【転生】オリ世界で転生しまくるスレ【掲示板】 作:何処にでもある
条件1:ウラビトでFランクに到達する
条件2:「睡眠」の工程を通過する
条件3:過去に関わる事に接触している
条件1で引っ張るつもりでしたが価値99出して残す選択の情報を手に入れた為早々に
思ったより早くやる事になったので続きません。
──序
ぷかぷかと揺蕩う様な感覚。深く深く、仏が垂らした糸に少しずつ寄らんとする、その様な流れに身を預けぷかぷかと浮ばん。
僅かばかりにその様な事に違和を持ち、目を微睡む程に開き、瞼の隙間から覗き見る様に見上げれば、4つばかりの黒ずんだ光が周りを遊んでるかの様に円を描く。
それがどうにも可笑しく、少しばかり楽しく、微かに不愉快に思てならず、身体を動かそうと指先に思念を集わせ様にも動かず。不思議にも誰とも知らぬ其の方に尋ねんとして、観を70を数える程度に動かし、己は己ではなき事に気付かん。
其の方は深く眠ゆるおなごなれば、己は1歩前に身を緑良の小石にしていた物。ならばこれに声は出せず。身を動かす事は切に叶わず。ただ揺蕩うのみの緑良の小石なり。
或いは望外の目覚め、赦されるは思いを馳せるばかり。
唯、馳せるだけの石ころなり。
──弐
かつかつと黒板にて白墨を叩く音を指揮者とし、蝉と鈴虫の喚きのオーケストラと、陽が全てを黒染めにせんとする夏の刻。じっとりと小枝の影より漏れる日に水滴が頬を滴りけり。厭な感触に己の腕を使い口横を合わせん。
昨日から、或いは日が西から登り東に沈み、また西から登り東に沈むを幾度も繰り返すより前から同じ様に文字を綴り、腕を動かし、膝を組み、息を吐き、目を走らせ、文字を綴る日々の翌る日にて、いつもより一分三十四秒早く授業が終わらん。
「今日は※※※※に※※※する※がいます。どうぞお※り※さい」
垂幕より覗かせる姿に未知を見ゆ。勢い凄まじく幹の上を細やかに歩いては己等の前に立ち叫ばん。
「今日から一緒に※※※になる※※※の
「──改めて、これから皆さんと一緒に勉学に励む事になる
げに美しき者を見れり。否、正しく無く。美しより素晴らしきなれ、其の方の皮膚が、髪が、眼が、声が、己を必ずや高めるとおも馳せられる。生き物としての格が上と理解出来るある種の血の芸術なれば。思わず拍手を送らせられん。
「拍手。[閑散と拍手する音]…では
「あそこっすね!せんせー、ありがとっす!!」
ザクザクと杭を打ち付ける音をあげて隣の枝に座りて、己に話しかけん。文字を書ひて慰めるにも騒がしき、筆を止め耳を傾け、それにて関心は尽きじ。
「あ!やっとこっちを向いてくれたっすね!あっしの名前は
この刻の己には既に羽音の大きし虫にしか思わん。なれば葉を重ねる必要もなかれ。ただ勉学に励むのみであれば。
基を辿れば此処は樹の上に生える寺小屋にて。石にはその町を跨ぐ事も許さず、玉の為の、大きな橋の大きな樹を囲う様にある町の、その玉と証する為の場。玉はその樹にて毎日を過ごし、その玉の中においてもより輝き放たんとする「緑星」の席に、一時の怠惰も許されず。己はただ文字を重ね綴るばかりなり。
「むむむーー!!無視っすかそうっすかー!…くくくっそっちがその気ならあっしにも考えがあるっすよ!今日から毎日話し合えるまで話しかけ続けるっすから!覚悟の準備をしておくっす!」
一つの日が沈み皆して樹の横に開く寝床に向かわんとする時。
「そしておやおや?あっしはしつこいと前の所では評判だったらしく?」
一つの日が登らんとし、啄む歯を磨かんとする時。
「それはもうしつこく付き纏うっすから?」
よくも聞こえぬ言の葉を紡ぐ者がひととき立ち去った時。
「これはこれは勉学の邪魔になるっすねー!」
日が真上にて輝き、持参した餌を啄む時。
「残念っすねー!これでは話しに付き合う方がマシだったのになー!あ、これあっしが作った弁当っす。同じ部屋で暮らす事になったんすからこのくらいは任せて下さいっす」
げに恐ろしき事を紡がんと、其の方が作りし餌を啄みつつ思いけり。パンに具を挟んださんどうぃっちらしき物なれば、ともすれば美味やと思はし。
「ハンバーガーっす。二度と間違えんな鳥野郎っす。」
「で…美味しいって顔してるっすねー。聞かなくても分かるようになってきた自分が恐ろしいっす」
僅かに口角を上げていたと思はれ、思はず己の顔を下げ斜めに見し。己の髪にて顔が見えなれば恥もなきけれ。
「…はあ、一月っすよ?あっしがこうして此処にきて、偶然にも同じ部屋…横穴?に住む事になり、あれこれ一緒に暮らして一月っす。一言くらい、せめて名前くらい教えてもいいとあっし思うんすよねー」
たださんどうぃっちらしき物を啄めば、その様な言の葉が聞こえり。もうそれ程に共にしていたとあれば己も驚愕を隠せん。なれど己には名乗る様なものを持ち合わせず、少女もまたその様な名を持ち合わせんとあれば違いに区別する必要もせず。それを証するように周りの羽音に耳を傾けん。
「ねー
「…
「読書の邪魔と。それは済まないっす。でも偶にはこうして会話する事も脳の新鮮な刺激になるっすよ?それに沢山知りたいなら、人との繋がりは大事っす。貴重な本や情報ってそういうコネで手に入る物も多いっすから、その練習としてどうっすか?」
「
「ちぇ、釣れないっすねー。複数の道筋を立ててやった方がいいと思うんすけど…まあいいっす。でも、お昼ご飯はしっかり食べないとダメっすよ!はいこれ今日の分っす」
「食事を取る事は活発な思考の為の有意義な事ではありますが既にレモネードを摂取して十分な糖分は確保していますのでそのサンドウィッチは不要です。そちらの
「ハンバーガーっす。二度と間違えんな頭でっかちっす」
其の方が来てよりこの枝も騒がしくなりけり。されどそこに名を持つものは有らんとあれば、やはり名を語る必要も無し。…されどこの蝉よりも騒がしき事には己は好めり。それもあれば、さんどうぃっちの事の感謝の言の葉を紡ぐ事もまたやぶさかで無し。
されどこの刻まで言の葉を交わした事が無いとあれば、今更其のような事で言うのもまた余計だと思わん。故に、斜めにて誤魔化さん。
「…………ご馳走なれ」
「はいじゃあ此処においたからこれはあんたの物っすよー!悔しか…あれ、いまご馳走様って言ったっすか?」
きょとんとした顔で此方を振り向き、やがてにんまりと笑えば、後を思い憂う事とならん。
