第一話、命が惜しくば自分より強い女と酒は飲むな
かぶき町。
妖怪も幽霊も人外も人間も、全てを受け入れる町、かぶき町。
この街では様々な事件、事故、異変が起こる。だが、それでも笑顔や殴り合いの絶えない賑やかで楽しい歌舞伎町。
大抵の事は笑ってどうにかなるこの街で、ある男が実に笑えない状況に陥っていた。
その男こそ、金さえ払えば何でもする何でも屋、万事屋オーナー坂田銀時
「··········」
目が覚めると、見覚えのない部屋で、キングサイズベットで寝ていた。
全裸で。
しかも、左側には身に覚えのない膨らみがあった。
「いや、いやいやいや」
銀時は必死に現実を否定した。
なぜなら、昨日の記憶が一切存在していないからである。恐らく昨夜、萃香と呼ばれる合法ロリの鬼と一緒に宴会を開き、そこで盛大に酒を飲んで暴れた所までは記憶あるのだが、そこから先の記憶が一切存在していない。
思い出そうとしても、二日酔いのせいか、頭に激痛が響く。
「う、嘘だろ?いや、もしかしたら実は少し大きめな人形だったり───」
銀時はひと握りの希望を抱き、布団をめくる。
そこには、金髪に、腰に色とりどりの宝石のに輝く結晶と、棒のような翼を生やした、小さな少女。
正確にはこの見た目に似つかわしくない495年の時を生きる吸血鬼にして、紅魔館と呼ばれる屋敷の女主人、レミリア・スカーレットの妹であるフランドール・スカーレットであった。
「ん、ふぁ··········あれ、もう朝··········?」
小さな欠伸をしながら、目を擦り、部屋の蛍光灯の眩い光に目を細めながら、見覚えのない自信のいる場所をキョロキョロ見渡しながら今の状況を確認する。
すると、バチリと目の前にいる天然パーマの男としっかりと目があった。
「あ、チェンジで」
「きゅっとしてドカーン」
次の瞬間、ホテルの一室が爆発した。
【第一幕】
◐第一話、命が惜しくば自分より強い女と酒は飲むな◑
あ·····ありのまま今起こってることを話すぜ!
俺は今朝起きたら目の前に裸のフランがいて、昨日の事が全く思い出せねぇ。
な·····何を言っているか分からねぇと思うが、俺も何を言ってるか分からねぇ!
作者の妄想や性癖だとかそんなチャチなもんじゃぁ断じてねぇ!
これじゃぁ他作品でお馴染みのロリコン銀さんじゃねええぇぇかあああぁぁッ!!!
ふざけんじゃねぇぞおおおおぉぉぉッ!?pixivで好き勝手R-18書いてるからって俺を巻き込んでんじゃねぇぞおおおぉぉ!
最近タグ関連で作品1つ非表示にさせといてまだ懲りてねぇのかよ!?
これじゃぁこの作品まで全年齢作品なのにR-18認定されて公式にまたお叱り受けることになっちまうだろうが!
「あ、あのさ、銀時は昨日の事覚えてるの?」
そしてなんでお前は顔を赤らめてモジモジしてんだよ!?
普段の狂気に満ちたメスガキフランちゃんはどうしちゃったの!?普段は人間の四肢を爆散させて「芋虫みた〜い」て狂気の笑みを浮かべながら地べたに転がして笑ってる癖になんでしおらしくなってんだよ!?
「い、いやさ、俺実は昨日の事全く思い出せなくて〜··········な、なんかすまん」
何謝ってんだよ気持ちわりぃ!
そもそもまだ何かあったとは限らな···············
「····················ぇ」
すると、フランからまるで今から死刑宣告を受けた囚人のように絶望した表情に変わり、今にも溢れてきそうなほど赤い瞳に涙が溜まっていた。
「な、なーんて嘘だぜ!やーわりぃわりぃさっき思い出したわ!」
「···············そっか、良かった」
昨日の俺は何をしたんだあああぁぁぁッ!?
