が生存してその性をとったり、ドイツに行かず祖国オーストリアに留まったなどのことが重なり、思想や性格などが史実よりもまあまあマシになった。
結果としてRFでは独裁とも民主とも言えない程度の政治体制を構築し、オーストリアを拠点に反共でドイツ再統一を掲げる右翼の政治家になった。
アーリア人とかのオカルト人種学説に被れておらず、チェコ人などの少数民族は”本当はドイツ人なのにスラヴ人と自分を勘違いしているので”浄化対象ではなく生かして同化する対象になっているあたり、かなり史実よりマシな民族・歴史観をしている。
ゲッベルスの前世では第二次世界大戦時にオーストリアを率いてゲッベルス率いる社会主義ドイツに宣戦布告するも返り討ちに遭い、ウィーンに迫るアカいドイツ軍相手に降伏した際に拳銃で自害している。
…なお、彼が今作で出てくるかどうかはまだわからない。

『カール・ラデック』

史実ではユダヤ系のポーランド人でありながらドイツとロシアの共産党の二足の草鞋を履いていた人物。
戦間期ドイツの共産化を促進するためにドイツ共産党に極右との統一戦線を組ませたが失敗して失脚、しばらくしてスターリンによってソ連の収容所に送られ、そこで他の囚人に殺された。

そんな彼だが、RF世界では大出世した。
RFでは1910年台にボリシェヴィキから追放されたレーニンが帝政ドイツに辿り着き、SPD(ドイツ社会民主党)に加わり、その過激化に貢献する。
しかしドイツ革命・ハンガリー革命の成功後にSPD指導陣とレーニンが対立、レーニン派がSPDを抜けてRF世界のKPD(ドイツ共産党)を作るのだが、RF本編でレーニンが死んだ際にプレイヤーの選択次第でラデックが二代目のKPD議長、つまりはレーニンの後継者になれる。
前世ではラデックは自身の率いるKPDをゲッベルス率いるDSRP(ドイツ社会共和党)と連立させ、見事に連立与党の座に導いた。
その後フランスやイタリア、オーストリアとの間に勃発した第二次大戦においてもゲッベルス政権に全面協力して、共に二人三脚で駆け抜けた。
ゲッベルスとは仲が良く、共に政権の座を退いた後も長い間親交があった。
最終的に年上のラデックはゲッベルスよりも一足先に大往生したが、その葬式の形式は無神論者らしく質素な火葬であった。
…その後、どういう訳か宇宙世紀に転生を果たし、ヨーゼフの同級生として中学校の初めての授業で彼と再会を果たすこととなる。
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