「言ったっすね?…やったー!初めて声を聞けたっす!やったやった!初めてあっしと会話したっすね?ならこれを初めにもっと話し合おうっす!これで満足なんてしてやんないっすから、覚悟するっすよ!」
暫くこの騒がしきに付き合うとあれば、文字を綴る事叶わじ。されどそれよりも意義があると思わん。
…その様を真上にて輝く太陽は、見守りけり。それに緑の星は気づかずに、陽をもって緑に輝き。
──参
「ふんふんふふーん♪いやー久々に店との値引き交渉に勝てたっすよー!今日はちょっと豪勢に行っちゃうっすかねー♪」
三月経ったある夕暮れの刻、七つ数える度に訪れる町に繰り出せる日にて、己は其の方に連れ出されん。しばし市場を巡り引き摺られれば、最後にいと重き物を持たされり。普段より筆を動かすのみの己には辛きことだ。
「…何故に己を連れ出さん」
「え?そりゃあ普段から籠ってると運動不足っすし、今日は町に運送の人達が荷物をどさっと届ける日っすから、色々と安くなるし値引きもし易いっす。なら沢山この日に買っておいて貯めておくのが賢いっすし、それなら人手は欲しいっすよね?」
「そこで白矢が立ったのが一緒に暮らすあなたっすよ!普段料理と洗濯に掃除と、それに一緒に勉強の教え合いしてるんすからこのくらい付き合えっす!」
「………」
返す言の葉無く。故、黙々と運ばん。
あれより交わす言の葉増えり。名こそ伝えられずとも、通じる事はあれ、ふとした時にはあなたと呼ばれん。いつよりは思い出せずとも、それで足りるとあれば構わじと、そう思いつつ背負う袋を持ち直せり。
そうしていれば横にて並ぶ其の方が立ち止まれれば、壇香梅の香りが鼻に付き、少しして己も立ち止まらん。
見れば黄色の梅で囲われし遊具が置かれた広場がありけり。夕暮れ故か小さき者達も居らず静けさに満ちければ、其の方はこの様に言う。
「…ふー。少し疲れたっすね。公園のベンチでちょっとの間休憩するっすよ。門限、まだ余裕あるっすから」
そうして暫く広場にて休めり。座り、一息を付けば気が抜けたのか立ち眩みにて崩れん。しかし肩に温かきもので触れれば、ゆっくりと身体が横にならん。頭の半分が柔らかきものに触れれば、髪を手が触りけり。
「…やっぱり。幾ら運動不足だからってあなたはこの程度でよろめく様な事にはならないっすよ。…最近、無茶してるっすよね?」
身体の中心にて跳ねる物あり。気まずく、目を半分に斜めに見れば、顔を上にずらされ眼を覗かれん。眼を逸らし、誤魔化さんと言の葉を紡ぐ。
「…何事か解らず」
「誤魔化すなっす。もう四ヶ月一緒に暮らしてるんすよ?そのくらい分かるっす。医者志望舐めんなっすよ」
「…来月の卒業試験っすよね。木の間町木の間学園、第65回卒業総合試験。ええ、知ってるっすよ?希望した子達が受ける物っす。合格すれば「緑星」としてその一生を保証される。例えその半ばである「緑石」だったとしてもどんな大企業にも入れるし、どんな組織にも高待遇で迎えられる。この町で、この学園都市が誇る称号」
「………」
「…だけど、それは合格した時の話。不合格ならその命を持って傲慢にも「緑星」に手を伸ばそうとした者を処刑する。民衆が、町の人々の笑い物になりながら好き勝手にされた後に死ぬ。…そういうものとして、あっしもいつの間にやら受け入れてた事っす」
「………」
「…不思議っすよね?この町に来た時には受け入れがたかった事がいつの間にか当たり前になっていた。今はこうして疑問に思ったやすが、其の内違和感なく受け入れるでしょうね。…違和感も抱かず、あなたが死ぬ所を見たくなんて無いっすよ」
「………」
その言の葉に、今までに見てきた失敗者の最期を思い出し、何故可笑しいのかと思えども、同時にその言の葉に納得する己もまたあり。其の内、納得した己が霞にて隠れる事にもまた、違和を抱かじ。
「…今だけ、そう、今だけっす。だから聞くっす、あっしの話を。忘れるなっす、今ここで話した事を」
「………」
ただ、言われるがままに耳を傾けん。
「…あっしはこの町に来る前の記憶が無いっす。…いえ、無いって言うよりは霞むって言う方が正しいっすね。あっしは、この町に抱いた違和感や、この学園に入る前の記憶やを思い出そうとしてもすぐに掠れて、忘れちゃうんす。だから、あの時教室の幹で自己紹介した時、たった1人だけ拍手してくれた時、とっても嬉しかったんすよ」
「気づいたら暖簾の前にいて、自分の名前が聞こえなくて、自分って何だーって、それで自己紹介しろって、どうしろって話っすよね?だから訳も解らず、掠れる記憶から辛うじて分かる事を引っ張り出して、やらかしたかーってなってる時に、…ええ、あなた、未だ名前も知らないあなたの拍手が、あっしを救ってくれやした。…些細な事でしょ?でも、あっしにとっては一生返せない様な恩なんすよ」
「無口で、生活がダメダメで、愛想の無い、ずっと勉強勉学学びって文字を書いて、一緒に暮らして、ダメな所を沢山見てきたっす。…だから、そんなあなたが試験を受けても合格する訳無くて、だからやめて欲しくて……あれ?何すかね?何を言おうと…?あれ?涙が…」
ぽたぽたと一滴、また一滴と頬を伝う物ありき。斜めにて顔を覗けば、夕焼けの色にに混じり僅かに眼より光る物が落ちん。黄色の梅に染まったかキラキラと輝くそれが己には記憶の欠片の様に思へてならず、己の指にて流さぬ様に拭わん。
「…己は涙を流す事は好まじ。ただ、昨日と同じく笑みを浮かばせる事を望まんとする」
「………」
「…己が死に行く事を否する事は前より理解ありき。されど己は諦めず。ただ挑まんと思う」
「………」
「…ただ、それだけなり」
ただ、これまで支えんとした其の方と、これからも共にする為の物を欲さんとした、とは言えず。ただ、斜めに眼を逸らして言う。
「…あっしは、ついさっきの事を思い出せないっす。だから今なんの話なのかは知らないっすけど、それでも手元にあった紙を朗読する事はできるっす」
そういう其の方は懐より古びた手程の大きさの手記を取り出しけり。ちらりと覗けば、そこには数多の文字をぐしゃぐしゃに塗り潰したページがあれば、ある所にて手を止め、読んだのちに照れ臭そうに顳顬を叩いたのちに閉じて此方を向かん。
「きっと、途中で忘れるだろうから、きっと、あなたは諦めないだろうから、せめて合格する様に応援する事にします。…諦めるなら大歓迎っすよ?」
「その拍手で勇気も貰えたっす。だから他にも友達を作れた」
「一緒に暮らして知識を貰ったっす。だから学園暮らしを楽しめた」