「えっとね、銀時はなんだかんだ私と遊んでくれるし、お姉様と仲直り出来たのも銀時が私を地下から連れ出してくれたおかげだし、神楽ちゃんやこいしちゃんと友達にもなれて··········私、銀時にいっぱい助けてもらったから···············」
───だから、私··········銀時ならいいよ
そう言ってフランは後ろを向いて飛んで行ってしまった。
§
銀時は走っていた。
全力で走っていた。
歌舞伎町最速と豪語する文や魔理沙など簡単に追い抜かしてしまうのでは無いかと言うくらいものすごい速さで走っていた。
今すぐ逃げ出したい。
このこの世界から、作品から、なんでもいいからこの現実から。
「オロロロロロロロッ」
しかし、未だ二日酔いが冷めず、突然身体を動かしすぎたせいで胃のものを全てリバースしてしまった。
───私··········銀時ならいいよ
全てだし終わり、胃の中がスッキリした後、先程の事を思い返す。
酒に酔っていたとはいえ、よりによってフランに手を出してしまった。
フランはレミリアのたった一人の血の繋がった姉妹であり、レミリアに「フランの事、頼んだわよ」と任せられており、そんな大事な妹に手を出したとあれば、紅魔館の奴らがバーサーカーと化して確実に自分を殺しにくる。
確実に血祭りにあげに来る。
「何やってんだよ銀時」
「よぉもこたん。もこたんこそここで何やってんだよ」
「次もこたん言ったらはったおすぞ」
すると、白髪のロングに、沢山の赤いリボンを着け、赤いズボンに白いワイシャツを着た、普段は山で山菜作ってるごく普通の不老不死の少女、藤原妹紅が近寄ってきて背中をさする。
「相変わらず酒弱いのによく飲むな」
「るっせぇ、不老不死は二日酔いにならねぇのかよオロロロロロロロっ!」
「お前が酒に弱すぎんだよ」
なんだかんだ妹紅と銀時の付き合いは長い。
何せまだ銀時が松陽に拾われた頃からの付き合いだ。なんだかんだ妹紅も面倒見が良く、何度か万事屋に来ては山で育てた山菜を持ってきては飯を作ってやっている。
銀時と神楽が3食全て卵かけご飯で一週間過ごしていると知った時はドン引きしていた。
「全く、そんなんじゃ私と昨日の夜の事、すっかり忘れてそうだな」
「·························は?」
「なんだ、本当に忘れちまったのか?」
銀時はバッと目をかっぴらき、目の前の妹紅を凝視しながら、まるで理解できない、理解したくない言葉が飛び出してきた。
身体から大量の冷や汗が垂れ流れる。
「昨日の夜、ベットの上で散々私を泣かせたくせに」
にっこりと、優しい笑みでこちらを見つめる妹紅。
だがかえってこの優しそうな笑みが怖い。ひたすらに不気味で怖い。
というか殺気がダダ漏れである。完全に殺す1歩手前だ。
銀時はこの笑顔をよく知っている。女が怒りや、爆発寸前の感情を隠す時の笑顔だ。
今から発する言葉の一文字一句間違えてはならない。
言葉を少し間違えれば、おそらくその瞬間、自分は確実に灰にされる。
「い、いやー!覚えてるに決まってるじゃねぇか!何言ってんだよ、忘れるわけねぇーだろ!」
「なーんだ、ちゃんと覚えてんじゃねーか!」
そう言ってバシバシと銀時の背中を叩く妹紅。
「お、オイッ、ちょっと待て··········そんなに叩かれたらオロロロロロロロッ!」
「あ、すまん」
再びリバース
§
「酒もいいが、あんまり飲みすぎんなよー。お前は不死じゃないんだから、身体は大事にしろよな」
「お、おう··········」
昨日の事が全く思い出せないまま、妹紅と別れる銀時。
その足取りは重く、時間が経つ事に、地獄への片道切符が切られて行った。
全く思い出せない。
どうしよう、マジで洒落にならなくなってきた。
て言うかこんなこと前にもなかったけ?まさかまたアイツらが俺の事はめようとしてんのか?
酒を飲ませない為にまたドッキリ仕込んでんのか?
