「新八ィィィィィィッ!!!」
「あれ、銀さんどうしたんですか?そんな大声出して··········てどうしたんてますかその傷!?」
銀時が万事屋の戻ると、身体中頭の先からケツの穴まで刺されまくり、全身からとめどなく血を流し続ける銀時の姿に、新八は驚いた。
それ以上に驚いたのが、銀時が今まで見たなによりも美しいスライディング土下座を披露したことに、更に驚いた。
「すみませんでしたァ!俺後悪かった!」
「ど、どうしたんですか!?」
「もう酒は止める!二度と呑まねぇ!閻魔にでも神にでもなんでも誓う!なんなら300円あげるからァ!!だから許してェェェェェェェッ!!」
「えっと、別に僕はそこまで怒ってませんよ?」
「本当か!?本当なんだな!?許してくれるのか!?」
「許すも何も、僕は元々そこまで怒ってませんよ」
「あ、あぁ、ありがとうございます、ありがとうございます」
「ちょ、本当に大丈夫ですか、銀さん」
「俺はもう助からねぇと思ってた。でも良かった、これが現実じゃなくてドッキリで本当に良かった」
銀時は涙を流しながら、新八の両手を握り、もう二度と酒は飲まないと心の決めた、その瞬間だった。
「ドッキリってなんの事ですか?」
「·························」
銀時は無言のまま新八を見つめた。
新八は未だ何を言っているのか、話が見えていないのか、頭の上にはてなマークを浮かべていた。
たっぷり30秒程見つめた後、すっと立ち上がり、全ての怒りと悲しみと現実逃避を拳に乗せて、新八の顔面を思いっきり殴り飛ばした。
「ぐべぇ!?」
新八はそのまま奥に飛ばされ、襖を突破って部屋の向こうまで吹き飛ばされた。
「ちょっ、なにすんだてめええぇぇぇぇ!?!?」
新八は殴られた頬を抑えながら、銀時の突然の行為に未だ頭が追いついていない。
しかし銀時はそんな新八を無視して両手で首根っこを掴み無理矢理立たせる。
「じゃ、じゃぁあれか?これはドッキリでも俺を反省させる為の作戦とかではなく、銀さんがガチでやらかしちまったって事か?」
「だ、だから何の話を····················」
ピンポーン
新八の声を遮るようにインターホンが鳴った。
玄関の扉に写るシルエットは木の枝に7色に光る宝石を吊り下げたような翼が特徴的な小さな少女。
見間違うはずもなく、ここからでも分かる。
フランドール・スカーレットである。
「銀時ー?居ないのー?」
ピンポンピンポンピンピンピンポーン
第一幕
◐第二話、夢と現実は紙一重◑
やばい。非常にヤバい。
もしもこれが本当にドッキリとか俺を反省させる為の罠でないのなら、銀時は確実に殺される。
この世界の女はハッキリ言って化け物だ。
しかもそんな化け物を五人も手を出してしまった。地の果てまで逃げるしかない。
もう他の作品に逃げる以外銀さんが助かる道など残されていない。
今すぐここから逃げるか、それともフランに何か言い訳して帰ってもらうか。
だが帰ってもらった所で自分はレミリアにまで手を出してしまっている。
バレるのは時間の問題。ならばやはりここは居留守を使い、どうにかやり過ごし、居なくなってから逃げるべきか。
そんな普段使わない腐った脳みそをフル回転させ、どうのかして解決策を探す。
「銀さん、フランちゃんが呼んでますよ。でなくていいんですか?」
「い、いいんだよ!だから今は黙っとけ!絶対に気づかれるんじゃねぇぞ!気づかれたら新八脊髄剣にされると思え!」
「いやなんで僕!?」
すると、玄関から別の声が聞こえた。
「あらフラン、こんな所で何してるの?」
(一番来てほしくない奴が来ちまったああああァァァァ!!)
「あ、お姉様。お姉様こそどうしたの?」
「実は銀時に用があってね。フランこそなんでここに?」
「え?私もちょうど銀時に用があって来たの」
「···············奇遇ね」
オイオイ、なんかレミリアが怪しんでるぞ。まさか感ずかれたのか?どうする?銀さんどうすればいいんだ!?
頼むから誰か助けてくれぇ!300円あげるからァ!!
「実はお姉様、私結婚するの」
「!?ふ、フランが··········け、けけけけ、結婚!?一体どこの馬の骨と!?早く教えなさい!四肢を引き裂いて死にたいと願っても死ねない程痛めつけて永遠に自分が産まれてきたことを後悔させてやらないとッ!」
「お、お姉様!そんな事したらいくらお姉様でも許さないからね!」
「ふ、フランが結婚··········私の可愛い可愛いフランが····················そ、そんな····················」
あまりの驚きに、レミリアは意識を朦朧とさせる。
有り得ない有り得ないと、なのやらブツブツと呟きながら、フランの嬉しそうな顔を見る。
自分にも、めったの見せたことの無い嬉しそうな顔。
今までその強大すぎるが故の力を封印する為に、フランが胸を張って生きていける世界を作るまで、自分と手を繋いで外を歩ける世界を作るまで、地下でフランの存在を封印し続け、結局そんな世界は作れなかった。
だって元々、フランは胸を張って外を歩いてもいいのだから。
そんな世界、元々要らなかったのだから。
それに気がつくまで、495年間も地下で独りぼっちにさせてしまった。
そんなフランがたった数年でここまで幸せになってくれた。
しかもあろう事かフィアンセまで···············。
これは姉として喜ぶべきなのだろうか。
それとも私の大切な可愛いフランを誑かした外道を去勢するべきか迷っている中、1つの疑問が浮かんだ。
「··········そのフィアンセは誰なの?私の知っている奴かしら」
「うん、お姉様もよく知ってるお侍さんだよ!」
「···············他に特徴とかないの?」
「えっとね、とっても強いわ!」
「うーん····················髪の色とかは?」
「髪の色はぎん··········」
「よぉ前ら、姉妹揃って俺に用か!?」
すると、フランの言葉を遮るように、玄関の扉を開けて銀時の声が邪魔をした。
「あ、銀時」
「···············えぇ、大事な大事な用があるわ」
人を殺せるのではないかと思うくらい怒りを込めた笑顔を作るまレミリア。
確実に逃げ出したことをキレている。
もしも一歩間違えたらこの鬼畜吸血鬼姉妹に確実に血祭りにされる。ハッキリ言ってこの姉妹二人を相手にして逃げ切る自信はない。どうにかして気づかれる前にどちらか一人、もしくは二人ともなの事もなく帰ってもらわねば。
しかしどうって···············。
そんな事を考えながら二人は靴を脱ぎ部屋の上がる。
「····················」
「····················」
(なんか喋れよォォォォォォッ!)