「毎日ご飯を食べてくれたっす。だから自身にもいい所があるって誇れた」
「不安で夜に目が覚めた時には隣に居てくれたっす。だからずっと元気であれた」
「あっしは、そんなあなたが大好きです。だから、飛び立って下さい。あなたにはきっと、その為の翼があるでしょうから」
──肆
寒き刻、普段は明かされぬ樹の頂点より町を眺めん。周りには12の者達が立ち並び、皆してその眼を輝かして今か今かと待ちけり。
『さあ今年もやって参りました!第65回卒業総合試験の開幕です!今年は13人が挑戦する事と相成りましたが果たして、今年こそは「緑星」になれる者は現れるのか!第1回目のある1人の合格者を除き実に3万2940名が脱落、妥協しております!』
歓声の音が響き渡らん。宙に舞う鶴に折られたプラスチックの物体が此方をまじまじと見んとすれば、その奥の遠くある町々の屋上にて人が所狭しと座り、手元にある人と樹の様に折られた動くプラスチックの物体とラジオにて我々を観んとする。
『さあ観客の皆様は誰が最初に失格となるかを賭けております。只今最も賭られておりますのは2番の子供、1.24のオッズです!これについて解説のレーセさん、どう思われますか』
『ご紹介に預かりましたです。「
『解説ありがとうございます!他の子供達は順に───』
これ以上耳を傾けても意味は無しとし、他を見渡せん。皆して先んじて配られた数字の書かれた布を纏い、己も2と書かれた物を着ん。見れば1を着た者に見覚え有りき、心細きから声をかけん。
「其の方は何故受けたなりや?」
「あなたは
ただ、それにて言の葉の交わしは終われり。双方に紡ぐ事が無くに否ず、試験の始まりを知らせる鐘が鳴れば自ずと開始地点に向かおうとする故に、終わらん。
『それでは開始となります!60分以内に最初に各種試験を突破しつつ地面に到着した後また天辺に戻った者が合格となります!実況は私、校長のベーネ・テーゼがお送り致します!それでは…スタート!』
並び立ち、一斉に頂点より落ち、幹に着地すれば、目の前に数多の紙が舞い散らん。
『先ずは知識確認!宙に舞う試験用紙と問題集を回収し素早く回答、全問正解で突破、ただし一度でも間違えれば失格です!当然時間制限がありますので走りながらの回答となります!高低差、踏み外せば当然死亡!突破率30%の序盤の難関です!』
『皆様一斉に回収、おや1人落ちたですね。そのまま落ちてって…わあグロい。7番目死亡です。死体はどうするのかと観客の皆様は思いでしょうが、死体は我々「
『7番の子供は残念でした!処刑は家族の皆様に受けていただく事になりますので担当の先生は確保をお願いします!さあそうしている内に残りは難なく突破!花丸満点です!今年は優秀な子供が多い様子!』
走りつつ宙を舞う紙を掴まず斜めに見て手元の紙にそのまま書かん。煩き蝉と羽虫に突風が吹き荒れる樹の上での授業とさしたる違いもなけれ、容易なり。そのまま降りて行くと下より槍に始まり矢、剣、棍、視界を埋め尽くさんとする武器が襲い掛からん。避けようとするも幹より足が動かじ、見れば鎖がこの身を縛らん。
『二つ目の試験は外郭の秘法である「永き理想武器の雨」と「足引きの冠鎖」の突破です!一度使えば50年武器の雨を降らせる秘法と末代にまで祟り続ける側からは見えない鎖の秘法!本来の物より劣化した物ですが今回はそれを一瞬に圧縮し瞬間的に強くしております!』
『今回60分と12人にしか用は無いので効果時間と対象は小さくしてるです。その分強くなってるですがこの程度の試練を突破できない様なら「緑星」には成れないです。知恵、力、心の試練、全て短時間に突破して初めて「緑星」のユーザーとして認められるです。』
初めに襲い掛からんとする槍と剣を掴み、片手の剣にて弾き、もう片手の槍にて無理矢理身体と幹を繋ぐ樹の肉をくり抜かんとすれば、何処へ落つるかもしれずに武器が襲う根本の下へ向かわん。
『おっとここで4番、6番、8番、10番、11番、12番が穴だらけになったー!のこりは1番、2番、3番、5番、9番、13番と成ります!』
『武器で弾く者や鎖を盾にする者が大半の中、9番はあれ武器支配の魔法ですね。武器に飲み込まれる一瞬で詠唱を終わらせるとは本当にここの学生は優秀な子達です。この学園に捕まらなければ将来何処かの幹部だったでしょうねって感じです。』
『さあデットヒートは止まらない!武器の雨を乗り越えればそこはーー!!!秘法の核となった機械の馬達だーー!!これを倒さない限り先には進めない様になっております!』
『現在生存している参加者の数だけ馬は居るです。つまりここでまだ殺すのが容易な他の参加者を殺すか、協力して七匹の機械の馬を倒すかとなるです。起動に生存認証が必要な機械、秘法と組み合わせるのは骨が折れたです』
互いに目を見やり、二手にて別れり。己と1番と9番と13番が共に倒さんとすると、他を殺さんと巡らしていた3番と5番も不利とみるや馬共に向けり。雷が、衝撃が、磁場の反発による鉄の海が、己等を仕留めんと襲いかかった。
『さーー!戦闘開始だ!!暫くすると上に向かっていた武器が重力で下に、参加者の子供達に向かう為15秒で仕留めないとまた武器と鎖が襲いかかるぞ!!そうじゃなくても今も子供達は鎖で拘束中!ハンデを背負っての強敵との戦闘だー!!』
『あれは私でも13体相手に壊すのに10秒はかかる物です。今まで卓上での理論でしか戦闘を知らない子供が何処までやれるか、これ迄の挑戦者でここを突破したのは僅か4名、遥かに厳しい戦いです』
剣で首に突き立てるも剣が折れ、槍にて眼を貫こうとも槍が折れた。賭けなれど唯一通ずるは魔法なれば行うは引き付ける事の一つなり。飛び交う鉄の塊と海を引き連れ幹を伝って馬群に潜らんとする。しかし奇襲にて5番が襲い掛りて肩に傷を負えば、思はず蹴りを入れて宙に浮かせん。
『おっとここで2番が馬達の攻撃を引き付けようとして5番に刺されたー!!しかし唯では起きずと5番に蹴りを入れて宙に浮かせる!そこに上から落下して来た武器に串刺しになり死亡!』
『枝下に捕まっての下からの奇襲、それに対する対応、素晴らしい判断です。が、それで減った馬は1体のみ、残り5体を、最低1体倒さなければ先には進めないです。馬達も武器を確保しましたし、ここからどう動くかが鍵となるです』