「そ、そーだよな!これもあれも新八の仕組んだドッキリだよな!そうに決まってるよな!」
「こんなとこで叫んで何やってるの」
「うおぉッ!?」
すると足元で丸くなりながら地面にダンボールを敷き、青く伸びっぱなしになったボサボサの髪に、大きな青いリボンを頭に着け、ボロボロのパーカーに青いスカート。
衣服やリボンには多くの「請求書」「差し押さえ」「督促状」と言った書類が大量に貼られており、脇にはボロボロの猫のような何かのボロ人形に、目の前には物乞い用のボロお椀が置かれている。
瞳は完全に生気を失っており、この世の負の感情を全て煮込んで天日干しにしたあと更に夜の不浄と悪意を煮つめて出汁を取ったようなジト目とオーラを放っている。
彼女こそこのかぶき町一の嫌われ者、依神紫苑。
彼女がこのかぶき町で嫌われている理由は幾つかあるが、主な理由が【天界の
しかし、人間にも妖怪にも神にさえ嫌われる決定的な理由はその能力にある。
話は変わるが、彼女はある種の神である。
神は人の想い、信仰などによって初めて生を成す。
だが中には信仰や想いなどではなく、忌み嫌われ、人々に厄災をもたらすと言われ、忌み嫌う負の感情によって生まれる神がいる。
そして依神紫苑、彼女もその例に漏れず、人に忌み嫌われ、忌み物として人々に害をなすとして生まれた神である
貧乏神。
幸福を奪い、不幸にする。
単純故に嫌われる。
そして彼女の能力は『自分も含めて不運にする程度の能力 』。
無意識に人の幸福を奪い、不幸にする能力。
貧乏神らしい能力と言えばそうだろう。
故に彼女に好き好んで近く者などな、類稀な幸運の持ち主である比那名居天子や、一部の不幸を跳ね除ける者以外はまず近こうとしない。
だが、この男坂田銀時はこの能力が"ほとんど"効かない。
なぜならこの男はこれ以上不幸になれないからである。
不幸を跳ね除けるとか、類稀ない幸運の持ち主とか、そんなんじゃない。
これ以上不幸になれないのである。
もう一度言おう、これ以上不幸になれないのであ。
「お前またこんな所で物乞いしてんのかよ」
「別にいいでしょ。それよりなにか食べ物ないの」
「酢昆布ならあんぞ」
「それよをよこしなさい」
「嫌だね。これは俺の酢昆布だ、俺が神楽から命懸けで奪った酢昆布だ」
「こっちは一ヶ月雑草しか食べてないのよ。早くその御馳走を私によこしなさい」
「だからやらねーって」
「いいからその酢昆布よこせ!」
「うわっ!?テメェこの野郎!!」
すると紫苑は酢昆布を求めて銀時に襲いかかる。
なんだかんだこの二人は気が合う。宴会でもあまり招待されない紫苑を好き好んで自分から宴会に呼び、一緒に酒を飲んだり食ったりをしている。
貧乏者&不幸者同士気が合うのだろう。
そこで紫苑がとんでもない爆弾を落とした。
「なんでよ!私の身体使ったんだからご馳走くらいくれたっていいでしょ!」
「は?」
「て言うか責任取りなさいよ!私の初めて奪ったんだから責任取って美味いものご馳走しなさいよ!!」
「···············」
§
「え、っと··········どういう風の吹き回し?て言うか本当に食べていいの?私本当にお金ないわよ?本当にいいの?」
「あぁ、その変わり昨日の宴会で何があったか教えてくれ」
「ゆ、夢にまで見たお菓子··········いただきます!」
そう言って紫苑は泣きながらパフェを食べる。
口の中で甘く冷たいソフトクリームの甘味が舌の中で転がせば溶けてなくなる。
冷たい氷菓子の甘さに浸りながら、再びスプーンでソフトクリームをすくい、口に運ぶ。
「く、口の中で溶けたわ!この白いの、口の中でふわってしたと思ったら甘いのが口いっぱいに広がって溶けたわ!すごい!こんな甘いもの初めてだわ!」
ヤバい、涙が出そう。
元々不幸な奴だと思っていたが、ここまで酷いと涙が出てくる。
そもそもソフトクリームを知らないって普段何食ってんだよこいつ。
「それは良いが昨日の宴会で何あったか教えてくれよ」
「昨日の宴会?たしか昨日は───」
アンタが突然私の所に来た時にはだいぶ酔ってたわね。
私を無理矢理博麗神社に連れてって飲んだわね。その時は霊夢が悪酔いしちゃって、その時は銀時が寝かしつけて来るって言って20分くらい神社の奥に行ったと思ったら随分スッキリして帰ってきたわね。
その後は紅魔館でレミリア達と飲みに行ったわ。
その時は速攻でレミリアが酔いつぶれて寝室に連れて行くって言って20分くらいしてから随分スッキリして帰ってきたわね。
その後は私も眠くなって帰ろうとした時、アンタがわざわざ私を家まで連れてって、そのまま家で····················。
「お、おい、家で何したんだ?俺はお前に何をしたんだ!?」
「···············ふーん、覚えてないんだ」
「うっ」
紫苑がスプーンをくわえながらこちらをジト目で見つめてくる。
「別にいいわよ。こんな小汚い娘とヤッたことなんて早く忘れたいでしょうし」
「そ、そんな事ねぇよ!お、俺だって男だし責任くらい···············」
「他の女はどうするの?聞いた話だと他にも妹紅やレミリアの妹にも手を出したみたいじゃない」
「そ、それは何とかするよ!」
「···············こんな貧乏神なんて居ても迷惑でしょう。無理しなくていいわよ」
「だ、だから無理してねぇよ!」
「·························本当、アンタって物好きね」
§
「····················これってドッキリなんだよな?」
つい勢いで責任を取るとは言ったものの、紫苑に酔った勢いで手を出したなんてあのシスコンの女苑に知られたら末代まで確実に祟られる。
金どころか命まで取らる。
と言うか俺、フランだけじゃなくてレミリアにまで手を出してたのかよおおおおッ!!