銀時の後ろを無言で着いてくる二人。
そんな2人の沈黙と視線が物凄く痛い。
「そ、そう言えばお前ら二人だけか?咲夜はどうした?」
「連れてきましょうか?命の保証はしないわよ」
「遠慮しときます」
だいたい察した。
恐らくまだ俺の事を殺そうとしているのだろう。あんなバーサーカー状態では話の邪魔になると思い置いてきたのだろう。
「レミリアちゃんが万事屋に来るなんて珍しいね」
「眼鏡ごときがちゃんずけするな。新八脊髄剣にするわよ」
「だからなんで脊髄剣!?」
「お姉様、メガネに脊髄は無いよ?」
「あら、そうだったわ」
「んなわけねぇだろッ!いつまでお前ら本体がメガネだと思ってんだ!?いい加減にしろぉ!」
「あら、いつからメガネかけが本体だと錯覚していたのかしら」
「かわいそう····················」
フランが心底憐れむような同情の目でこちらを見てくる。
この場合のこの行為は可哀想だとか、哀れみの目では無い、完全に煽り散らかしているのである。
「よぉし、お前ら二人揃って表出ろ。外でたっぷり日光浴させてやるよ」
「まあまあ落ち着けよ新八。事実だろ」
「なんだとてめぇゴラァ!」
「さて銀時、本題よ」
「····················えーっとなんかしましたっけ、俺」
「吸血鬼になってスカーレットの血を受け入れるか、咲夜に殺されるか、選びなさい」
「え、お姉様····················?」
「あら、フランには言ってなかったわね。銀時はこれから吸血鬼になって家族になってもらうのよ」
「それじゃぁお姉様は私の結婚を許してくれるの?」
「····················吸血鬼にするのは銀時よ?」
フランの問いにレミリアは首を傾げた。
何かフランは勘違いをしているらしい。あくまで銀時を吸血鬼にするのは自分と銀時が結婚するためであり、フランが結婚する訳では無い。
「うん!私知ってるよ。人間と結婚する時の吸血鬼の結婚の儀は、人間の血を吸血鬼が全部飲み干して、その後に自分の血を与えるのよね!」
「ええ、そうよ。···············ん?それとフランの結婚になんの繋がりが····················?」
やはり理解が追いつかない。
フランが何を言いたいのか、全く見えてこない。
「だって私、銀時と───」
「うおおおおおおォォォォ!!」
次の瞬間、銀時はフランを抱えて万事屋の窓を突き破って飛び出した。
ちなみにその間銀時は上着を脱ぎ、フランを上着でぐるぐる巻きにして太陽の光が当たらないようにしている。(その間0.2秒)
「え、ちょっ、銀時!フラン!?」
「銀さん!?」
突然の銀時の行動に二人は呆気に取られながらも急いで銀時の後を追おうとす。しかし既に銀時の姿はなく、レミリアは仕方なく万事屋の中で待つことにした。
「全く、銀さんどうしちゃったんだろう。ごめんねレミリアちゃん、せっかく来てくれたのに」
「別にいいわ。どうせ少したったら帰って来るみたいだし」
どうやらレミリアの能力である『運命を操る程度の能力』を使用し、銀時のこれからの選択肢を見たのだろう。
レミリアのこの能力は未来視に近い。
しかし、この能力は自身でも扱いずらい能力。
これから必ず起こる運命を見ることが出来、またそれを操作することの出来る能力。
故に運命を見たなら余計なことが出来ない。
簡単に言うならバタフライ効果だ。
たった一息息を吹きかけるだけで、その運命が大きく逆転することもある。
それ故にレミリアはここで銀時を待つ事にした。
追いかけてこの未来が変わるより、必ず来るこの未来の方が、レミリアとって都合が良かったのだろう。
「それにしても、フランちゃんが結婚なんて」
「私はまだ認めてないわよ!」
くわっ!と一瞬にして鬼の形相に変化するレミリアに、新八は若干引いている。
「でもフランちゃん、まるで銀さんと結婚するみたいな口ぶりだったなぁ」
「それは有り得ないわ」
「え?」
「だって、銀時は私と結婚するのよ」
「···············はい?」
「吸血鬼である私の純血を奪ったんだもの。それくらい責任は取ってもらわないと」
「はいィィィィィィ!?」