武器がまたもや殺到する。己以外は絶望したと眼を閉じる者もいれば腕を用いて逃げ果たさんとする者、魔法にて翻って武器を奪わんとする者や上に何か投げる者もいる。己には既に切り返す術は在らず。ただ、死する命運を眺めるばかりなれど、この身には生きる事を諦めず過去を振り返らんとする。
ふと、或る夕焼けの記憶を思い出さん。其の方は過去の記憶が霞へと消えると宣う、ならば己は如何であろう。今に至るまで過去を振り返らんとしただろうか、否、それは在らず。ならば過去にて術がある事を捨てきれず、しかして霞へと隠されれば無為になりえろう。
がしゃりと鎖の音が耳に残る。
ふと思いつきけり、鎖とは封ずる物なれば霞もまた封ずる事となるのでは無かろうか。末代まで呪うそれを一人のみへと集わせるとあればそれは一人の全てを鎖の内に入れたも同義なれ。
なれば、なれば、この鎖が肉のみでは無く心まで至るではあれば、それは隠さんとする霞と全てを縛らんとする鎖の勝負と相成る。
霞は過去を思い出さんと、この町の違和にて活性せり、故に今、霞は強くあり。鎖もまた、己を殺さんと音に聞こえたとあれば強くあり。ならば、今過去への道は霧の無き一つの道である。
そこまで思いを巡らせば、ふと叫ぶべき言の葉を見付けり。己はそのままに呟かん。
「
ふと、己には脇下に翼がある事を思い出しけり。広げ、飛び立たんとしよう。
鎖が頭より垂れ下がる、馬が撃ち落とさんと迫るが羽に擦れたとすれば動きを止め傅くようにその身を停止せん。他の者を見れば眼を閉じた者は潰れ、這って逃げようとした者は此方を見つめ、魔法にて立ち向かった者は数多の武器を支えに立ったまま死して、血跡を残すのみの者もいた。
『おっとこれはどうした事か!2番の子供に翼が生えたと思いきや馬達が次々と停止したーー!!!逃げようと避ける様に動いた1番も生き残り、前代未聞の二人同時に試練突破と相成りましたー!!』
『……Rp値がマイナスに振り切れた事による科学法則の停止だとして…ああ、9番が魔法使ってたからそれでそれでやり易く……鎖…あーー!!そういう!成程私程じゃ無いけど天才です!偶然とはいえよくやれたよほんと!過去認識の妨害をそんな方法でねー!はー成程成程、次の研究案に入れて置くです!』
『おっと2番が1番を抱えて下に降り立っていく!解説のカミヤさん、お願いします!』
『えーとならタイムスケジュールはっと……ああ、解説です?これは観客に説明してもどうせ忘れる様な事柄ですからいまいち気乗りしないですが…』
1番を抱え下に降り立たんと下降せし時、疑問を投げかけれり。
「…何故
「…昔の事なり。己はそなたに助けられた事有りけり。そなたが覚えずとも己が知っているならば、そのお返しもまた自然な成り行きなれば」
「…そうですか。…永らく一緒に生活した影響で
「…そうか」
それよりは言の葉を交わさず。ただ、それ以上は言わずとも伝わると判したが故の静寂であった。
『今起きたのはRp値がマイナス100%に到達した際に起きる現実性の崩壊です。主に魔法を使う事により起こる局所的な異空間の生成ですね。この中では主に科学では有り得ないことが起きやすいです。魔法とか凄く扱い易くなるです。科学に関した事は死ぬです。』
『成程だから今2番は飛べてるんですね!』
『普段はこれって0%ですが魔法を使うとどんどんマイナスに行くです。今回は9番目と13番の魔法で大部分を押し出して最後に2番が止め刺しましたですね。其の内希釈されて元に戻りますが暫くはあのままです』
『つまり9番の努力が周り回って彼らを救ったと!』
『馬が止まったのはそれが原因、バリバリの科学側なので。だから魔法よりの我々が扱うのは大変なんですよ。…それはそれとして、今回の凄いところはあれ、秘法って科学にも魔法にも属さないんですがその性質を逆手にとって鎖と認識を相殺してるって事です』
『ほら、この世界に広がる認識のあれこれって科学のと魔法のでダブルで重ねがけしてるんですが、だからこそどちらとも属さない秘法はそのキメラ技術に特攻を持つです。そこに鎖の秘法、それも1人にレンジを集中させた特注品です』
『つまり、鎖とそれを相殺したと?』
『其の通りです。恐らく自力での思考実験による研究開発でしょうし既存のものを弄ったと考えれば制作でもあるです。…「僕の翼」ねぇ、私よりネーミングセンスあるのがなんか癪に触るですね』
『成程…つまり!全員で戦闘し勝利を掴んだと!おっとここで地面に降り立ち緑の石を手に入れたー!ここまでで時間経過は40分、この時点でリタイアすれば「緑星」の一つ下、「緑石」として卒業可能です!登るには降るより体力を使います、その上最後の試練を受けなければ成りません!ここでリタイアすれば確実に処刑も無くクリア可能!さあどうする!』
降り立ち、樹の根本より芽が生え、二つの蕾になりてその成長を止めん。それの側に抱えた者を降ろし、蕾を千切り一つを渡せばそれを呑み込み、口を開けん。
「私はここで終える事にします。目的には十分に達しましたしこれ以上はリスクの方が上でしょう。貴方もここで降りた方が賢明だと思われますが」
「…否、己は上を目指しけり」
「…そうですか、なら
それを最後に、この身を飛び立たん。上へ、上へと目指さん。
「…愚かですが、真っ直ぐで、貴方は過去のただ意味のない文字を書き続ける時と変わりました。それは
上へと目指し飛んでいると翼が崩れんとする。近くの幹に降り立つも翼は灰になりて崩れれば、上を見上げれば8割まで進んではいれども歩くにも走るにも己には厳しけり。なれど果たさねばならんとすれば足は止まらず。走るのみである。
『おっとここでRp値が正常になったのか翼が消えたー!残り10分、果たして間に合うのか!』
『彼が今作った技能はRp値に強く影響を与える類では無いです。なので此処から走って行く事になるです。しかし残り一つの試練は9割登った時に来るもの、走り疲れた時にその様な事が起きると成れば厳しい事になるです』
「はぁっ…はぁっ…はっ!」
走る。走る。走る。がむしゃらと言う言の葉が有りけるが、己はその言の葉通りに初めて動けかん。芯の中心に鈍痛が走り、腸は捻れる様に痛む。枝を伝い宿り木の蔦にて攀じ登り、手を滑らせればこの命尽かんとすれば、指先まで筋が張れん。
ある所まで登った所で視界が暗く、音が聞こえず、温を感じず、臭いなく、舌の動きもわからず。立ち棒けることなれば、少しして音が聞こえし。
(大っ嫌いっすーー!!!)