まじで昨日の俺どんだけやらかしてんの!?
「と、とりあえず確認だ!もしかしたら実は覚えてませーんてなってるかもしれねぇ」
そう言って銀時は確認のため急いで博麗神社に向かった。
「昨日ぶりね銀時」
「は、はい、霊夢さん」
「何でさんずけなのよ、気持ち悪い」
き、気まずい。
霊夢に会いに来たは良いけど、いきなり『昨日俺お前とヤッちゃった?』なんて聞けるわけねぇよ!
どうすればいいんだよ!なんて確認すればいいんだよ!
霊夢もなんで今日に限って何時もみたいに賽銭もしてねぇのにお茶なんて出すんだよ!何時もなら『金がないなら出ていけ』とか言わねーんだよ!?何時もなら賽銭しなかったらとっとと追い出してたじゃねぇか。どういう風の吹き回しだよ!?
「あぁ、それと"これ"」
「ん?これって···············」
婚姻届
「········································」
銀時は一瞬で悟った。
(完全に昨日の俺やらかしてるううううぅぅッ!)
「男なら責任取りなさい」
婚姻届には既に博麗霊夢の名前が書かれており、後は銀時の名前を書いて役所に出すだけの状態だった。
なぜ霊夢が婚姻届を持っているとか、そんな疑問などどうでもいい、今すぐこの場から逃げ出したい。
しかし、逃げ出す素振りを見せれば確実に血祭りにされる。
「け、結婚は早いんじゃないかなぁ。まずはお付き合いから···············」
「お腹の子、どうすんの?」
「···············」
部屋の温度が急に下がった気がした。
お腹の子。
つまり、そういう事だ。
「····················で、どうすんの?」
に、逃げ場がない。
「明日」
「はへぇ?」
「明日までにこれ書いといてね。私は今日の晩御飯探してくるから」
そう言って霊夢は部屋を出た。
§
「レミリアさまああああぉぁぁッ!自称かりちゅま(笑)のレミリアさまああああぉぁぁ!!おねげぇでございます!助けてください!どうかこの門を開けてくださいィィィィィ!!」
「ちょ、銀さん!?突然どうしたんですか!?」
突然紅魔館に来たと思ったら紅魔館の門を全力で叩きまくる銀時に美鈴は困惑していた。
「頼むからもんを開けオロロロロロロロッ!」
「ちょっとおおおおおぉぉぉぉッ!?これ咲夜さんに私が怒られるんですけど!どうしてくれるんですか!?」
すると、ギイィと紅魔館の門が開く。
門が開くと、入口で紅魔館のメイドである咲夜がたっていた。
「お待ちしておりました、銀時様。お嬢様が奥でお待ちです」
「は、はひぃ」
「美鈴」
「ハイィ!」
美鈴は名前を呼ばれ、身体の芯まで刻み込まれた恐怖でビシィッと敬礼をした。
「次私が来るまでに綺麗になってなかったら、分かるわよね」
「イエッサーボスッ!」
「それでは銀時様、奥へ」
そう言われ、銀時は咲夜の後ろを歩く。
相変わらずだだっ広い紅魔館の内部。一人では確実に迷ってしまいそうなほど入り組んだ道や、数多くの部屋。
中では昼寝していたり、遊んでいるメイドの妖精達が居るが、昨夜の姿を目にした瞬間一斉に敬礼して「ボスッ!」と呼んでいた。
完全にこのメイドがこの紅魔館の主のような立ち位置である。
しっかりと調教されたメイド立ちを他所に、奥へ奥へ進んでいくと、レミリアの寝室と思われる場所に辿り着く。
「さぁ銀時様、中へ」
「···············」
全身が何故か恐怖でガタガタと震えている。
すると、銀時が扉に手をかけると、咲夜が耳元で
「お嬢様を泣かせたら、ぶち殺しますからね」
と、優しく囁いた。
その瞳は何処までも冷たく、捕食者の目をしていた。
まるで背中に氷柱をぶっ刺されたような悪寒が背筋をなぞった。
気がつけばそこに咲夜の姿はなく、どこかへ消えていた。
代わりに、部屋の奥には妖艶に微笑見ながら、足を組んでベットに腰かける少女が居た。
「あら銀時、来るのが遅いんじゃない?」