膝が崩れ落ちん。
『第三の試験は心の試験!五感を奪い、試験者にとって1番辛い過去を捏造します!!単純ですがこれが疲れてる時効くんだなぁマジで!』
『しかも捏造の選出先次第で関係者全員に対して捏造する仕組みなので単純に分かりづらいです。今回使用した物は私達観客には効き辛い様調整してる物なので実況は引き続き問題無いです。』
『しかし大分可愛い捏造だーー!!!彼女かー!?そういう[都市「ニノ」スラング]なのかーー!!!?』
『此処からがこの卒業試験の本番と言えるです。あ、発見したですよ彼女さん、捏造とはいえ心にも無い言葉を言った事になって此方も膝から崩れ落ちて…と言うよりはしゃがんでる?です。似た者同士です』
『あ、試験者立ち上がりましたね。どうやらそのまま前へと進んで行きます。ですが五感が奪われてますので………あっと落ちたーー!!!』
『残り5分。これはもうダメですね、死ぬです』
暫し崩れ落ちれども走る事を止める理由には成らず。鎖は未だ稲穂の様に頭より垂れ霞を塞でいて、術は残っていると思えれば、これを解かねば先も無しと足と思考を巡らせん。
(母さんに無いその翼だって、立派なあんたの個性だろ、もっとしゃっきりおし!)
(何で生まれて来た?その翼は何だ?気味が悪い。切って売ってしまおう)
今は無き翼への執着が消えども、走るを止める理由には成らず。
(どれだけ凄いのか父さんには解らん!だがそれどけ賢いんだ、絶対将来は大物になる!だから学園に行って、立派になって来い!)
(何処までも不気味な奴だ…。いっそ学園に売っぱらっちまおう)
文字を綴る意味が消えども、この足を止める理由には成らず。
(※※※の
(転校生の
「緑星」足らんとする矜持が消えども、この早まる芯の中を止める理由には成らず。
(何故ここに居るのか忘却された様ですが、それは今を諦める事とは繋がりません。例え忘れようと
(ただ文字を書いて意味があるとは思えません。こちらの単語帳通りの順番に書いた方がよろしいかと)
諦めんとする勇気が消えども、この勢いを止める理由には成らず。
(…ふふ、
(あの人…何をしているんですか?)
理解を得られずとも、この思考を止める理由には成らず。
(なあんかいっつも訳わかんない事を書き続けてたから関わんないでおこうってしてたんだか、何だ、案外付き合い良いんだな。あんたが見えてる世界にも興味が出て来たし、ま、これからは遊びに誘う事にするから。暇だったら一緒に行こうぜ)
(さあてね。きっと俺たちには見えない物でも見えてるんだろう)
言の葉を交わそうとする意思が消えども、もがく事を止める理由には成らず。
(あっしは、そんなあなたが大好きです。だから、飛び立って下さい。あなたにはきっと、その為の翼があるでしょうから)
(中途半端な優しさが嬉しいと何故信じたんすか?寧ろ、無力さしか残らないっすよ、だからあんたの事は嫌いっす。大嫌いっす。だから、そのまま堕ちて墜ちて死ねっす)
垂れ下がる鎖が浮く様に感じれば、己が重力のままに落ち行く事を察せん。…心が伽藍堂になった様な、己の全てを外から覗き込む様に心と己が剥離せし。ただ、何をしようとも思えず。眠気に任せ身を脱力せんとそれをする己を外から眺めるばかりである。
(…何で諦めるんすか)
…諦める理由が数多の星々の様に己を貫かんとする。
(…約束したじゃないすか)
…なれどもそれに覚えも在らず。
(…あなたにはできるってあっしは信じてるっす。それを、裏切るんすか?)
…語り掛ける者に覚えは在らず。それでも、その声に耳は聞き慣れていると有れば、きっとそれは大切な者だとも思える。
(…あっしはしつこいっすから、何度だって声をかけるっす。何度も、何度も、忘れきれないくらい沢山の思い出を、何度だって作るっす)
…されど数多に散った記憶は無為に散りければ、それは意味の無き事と思う。そう考えれば一つ、パチパチと拍手の音が聞こえり。
(…あっしは、拍手って大切だと思うんす。頑張った人に凄いって、明瞭に伝える事ができる。言葉が無くても伝わるすごい事。此処まで頑張って来た事は、例え忘れていようと消しようの無い積み重ねっす。だから、その賞賛をしたっす)
…過去を振り返る。何故か知れぬ歩みなれど、確かに己はここまで歩めた事は確かな事であった。そう確かめれば、壇香梅の香りが漂う。
(…時には休む事も、歩みを止める事も大切だって事はあっしも分かるっす。事実、あなたは今日に至るまで夜遅くまで勉学に戦闘訓練に、樹の構造を覚えきる為に何度も登り降りしていたっす。だから、疲れて休みたいのはすっごくわかる事っす。でも、それはその努力の結果を知ってからでも十分間に合うと思うんすよね。)
…手を握らんとすれば、何かを掴んだ事を理解せし。その言の葉に響く事はなけれども、染み入る様に芯の中から溢れるものが有れば、自然と手は動けし。脇下がむず痒しと触れば、雛の翼の様な物が小さくもあり。
(…だから、また飛び立って下さい。その為の物はもう掴んでるっすから)
…手にした丸い物を口に放り込めばガリガリと音が聞こえ血が溢れんばかりに出るが構わじ。気にもせずに飲み込まん。すると緑の光が見え、手を伸ばして指を掛ければ、視界は開かれん。
『さあなんとなんとの大展開!彼女さんがしゃがんでやっていたのはななななんと!ウラビトへの依頼!莫大な借金の代わりに何と解説役のレーセ・カミヤが受注して土壇場で支援!流石ここまでの試験を強化した方だー!心の試練に使った遺産を急遽作り替え彼女の声を届ける事成功ー!!無事に試験者が目覚めましたーーー!!!!』
『はあ…ちょっとでも見知ってる人の依頼を受けちゃうのは私の悪い癖です。ですがこの程度ならまだ安く済みますです。偶然近くにあった13番の遺した梅の枝で作られた杖、媒介として丁度良かったので媒介費用は無しで此方の実費はBランクの私の人件費のみです。なので他依頼の中断費用諸々と締めて…5千万クレジット、て所です。担保有りでローンも可です、今なら安いです。』
開かれた視界にて見れば己は落ちてあり、術を考えれば己の全てを正しくしかと思い出さん。見れば花が光る壇香梅の杖が辺りを不安定にせんとするを理解すれば、ならば行けると杖を持ちて決断せり。
その時、正午を知らせるサイレンが鳴らん。観客は紙幣に筆に靴を鳴らし終わりの時と騒ぎ始まり。故に残りは1分より短し、急ぎ己の口にて言の葉を紡がん。
『帰って来た所で解説のカミヤさん、このままだとまた飛べた所でどの道距離的にも不可能だと思われますがどうでしょうか?』
『ん?さっき私が使った技能ってRp値をとても下げますから翼は行けるですよね?それに試験者が先に食べた「緑石」、あれって食べると本人に起因した力を極限まで引き出すのはご存知ですよね?なので──』
─さあ、行かん。
『──あれはもう、何処までも飛び立てる自由な翼です。それこそ、この大都市みたいな檻の世界から飛び立てる様な──ああもう、興味が尽きないですね、彼』
『おっと解説が子供には見せられない悪どい顔をしているー!!それはさて置きぐんぐんと飛んでいく!ぐんぐんぐんぐん!!残り20秒! 19! 18! 17!』
飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ。鎖は冠の様に編まれ、先の戦いにてボロ切れになった服を、杖がバラかれ枝で編んだ物を着る。翼は緑に輝けし骨と、何時ぞやの涙の様に光る硝子の羽を生やしては抜けゆく。図らずとも天使の様な姿となれば、それによりは一暼もくれずに翔ばん。
『…12! 11! 10!』
普段より住まう横穴を通る、普段より通う教室を過ぎる。目先の樹の頂点にて星が現れた思へばより高みへと登らんと星は空に飛び立てり。己も追って空に飛び立てば斜めに見えし青き空が己を祝福せんとばかりに先を譲らん。
『8! 7! 6!』
緑に輝かきし翼が形を崩さんとすれども構わじ。先ゆく星の光より残る線を巡る様に飛び、より速くなりて飛ばん。
『4! 3!』
声を届ける為の繋がり故か、不思議と其の方が己を信じ見つめる姿を見ゆ。応え、より速くなり雲に飛び込んだ星を追い厚き雲の中に飛び込まん。
『2!』
細やかな雨と雷にて己にこれでもかと当たり傷を付けども抜け落ちる硝子の羽にて阻まれ命までは取れず。雲を抜ければ、暗く成りかけた空にて緑の星が輝いて見えん。
『1!』
手を伸ばす。伸ばす。翼を広げ、より高く、より確かにと掴まん。
緑星、掴めり。
『0!……合格です!何とこれは一体誰が予想していたでしょうか⁉︎第65回にして遂に2人目の合格者だーーーー!!!!!前代一例!驚天動地!過去の超技術である「緑星」のユーザー登録試験もとい木の間学園の卒業試験合格者が遂に現れたーーー!!!!!』
『9番と13番の魔法関係、彼女の依頼、諦めなかった心に力の試練の時の即席の研究、どれか一つでもズレていれば今年もダメだったです。正にこれは絆と努力による勝利です』
『さぁー!各企業と組織の皆様は先越しなどは行わずゆっくりとお待ち下さい!先ずは在校生の校歌斉唱と合格者とその関係者の身柄の安全の確保です!加えて合格者が出て来たと言う事で失格者の処刑準備も中止致します!担当教員は入学準備の方へ周って下さい!皆様、この度はお祝いの席となりますので行儀良く争いは無い様にお願い致します!』
『さあて私もやる事やるのでここで退室しますです。指示の方はそっちでよろしくです。』
翼が全て崩れれば、己の意識も遠ざからん。されど星は離さず、心が満ちてゆくのを感じつつ雲に紛れて落ちゆかん。
柔らかき物に包まれ、意識が立ち上がる。
「おっと、限界が来たですか」
既に雲より突き抜ければ、落ちゆくこの身はゆっくりとあり、寝ぼけ晴れゆく視界にはプラスチックで折られた鶴が数多に己を支え樹の頂点に行かんと進む。