そこに居るのは、何時も皆からかりちゅま(笑)と呼ばれて馬鹿にされている幼女吸血鬼ではなく、人間の血を飲む妖怪、500年の時を生きる伝説のヴァンパイアとしてのレミリアの姿であった。
「ねぇ銀時、突然だけど生き物はね、強くなればなるほど子孫を残しずらくなる」
レミリアはゆったりとした動きで立ち上がり、一歩、また一歩とこちらに歩み寄ってくる。
その妖艶な笑みはどこまでも美しく、そこが見えない。
その紅く輝く瞳に全て吸い込まれそうだった。
「妖怪、神、私達の様な吸血鬼も例に漏れず子を成すことが難しい」
気がつけばレミリアの冷たく小さな手が銀時の首を撫でていた。
「だからね、吸血鬼は他の種族、特に自分達に似た人間を吸血鬼にする事で同族を増やすの」
ゆっくりとレミリアの鋭い爪が銀魂の大動脈をなぞり、ガパリと口を開ければ、異様に発達した犬歯が口から覗かせる。
「そして、吸血鬼の結婚の儀はお互いの血を全て飲み干し、その血をお互いに交換するの。そうする事でお互いの魂を繋ぎ、永遠に離れることの出来ない、呪いの様なものを残す」
ゆっくりと、ゆっくりと銀時の首にレミリアの口が近づく。
「ねぇ銀時、貴方は私と同じ吸血鬼になる覚悟があるのよね?でなきゃ───」
───私の純血を奪うわけないもの
「うおおおおおおォォォォッ!」
すると銀時はレミリアの部屋の窓を突き破り、そのまま地上に着地すると、そのまま全力疾走で逃げ出した。
そして部屋に残されたレミリアはと言うと。
「···············ふぇ?」
結婚の儀から銀時は逃げ出した。
その事が何を意味するか、レミリアは頭で必死に理解しようとする。
そして理解した時、自分は銀時にフラれたのだと理解した。
ちなみに余談だが、彼女は恋愛漫画のキスシーンを見るだけで赤面してしまう程うぶであり、そんな彼女が結婚の儀までに覚悟を決めるまで役5時間費やした。
風呂に入り、髪を整え、部屋が汚くないか三回ほどチェックし、咲夜に不慣れな化粧まで教えてもらい、銀時が来た時も心臓が弾けてしまうのではないかと思うくらい脈動していた。
今すぐ逃げ出したい。恥ずかしさのあまり直ぐにこの場所から走って逃げ出したい。
そんな想いを必死に押え、後ほんと少し、ほんの少しだけ頑張れば結婚の儀が終わるという直後銀時は逃げ出してしまったのだ。
その結果レミリアは
「ふえええぇぇぇ!さくやぁぁぁぁぁッ!」
カリスマブレイクした。
その頃銀時は
「うおおおおおおォォォォ!!」
嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だァ!
銀さんは信じない、信じないからなぁ!
きっと何かの間違いに決まってる!こんなの絶対作者の妄想だ!こんなこと現実であってたまるかぁ!
きっとドッキリに決まってる!
だって銀さんハーレム系恋愛漫画の主人公じゃないもん!ギャグ漫画主人公だもん!
こんなの絶対おかしいって!ジャンル変わってんじゃん!
そう言ってあと一歩で紅魔館の外へ出れる距離まで来た直後
ドスッ
足元に見覚えのあるナイフが刺さる。
銀時はその場で止まり、ギギギッと壊れた機械のように首を動かしながら、後ろを振り向けば、恐ろしい笑顔をうかべ、こちらにゆっくりと歩いてくるメイドが居た
「言いましたよね、私。お嬢様を泣かせたらぶち殺すって」
「い、いや、あのね、銀さんまだ覚悟というか、まだ人間を捨てる覚悟ができてないって言うかぁ……··········」
すると咲夜は両手からナイフをカードのように大量に取り出すと
「小便は済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタふるえて命乞いする心の準備はOK?」
「の、ノー···············」
そして無慈悲にも、数多のナイフが銀時の脳天を貫いた。
「ぎゃああああああああァァァァッ!!!」
紅魔館に銀時の断末魔だけが響いた。
可哀想は可愛い。