顔に影がかかり、先より聞き覚えありし声が聞こえる方へと向けば、黄金に輝きし髪に緑を基調とした錬金術師らしい服を羽織る褐色の女が己の顔を上より覗き見んと鶴を足場に横に立ち並れば手を胸に添え腰を折りて捲し立てて言う。
「ん、んん…大変お疲れでしょうがもう暫くご容赦を、先ずは合格おめでとうございます」
「この度貴方様が手に入れた物は過去にその本体を見失った「緑星」の使用権限、何故未だに使えるかは不明ではある物の、手にすればしかと使える鍵に御座います」
「いやはや、「緑星」に年齢制限と毎年の難易度上昇義務さえ無ければもっと容易だったのですが…いえ、蛇足ですね」
「ここまで言えば一体どう言う物か気なりますね?ずばり、それは「燦めく空の星々の力を抽出し心象を物体として具現化させる」技術です」
「かつての戦争においては人類の無意識から力を抽出していたそうですが、生憎枯れ果てたそうなのでその代替として星の力を使っているとこの町の伝承として有名です。…欲深いですね?」
そこまで言った所で樹の上に鶴は辿り着きては共に降り立ち、女は謳い踊る様に身振りを加え話し始めん。
「さて、何故今こんな事を話しているかと言えば、それは貴方様が実に70年ぶりにその星を人類の手に連れ戻したその功績に身の丈を合わせる為、こうして忘れない為の術を使いながらの補修をする為だからです」
一時前に居た場を見渡せば、一面に幾何学的に血塗られた模様と七色にランプが光る機械が壁を埋め尽くし忙しく蠢きけり。
「貴方様は生徒の中でも特に忘れ易い子だとの事、後3時間で木の間中学と高校を飛ばし学園を小学のみで卒業するとなるとせめて中高分で教える最低限現代史と護身技能をつけて頂きたく、急遽僭越ながら私がご指導させて頂く事となりました」
そこまで言の葉を紡いで一息入れり。チラリと己を見て暫し悩みし後、広場の陰に歩み進まん。
…下より聞こえし讃美歌の様に歌う校歌が、嫌に耳に残らん。
「…ですが先ずはこちらの方が重要でしょう。ほら、出てくるです」
何か掴めばそれを引き摺るように場に出せば、其の方が後ろめたそうに顔を出さん。何故にここに居るか、連れ出されたといえど連れてくる理由が分からじ。
「…えっと、やっぱり顔合わせずにいた方が…」
「何を今更戸惑うですか、ほら、相手は「緑星」で君は私に借金、今生の別れになるかも何ですから言うだけ言うです」
「会ったらあっし止まれ無いからやっぱ無しに…何肩を掴、押すな…押すなっす!」
押され押されて近くに立たん。其の方は下げた片腕をもう片方の手首を掴み斜めに己を見ん。女は手を後ろに組み少し離れて此方を見守れば、瞼を閉じにこりと笑いては此方を見えてるかの様に見つめん。
暫し沈黙が辺りを支配せり。其の方はそれに耐えきれ無かったか、意を決した顔をして言の葉を紡がん。
「…何でここに居るかって顔っすね…。…「これから会えなくなるかも何だから言うに行くですよ」ってあの人に連れてこられたんすよ」
其の方の指の先にて先と変わらぬままの女がいれば、女は口元に手を寄せてはひらひら動かせり。
「…「緑星」に合格して、何処にでも行ける以上、翼の無いあっしにはついて行く事は出来ないっす。だから、せめて別れの挨拶をしたいなって」
「…顔色が優れなけり。己は何処へとも行かず、此処に留まらん」
その後の言の葉に、ともすればこれにて其の方と己は共に並べて歩めよう、と紡ごうとすれど気まずき故に紡げず。其の方は変わらず俯いたままに紡ぐ。
「…将来、凄い人になりたいって言っていた。都市「チュー」で社長になりたい、都市「ギリ」で癒司祭にもなりたい、都市「ロン」の動物医師もいいなって、その為に「緑星」になりたいって」
覚えなき事なれど、霞なき明瞭なる道を辿れば、違いなく己が後の日にて改めて誤魔化さんと企てた言の葉なれば、自ずと過去に言ったと理解せり。
己は共に歩む為に「緑星」にならんとすれば、其の方は己が新しき未来を求めんとして求めたと言の葉を紡ぐとなれば…互いに酷くすれ違っていると、理解せり。
「…無謀だと思ったっす。死んじゃうと思ったから、死んでほしく無いから応援したし毎日夜遅くまで手伝った!昼間は試験の時に協力してくれそうな子と引き合わせて仲良くなって!助力してくれる様にした!…でも本当にそうなると、やっぱり一緒に居たままがいいってなる…!」
「………」
「…そうした事を、合格する様に仕向けた事を、後悔しちゃいけないのに今あっしは後悔してる…!」
「………」
「……例えそうしてなくても、あなたを見捨てる様なあっしは釣り合わないっす。…いま後悔してるあっしもまた、あなたには釣り合わないっす」
「…己は」
「何処にも行かないって?…無理っすよ。「緑星」が欲しい人は沢山いるっす。「角度」での思考角の制限、「霧の晴れない里道」での心道の取捨選択、認識阻害の魔法に月の妖魔の粉薬、この町にもあるのだけで四つも人の意思を捻じ曲げる物が出てくるんすよ?…「緑星」があってもそれを防げないなら、必ずあなたは新しい未来に進むだろうし、あっしはそれを心から祝福してしまうっすよ」
言の葉を紡ごうとして、口を閉じん。手に握りし「緑星」は変わらず光れども、その光さえこの先の闇を照らすには足りぬと知りけり。なればより先の闇を共に歩む者をより欲しければ、それを察してかひどく落ち込みながらも笑わん。
「…ああ、もう。こんな時に嬉しい事を…ですが、やっぱりだめっすね。あっしはあなたには相応しく無い。共に歩むには力不足で、それでは恩を返すには足り得ない」
足りぬはそれこそ己の方成ればと思いて言の葉を紡がんとすれば、見れば其の方の後ろより女が近づきて、掌にて覆う口が何事が呟き終われる事を察せん。
「…だからこれは最後の言葉っす。今日が最後と別れを告げる、しつこくて迷惑な女とオサラバできる日っす」
「
そう紡げば目を瞑る其の方に女が肩に手をかけんとすると判ずれば、気づけば其の方を抱きて後ろへと流さん。
「…え?」
すると女は己の肩に手を置けば、ジクジクと先の戦いより血が流れた所にて何事か痛みが走りけり。
見れば、燃える様に揺らめく花の刺繍が傷を縫う様にしてそこに在る。
「…なぜ止めました?これ以上は貴方様には関係の無い事だったでしょう?此処から先は帳尻を合わせる時間、貴方様は授業を受け、この子には約束尊守の魔法で縛らないと行けないんです。この子の依頼で助かった貴方様には、止める権利も力も無いでしょう?」
「…否、其れこそ己にあり。其の方は己の横を共に歩む者ならば共に歩む己にもその責はあり」
星を握り直しては心を現世に露わさんと願う。
「……ッ!」
「
──一瞬、強く光りては三十三番地の十八世帯よりなる七番目の簡素なる部屋を僅かに見れどもそれより先を見ることは叶わじ。何故かそう理解が挟まれど己には構わじ、より大事なりしはこれより共に歩める其の方を助け出す事なれば、足引かれる過去は切り捨てん。
光が収まれば、己は先と変わらぬ枝で縫われしぼろ布と生えきれぬ翼の骨が脇下より出でて、新たに星が変わりし手鏡と五枚の銀貨を持ちて佇まん。
「…へーぇ。貴方様は、いえ、君は私に逆らう選択をとるわけですか。その肩にある刺繍で私には逆らえないと言うのに、何ともまあ、舐められた話ですね?」
「…そんな、無茶っすよ!今すぐにそこを退くっす!そんな手鏡と硬貨で何ができるって言うんすか!」
…自然と如何に使うかは理解せり。なれば鏡を下に向く様に上に投げ、手鏡にて一帯を映し出せば、望む景色を映さんとする。
銀貨が一枚減れり。
▅▂▇▅▅▂▅▂█▇█▅▅▂▅▂█▅▂█▇
「…え?」
先程閉じた目を開く。其処には
「…さてこれで補修の方は終わりとなります。それでは
「………」
「ほら、さっさとついてくるです。卒業合格して「緑星」になれたくらい優秀何ですから、何年もすれば返せますので頑張るですよ」
「ま、待ってくれっす!なら借金を、それはあっしも背負……ッ!」
最後まで言えず
「…君は借金も「緑星」も無い、この子と仲の良いだけの関係でしょう?なら其処までする必要なんてありませんよね?」
「
「……ほう?」
何故だ?何故?どうして?なんで?この身体は保身に走る?それよりも大切な事だろう?恩はどうした?好意は何処に行った?こんな事のために頑張ったのか?違うそうじゃ無い仇で返すつもりは無いしたく無いそれではそれではこんな事では
本当に あなたと並ぶ資格が無くなってしまう
「…気が変わった、やっぱり君も一部背負えです」
「
「全額5千万より1千万、利子は月に五万、初めの期限は1週間のみ、担保に今まで君が築いて来た技能全てとこの町にいた時の記憶。記憶の代わりには家族との思い出でも差し込んでおくです。其のために初日と2日目はご家族様と楽しく過ごしてもらいますです」
「返せないと死ぬけど、良いですよね?」
「
「拒否権は無いです。抵抗は無駄です。お前も私の悪行の礎としてなれ、です」
「
「契約、盟約、制約、隷属 四方より来る霊鉄を結び鎖の炉心を燃やせば 其処には絶対を騙る惡の華は咲き誇り 御霊の縁と形り得よう 過去には隷属を 今にて盟約を 未来には制約を ここには契約の契りを掟とし その御霊は魄心にすら届くだろう 汝はその熟成と道行を 我は機会を持って対等とする せめて華が星の一角も散る事を願いて結ばん」
肩に痛みが走り、見れば燃える花を描いた模様が身体に打ち込まれていた。じくりと心地良い痛みが走る。じくりじくりと続く痛みはその度に
「…・交渉・走法・執筆─反─・学徒─小─に…出てない癖してどれも卒業試験を意識しすぎでしょ…・傀儡・?なんで身体を支配される側の技能何て持って…まあいいです。其処まで突っ込む気は無いですし」
ばたりと倒れ、からんころんと自分から切り離された何かが鈴の入った木で出来た入れ物となって排出され、カミヤさんはそれを拾って見定めていく。同時に、何か大事な物がごっそりと抜けた様な、激しい脱力感と眠気が襲いかかって来た。
「…ん?こんな時に連絡…貴方ですか…はい…はい、はい、えー…分かったです。…人の趣味に横やり入れるとか…護衛がてらそうじゃ無い子にちょっとくらい…」
カツカツとした靴音と何か言う声がして、自分の近くでピタリと止まる。カミヤさんだろうか、それとも大切な…誰の事だったか。
「あー、まだ起きてるですね?では通達を。このまま終わるのはB級として落第なのでチャンスをやるです。カバーの調整が終わったら低俗な娼婦の運営してるとこにやるんでそっから頑張るです。何でも其処に入れたらなんやかんやでワンチャンあるそうで、頑張ればマジに借金返せるそうですよ?良かったですね」
つまらなそうにカミヤさんはそう言った。ボヤける視界を辛うじて開いて顔を上げれば、白けた様な顔をするカミヤさんと、カミヤさんに顔を歪ませながら傅く何だか見覚えのある様な男の子がいて、何か、伝えようとして
意識が途切れた。
──伍
意識が戻りて、眠るおなごの姿を見ゆ。ウラビトになりて暫くの過去を思い出しければ、きっとこの身は恨まれし。手にした星に目が眩み希望と思いてこうしたとあればそれはとても酷い失態なり。
力となりてはこの身は幾らでも使えと思えども、この身を晒すとあれば会うのが酷く億劫とならん。故に己を回る光を持ってこの身を隠さん。
己が会えると決めかねる迄は、会わざりけり。
「んむぅ…」
おなごが目を覚ましけり。これにて己は口を閉じん。
あっし…猪突猛進、後悔後先に立たず、雰囲気で悪質な契約をしダメな夫に貢ぐタイプ。元ネタがある文学作品の「その街1番の
己…リンバスの方も混ざってるが、メインは
カミヤ…一つ前で「
校長…「
×オリ(ジナル)世界で〜 ⚪︎
ようこそ 民主主義と猿の手で創られたディストピアへ。
「技術」
かつての戦争が拡大化した元凶その1。特に珍しい物や凄まじい物は超技術と人々は呼んだ。今では大半が断裂海の底に沈んだが偶に這って出て来たり海の上まで影響を届かせたりして定期的に復活する。「緑星」は後者の方。
かつての失敗から基本的に集団での技術研究は禁止されており、個人での研究に留まらせるように相互監視状態になっている。例として5年前、都市「チュー」で売り上げの危機として、違反である集団研究した会社は5日で超技術を復活させ、その午後にはあるウラビトの手によって命ごと倒産させられた。
現在影響を広がっているのにも関わらず破壊されずにいる超技術は
本来であるならば技術は進んで賞賛されるべきものではあるものの、この世界の人類はあまりにもそれが早すぎて使う側である人類の精神的成長が間に合って無い状態である。伊達に「国家」の概念が早々に限界に達した事は事だけはあると言う事だろう。
彼等もその事に最低限の自覚が出来始めた為、AIやそれに関係する技術研究はせずに創作までに留めている。もっとも、かつての戦争において造られた物はその限りでは無いのだが。